オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の首席チェロ奏者カンタさん
を含むスロヴァキア・トリオのコンサートには、余り聞けないイザイとかマルティヌーのヴァイオリンとチェロのための二重奏曲、
およびマルタ・アルゲリッチ、ギドン・クレーメル、ミッシャ・
マイスキーが東京で演奏したCDで有名なショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲が含まれていたので、スキーに行かず、コンサート
に出掛けた。
最初の曲は、カンタさんの独奏によるイザイの無伴奏チェロソナタであった。カンタさんのチェロの膨よかな音にはいつも感心
させられのであるが、イザイの曲自体は少々悲痛過ぎるように思えた。これに対して2曲目のマルティヌーのヴァイオリンとチェロのた
めの二重奏曲は、マルティヌーの交響曲が多少退屈なのに比較して、この二重奏曲第1番は変化に富み、しかも第2楽章のチェロのソロ
が綺麗であり、マルティヌーを見直さなければいけないと実感した演奏であった。
3曲目はショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第2番である。家にあるCDで聞いてはいたのだが、第1楽章のイントロがヴァイオリン
ではなく、チェロであることが分かった。すなわち、高音をチェロが受け持ち、中音をヴァイオリンが担当する訳である。さすがショスタコ
ーヴィチ。ショスタコーヴィチならではの意表をつく作曲である。第3楽章ラルゴでは、ヴァイオリン・ソロが綺麗であった。
休憩を挟んでドヴォルザークのピアノ3重奏曲第4番が演奏された。第2楽章のポコ・アダージョが綺麗であり、しかも新世界に出
てくるようなリズムが刻まれていた。曲目解説には、この曲はアメリカへ出発する前に作曲された旨記載されていた。私はドヴォルザークの
新世界にはアメリカ・インディアンの歌や黒人霊歌のみが含まれていると思っていたのでおかしいと思い、新世界の解説を読み直してみた。
私の持つカラヤン指揮による新世界のCDの解説には、「黒人霊歌と故郷ボヘミアの民謡との間に横たわる近似」との記述があり、これで納得。ピアノ3重奏曲第4番と
新世界に共通するのはボヘミア民謡だったのである。
アンコール曲はカンタさんが日本語で解説した「第2楽章」は分かったが、肝心の曲名と作曲者名は聞き取れなかった。しかし、楽しげな
舞曲で、曲名を知りたくなる綺麗な曲であった。以上のようなコンサートであった訳だが、プログラムには懇切丁寧に各楽章におけるすべての速度表記がなされていた。
OEKのコンサート解説書に速度表記が消えて久しいが、今回のようなしっかりとした表記を復活して欲しいものである。
Last updated on Feb. 05, 2006.