マエストロ・イェルク・ヴィトマンによる「現代ヨーロッパの潮流ー多才ヴィトマン」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演。イェルク・ヴィトマンのクラリネットによる「ウェ−バー:クラリネット小協奏曲」等
クラリネット曲が盛り沢山。これを楽しみに、石川県立音楽堂へ出掛けた。
ロビー・コンサートはOEKチェロ奏者大澤さん等によるメンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第1番第1楽章、第2楽章。Largoで始まる第1楽章。第1Vnの高音
が光る。第2楽章軽快に終始。最後まで聞きたくなる演奏。OEKの弦楽四重奏曲も素晴らしい。
さて、コンサート1曲目は、ウェーバー:クラリネット小協奏曲。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の通常配置。マエストロ・ヴィトマンはクラリネットを持っ
て吹き振り。第1楽章はAdagio ma non troppo。プログラム通りドラマティックなイントロ。その後、クラリネト・ソロが加わる。マエストロ・ヴィトマン
の準備運動的演奏。しかし、フィナーレ近くのクラリネットが主題を回想する部分では本領発揮。第2楽章Andanteは、マエストロ・ヴィトマンのテク
ニックの凄さが良く分かる。16部音符もなんのその。あっさり吹いてしまう。第3楽章Allegroは暗い序奏。しかし、中間部より快速。フィナーレは晴れやか
に終了。短いが「魔弾の射手」の雰囲気たっぷり。OEKの演奏も秀であった。
2曲目はマエストロ・ヴィトマンの作曲であろう、ヴィトマン:「セイレーンの島」。OEKは舞台上部パイプオルガン席に2人のヴァイオリン奏者を配置。
マエストロ・ヴィトマンは指揮を始めたが音は聞こえない。多分パイプオルガン席のヴァイオリン奏者がppで演奏したのだと思う。徐々に囁くような静かな
音楽が聞こえてくる。ウィキペディアによれば、セ
イレーンとは「(古希: Σειρ?ν, Seir?n)は、ギリシア神話に登場する海の怪物である。 複数形はセイレーネス(古希: Σειρ?νε?, Seir?nes)。
上半身が人間の女性で、下半身は鳥の姿とされるが後世には魚の姿をしているとされた。海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を
惑わし、遭難や難破に遭わせた」らしい。即ち、セイレーンの囁きがモチーフである。やがてヤングさんのヴァイオリンも加わり、セイレーンと対決。
フィナーレはppで終了。セイレーンに負けず、無事航海できたのであろう。武満徹的と言おうか、故マエストロ岩城浩之好みの現代曲。不思議な雰囲気だが、緻密
な作品と言えるのではないだろうか。
3曲目は、ロッシーニ:「クラリネットと管弦楽のための序奏、主題と変奏曲」。将にイタリア・オペラ。ロッシーニのオペラを高度なテクニックでソリスト・
ヴィトマンが演奏。ここで彼の凄さを再確認。将にクラリネットの申し子である。5つの変奏が続き、華麗にフィナーレ。圧巻のクラリネットであった。
休憩を挟んで4曲目は、同じくヴィトンマン「180ビーツ・パー・ミニット」。毎分180拍。即ち、毎秒3拍、早い、3連符の連続。弦楽六重奏なので指
揮者無し、ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ3の布陣。何処を弾いているのか分からなくなりそうな難しい曲。終了後マエストロ・ヴィトンマンが舞台に登場
し、奏者を労っていたのが印象的。そうだ、マエストロ・ヴィトマンも作曲を行っている。だが、日本人の指揮者が作曲を行ったという話は聞いたことが無い。
我等がマエストロ井上道義にも一度作曲をすることを薦めたい。
5曲目は、メンデルスゾーン:交響曲第1番。第1楽章Allegro di moltoのイントロが素晴らしかった。プログラムでいう「決然」の雰囲気ぴったり。マエスト
ロ・ヴィトマンは指揮者としても優秀だ。第2楽章Andanteは、コラール風でもある。中間部でのフルート・ソロが綺麗。第3楽章Menuetto & Trio: Allegro molto -
は一瞬舞曲的に聞こえるが、プログラムに言う舞曲風は薄く、堂々たる楽章。OEKの演奏も迫力あり。第4楽章Allegro con fuoco(伊:火花)のイントロは少し大人し
すぎる感じがしたが、すぐにクレッシェンド。中間部でヴァイオリンのピッチカートとクラリネットの重畳、綺麗である。フーガもある。Codaでは、トランペットが
終曲を告げ、圧巻のフィナーレとなった。
アンコールは無し。しかし、マエストロ・ヴィトンマンのクラリネト演奏、及び彼の指揮によりOEKを目覚めさせたメンデルスゾーンの交響曲
を聞けたのは僥倖であった。帰途金沢駅でポケモンGOを開くと、金沢駅周辺にはポケモンが沢山いることも確認し、混雑する金沢駅を後にした。来シーズンのOEK
の更なる進化に期待して。
Last updated on Jul. 23, 2016.