バッハ・コレギウム・ジャパン音楽監督マエストロ・鈴木雅明がオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を指
揮する「日本が誇る世界のマサアキ・スズキ!」と題するコンサート。プログラムは、OEK本来の室内楽的プログラム。初心に帰る気持ちで、石川県立音楽堂へ出掛けた。
ロビー・コンサートは、ソンジュン・キムさんのVcとダニエリス・ルビナスさんのCbとのDuo。ラモー:≪タンバリン≫、ベンダ:チェロとコントラバスのため
のソナタ、コレルリ:サラバンド、ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲より第3楽章アレグロ。二人の綺麗なDuoであった。尚、12月4日石川
県立音楽堂交流ホールで二人による「OEKおしゃべりクラシック」が開催される。ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲全曲が演奏されるようだ。
これも楽しみだ。
さて、コンサート1曲目は、クラウス:≪教会のためのシンフォニア≫。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。但し、VcとCoは舞台向かって左。Hrは4人。Tb3
人が加わる。第1楽章Andante maestosoはマエストロ・鈴木雅明の力強い指揮で開始。序奏に次いですぐFuga。ffとpとのアクセントが効果的で一旦停止。Attacca
ぎみに第2楽章Allegro maestoso。短い第2楽章だが、高らかに歌いあげてFinale。
2曲目は、モーツァルト:交響曲第40番。OEKはHr二人となり、Tbは退席。第1楽章Molto allegroはスピード感ある第1主題で開始。一転して第2主題は穏やか。
第2楽章AndanteはOEKが室内オーケストラだと納得させる演奏。正に清澄。第3楽章Menuetto. Allegrettoは、マエストロ・鈴木雅明が少々頑張り過ぎと思われる
スピード感。尚、後のベートーヴェンはScherzoを用いたが、"Scherzo"はイタリア語で「冗談」の意。今回のMenuettoはこれに近いか
もしれない。中間部ではHrのユニゾンが綺麗。Attaccaで第4楽章Allegro assai。奔走で開始。Obソロあり、転調を効果的に用い第1主題に戻り、高揚の裡にFinale。
室内楽に戻ったOEKであった。
休憩を挟んで、3曲目はメンデルスゾーン:≪キリスト≫。メンデルスゾーンはオラトリオ≪エリヤ≫を書くが、その後の作で完成に至らず第1部と第2部が≪キリスト≫
として出版されたとのこと。合唱はドイツからのRIAS室内合唱団。RIASはRadio in the American Sector(米軍占領地区放送局)のAcronym(頭文字)である。さて、第1部
≪キリストの誕生≫は、ソプラノ:リディア・トイシャーさんによるレチタティーヴォ。澄んだ宗教曲に相応しい歌唱で開始。続いてテノール:櫻田亮さん、RIAS室
内合唱団ソリストによるバリトン、およびバスとの三重唱。更に、合唱とコラールが続く。合唱は小人数だがボリューム満点。尚、コラールでは、"Wie schon leuchtet
der Morgenstern(なんと美しく輝く暁の星)!が印象的。ベツレヘムに生まれたイエスを東方の三賢者が訪れたことを歌う。第2部≪キリストの受難≫では櫻田亮さん
のレチタティーヴォで受難を物語る。続いて"Dies Irae(怒りの日)"が合唱で歌われ、Finaleはバッハ風コラール。"Wo bist du, Sonne, blieben(太陽はどこにいった)?"。
しかし、「太陽がなくともイエスが今なお心に明るく輝く」とのキリスト讃歌でFinale。
4曲目は、メンデルスゾーン:詩編42番≪鹿が谷の水を慕いあえぐように≫。原題は、"Wie der Hirsch schreit"。直訳すると≪鹿が泣くように≫であり、第1曲
合唱では、" Wie der Hirsch schreit nach frischen Wasser"と歌う。"frischen Wasser"は「清水」なので、「鹿が清水を求めて泣くように」が原題に近いか。続いて
「わが魂は神を求めり」とあり、「鹿が泣くように神を求めよ」との託宣であった。その後、リディア・トイシャーさんによるアリアとレチタティーヴォが清澄に歌われる。
第6曲には五重唱があり、最終楽章は、"Preis sei dem Herrn, dem Gott Israels, von nun an bis in Ewigkeit(主よ、イスラエルの神を讃えよ。今から永遠に)"で
Finaleとなる。この部分の合唱は素晴らしく、コンサート・フィナーレを飾るに相応しい出来栄えとなった。
アンコールは、バッハ:モテット≪来たれ、イエスよ、来たれ≫よりアリア。バッハらしくないバッハで、これも一興であった。さて、36名のRIAS室内合唱団。
合唱団席からソリストが前に出て歌う、西洋では当たり前の合唱団。日本でもこのような合唱団が現われることを期待したい。
Last updated on Nov. 01, 2018.