ブラームスが柿落しに立ち会い、1895年に完成した伝統を感じさせる優美な内装や雰囲気だけでなく、その音響効果の素晴らしさでも広く知られている、
スイス屈指の音楽ホールトーンハレ(Tonhalle, 英語に翻訳すると、Tone Hall, 「音のホール」、
ドイツ語辞書では「コンサートホール」の意)を本拠地とする
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団が、ヨーヨー・マとのシューマンのチェロ協奏曲およびマーラーの交響曲第1番「巨人」を演奏する。
シューマンのチェロ協奏曲は、同じくヨーヨー・マをソリストとした
オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演でも聞いているのだが、マーラーの交響曲第1番は金沢では多分初演と思われるので、出費が嵩むのを
憂えつつ、コンサートに出掛けた。
最初の曲は、ヨーヨー・マをソリストに迎えてのシューマンのチェロ協奏曲である。第1楽章が始まり、ヨーヨー・マがチェロを演奏し始めると、なぜか音が高いように聞こえる。
私はこの曲についてはムスティスラフ・ロストロボーヴィッチによるCDで聞いていた。しかし、何か違う。OEKとの共演でも気が付かなかったのだが、ヨーヨー・マのチェロは
明るく、伸び伸びしているのだ。楽器自体の違いなのかもしれないが、「ヨーヨー・マのチェロは明るい」これが私の結論である。第2楽章Langsamは、ヨーヨー・マ
の演奏を含めて非常に綺麗であった。第3楽章Sehr lebhaftのテンポもマエストロ・ディヴィッド・ジンマンとぴったりで、明るいシューマンのチェロ協奏曲に仕上がった。
アンコール曲はアタマン・サイグン(トルコの作曲家)による無伴奏チェロ曲であった。聞きなれない曲ではあったが、全曲を聞いてみたい気もする曲であった。
休憩を挟んで、マーラーの交響曲第1番が始まった。第1楽章イントロ部分のppは、非常に緊張感あふれる演奏で素晴らしかった。しかし、第1楽章が進行中舞台左手のドアが開けっ放し。
おかしいなと思っていると、トランペット奏者3名が舞台に忍び足で入ってくるではないか。トランペット奏者3名は遅刻したのであろうと思っていた。しかし、どうも舞台裏で演奏していたらしい。ppが綺麗で
あった理由が分かった。第3楽章ではオーボエのソロが綺麗。第4楽章コーダにおける7名のホルン奏者の起立も無事終わり、圧倒的な高揚の内にフィナーレを向かえた。マエストロ・
ディヴィッド・ジンマンの的確な指揮による壮絶な中にも緊張感あふれる演奏であった。以前金沢でロイヤル・コンセルト・ヘボーの演奏でマーラーの交響曲第3番聞いたことがある。
今回の演奏は、それに次ぐ演奏であり、本年度ではベストの演奏会であった。
時間の都合であろうが、アンコール曲は無かった。以上のようなコンサートであった訳だが、本日のチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団は発足当時33名であったそうだ。OEKも発足当時は25名であったことから、OEKも
脱皮を図る意味で、そろそろ増員を図るべきである。又、石川県立音楽堂については、トーンハレの画像と比較すると
パイプオルガンも含めてホール内の装飾が少なすぎること、シャンデリアの貧弱なこと等が目に付く。余り贅沢すぎるのも問題だが、少しはパイプオルガンおよびホール内の装飾を配慮
して欲しいものである。
Last updated on Jun. 04, 2006.