オ−ケストラ・アンサンブル金沢の2020ニューイヤーコンサート。OEKプリンシパル・ゲストコンダクターであるマエストロ・ユベール・スダーン再登
場に期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。
ロビー・コンサートはロッシーニ:弦楽のためのソナタ第3番。西金沢駅13:22発金沢駅行きに乗ったが、音楽堂に着いたときは終わっていた。残念。
コンサート1曲目はモーツァルト:歌劇《ドン・ジョバンニ》序曲。OEK弦楽5部はVaとVcが入れ替わった8-6-4-4-2の通常配置。Timpは舞台向かって左。ドン・ジョヴァンニはスペイン語ではdonjuan(ドン・ファン)。歌劇《
ドン・ジョバンニ》はオペラ・ブッファに分類されることも多いオペラであり、最後にドン・ジョヴァンニが地獄に落ちるなど悲劇性のあるストーリー。これを暗示するかのごとき速いテンポの序曲。マエストロ・ユベール・ス
ダーンは指揮台に上らず丁寧な指揮。2曲目でソプラノ・森麻季さん登場の歌劇《ドン・ジョバンニ》より〈むごい女よ!言わないで、私の愛しい人よ〉。森さんは深緑のドレスで登場。中昼間部ではコロラトゥーラを発揮。tr(ト
リル)が綺麗である。3曲目はモーツァルト:《アイネ・クライネ・ナハトムジーク(小さな夜の音楽)》第1楽章。モーツァルトはOEKの得意曲。さらりとやってのける。次に第2楽章、第3楽章と続けるかと思いきや、4曲目は、
ヴィヴァルディ:《四季》より〈冬〉第2楽章。ここで、我がOEKコンマス・アビゲイル・ヤングさん登場。VcとCbのピッチカートに合わせて気持ちの良い演奏。ヤングさんはこの程度では無い。休憩後圧巻の演奏の序奏であった。
5曲目は、ヘンデル:歌劇《アタランタ》より〈いとしの森よ〉。いかにもヘンデルらしい曲想。森麻季さん再登場。OEKは弦楽のみ。第6曲目はヘンデル:歌劇《セルセ》より序曲、Gigue(ジーグ)。ジーグはバロック時代の舞
曲。フーガにて静かに進行。続いてヘンデル:歌劇《セルセ》より〈なつかしい木陰よ(Ombra mai fu、オンブラ・マイ・フ)〉。森麻季さん赤い花模様のドレスにお色直しで再々登場。切々と歌唱する森麻季さんの本領が発揮。
8曲目は、森麻季さんを休ませるためのプログラムなのだろう。モーツァルト:《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》第2楽章が挿入。9曲目は、森麻季さんによるヘンデル:歌劇《リナルド》より〈涙の流れるままに〉。彼女はプ
ログラムにあるSarabande(サラバンド)の反復リズムを熱唱。豪華なニューイヤーコンサートを飾った。尚、サラバンドは
ウィキペディアによれば、「3拍子による荘重な舞曲である。アルマンド、クーラント、ジーグと共にバロック音楽の組曲を構成する」とのこと。ギター曲である映画《禁じられた遊び》主題曲〈愛のロマンス〉にも中間部に
Tempo de Sarabandeが組み込まれている。
休憩後は華やかなオッフェンバック(ロザンタール編曲):バレー音楽《Gaite Parisienne、パリの喜び》より。OEKにはTp3人、Tb3人、Tub1人が加わる。尚、gaiteはgaieteに同じで快活、陽気。parisienneはパリの、
Parisienneはパリ人とのことで、プログラムのGaite ParisienneはGaite parisienneの意。さて、曲は序曲(Overture)より始まる。ここでは、カン・カンが暗示される。第2曲ポルカ(Polka)、第6曲アレグロ(Allegro)、第8曲ワルツ
(Valse)、第23曲舟歌(Barcarolle)、第22曲ヴィーヴォ(カン・カン)【Vivo(Can Can)】。Vivoはイタリア語で生き生きした、活発なの意、Cancanはフランス語でカンカン舞踏の意。お馴染みのカンカンだが、ロザンタール編曲
版はあっさり終了。11曲はモンティ:《チャールダーシュ》。ハンガリーのジプシー音楽や民謡を基にした曲では、サラサーテの《チゴイネルワイゼン》が有名だが、この曲は、チャールダーシュ舞曲形式(前半がゆっくりとした
テンポのラッサン(Lento)、後半がテンポの速いフリスカ(Vivace)で書かれている。つまり、モンティはチャールダーシュ舞曲形式の曲として作曲した訳だ。この曲のソリストはヤングさん。最初Vaのような音がして誰が弾いているのか探すと、
ヤングさんであった。VnでVaのような音が出せるのだ。Lentoでの始まりは哀愁的だったが、突然Vivaceに変わる。ここからがヤングさんの本領発揮。圧巻の演奏で終了後一斉のブラボーが沸き起こった。続いて、J. シュトラウス2世による、
《田園のポルカ》、ポルカ《雷鳴と電光》、ワルツ《美しく青きドナウ》。《美しく青きドナウ》のイントロではマエストロ・スダーンより新年の挨拶があり、華やかなニューイヤーコンサートを締めくくった。
アンコールはヨハン・シュトラウス1世:≪ラデツキー行進曲≫。昨年読んだ山之内克子『物語オーストリアの歴史ー中欧「いにしえの大国」の千年』では、「マントヴァを陥落させてロンバルディアをほぼ制覇し、一時はオーストリア
軍を窮地に陥れたサルデーニャ軍は、1848年6月、三個師団を率いて現地入りしたラデツキー将軍によって完膚なきまでに撃破された。ちなみに、ヨハン・シュトラウス1世による≪ラデツキー行進曲≫は、ハプスブルグ家支配に対する
北イタリアの武装蜂起をわずか5日の内にひねり潰したという、このときの将軍の武勇を讃えて作曲されたものである」とのこと。即ち、ラデツキーは勇猛な将軍の名に由来する。日本の聴衆である我々もラデツキー将軍を拍手で讃え、
コンサートは終了した。帰りに恒例の金沢市弥生(有)茶菓工房たろう製「どら焼き」を頂いた。ごちそう様でした。
Last updated on Jan. 11, 2020.