イワキ・メモリアルコンサートと題したオ−ケストラ・アンサンブル金
沢(OEK)2010-2011シーズン定期公演フィルハーモニーシリーズの第1回。井上道義マエストロが指揮し、ソリスト
には我等がOEKのルドヴィート・カンタさんと加古隆さんを迎える。まだまだ残暑の厳しい本年だが、2ヶ月振りのOEKに期待して、石川県立音楽堂に出掛けた。
プレ・コンサートはジャン=マリー・ルクレールによる2台のヴァイオリンのためのソナタ第3番。
ウィキペディアによれば「ジャン=マリー・ルクレール(Jean-Marie Leclair, 1697年5月10日 リヨン - 1764年10月22日 パリ)は、バロック
音楽の作曲家で、18世紀フランスにおけるヴァイオリン演奏の巨匠である。フランス=ベルギー・ヴァイオリン楽派の創始者と見做されている」
とのこと。コンサートマスターのサイモン・ブレンディスさんとトロイ・グーギンスさんは急-緩-急の3楽章を優雅に演奏した。
コンサートの前にルドヴィート・カンタさんへの岩城賞授与式があった。さて、コンサート1曲目は、ハイドン:交響曲第103番「太鼓連打(Drum Roll)」。
OEKは8-6-4-4-2の対象配置。第1楽章Adagio-Allegro con spirito-Adagioのイントロは太鼓連打。但し、これは少々遠慮気味。その後チェロ、コン
トラバスによるユニゾン。これは重量感たっぷりで、しかも井上道義マエストロの踊りも健在であった。第1楽章フィナーレ近くのDrum Rollは元気も出てきたようで、迫力あり。
第2楽章Andante piu tosto allegrettoでは、サイモン・ブレンディスさんのソロが綺麗。第3楽章Menuet-Trio-Menuetは、イントロの後ホルンのユニ
ゾンがあるが、少々温和しい。しかし、これもフィナーレ近くの2度目には解消されていた。第4楽章Finale:allegro con spiritoは、フィナーレ
らしく軽快で、颯爽と終了した。
2曲目は、我等がOEKのカンタさんをソリストに迎えてのサン=サーンス:チェロ協奏曲第1番。第1部はAllegro non troppo-Animato-Allegro molto-
TempoTは、馥郁としたカンタさんのソロ。テンポの速い箇所のテクニックは充分。遅い、聞かせる箇所も心に沁みる熱演。Attaccaで繋がる第2部
Allegretto con motoへの移行は、スムーズ。カンタさんのテクニックも冴え渡る。やはりAttaccaで続く第3部TempoT-Un peu moins vite-Piu
allegro comme le premier mouvement-molto allegroは、イントロのクラリネット・ソロが印象的。カンタさんによるソロも怒涛の演奏。途中、オーケ
ストラの音にかき消される箇所もあった。しかし、コーダのソロを華麗に演奏し、OEK首席奏者をソリストに迎えた協奏曲は立派に終了した。カンタさん
には首席奏者の肩書きに「ソリスト」を加えなければならない。
休憩を挟んで、加古隆シリーズの最初の曲は加古隆さんのピアノとサイモン・ブレンディスさんのヴァイオリンによるDuoで始まる「黄昏のワルツ」。
Duoの後OEKの演奏も加わり、しかもパイプオルガンに照明も入り、幻想的。続いて「ポエジー 〜グリーンスリーヴス」は加古隆さんとOEKによるピアノ
協奏曲。中間の変奏の部分では、現代的リズムによる加古節が披露され、印象的。「フェニックス」はダイナミックな加古節。次は、OEKの演奏による加古
隆さん作曲の「ヴァーミリオン・スケープ 〜朱の風景」、World Premiereである。T 暁光のイントロは珍しいコントラバスのユニゾン。U リトミコ
(Ritomico)は、イタリア語Ritmico(律動の)の誤りか。フルート・ソロは綺麗。V ヴァーミリオン・スケープ(Vermilion Scape)は、将に打楽器の競演。
故岩城宏之マエストロ好みの曲である。W オスティナート(Ostinato)は、チェロとコントラバスによるffのオスティナート。オスティナートは何もpと
決まって居る訳ではないが、Ritmicoなオスティナートである。X 瑞雲は雰囲気がぴったりで、ppで終了した。ppで始まる曲はppで終わるのだが、fで始
まって、ppで終わる。将に加古隆さんの現代曲である。
アンコールは、時間の関係か無し。岩城賞授与式などやらずにカンタさんによるアンコールの方が良かったと思った次第。時間配分には充分気を
付けて欲しいものである。
Last updated on Sep. 04, 2010.