オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)は出演せず、マルク・ミンコフスキ・マエストロがレ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴル・グルノーブルを指揮し、シューベルトの「未完成」とモーツァルトのミサ曲を演奏する。レ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴル・グルノーブルとはどのようなオーケストラ
なのか、及びミサ曲におけるソプラノの綺麗なソロに期待して、
石川県立音楽堂へ出掛けた。
プレ・コンサートは無し。
コンサート1曲目は、プログラムに急遽追加されたグルック(ワーグナー編):「アウリスのイフィゲニア」序曲。オペラを暗示するかの如く奇怪な音を含み、それでいてその中身を早く知りたくさせる綺麗な序曲。
第2ヴァイオリン、ホルンに日本人Shiho Hiromi、Takenori Nemotoさんを含むレ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴル・グルノーブルの弦楽5部は10-9-8-6-4の対象配置で、指揮のマルク・ミンコフスキ・マエストロは強弱のア
クセントをしっかり決め、しかも「ため」もある的確な指揮。尚、A音のチューニング時、コン・マス及び第2ヴァイオリン主席がパート全員を回り、A音を確認をしていたのが印象的。
コンサート2曲目はシューベルトの交響曲第8番「未完成」。第1楽章Allegro moderatoは、イントロの低音によるppが絶妙。ボリューム感あるff部の後、あの「ドソ ドシドレ」が静かに、そして綺麗に流れる。ピリオド
楽器使用にしては流麗である。第2楽章はAndante con moto。クレッシェンドによる盛り上がりは、プログラムに記載の通り「天上の調べ」と化す。それに続く中間部pの部分、及びオーボエ・ソロが秀逸。そして、消え入るよ
うにfinished。実に上手い演奏である。アンコールはシューベルトの交響曲第3番第4楽章。細かい動きを正確に演奏。これも又秀。
休憩を挟んで、3曲目はモーツァルトのミサ曲ハ短調 K.427。レ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴル・グルノーブルは弦楽5部が舞台正面に配置され、木管・金管は両サイドに僅かな人員で配置。後方には椅子が10個。
ソロがそんなに沢山必要なのかなと思いきや、合唱団、ソリストを含め全員で10人。ソプラノ4、アルト1、コントラータ1、テノール2、バス2らしい。モンテヴェルディ:「聖母マリアの夕べの祈り」と同程度である。第
1曲「キリエ」が始まった。10人で全く違和感なし。ソプラノ・ソロが綺麗。第2曲「グローリア」は10人でボリューム感有る演奏。Laudamus teではモーツァルトの新妻コンスタンツェが歌ったのかと思わせる綺麗なソ
プラノ・ソロ。Gratias、Domine、Qui tollisと10人が立ち位置を替えながら熱演。何れも極上である。Quonian tu、Cum Sancto Spirituと続き、tuttiでドラマティックなアーメン。観客は感激して拍手もあった程であった。
第3曲「クレド」でもtuttiでボリューム感有る演奏。Et incarnatus estではソプラノ・ソロが綺麗で、しかもピリオド楽器であろうフルートとファゴットとの掛け合いも絶妙。第4曲「サンクトゥス」ではトロンボーンが加わ
り華やか。Hosanna in excelsisはボリューム感充分。第5曲「ベネデクトゥス」は四重唱で、フーガも立派。バスも存在感を示す。再び、Hosanna in excelsisで10人での、しかもボリューム感たっぷりのモーツァルトのミサ
曲は終了した。合唱団員が50人も並ぶ演奏に慣れていたのだが、金沢でも10人程度で演奏できるよう合唱団のレベルアップを目標とすべきであると痛感する演奏であった。
アンコールは、モーツァルトのミサ曲ハ短調 K.427第3曲「クレド」。圧倒的な「クレド」再現であった。OEKが出演しない公演をOEKの定期公演として数えていいのかという問題はさて置き、マルク・ミンコフスキ
監督レ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴル・グルノーブルの実力に堪能できた演奏会であった。尚、レ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴル・グルノーブルの団員はOEKの弦楽5部を各2人、トロンボーン3名およびオルガン1名を増
員した楽団員数である。OEKも室内オーケストラとしての地位を維持し、しかも交響曲をダイナミックに演奏できるこの規模に増員しては如何だろうか。期待したい。
Last updated on Feb. 26, 2013.