マエストロ田中祐子が「ニューヨークの印象、パリの風景、海のメロディー」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢
の定期公演を指揮する。イベール、ミヨーと聞いたことのない作曲家の曲が並ぶ。興味津々として石川県立音楽堂へ出掛けた。
ロビー・コンサートは行われなかったようだ。
コンサート1曲目はミヨー:バレー音楽《世界の創造》。OEKは舞台向かって左にPf、右にTimp。中央左にヤングさんの第1Vn・第2Vn・Vc・Cb。右に木管・金管が並ぶ変則配置。序曲ではPf伴奏に合わせて上野耕平さんのSax(アルトSaxサックスかどうかは
不明)が寂寞(じゃくまく)と導入。第1場「天地創造の前の混沌」ではCb・Tb・Clのフーガ。ジャズっぽい。第2場「動植物の創造」は再びSaxが芽生えを演奏。第3場は「男女の誕生」。プログラムによれば「2つのヴァイオリンが陽気なダンスを踊る」とあるのだが、
Vn二人の熱演は木・金管楽器にかき消され、聞こえない。第4場「欲望」で高揚し、第5場「春あるいは和らぎ」でアダムとイブの世界が築かれ、静かに終了。この曲は、バレエ音楽でストラビンスキーの《春の祭典》の如く、バレエを思い浮かべないと理解できそうもない。
2曲目はVaが加わり、イベール:アルト・サクソフォンと管弦楽のための室内小協奏曲。第1楽章Allegro con motoは、金管によるけたたましい開始。Saxが主題を提示、賑やかに終了。第2楽章Larghetto−animato molto(非常に活気をつけて)は、急の後の緩であり、
Saxによるメランコリックな主題。後半は急に戻り、Saxのカデンツアが華麗。曲は無窮動風に代わる。マエストロ田中は飛び上がっての指揮で熱演。曲は慌ただしく終了。
休憩を挟んで、3曲目は藤倉大:《Umi(海)》。ドビュッシー:《La Mer(海)》はうねる波だが、藤倉大の《海》はさざ波。弦のトレモロがさざ波を表現。中間部ではTbが効果的で、Xyl(シロフォン)かVib(ビブラホン)かは分からなかったが、これも華を添える。
Obソロもあり、Tpのffで終了。La Merではない、Umiであった。
4曲目はイベール:交響組曲《パリ》。ジャック・イベールーウィキペディアによると、交響組曲《パリ》は
1931年の作とのこと。第1曲は「地下鉄」。曲想は蒸気機関車風である。私がパリでモンマルトルに出掛けたのは2006年、勿論地下鉄は電車であった。つまり、1931年パリのMetroは蒸気機関車だったのかもしれない。第2曲は「郊外」。Pf奏者が3台のOrgを使い分けて郊
外の風景を描写。第3曲「パリのイスラム寺院」ではObソロがイスラム寺院を綺麗に表現。第4曲は「ブローニュの森のレストラン」。ヤングさんのソロあり、VcとのDuoもあり、華やかな雰囲気。第5曲は「定期船イル・ド・フランス号」。”Ile-de-France” は、「パ
リを首都とする州名」で正にパリ号。汽笛はTb。船旅が始まる。第6曲「祭りの行列」は、Tp、Tbによる行進曲。後半は正にジャズ。お祭り騒ぎで華やかに終了。1931年代のパリであった。
アンコールはイベール:交響組曲《パリ》第4曲「ブローニュの森のレストラン」。私はブローニュの森へは行けなかったのだが、十分その雰囲気が感じられるイベールの《パリ》である。さて9月からはマエストロ広上淳一がアーティスティック・リーダー。今後OEKの定
期公演では、芸術監督ともいえるマエストロ広上による斬新なプログラムに期待したい。
Last updated on Apr. 22, 2022.