北欧の魔術師ラルフ・ゴトーニ・マエストロの弾き振りによるオ−ケストラ・
アンサンブル金沢(OEK)のコンサート。グラス、アダムスという余り聞きなれない作曲家の曲に期待して、石川県立音楽堂に出掛けた。
プレ・コンサートは無し。コンサート1曲目は、管楽器が故障した(フルートらしい)とのことで、急遽グラス:ピアノと弦楽オーケストラのための
「チロル協奏曲」に変更された。OEKの弦楽は8-6-4-4-2の通常配置。東京で2度公演したらしく、第1楽章はラルフ・ゴトーニ・マエストロの弾き振りで堂
々と開始。グラスらしい反復音の連続。しかし、彼のピアノ協奏曲よりは色彩感と共に、表情豊か。第2楽章イントロは、弦楽のみの反復音。その後
ピアノが加わる。中間部は一転して叙情的で、非常に綺麗。グラスの人気の秘密はここに有るようだ。ffのピチカートは迫力充分で、フィナーレもピア
ノとヴァイオリンの音色は綺麗。ppで終了。第3楽章はAllegro vivace的で、テンポが速い。コンマス・ヤングさんのヴァイオリンが良く響いて、快活。
フィナーレ近くではピアノ・ソロと第1ヴァイオリンの掛け合いがぴったり決まり、華麗に終了した。
2曲目は、従って、ハイドンによる交響曲第83番「雌鳥」に変更された。OEKは修理が間に合ったと思われる管楽器を加えて、演奏開始。第1楽章
Allegro spiritosoは、出だし好調。ゴトーニ・マエストロは暗譜で、しかも強弱にメリハリを効かせた指揮。第2楽章Andanteは、雌鳥の鳴く反復音。
そうか、今日のテーマは『反復音』だったのだ。アダムスを先に聞いてしまったが、アダムスはハイドンの影響を受けていたのである。第3楽章Menuet:
Allegro - Trioは、綺麗な、短いメヌエット。第4楽章Finale: Vivaceは、軽快な出。この楽章は4分辺りで一旦終了と思われる箇所が有る。これを
さらりと演奏し、スムーズに残り2分を纏め、綺麗に終了した。
休憩を挟んで、3曲目はアダムスによる弦楽オーケストラのための「シェイカー・ループス(Shaker Loops)」。ゴトーニ・マエストロは譜面台を準備。
第1部「振動と揺れ」は将に振動(反復音)の連続。これでは暗譜は無理だろう。演奏するOEK弦楽4部も単調な演奏で、かえって大変。中間部からコン
トラバスが加わり音に厚みが出た。この出などもさすがプロ。楽譜はどうなっているのか見たい気がしたが、ゴトーニ・マエストロの指揮は的確であ
った。アタッカで第2部「大勢の賛美」、第3部「ループ(円環)と詩」、第4部「最後の振動」と続き、何処で部が移行したかは定かではない。しかし、
途中日本の雅楽のような箇所、チェロが綺麗なユニゾンを聞かせる箇所等が有り、飽きさせない。フィナーレ近くでは、ヴィヴァルディ:「冬」の反復音
に現代感覚を加味したような箇所も現れ、多彩。これが最後の振動だったのかと思わせた反復音で終了した。指揮者、演奏者泣かせの難曲であった。
アンコールはエルガーによる「セレナーデ」との事。ゴトーニ・マエストロの「シェレナーデ(Serenade)」との発音はドイツ訛りで、ご愛嬌。
「威風堂々」とは一味違い、イントロはヴィオラから始まる綺麗で、繊細な夜曲であった。尚、コンサート終了時OEK団員は恒例の挨拶をした。これに対
して一層大きな拍手があった。これは、難曲をこなしたOEK団員への賛辞であったと思われる。今後の更なる精進を期待したい。さて、『反復音』がテー
マのコンサートは終了した。会場にはCD録音への協力要請はなかったので、CD製作は無いのかもしれない。しかし、私としては是非、ライブ録音でなく、
新たに聴衆無しで録音し直したCDを是非発売して欲しいと思う。その理由は、モーツァルト等は何処でも入手できるが、グラスとアダムスのCDは中々手に
入らないからである。
Last updated on Jun. 28, 2010.