ベルリン・フィルにおける世界最高峰のソリスト達による演奏で有名な
モーツァルトのセレナーデ第10番「グラン・パルティータ」を、広上マエストロがオ−ケス
トラ・アンサンブル金沢(OEK)を指揮して演奏するとのことでコンサートに出掛けた。
私が石川県立音楽堂に入った時室内楽が聞こえていた。これは
ロビーコンサートであり、後で聞くとモーツァルトの弦楽五重奏曲とのこと。家で調べるとモーツァルト弦楽五重奏曲第4番ト短調第1楽章であった。
優雅な演奏で最後の方だけであったが、聞き惚れてしまった。コンサートは、最初に岩城宏之さん追悼のためのグリーグ「最後の春」が演奏された。
但し、広上マエストロが岩城さんを偲ぶスピーチの後、オーケストラのチューニング無しで指揮を始めたのにはびっくり。この所為か2、3箇所音の
乱れがあったようだが、岩城マエストロにとって文字通り「最後の春」になったことを偲ぶのにふさわしい曲であった。
プログラムに戻って、最初の曲はモーツァルト・イヤー第5弾としてモーツァルトの交響曲第32番(序曲)である。短い曲ではあるが、序曲としては好演。
2曲目は石川県出身内藤淳子さんをソリストに迎えてのモーツァルトによるヴァイオリン協奏曲
第5番「トルコ風」であった。広上マエストロの蝶の舞に合わせた内藤淳子さんのヴァイオリンが素晴らしく、第1楽章最後のカデンツァ(これは誰の作か
分からなかったが)も堂々としていて好演。彼女はロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の第1ヴァイオリン奏者との事。彼女のようなソリスト級が第1
ヴァイオリン奏者であればロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団もうまい筈だと納得。尚、第3楽章にトルコ風のメロデーが出てくる。これがなんと作詞
野口雨情、作曲中山晋平による童謡「黄金虫」によく似ていた。トルコと日本のオリエンタルとしての繋がりを垣間見る事ができて興味深かった。
休憩を挟んで期待の「グラン・パルティータ」が始まった。ベルリン・フィルソリスト級の演奏にどこまで迫れるかであったが、なんと遜色が無いではないか。
第1楽章ラルゴ、第2楽章メヌエットも綺麗であり、木管楽器、金管楽器の特徴が充分出ていた。第3楽章では珍しいホルンのオスティナートが効果的であり、第7楽章の
モルト・アレグロも快適で全体として素晴らしく、納得のいく演奏であった。難点を言えば、第5楽章ではホルンの出が遠慮がちで、少々問題。ホルンは遠慮せず少し早く出て、
ppはpで、pはfで演奏すればよい。また第6楽章後の拍手は、広上マエストロが手を上に上げているにも拘らずおきてしまったが、モーツァルトの所為でもあると思われるので
問わないことにしよう。
以上のようなコンサートであった訳だが、モーツァルトが生きていれば「オリエンタルにあるヤーパンという国の一地方都市金沢で、こんなに私の曲を素晴らしく演奏する
ウィンド・アンサンブルが存在するとは」と賛辞を送りそうな演奏会であった。尚、この曲をモーツァルト・イヤーで取り上げてくれた広上マエストロにも感謝したい。
Last updated on Jun. 29, 2006.