以前、石川県立音楽堂交流ホールでマエストロ・延原武春指揮のモーツァルト
を聞いたことがある。今回はオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を指揮し、モーツァルト・イヤー第8弾の
ピアノ協奏曲第21番と日本初演であるエドワーズによるオーボエ協奏曲を演奏するということで、石川県立音楽堂に出掛けた。
本日の某新聞で記載されていたように、コンサート1曲目はなんとベートーヴェン交響曲第7番第1、第2楽章である。プレトークで池辺晋一郎さんが言っていたが、バランス
の問題でベートーヴェン交響曲第7番を中間で分けたのだろうとの事であった。すなわち、Symmetryを追求した訳である。マエストロ・延原武春指揮のベートーヴェン
交響曲第7番第1楽章は少しテンポが遅めで、前回の井上道義マエストロによるテンポの速い曲を聞いた後なので余計にその差異を感じたが、OEKの堂々たるベートーヴェンで
あった。ただし、第2楽章Allegrettoが終わり、第3楽章のPrestoは始まらず、ここで中断は少々違和感。
とにかく、2曲目のモーツァルトによるピアノ協奏曲第21番が開始された。すなわち、双六で言えば2つ戻る感じであったが、金沢出身の宮谷理香さんの華麗なピアノ協奏曲
第21番はその違和感を払拭してくれた。第1楽章のカデンツアは堂々。第2楽章Andanteは夢見心地。第3楽章Allegro vivace assaiは華麗で、やはりOEKにはモーツァルト
が良く似合う。
休憩を挟んで3曲目は、ソリストにダイアナ・ドハティを迎えての、エドワーズ:オーボエ協奏曲である。先ず、暗転の舞台でオーボエのソロから始まった。ダイアナ・ドハティ
さんのオーボエ演奏もさることながら、演奏の合間に舞台上を移動すると共に、独特の振り付けによる舞踊と照明効果も相俟って感動の演奏であった。この後ベートーヴェン
交響曲第7番第3、第4楽章が始まった。オーボエ協奏曲の後、違和感無くベートーヴェンの世界に舞い戻れたのは不思議であった。第3楽章、
第4楽章は、マエストロ・延原武春渾身のベートーヴェンに仕上がり、ベートーヴェン好きの聴衆を沸かせていた。アンコール曲はモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲で、
OEK得意の曲だけに演奏もスムーズで、この曲を第1曲とし、第2曲をモーツァルトのピアノ協奏曲第21番、最後の曲をエドワーズ:オーボエ協奏曲にしても良かったかなと
も思われた。
さて、ベートーヴェンの交響曲第7番を第1、第2楽章と第3楽章、第4楽章に分断した功罪であるが、そんなに違和感が大きかった訳でもない。しかし、第2楽章から第3楽章に
attaccaぎみに繋がる部分が途切れたのはいただけない。どうしても分割したいのであれば、私ならベートーヴェンの交響曲第7番第1楽章のみを演奏、その後
モーツァルトのピアノ協奏曲第21番を演奏し、休憩。休憩後エドワーズによるオーボエ協奏曲の後ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章、第3楽章、第4楽章と演奏すれば良か
ったかと思う。すなわち、物理学で言うSymmetry Breakingの世界である。いづれにしても、ベートーヴェンが生きていたらどう言うだろうか?こうなったら天国のベートーヴェン
にコメントをお願いするしかない。
アーメン(真に、真に)。
Last updated on Oct. 06, 2006.