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「アンサンブルの匠が紡ぐモーツァルトの名曲」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期公演。ヤナーチェク:《弦楽のための組曲》にも期待して石川県立
音楽堂へ出掛けた。
ロビー・コンサートは未だ収束に到っていないコロナ禍の為であろう無し。
コンサート1曲目はモーツァルト:ピアノ協奏曲第27番。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対向配置。但し、Cbは舞台向かって左。Vcにはカンタさんが客演。ソリスト市野あゆみさんは黒のドレスで登場。第1楽章Allegroは多少不安げな清楚な主題で開始される。私の持っているCDでは第25
番とカップリングされているが、第25番の第1楽章はAllegro maestoso。mestosoは伊語で「威厳に満ちた」の意。従って、第27番にmaestosoが記入されていないのは、威厳とは無関係。プログラムにある「軟らかく落ち着いた」主題である。少々長目のイントロの後、市野さんのPfが開始。き
っちり楽譜を確認しての丁寧な演奏。カデンツァは誰の曲かは不明だが、力感溢れる演奏。第2楽章Larghettoはタンタタタタと聞き慣れた、しかも寂寥感漂う主題で開始。PfとFlのDuoもあり、主題に戻り終了。第3楽章Allegroの冒頭は《春へのあこがれ》。CDの解説では、「アインシュ
タインがこの歌について、『これが最後の春だということを自覚した、諦念明晰さである』と記した」とあり、心が浮き立つような旋律にも死への諦念が隠されていようだ。中間部でObソロが綺麗。春の憧れ変奏曲であるカデンツアも悟りきった末の晴朗感が表現され、堂々と終了。アンコー
ルは、ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番第2楽章Andante。サラバンド風の抒情的な楽章で、ショスタコーヴィチらしくない(実は第3楽章では木琴を含み、ショスタコーヴィチらしさが戻るのだが)弦楽器と市野さんのPfのみの楽章。モーツァルトとは違った現代的協奏曲であった。
休憩を挟んで、2曲目はヤナーチェク:《弦楽のための組曲》。ヤナーチェクは首都ブルノを擁するモラヴィア(現チェコ)の作曲家。《シンフォニエッタ》が有名。ブルノは、私はウィーンから列車で訪れたことがある金沢市より少し小さめな綺麗な町である。第1曲はModerato。
イントロの後Cbのピッチカートが印象的。第2曲Adagioは安永リーダーのVnが歌う。第3曲Andante con motoは舞曲。私はブルノでは聞いてないのだが、モラヴィアの舞曲を連想。第4曲は力強いPresto。第5曲のAdagioは凄かった。カンタさんのVcソロ。カンタさんが客演した理由が分かった。第6
曲はAndante。モラヴィア風(だろう)に高揚して終了。これもモーツァルトとはひと味違った弦楽曲であった。
3曲目は、モーツァルト交響曲第40番。第1楽章Molto allegroは、流れるようなスピード感溢れるタララタララで開始。OEKはモーツァルトには自信を持っているようだ。第2楽章はAndante。プログラムにある「のびやかで静澄な緩徐楽章」。同じ音が連続する同音反復は「不穏な気配」を漂わ
せる。第3楽章Menuetto. Allegrettoはテンポの早いメヌエット。スケルツォと言っても良いくらい。Fl、Hrが華を添え、快速裡に終了。第4楽章はAllegro assai。尚、AllegroとAllegrettoの違いは、アレグロはプレストとアレグレットの中間速度であり、アレグレットはアレグロとアンダテの中
間速度を表す。即ち、早い順にプレストーアレグローアレグレットーアンダンテとなる。従って、第3楽章より第4楽章は早いテンポで演奏しなければ成らない。駆け上がるかの如きイントロ。中間部ではOb、Flソロがあり、少々早過ぎるきらいもあったOEKの演奏。高揚し、熱狂的に終了した。
アンコールは、知らない作曲家レーヨー:《抒情的アンダンテ》。安永りーダーは綺麗な曲を紹介してくれる。舞曲風でもあり、再びカンタさんのVcソロあり、正に抒情的な一曲であった。さて、前述の如くOEKはモーツァルトには自信があるようだ。それでは、OEKはモーツァルトを卒業した
のだろうか?個人的にはモーツァルトもマーラーも演奏できるオー ケストラに成って欲しいものである。
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