「ソルヴェイグの歌」で有名なエドヴァルド・グリーク:劇音楽『ペール・ギュント』。普通には組曲版の演奏になるのだが、今回はマエストロ・クリスチャン・ヤルヴィがオ−ケストラ・アンサンブル金沢を指揮して、全曲版を披露する。これは、聞き逃せない。日曜日の午後いそいそと石川県立音楽堂へ出
掛けた。
ロビー・コンサートはホルン四重奏による、メンデルスゾーン:「森にて」、ウエーバー:「狩人の合唱」、モーツァルト:「アベベルム・コルプス」、ターナー:ホルン四重奏曲第3楽章。難しい楽器で、綺
麗な四重奏。コンサートへの期待が高まる。
劇音楽『ペール・ギュント』第1幕1. 結婚式の宴の場(前奏曲)は、お馴染みの「朝の情景」、「ソルヴェイグの歌」を鏤めた序曲。OEKの弦楽5部は、8-6-4-4-3の通常配置。マエストロ・クリスチャン・ヤル
ヴィの指揮は快活、しかも優雅である。2. 北海沿岸のハリゲン諸島で、風季一成さんの語りが始まる。勿論、日本語での語りであり、分かり易い語り。
ペール・ギュントの乱行を描いた第2幕フィナーレでは、パイプ・オルガンも加わり、圧倒的。
休憩を挟んで第3幕12. オーゼの死(前奏曲)は、ペール・ギュントの母オーゼの死を悲しみの極地で描く。13. 朝の情景は、フルートによる綺麗な情景描写。続いて、ペール・ギュントの放浪譚。15. アラブ人
の踊り、16.アニトラの踊りと続く。アニトラの踊りでは、メゾ・ソプラノの相田麻純さんと合唱団の好演。19. ソルヴェイグの歌では、ペール・ギュントの帰りを待つソプラノ:立川清子さんによるソルヴェイ
グが切々と歌う。組曲版では、「ペールを信じて待ち続けたソルヴェイグの歌を聞きながら、ペールは心安らいで死んでいく」とあり、これでフィナーレ。所が、全曲版では、これからが面白いし、綺麗。即ち、
老いたペール・ギュントはソルヴェイグの歌を避け、森へ行く。24. 夜のシーンではテノール:高橋洋介さん演じるペール・ギュントは「死にたくない」と歌う。しかし、26. ソルヴェィグの子守唄では老いたペ
ール・ギュントに、ソルヴェイグは「眠れ("Schlaf")、我が愛しい坊や」と諭す。ドイツ語では"Schlafen"が眠るであるから、ノルウェー語も似ているのだろう。舞台裏手に回った合唱団のベルベット・ハーモニー
に送られ、ペール・ギュントは安らかな眠りにつく。乱行そして死という圧巻の劇音楽は終了した。やはり、組曲版より全曲版が面白い。尚、昨日のNHK「らららクラシック」では、プロコフィエフは「ロメオとジ
ュリエット」で、組曲版を先行させたとの話が紹介されていた。今回の劇音楽『ペール・ギュント』でも同様、組曲版が先行したのかもしれない。何れにしても、新しい発見であった。
劇音楽『ペール・ギュント』全曲版は、勿論金沢プレミエである。マエストロ・クリスチャン・ヤルヴィに敬意を表すると共に、OEKには金沢プレミエはいうに及ばず日本プレミエのプログラ
ム取り入れに期待したい。
Last updated on Feb. 15, 2015.