チャイコフスキーによるジーズニ(ЖИЗНЬ、生命、いのち、生涯、生活、現実、生気の意)という未完の楽譜が発見され、
その曲をロシアでオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)ゆかりのマエストロ
西本智実が指揮をして、好評であったと報じられたのは昨年のことであったと思う。このジーズニが金沢でも演奏されるとのことで、
コンサートに出掛けた。
最初の曲は、チャイコフスキーの交響曲第5番であった。ジーズニを先に演奏するのかと思っていたのだが、マエストロ西本智実は
作曲順を優先し、交響曲第5番を先に持ってきた。こちらの方はお馴染みの曲であり、ホルンのソロも綺麗であり、フィナーレの勝利
の音楽も堂々としていて、素晴らしかった。マエストロ西本智実の指揮も、きびきびとして、オーケストラをぐいぐい引っ張っている
様子が見て取れた。尚、ロシア交響楽団自体はチェロ8台、コントロバス6台と、そんなに大規模ではなかったのだが、ロシアのオー
ケストラに多い金管の咆哮が素晴らしく、これ位の規模でも大交響楽団として機能することが良く分かった。OEKの今後の目指す方向
でもあろうと思われる。
休憩を挟んでいよいよジーズニが始まった。第1楽章のイントロはかなり風変わりで、交響曲第5番よりの脱却を目指しているのだが、
第5番から抜け切れていない苦悩が伝わってくる。第2楽章は風変わりな部分は無くなったが、突出した動機が無く平凡。但し、
チェロのソロは綺麗。第3楽章は行進曲風で、交響曲第6番に繋がるメロデーも存在し、打楽器のシンコペーションもあり、面白い。しかし、第6番のような徹底したむせび泣きも無く、
徹底されない音楽(交響曲第5’番)に終始する。チャイコフスキーがジーズニと名付けながら、結局自ら拒絶した事情が良く分かった。しかしながら、
これを果敢に指揮するマエストロ西本智実の執念には頭が下がった。
アンコール曲は有名なアンダンテ・カンタービレで、弦楽の綺麗さが目立った演奏だった。尚、この時、コントラバス2台は休止し、コントロバス4台で演奏された。本来は、
弦楽四重奏曲なのだから当然といえば当然なのだが、このあたりの気配りはやはりマエストロ西本智実だと思った次第。以上のような
コンサートであった訳だが、OEKもチャイコフスキーの交響曲を演奏できる位のオーケストラに増員(名前は変えなくても良い)してはとの思いが募る
公演であった。
Last updated on Jun. 01, 2006.