「東欧の響き-故郷の自然賛歌」と題したコンサート。ブルガリア国立放送響音楽監督を務めるエミール・タバコフ・マエストロ作曲によるコントラバス協奏曲とドヴォルザーク:交響曲第8番
が珍しい。その第3楽章がお馴染みである「ボヘミアのシューベルト」と呼ばれたドヴォルザーク:交響曲第8番の指揮とオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の演奏に期待して、石川県立音楽堂に出掛けた。
音楽堂に遅く着いたのでプレ・コンサートは有ったようだが、不明。
コンサート1曲目は、スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲。OEKの弦楽5部は10-8-6-6-3(らしい)通常配置。エミール・タバコフ・マエストロの指揮は歌劇の始まりに相応しく、スピード
感有り、本格的。OEKの演奏もこれに応え歯切れよく、交響楽団に匹敵する演奏。中間部の急-緩の部分は抒情的で、綺麗。続く急-緩で序曲は力強く終了した。プログラムに
ある通り、「歌劇の幕開けに相応しい爽快な序曲」であった。
2曲目は、タバコフ:コントラバス協奏曲。マルガリータ・カルチェヴァさんの登場である。第1楽章Allegroは、ブルガリア風なのか、ストラビンスキー風なのかは不明だが、律動的な現
代曲。第2楽章Lentoは、プログラムにある通りまさしく「沈痛」。中間部でカデンツァがあった。コントラバスのカデンツァは難しそうである。しかし、カルチェヴァさんは無難に演奏。第
3楽章Vivaceでは各楽器のソロが断片的に展開。高揚感の後、ピアノ、トロンボーン、コントラバスのTrioもあり、屹然と終了。珍しいコントラバス協奏曲であった。
休憩を挟んで、3曲目はドヴォルザーク:交響曲第8番。OEK弦楽5部はマルガリータ・カルチェヴァさんがコントラバスに加わり、10-8-6-6-4(らしい)。第1楽章Allegro con brioは、迫
力のイントロ。続くフルート・ソロも立派で、これを指揮するタバコフ・マエストロはメリハリを利かせ、プログラムにある「自然賛歌」を指揮。第2楽章Adagioは、小鳥のさえずりらしい
フルート・ソロが綺麗なパストゥラル。ホルンのファンファーレの後トランペット・ソロは立派。綺麗なフィナーレであった。第3楽章Allegretto grazioso - Molto vivaceのイントロは、聞
いたことがあるドヴォルザークによる綺麗なワルツで始まる。中間部で2拍子に移行後フルート・ソロがやはり綺麗。フィナーレはチューバを含む金管が咆哮し、迫力満点で終了。第4楽章
Allegro ma non troppoは、トランペットによるイントロが立派。舞曲に展開後、中間部はpで演奏。タバコフ・マエストロのメリハリの利かせ処。ためを作って劇的なコーダに突入。OEKは何
時の間に交響楽団に移行したかと思わせる堂々たる演奏であった。
アンコールは、てっきりドヴォルザーク:スラブ・ダンスと思いきや、タバコフ:ブルガリアン・ダンス。スピード感有る劇的舞曲で、指揮と演奏が一体となった秀曲であった。さて、
「東欧の響き-故郷の自然賛歌」と題するコンサートを聞いた訳だが、OEKの今後の有り方を提示した画期的演奏会といえる。即ち、弦楽部門2人ずつ、トロンボーン、チューバを増員すれば、室内
管弦楽団より、交響楽団へ容易に移行できることが判明した。ハイドン、モーツァルトの時は原点である室内管弦楽団に戻ればよい。勿論、このように感じさせたのは、エミール・タバコフ・マ
エストロによるスピード感ある指揮の所為でもあろう。OEKの今後に期待したい。
Last updated on Nov. 01, 2012.