以前、インパル指揮フランクフルト放送交響楽団でマーラーの交響曲第5番を石川厚生年
金会館大ホールで聞いたが、このときイントロにおけるゼッキンゲンのトランペットで失敗があり、いやな思い出となっていた。今度は、
チョン・ミョンフンがロンドン交響楽団を指揮し、マーラーの交響曲第5番を演奏
するということで、前回の分も取り戻そうとの思いでコンサートに出掛けた。
最初の曲は、横山幸雄氏をソリストに迎えたショパンのピアノ協奏曲第1番であった。このときの弦楽器の配置は、舞台に向かって左側にチェロ
とコントラバスであり、勿論中央にピアノが置かれていた。イントロはオーケストラのみの演奏であり、CDで聞いた感じと違う。何か重々しい。これは
マーラーの交響曲第5番で解消されたのだが、チェロとコントラバスの左側配置によると思われた。その所為ではないが、横山幸雄氏
のピアノは「新鮮で、さわやか」であった。ショパンコンクール1位を勝ち取るにはもっとねばっこい演奏が必要なのかもしれない。しかし、私には
さわやかで心地よかった。
休憩を挟んでマーラーの交響曲第5番が始まった。ゼッキンゲンのトランペットは問題なかった。しかも、重々しい演奏はピアノを中央から
右端に寄せたためと思われるのだが、解消されていた。即ち、チョン・ミョンフン マエストロはマーラー演奏用に舞台左にチェロとコントラバスを配置したのだが、
ピアノ協奏曲のピアノが中央に配置される場合を考慮しなかったため、ピアノ協奏曲では音のバランスが狂ったと考えられる。さて、マーラーの交響曲第5番に戻ると、
第1楽章では4管編成であったトランペットとトロンボーンがきりっとした演奏で好感。第2楽章ではチェロのみのトゥッティが綺麗。第3楽章では、ホルンのソロが
あるがこれも綺麗。第4楽章のアダージェットも綺麗で完璧。ところが、第4楽章と第5楽章の間をチョン・ミョンフン マエストロは時間をとり過ぎた。すぐ始めれ
ばよかったのだ。このため、第5楽章開始のホルンがフライング気味で、しかも最初の音から次の音への間があきすぎ(楽譜でフェルマータが付いているのかについては未確認)。
おまけに第5楽章中のホルンのトゥッティが乱れるというミスが発生してしまった。残念なことだが、第5楽章でホルン・セクションは力尽きた感じであった。しかし、
全体的には笑わない指揮者チョン・ミョンフンのカリスマ性もさることながら、ロンドン交響楽団の弦楽部門は綺麗であり、しかも多くのオーケストラの弱点である
金管部門も非常に優秀であり、ブラボーであった。スタンディング・オベーションの聴衆がいたのも当然のことと思われる。
演奏終了時刻は9時を回ってしまい、アンコール曲は演奏されなかった。金管が咆哮するチャイコフスキーの曲をアンコールで聴きたいような気がしたが、仕方が無い。
以上のようなコンサートであった訳だが、マーラーの交響曲も第3番、第5番が演奏され、第1番も本年演奏される予定であり、金沢の聴衆も随分慣れてきたと思う。
従って、次回の大型オーケストラ招聘の場合は、マーラーであれば交響曲第4番か第6番、マーラー以外では是非ブルックナーの交響曲を含むプログラムを
選択して欲しいものである。
Last updated on Mar. 14, 2006.