ベートーヴェン生誕250年の本年、コロナ禍の奏者も聴衆もソーシャルディスタンスでの定期公演再開。マエストロ三ツ橋敬子が贈る、「ベートーヴェンとモーツァルト」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢のコンサート。北村朋幹さんのピアノにも期待
して石川県立音楽堂へ出掛けた。
ロビー・コンサートは3密を避ける為であろう無し。
コンサート1曲目はベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》。OEKの全奏者はソーシャルディスタンスの為奏者間隔を開けて配置され、弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。第1楽章Allegroは、Timp
の一打に続いて東京音楽コンクール第一位北村朋幹さんのPfが開始。彼の演奏は丁寧で、しかも流麗である。Tuttiになるとオーケストラの音はソーシャルディスタンスの為通常よりも広がった感じ。但し、
この違和感はすぐに解消された。中間部でのHr、Vaと綺麗なユニゾンが効果的。モーツァルトのさらりとした曲想に対してベートーヴェンの熟考した作風が感じられる。この楽
章にはカデンツアは置かれないとの事なのだが、終楽章近くでカデンツアらしきPfソロも挿入され、堂々と長い楽章を終了。第2楽章はAdagio un poco mosso - attacca:。綺麗な夢見心地の短いAdagio。
Pfの高音域での演奏が凜として聴衆に訴えかけ、Attaccaで第3楽章に続く。第3楽章Rondo. Allegroは、Tpも加わりdynamique。フィナーレはプログラムにもあるとおり、「ティンパニーを
伴いながらピアノがいったん静まったのち、急速に集結部へと駆け抜ける」。正にモーツァルトには無いベートーヴェンの真髄。怒濤の協奏曲は終了した。アンコールは武満徹:《雨の樹 素描Uーオリ
ビエ・メシアンの追憶にー》。私はドビュッシーの曲かとも思ったが、素晴らしい武満作品。北村朋幹さんの名演でもあった。
休憩無しで、コンサート2曲目はモーツァルト:交響曲第39番。第1楽章Adagio - Allegroは、Timpを伴うファンファーレで開始。奏者ソーシャルディスタンスの所為か一箇所違和感。但し、その後すぐ
持ち直す。高々とモーツァルト的華麗さでFinale。第2楽章Andante con motoは、変ホ長調ミ(♭)ファソラ(♭)ファミ(♭)の綺麗な旋律。OEK綺麗さの再開である。第3楽章Menuetto. Allegrettoは、
スケルツォではなく、正真正銘のメヌエット。マエストロ三ツ橋敬子は大きく円を描き、しかもpをしっかりと強調するアクセントを効かせた指揮を披露。中間部のCl(Obは使われていないらしい)ソロが
綺麗。第4楽章Finale. Allegroは、プログラムにある「はしゃぎまわる」曲想。Finaleはあっさりと終了。比較的地味で愛称の無い交響曲第39番。愛称のある交響曲を選ばなかったマエストロには敬意を
表したい。できれば今後私の持つCDにも無い交響曲第37番を聞きたいものである。
アンコールは無し。さてTwitterでも書いたのだが定期公演再開を聞いて、オーケストラ奏者のソーシャルディスタンスは必要かとの疑問を感じ
た。音楽は他者の音を聞きながら演奏するもの。これが聞こえないようでは問題だ。オーケストラ奏者のソーシャルディスタンスは程程に願いたい。又、ゲネプロ時とコンサート当日の奏者配置を換えない
で欲しい。変える場合は、再度リハーサルを実施すべきである。
Last updated on Sep. 18, 2020.