「ミンコフスキの『第九』」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期公演。
ミンコフスキの「第九」はどこが違うのかと思い石川県立音楽堂に出掛けた。
プレ・コンサートは無し。
先ず40名位の東京混声合唱団そしてOEK団員が入場した。合唱団が最初から登壇することはあるが、ソリストは第2楽章後であろうと思っていたら最初に入場。最初から入場すれば曲が途切れ無いので聴衆にとっては聴きごたえがあるのだが、
出演者にとっては少々退屈であろうと感じた。しかし、マエストロ・ミンコフスキは流れを重視。
最初にマエストロ・小澤征爾を悼んでバッハ:《G線上のアリア》が演奏される。OEK弦楽5部は10-8-6-4-4(らしい)の対向配置。Hrは多分4人、Tp2人、Tb3人。尚、Cbは左右に2台ずつ分かれて配置。曲は、いつものOEKより音量が大きく交響楽団風。
消え入るように終了したのだが、拍手をしていいのか戸惑っていたら《第九》が始まった。
今回のコンサートは、ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》一曲のみ。第1楽章Allegro ma troppo e un poco maestosoは弦楽器のトレモロで開始。主題の断片が現出し、頂点では金管も加わり音量最大を演出。第2主題では第4楽章冒頭の第1主
題を暗示する歓喜の歌の断片が提示される。第2楽章Molto vivace - Prestoはプログラにある「リズミカルなスケルツオ」。Timpが決然たる提示を行い、この楽章ではTimpが活躍する。従って、「ティンパニ協奏曲」という通称もあるそうだ。
第3楽章Adagio molto e cantabile - Andanteは、『音楽の友』3月号で平野昭さんが書いているように「変ロ長調の天国的な響き」の楽章。但し、今回のOEKは客演を増やした所為で、多少室内楽的綺麗さに欠けたきらいもある。しかし、
ベートーヴェンの《第九》が初演された時のオーケストラと合唱団の人数はネットで見ると「100人の大編成」とあるので、 今回のミンコフスキの《第九》は当時を再現した編成であった訳だ。第4楽章はPresto - assai。ここではCbのppでのユニ
ゾンがある。左右2台に分かれた配置となっているのでどうなるかと思ったが、違和感無し。むしろ立体的に感じたのは私の気の所為か。次いで、バス麦屋秀和さんによる"O Freunde・・・"のソロが歌われる。これに合唱の男性パートが掛け合う。ユ
リア・マリア・ダンさんの代役で登場したソプラノ:中江早希さんも存在感を示し。ソリストは好演であった。それにも増して、東京混声合唱団の凄かったこと。金沢で200人規模の合唱団で演奏される《第九》に匹敵、いやそれ以上の迫力だ。
フーガも圧倒的で、正に歓喜の合唱であった。
コンサート終了は20時半位であった。《第九》は日本では12月に演奏されるが、これはオーケストラ(N響)の正月モチ代稼ぎが始まりであったようだ。従って、3月に《第九》を聞くのは奇異ではない。さて、私はミンコフスキの《第九》は室内楽的
《第九》なのかと思って興味津々であったのだが、現代的、交響楽団的であった。室内楽的綺麗さに重点を置くか、交響楽団的重厚さに重きを置くかなのだが、OEKは交響楽団的重厚さにはまだまだ足りない所があるようだ。しかし、何時までも室内
楽的演奏に拘泥するべきではない。挑戦は必要だ。マエストロ・ミンコフスキはこれを教えたのかもしれない。"O Freunde"を口ずさみながら金沢駅に着くと、丁度金沢発サンダーバードのラストラン掲示が流れていた。これをスマホで撮影し、FBに投稿し、帰途についた。
Last updated on Mar. 15, 2024.