「『心のレストラン』OEKへ誘うー米元響子のモーツァルト」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期公演。いずれも作曲者
の若き日の意欲作が並ぶ。これに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。
13時40分頃音楽堂に到着。ロビー・コンサートは行われなかったようだ。
コンサート1曲目はシューベルト:交響曲第5番。OEK弦楽5部は8-6-4-4-3の対向配置。Flは一人、Cl、Tp、Timpは含まれないコンパクト編成。第1楽章はAllegro。ターラタタタタのリズムが心地良い。若き日のシ
ューベルトの意欲作を、マエストロ・広上淳一は大きく円を描く指揮で表現。第2楽章Andante con motoは聞いたことがある綺麗な装飾音を含む旋律が流れる。Flソロもある短い楽章。第3楽章Menuetto: Allegro
molto: TrioはHrが華を添え、スケルツォではない決然たるメヌエット。第4楽章はAllegro vivace。明るく前向きに進もうとの表現であろう、快活に進行。一旦停止後最初の主題に戻り、分かり易く終了。
2曲目はモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番。ソリストの米元響子さんは灰色に金色の刺繍が入ったドレスで登場。使用Vnは1727年製のストラディヴァリウス。第1楽章Allegroは序奏の後Vnソロによる超高
音で始まる。流石ストラディヴァリウス、奏者の超高音に応える。カデンツァは誰のかは不明だが、おとなしい曲想。第2楽章Andante cantabileは文字通り歌うように開始。Hrの伴奏も効果的。短いカデンツァの
後終了。第3楽章Rondeau. Andante graziosは、飛び跳ねるようなニ長調。OEKとVnソロとの会話がある。中間部は一転して引きずるように進行。《魔笛》に引用されたのだろうと思われる旋律も流れ、短いカデン
ツァの後フィナーレはあっけなく、静かに終了。
アンコールは、これが凄かった。パガニーニ:カプリース最後の曲第24番。ご存知この曲からリスト:《パガニーニ練習曲第6番》、ブラームス:《パガニーニの主題による変奏曲》、ラフマニノフ:《パガニーニ
の主題による狂詩曲》が生み出された。あらゆる技巧が展開された曲を彼女は果敢に挑戦。素晴らしいアンコール曲であった。尚、capriccio(伊)は奇想曲で単数形。複数形はcapricci。caprice(仏)は同じく奇想曲
で単数形。複数形はcaprices。CDには奇想曲が24曲入っているので複数形。但し、今回のアンコール曲は24番目の奇想曲1曲につき単数形。従って、伊語ではcapriccio、仏語ではcapriceが正しいことになる。
休憩を挟ん3曲目は同じくベートーヴェンの若き日の意欲作である交響曲第2番。本日初めてTimpが登場。Cb3台に戻る。第1楽章はAdagio molto - Allegro con brio。Timpを伴う重々しい序奏部で開始。VcとCbで第2
主題。メンデルスゾーンに影響を与えたと思われる曲想。Tpも華を添える。第2楽章はLarghetto。VnとFgとの会話があり、牧歌的雰囲気。この楽章は8分の3拍子。第3楽章Scherzo. Allegro - Trioは、ターン タ
ーン タタタと最初にsfがある。勿論4分の3拍子。第4楽章Allegro moltoは、タン タラタラタタのリズム。私の持つCDの解説では、第1楽章、第2楽章がソナタ形式。第3楽章は三部形式。第4楽章はソナタ形
式と書かれている。ここで、三部形式とソナタ形式の違いを調べると、三部形式 [A: 主要部分] + [B: 中間部] + [A: 主要部分の再現]。ソナタ形式 [A] + [B] + [Aの再現]とあり、第4楽章は第1主題が再現さ
れて確信的に終了。ベートーヴェンはモーツァルトと違うことを実感させ、しかもOEKの成長を如実に感じさせる演奏であった。
アンコールはレスピーギ:《リュートのための古風な舞曲とアリア》第3組曲第1曲「イタリアーナ」。愁い含んだ優美で、私の好きな弦楽のみの曲。16世紀イタリアの作曲者不詳の作品に基づいて書かれた曲だそ
うだ。イタリアーナはall' italiana、即ちイタリア風であろう。アンコールに相応しい曲で締め括った。さて、今回のコンサートはマエストロ広上による OEKファンへの極上のプレゼントであった。しかし、OEKの初代音楽監督故岩城
宏之マエストロは初演魔であった。この伝統を活かしたプログラム(2023-2024定期公演プログラムにはある)にも期待したい。
Last updated on Mar. 21, 2023.