N響の金沢公演。ドヴォルザークの交響曲第8番がうれしい。児玉桃さんのグリーク:ピア
ノ協奏曲にも期待して、本多の森ホール(旧石川厚生年金会館)へ出掛けた。
さて、コンサート1曲目は、スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲。急テンポで始まる曲。N響弦楽5部は16-14-12-10-7の通常配置らしい。但し、チェロとヴィ
オラの位置が入れ替わっていた様だ。その所為か、ヴィオラの音が良く聞こえた。コンサート・マスターは篠崎史紀さん。手抜きでは無い。急テンポで始まる曲
だが、出だしは少々大人しかった。しかし、中間部はさすがN響と思わせる演奏。マエストロ・高関健の指揮も的確で、序曲を聞いただけで、N響も世界のオー
ケストラへの仲間入りを果たしたと実感させる演奏。ホルン・ソロも中々のもので、安心感がある。次曲への勧誘を込めて終了。
コンサート2曲目は、児玉桃さん登場のグリーク:ピア協奏曲。第1楽章はAllegro molto moderato-Cadenzo-Tempo 1。児玉桃さんは朱のドレスで登場。出だしは堂々としか
も丁寧。金管楽器、主にトロンボーンとの競演あり、フィナーレ近くのカデンツァも飽きさせることが無い周到な変奏。フィナーレはうっかり拍手をしたくなる程の堂々たる終結。
第2楽章Adagioはヴィオラが良く聞こえ、N響の弦の綺麗さが光る。N響の伝統だ。ホルンとパイノの競演ももあり多彩に終了。第3楽章Allegro moderato molto e marcato-
Andante maestosoはUp Tempo。怯むことなく児玉桃さんのピアノも冴える。フルート・ソロも綺麗、中間部ではN響の奥行、厚みを感じる。Codaでは金管楽器の咆哮にピアノが
アクセントを加え、ブラームスの緊張からの解放感に似たグリークの曲想を華麗に演奏。壮大なフィナーレとなった。アンコールはショパン:マズルカ第14番(OP.24-1)。
付点のリズムが心地よいショパンであった。
休憩を挟んで3曲目は、ドヴォルザーク:交響曲第8番。第1楽章Allegro con brioは、やや金管楽器に押され気味。従って、弦楽が良く聞こえない箇所もあったが、
オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を聞きなれた耳には圧倒的な重量感を感じる。第2楽章
Adagioは、フルート・ソロ、クラリネット・ソロ、オーボエ・ソロと多彩。コントラバスのピチカートも綺麗。第3楽章はAllegretto grazioso - Molto vivace。綺麗なワル
ツである。コン・マス篠崎史紀さん率いる弦楽部門の面目躍如。尚、Allegrettoは珍しいが、「Allegroよりややおそい」意。第4楽章Allegro ma non troppoは
トランペットで開始。金管部門が輝かしい演奏を披瀝。Coda前の「タメ」を経て堂々と終了。尚、日本のオーケストラはこの「タメ」では極端にppに落とさない傾向が
あるようだ。聞こえなくなるのも問題だが、ppとffの対比を鮮烈にと願うのは私だけであろうか。今後の課題なのかもしれない。
アンコールはグリンカ:「ルスランとリュドミラ」序曲。N響の得意曲だけに、スピード感もあって流麗。マエストロ・高関健はコンサート1曲目をスメタナかグリンカか、迷った様だ。スメ
タナ「売られた花嫁」序曲は、導入部に難しい個所がある。再チャレンジして欲しいものである。さて、N響を聞くと、OEKにも一回りUpを願いたくなる。室内楽が聞けて、
しかもマーラーも聞ける、そんな欲張りなオーケストラを望むのは無理な話であろうか。最後に苦言を呈するのは、石川厚生年金会館から衣替えした本多の森ホール。このロビー
には喫茶コーナーが無い。自動販売機が無粋に羅列されている。クラシック・コンサートには、シャンパン、ワインが良く似合う。改善を願いたい。
Last updated on Aug. 27, 2016.