マエストロ・川瀬賢太郎オ−ケストラ・アンサンブル金沢2度目の指揮である、「モーツァルトへのオマージュ」と題するコンサート。酒井健治さんの世界
初演曲「ジュピターへの幻影」にも期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。
マスクを忘れてコンビニへ買いに行ったので分からないのだが、ロビー・コンサートは行われなかった様だ。
コンサート1曲目は酒井健治:《Jupiter Hallucination(ジュピターの幻影)》。種々の打楽器が並び、OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対向配置。イントロは雅楽のような出だし。中間部にモーツァルトの交響曲第41番にあるお馴染みのドレフ
ァミが挿入される。第40番もチラリと現出。打楽器音を効果的に用いた曲想のため、打楽器奏者は大忙し。Drms、Vib、Xyl、更に細長い風船のような楽器(ハーモニックパイプと言うそうだ)を振り回して風を切る音をも演奏。故マエストロ
岩城へのオマージュ、Hommage(仏)である。マエストロ・川瀬賢太郎は起立の姿勢のままでの指揮。従って、横への動きは少なく、オーケストラをがんがん鳴らすのでは無く、抑制を弁えたアクセントの効いた指揮。2度目のOEK指揮で、OEK
に慣れてきたようだ。Codaで再びドレファミの後、静かに終了。ジュピターの幻影は聞けた、又モーツァルトへのオマージュも分かった。しかし、哲学的意図(作曲家自身の主題の提示)がぼやけてしまったのが残念。但し、現代曲としては
これも趣向なのかもしれない。
Hrが4人となった2曲目はチャイコフスキー:組曲第4番《モーツァルティアーナ》。第1曲Gigue: Allegroは舞曲で、華麗。プログラムによるとバッハーモーツァルトーチャイコフスキーと続くオマージュの流れとのことだが、私にはチャイ
コフスキーのモーツァルト賛歌に聞こえた。第2曲Menuet: Moderatoは綺麗なメヌエット。高揚の後pに落として終了。第3曲はPreghiera: Andante non tanto。Preghiera(伊)は祈りであり、Hrによるイントロの後、モーツァルトの《アヴェ
・ヴェルム・コルプス》が流れる。第4曲Tema con variazioni: Allegro giustoは変奏を伴った主題。プログラムではグルック《メッカの巡礼》による10の変奏曲とある。グルックは歌劇《オルフェオとエウリディーチェ》第2場《精霊の
踊り》で有名なのだが、チャイコフスキーは敢えて《メッカの巡礼》を選んだようだ。第8変奏から第9変奏では、コンマス:ヤングさんのVnソロ。これが秀逸。高揚の後Clソロ、第1主題が戻り、シンバルと共に終了。マエストロ・川瀬賢太郎
指揮OEKによる圧巻の《モーツァルティアーナ》であった。
3曲目はHrを2人に戻した、サン=サーンス:交響曲イ長調。交響曲第3番《オルガン付き》ではない。第1番でもなく、《イ長調》。サン=サーンス15歳の作品らしい。第1楽章Poco Adagio-Allegro vivaceはVc、Cbの低音で開始。続いて
ドレファミが挿入される。サン=サーンスはフランスのベートーヴェンと言われるそうで、曲想はモーツァルトへのオマージュを含むがベートーヴェン的。Drmsの一打で終了。第2楽章はAndantino。プログラムによる「安らかな主題で開始さ
れる緩徐楽章」。中間部のHrのユニゾンが綺麗。第3楽章Scherzo vivaceは、Flソロがスケルツォを演出。Obソロも綺麗。第4楽章Finale : Allegro molto-Prestoは、モーツァルトの交響曲第40番が埋め込まれ、フィナーレに相応しい曲想。
サン=サーンスはモーツァルトとベートーヴェンへのオマージュを懐き作曲を重ね、交響曲第3番《オルガン付き》に至った訳だ。一旦停止後熱狂的に終了した。
終了は3時半を回ったためかアンコールは無し。さて2回目のマエストロ・川瀬賢太郎、前回の《新世界室内楽版》の不評を乗り越え、今回は渾身のOEK指揮を披瀝した。モーツァルトを主題としない「モーツァルトへのオマージュ」と解説
するが、立派なモーツァルト賛歌であった。 マエストロ・川瀬賢太郎の今後に期待したい。
Last updated on Feb. 27, 2021.