○● 読書感想記 ●○
2007年 【6】

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(ラノベ指数 7/56)
20
 
『きつねのはなし』 森見登美彦 著

 んんん……?
 なんだか不思議な読後感ですなぁ。
 感想らしい感想が浮かんでこないっちうか。
 読んでいるときはそれなりに集中していたのですけれど、読後にはそのときの気持ちが泡のように消えてしまっているっちうか。

 うーん……。
 夢のように消えてしまうような?


 西洋的なホラー感覚とは違う、東洋的、日本的な民俗史観っぽい御伽話なのかなー。
 それがまた京都という土地柄に合っているという。
 場所場所で此方と彼方が通じ合っている都ですし。
 

(ラノベ指数 3/55)
19
 
『ジェネラル・ルージュの凱旋』 海堂尊 著

 シリーズ第3弾っていうか第4弾っていうか。
 前作の『螺旋迷宮』と同時期に東城大学病院で起こった事件を扱っていて。
 その『螺旋迷宮』は田口・白鳥シリーズという括りでは無いもので、どうシリーズ巻数を扱って良いものやら。

 閑話休題。

 今巻ではいよいよミステリーという趣よりは、病院経営の実情に切り込んだ「病院物語」?みたいな様相を。
 小児科や産婦人科、それと救急医療が病院経営を圧迫する「金を生まない医療」の代表であると言われて久しいですがー。
 やはり医療であるからには現場のお医者様や看護師のみなさんは、人の命を守るために奮闘していて。
 採算が合うとか、そういう計算では動いて無く。
 んがしかし、経理を担当する後方配置の側からはそうした現場の意識よりも帳簿上の数字のほうが大事であって。

 うんうん。
 こうした前線と後方の相克を描いた物語はやぱし面白いですわー。
 現場意識のほうが大切だとばかりはもちろん言い切れませんけれど、しかし現場が裏方のことを考えて動いたから今回の事件は起こったのでしょうし。
 簡単には答えは見つからないでしょうけれど、お互いの立場で「現場は!」とか「お金が!」とばかり言っていては何も始まらないことだけは確かなのだなーと。


 そして緊急搬送の希望の光「ドクターヘリ」。
 これについての流れはどこかで見た話という印象があったのでー。
 ──事務方に反対され続け導入が見送られてきて。
 そんなところへ大災害に見舞われ、交通手段が途絶えたとき、ドクターヘリの必要を痛感させられる──って流れ。
 災害状況を上空からリポートしているマスコミのヘリへ毒づくシーンも、いつかどこかで見た光景。
 つまりは、このドクターヘリというものは医療云々に限らず、世間の理不尽の象徴的存在になるのだなぁ……という印象。
 大地で必死になっている人間をあざ笑うかのように悠然と空を飛ぶマスコミのヘリという構図も。

 もっとも、この時にあってはドクターヘリのことを象徴以上には重きに扱わないで、やぱし「ジェネラル・ルージュ」の獅子奮迅ぶりに爽快感があるわけで。
 クライシス物の王道っちうか。
 敵かと思っていた教授すら彼の役割を認めるような展開は、もう熱くなるほかないですよーん!
 主義主張を超えて一丸となって危機に立ち向かうっちう!


 ミステリ要素は薄くなっても、プロフェッショナル物?としては強まってきているように感じているので、これからはもうそちら方面での物語を期待したり。
 

(ラノベ指数 23/55)
18
 
『蝶の大陸 〜黄金のエミーリア〜』 入皐 著

 このプロローグは好きくないなぁ……。
 世界の成り立ちを説明しているってのはわかるのですけれど、用語集の趣が強いっちうか。
 それでいて、ここで描かれた各設定が作中で活かされていたとは、ちょいと思えないような。
 ここで説明しておいたことで作中での別な労力が減っていたであろうことは認められるのですけれど、取り立ててこの設定が必要だったようにも思えないので。

 あー、えっと。
 つまりは、この設定って、もっと圧縮できるんじゃないの?ってことで。
 プロローグの場を借りてまで用語を説明する必要が無いくらい程度には。


 ……ちうか、「プロローグ」って物語への導入を促すものであって、設定を説明する場ではないってのがわたしの見解。
 だからこういう不満があるのかも(^_^;)。


 とはいえ、そこを抜ければ作中の展開は好みかもー。
 コンプレックスを持つオンナノコって、それだけで十分に物語のトリガーたり得ますし。
 しかも物語のターニングポイントでは、ちゃんとそのコンプレックスを乗り越えるような葛藤が描かれていますし。
 とにかくそんな主人公のエミーリアの性格設定が好きすぎ(笑)。
 大柄な身長や伝説になっている曾祖母とうり二つの容貌を重く感じているトコロとか、弱者のためには立ち上がらずにはいられない真っ直ぐなトコロとか、自分へ向けられる愛情については鈍感であったりするトコロとか。
 特に恋愛に鈍感なトコロは可愛いわー。
 その鈍感さに振り回される幼なじみの哀れっぷりも楽しいですし(^_^;)。


 嫌味無い性格で、かつ義のためなら矢面に立つことを厭わないアクティブさ。
 ルルル文庫の主人公ってそんな方向なのかしらー。
 ガガガ文庫よりわたしには好ましいレーベルってカンジがこれまでのところしておりまするよ。
 

(ラノベ指数 24/55)
17
 
『十三番目のアリス 4』 伏見つかさ 著

 そりゃあですね。
 世界の有り様を揺るがすような大きな事件を扱っているわけでもないし、キャラモノ・群像モノみたいな登場人物が入り乱れるような派手さや賑やかさもありませんよ。
 まして昨今もてはやされるような「特異な筆致」を持っているわけでもありませんし、ラノベとして読み応えがあるのかどうかは首を傾げますよ、わたしも。

 でもですね。

 血筋だとか魂だとかそんな設定の強さでもなく、状況を一変させるほどのパワーを持っているスーパーアイテムの類でもなく、ましてやイヤーボーンな秘めた能力でもなく。
 血を流して骨を削って、オトコノコがその身ひとつだけで戦い抜いたというその一点だけで、わたしはこの作品を好きですよ。
 大切な女の子を護るために覚悟を決めた、なんの取り柄もないか弱き少年が戦うこの物語が。


 ライトノベルだ──って読者に言わせたいなら、設定とかアイテムとか、そうしたガジェットの着想に凝るべきだと思うのです。
 それを排しながら、ただただ持たざるオトコノコが戦うというのは──マーケットを考慮するなら損しているなぁと。
 展開を考えても、設定やアイテムに頼ったほうが楽できるんじゃないかなーと思えますし。
 一発大逆転のカタルシスへの引き金として配するなら。
 それを為さないというのであれば、その戦いは地味で地味で、しかもきわめて現実に即さなければならなくなって、キャラクターが置かれた状況を描写するのに間違いをひとつも許さなくなってしまうでしょうし。
 そうした難しさがありながら三月の戦いを描きたかったという伏見センセに、わたしは賛辞を惜しみません。


 もちろんスーパーアイテムやら特殊能力で固められた敵と対峙したとき、三月はあまりにも弱々しいことは絶対的で。
 そんな彼が手に出来る勝利というのは、ほんの数分程度のことでしかなくて。
 でも、三月は、大好きな彼女を護るために、その数分のために身体を張れるんですよね。
 強いから戦うのではなくて、戦うべきだから戦うのであって。
 そこに強さ弱さなんて関係なくて、ただ覚悟が。


 そういう「強い気持ち」を持った「か弱きオトコノコ」の物語。
 これはもう、ココロからの拍手を送ります。
 

(ラノベ指数 22/55)
16
 
『響け、世界を統べる唄 幻獣降臨譚』 本宮ことは 著

 アリアの成長っぷりが眩しくて!
 傷つきもしたし、絶望もしたというのに、いまは立ち止まらずに前を向いて歩んでいて。
 傷は癒えるものだとしても、その痛みを忘れることではなくて。
 でも彼女はその痛みすら糧にして成長していくんだなぁ……って(T▽T)。

 で、そんな成長ぶりを間近で見せられてうろたえているオトコノコがふたり。
 シェナンはさー、アリアを女性として意識しているってのはわかるのですけれど、それって「今まで身近にいなかった異性」ってだけなんじゃないかなーと。
 あるいは「初めて異性と意識した女性」って特別枠。
 そういう気持ちが恋心でないというつもりはないですけれど、なーんか任せられねぇなぁって気が(笑)。

 その点、ライルはきちんとオンナノコとして見始めていることが察せられて、シェナンよりは好感できるのですけれどもー。
 でも彼もまたアリアのことは「妹のように思っていたのに」って前置きが付きますしねぇ……。
 おまけに今回のたらしぶりも不安ですし(笑)。
 そもそもライルは王女のことがあるから、うまくシエネスティータ姫と面通りがなされたあとで一波乱ありそう。
 たのしみーっ!(≧▽≦)


 ええ、まぁ、そんなふたりにくらべてディクスの地位転落ぶりは涙を誘いますわー。
 こうして主軸の物語展開の中に差し挟んで近況を伝えるような形でなく、思い切って時間軸を遡るような形でも良いので、1冊まるまる彼のお話にしてはどうなのかなーとか思ったり。
 現状ではアリアの相手としての「王子様」のひとりどころか、端役も端役に落ちてしまっている印象なので。


 サフィアのダークっぷりは相変わらずで、彼女もまたアリアの前に立ちはだかりそうなんですけれどー。
 精霊の格といい、頭の明晰さといい、アリアの敵では無いような?
 よくて中ボスっちうか(苦笑)。
 しかし、それで目を覚ましてくれて、最後にはツェルと幸せになってほしいと思いますわー(T▽T)。


 お父さんから譲り受けた飾り細工の伏線が見事に昇華されて、物語はいよいよ王宮の中へ。
 もう6巻にもなるシリーズなんですけれど、ちゃんと全体を見据えて構成されているなーと感じられて嬉しくなってしまいます。
 魅力ある新キャラも登場して、奥まる世界。
 次巻も楽しみにしてます!
 

(ラノベ指数 19/55)
15
 
『マルティプレックス 彼女とぼくのコミイッタ日々』 田村登正 著

 ゲームを模したかのような仮想世界だと思っていた場所が、実は現実世界ともつながりがあって。
 そちらの世界で戦争を続けているうちに生きることの厳しさを知った主人公は、現実世界での生き方にも、その覚悟がフィードバックされて人間として成長するお話……ってカンジかなぁ。

 立場上のヒロインとのからみもあるわけですけれど、異性としての意識よりも仲間意識のほうが強かったような。
 ま、いまのところは、ですけれどー。

 筆致とかはさすが田村センセ、読みやすいのでサクサク〜と進めていけるのですけれど、なんだか共感性に乏しいような、軽いような、そんなカンジを。
 現実世界より仮想世界を重視してしまう生き方を選択している主人公の境遇の説明を物足りなくおぼえているから……かなぁ。

 仮想世界に逃げ込みたくなる理由が現実世界にありつつも、逃げてるだけじゃ駄目だと気付かされて、現実での生き方を見つめ直す……って流れがあるような無いような?
 いやさ、事実あるのですけれども、理由付けを弱く感じているのかも。
 うーん……。


 まだまだ戦いは続いている……って結びでしたし、世界の有り様とか主人公の成長とか、もっと見てみたい気がするので、続刊、あるといいなー。
 

(ラノベ指数 28/55)
14
 
『アスラクライン 真夏の夜のナイトメア』 三雲岳斗 著

 前作の哀音に引き続き、今回もまた新たな退場者が。
 表舞台から下りる、その去り際の姿が、智春に鮮烈な印象を残していっているなぁ……というカンジが。
 それは未来の自分の姿かもしれないし。
 そんな悲劇の可能性と真正面から向き合う覚悟が在りや無しやと問われても、そこは安穏と生きてきた彼のことですから答えは出しにくい訳で。
 でもそれは彼が優柔不断であることの証左にはなりえないのではないかなーと。
 そういう生き方、わたしたちのそれと差は無いと思うので。
 むしろ覚悟を突きつけられながら生きているような人のほうが珍しいかなと。

 だからこそ、覚悟を決める彼に、読み手として心を預けていく次第。
 そういう生き方が彼に出来るのなら、わたしも……とか。
 シンパシーとはちょっと違う?
 その懊悩が分かるレベルにあるってことなのかも。
 親近感?

 まぁ、その覚悟を引き出すための障害としては、今回の敵?は噛ませ犬過ぎましたが。
 小者過ぎっちうかー。
 しかしそんな小者にすら、きちんと設定を用意するあたりは、さすが三雲センセだなぁ……と感心してしまったりしてー(笑)。


 世界の謎も少しずつ明らかになってきているワケですけれども、しかし智春に残された時間に限りがあるということもわかって。
 真に覚悟するときは、そう遠くないのですね。


 にしてもロボットが異界への探査機としての役割を担っている……っていうのは、今作でのガジェットというより三雲センセの主張なのかしらん。
 『ランブルフィッシュ』でもそうしたアプローチ、ありましたし。
 ホント、三雲センセの作品は、根底でつながっている印象を受けるわー。
 それがまた良いのですけれど(^_^;)。


 近い将来に再び訪れる破滅から世界を救うという時間制限のある物語でしたけれど、その時間制限が別の形で明確化されたワケで。
 そちらのほうは回避するだけなら智春の覚悟ひとつで回避できるんですけれど、ね。
 智春の中には優先順位が決まっているということは今巻でもハッキリされていましたし、軽い気持ちでは選択はしないだろうなぁ……と。
 しかし選択の時は近づいていることも確かで、そのとき智春がどのように考えるのか、感じるのか、とても興味深く思います。
 次巻がたのしみー!
 

(ラノベ指数 7/55)
13
 
『【新釈】走れメロス 他四篇』 森見登美彦 著

 「走れメロス」をはじめとして文学史に名を残す名著をベースに現代モノへと。
 そうしてリファインされた各作品には、森見センセらしい恋愛観が描かれていてそれは好感……なのですけれど、もー。
 やぱしベースがあるというのは、にんともかんとも。
 当たり前の話ですけれど、展開が読めるっちうトコロがあって。
 いや、ま、そこからのアレンジを楽しむ──っていうのがこの手の作品の鉄則なのかもですけれど、ねー(^_^;)。

 表題作の「走れメロス」なんかはもー、イヤってくらいに見え見え過ぎちゃって、諦めに似た脱力感を感じましたヨ……。
 アレンジするにしても、そうするしか無いよなぁ……といった。


 普通に森見センセらしいテイストを楽しむ分には悪くなかったかなーと思います。
 テイストっちうか、森見ワールドっちうか。
 大学の文化祭で「象の尻」と来た日には、やぱし『夜は短し〜』との関連をうかがってしまいますし〜♪。


 まぁ、でもしかし。
 「山月記」の斉藤秀太郎の生き様は身につまされる思いが……。
 いつか完成するであろう「名作」を、いつまでも書き続けている生き方。
 書き終えて、良くも悪くも評価を得る日が恐い……のかな。
 書き続けている限り、評価とは無縁の「名作の可能性」の甘美な妄想に浸ることができますし。
 うわぁ……駄目オタク(T▽T)。
 

(ラノベ指数 19/55)
12
 
『あの日々をもういちど』 健速 著

 オビのアオリ「刻を超えた純愛」ってのに対して、いろいろと贅肉がありすぎな気が。
 キャラの配置とか、ガジェットとか。
 刻を超えた云々の方々が主人公……だとは思うのですけれど、それとは別に現代に生きる高校生カップルにも重きがあったりして。
 そちらの「少年の成長ストーリー」は、本編の筋からは余計だったような。
 少年の行動がタイムリープしてきた主人公の萎えた気持ちを目覚めさせるきっかけになるというのなら違ってきますけれど、そういう意味合いは薄かったようにカンジましたし。

 うーん……。
 ダブル主人公(カップル)ってわけではないように思うし……。
 現状、視点がぶれてしまうだけだったような。

 ガジェットに関しては、反零力振動子とか超常種とか、それとスーパーアイテムの「レリック」のこととか。
 序盤でまとめて説明されるのですけれど、それ以後の展開で、これらガジェットが物語に活かされていたとは言い難いような。
 この作品固有の設定を持ち出さなくても、もっと一般的な名詞で説明したままでも良かったのではないかなぁ……と。
 そうでなくても「○○とは××である」と紋切り型に次々と説明していく書き方はオシャレでは無いと思ったり。

 こういう固有設定の説明って、ゲーム作品の企画書にありそうな項目だなーとか思ったりして。
 健速さんがライターだからって、少々うがった見方かもですけれど。
 ゲームなら取説などで説明できたりしますけれど、それと小説の有り様は異なるものでは?……と問題提起。


 守るべきものがあり信念とともに刻を超えたハズが、現代ではその信念を見失いかけた主人公。しかし現代と過去をつなぐきずなを見つけ、自らの行為に再び価値を見出して戦い抜く物語。
 そんな主立ったところの展開は良かったと思うのですけれどー。
 んでも、だからこそ余分な贅肉をそぎおとして、その分こちらの描写を深めてほしかったのですよー。
 残念ちうか。


 ああ、それと。
 健速さんの物語にしては、なにも失うモノがなくてみんながハッピーになっているなぁ……と、変な感慨を受けたりして(苦笑)。
 

(ラノベ指数 7/55)
11
 
『草の竪琴』 トルーマン・カポーティ 著

 読み始めた動機が不純なのでー。
 『秒速5センチメートル』でアカリが劇中に読んでいた本の1冊〜(笑)。
 だもので作品とは正面から向き合えず、彼女の心情を探るように読んでしまったり。
 うーん……失礼な読み方で申し訳ないのですがっ!(^_^;)


 両親と死別して遠縁の叔母に引き取られる主人公の少年コリン。
 成長するにつれて社会の厳格さや不条理さや傲慢さに打ちのめされそうになりつつあったコリンは、同じく社会に生きるには清らかすぎた叔母のひとりとともに樹の上の家へと住み移る。
 しかし楽園のように映った樹の家へも社会の強制力ははたらいて、家に集まった人たちは再び社会へと戻っていく。
 いまいる場所で生きていくしかない……といった諦観とも覚悟とも言い得ぬ感情。


 あらすじとしては、こんなカンジ?
 多感な少年の目を通して社会を見つめるっちうか。

 まぁ、でもしかし、この主人公のコリンに、アカリはタカキを投影していたのではないかなーと思ったりして。
 それも、記憶の中にある幼い頃のタカキではなくて、このように成長していてくれたら良いなぁ……という理想のタカキ。
 コリンはね、夢を壊されるような現実にあっても、自分を見失いはしなかったと感じるのですよ。
 たしかに大人への成長をやむえずとしても。
 自分が知っている彼が、そう成長してくれていることをアカリは願っていたように思えるし、またそう信じていたのではないかなー。
 もう、会うことがない人であっても(会うことがないからこそ?)。

 だからこその「タカキくんは……きっとこの先もだいじょうぶだと思う!」なのではないかなー。
 理想っちうか。
 ……いや、呪いでしょ、あれは(笑)。


 んー、でもなぁ……。
 オトコノコを理想に近づけるための努力をオンナノコはするもんだしなぁ……。
 それを呪いとするか祝福の魔法とするかは受け取る側の耐性/態勢だったりするのかなー。

 ……と、本の感想ではなくて5cm/sの考察になってしまいました。
 だから不純だって言ったじゃん!(笑)
 

(ラノベ指数 14/55)
10
 
ヴィクトリアン・ローズ・テーラー あなたに眠る花の香』 青木祐子 著

 短編集!……ってことで、タイトルから「恋のドレス」が抜けております。
 つい最近、最新刊を読んだばかりなので、このタイミングはわたし的に嬉しいなー。

 内容のほうも本編ではなかなか描けないような、クリスとシャーリーの外の世界を。
 闇のドレスとは無関係に、恋の相談事を持ち込んでくるカップルとかー。
 久し振りの大活躍を見せるシャーリーの従妹のフリルとかー。
 でもって書き下ろしはパメラとクリスの出会いね!
 これは本編のほうでも軽く触れられてましたけれど、やっぱり強い運命をカンジさせる出会いでしたねぇ……。
 クリスはクリスで大変だったことはわかっているのですけれど、境遇から言えばパメラのほうが酷かった……。
 この時代、そうした子どもたちが居たであろう現実はもちろん、そうした境遇にありながらのいまのパメラの姿が!が!
 ほんっと良い子だわ、パメラ……(T▽T)。

 でも、彼女だって女の子なんですから、いつも、いつまでも、そうして強く生きているワケにはいかないんでしょうし。
 ……もっと頑張ってくださいよ、イアン先生!(笑)

 イアン先生、なにげに今回が初イラスト? もしかしたらですが。
 うひゃー……微妙すぎる外見だわー(苦笑)。
 嫌いじゃないですけれど、彼で良いのかって気も(ヒドイ)。

 ああ、ヒドイっていえば表紙でのクリスの服装が地味すぎて泣けました(T▽T)。
 エプロンのポケットが繕い跡に見えてしまったり……。


 さーて、これで息抜き完了です。
 いよいよ佳境に……とセンセも仰っている本編、楽しみにしてます!
 

(ラノベ指数 17/55)
9
 
『愛玩王子』 片瀬由良 著

 嫁探しをしている魔界の王子様の邪魔をはからずもしてしまった女の子が、実はその昔に王子と幼い婚約を交わしていた相手でした──って可愛い恋愛のお話。
 素敵な王子様だから結婚の相手も素敵なんだろうな〜って諦めにも似た形で一歩引いていたら、それが実は自分でしたってサプライズ!
 あー、うんうん。
 定番さねー(笑)。

 でも形としてはスタンダードだとしても、それを物語として説得力あるものにするのはまた別の力が必要なのかなー……とも思うのデスヨ。
 単に過去の出来事だけで王子様が主人公に惚れるようではあってはならないっちうか。
 その点では今作の主人公・比奈はポジティブな性格で礼節もわきまえていて、さらに変な自己主張も無い良い子なので、王子が心を傾けていくのもわかるっちうか。
 良い子すぎるきらいはあるかもですけれど、これくらいハッキリしていたほうが物語も展開しやすいのかなーと。
 実際、今作のテンポは悪くなかったと思いましたし。


 惜しむらくは良い子である弊害なのか、恋愛に対して比奈が幼かったところ?
 王子のほうはかなりその気になっているのに、比奈のほうはまだ「友達以上」ってレベルの意識に見えるんですよー。
 それは良い子の彼女の中では特別なポジションを占めているのかもですけれど、王子にとっては不憫やわー(笑)。
 まぁ、ルルル文庫では当然オトコノコのほうが振り回される次第なのですね。


 うん、楽しく読めました。
 次回作も楽しみにしてます。
 

(ラノベ指数 14/55)
8
『ひなた橋のゴーストペイン』 有澤翔 著

 一定数、情緒的作品を置く流れが電撃文庫の短編には定められているような気がしないでもないですけれど、今作もそんな流れを継承しているような。
 世界的な事件を解決するわけではなく、語り部の内面変化に焦点を絞っている……と。
 この類の作品の欠点は、派手さが無いことと作品ならではの個性を打ち出す難しさでしょうか。
 まぁ、雰囲気を読め……ってカンジの方向性だけに、それはもう致し方ないトコロですけれども。

 そんな次第で、今作についても目新しさは特に無いですし、この作品を読んだ方が良い!と敢えて勧めるような際だつポイントも無いのですけれど、だからといって駄作というわけでも無いのですよね。
 難しい……。


 世界のルールを曲げることの出来る人ならざる存在に出会って、後悔している時間に戻って人生をやりなおしてみる彼ら彼女ら。
 悔いていることを無かったことにした人生は平穏に過ぎていくけれど、その平穏は偽りのものだと感じてしまって。
 やはり人生は無かったことになどできなくて、それをしたところで幸せにはなれなくて。
 幸せは、いまいる時間のこの場所で見つけるものだと気付く物語。


 ……説話的であって考えさせられる部分はあるのですけれど、基本的にはオチはみな一緒ですしねぇ。
 そこ、も少し変化させてくれたら良かったかなぁ。
 この構造ではフォーマットが定まっているとはいえ、オチが読めるどころの話ではないくらいに徹底されてしまうのはどうかなーと思うのですよー(^_^;)。


 筆致はまとまっていたと思うので、世界をしっかりと作り込んだ長編を読んでみたいところ、でしょうか。
 

(ラノベ指数 19/55)
7
 
ヴェルアンの書〜シュ・ヴェルの呪い〜 榎木洋子 著

 父の果たせなかった務めを為すために、純朴純粋で男勝りな女の子が侍になって数奇な運命に巻き込まれるお話。
 なんちうか、強情であっても理性を働かすことができて、かつ自らの非を認めることができる素直さを持った女の子っていうのがルルル文庫の目指す主人公像のような気が。
 んで、そういう女の子は大好物なので、わたしはガガガよりルルルかなー。

 今作の主人公・サツキも、周囲の人への気遣いができる上に、状況に対してきちんと優先順位をつけられる覚悟を持っているキャラクターなので、わたしにとっては行動に嫌味を感じずにいられるんですよね〜。
 素直すぎるきらいはあるかもですし、そのせいで他人の悪意に免疫無くて、見ているこっちがハラハラしてしまうのですけれど、それもまた良し!
 変にこまっしゃくれて生意気な性格より、わたしは好きです。

 侍になるために試験を受けるワケですけれど、そこでの剣戟描写はわりとあっさり目?
 その代わり試験に対する各受験者の心理には描写を取っていたように思えるので、それはそういうことなのでしょう。
 この作品、アクション小説ではないって。

 試験に合格していよいよ侍へ。
 でもって田舎育ちの彼女は、これで世間(の悪意)を知ることにもなるでしょうし。
 そうした経験をどう乗り越えていくのか楽しみ〜。
 

(ラノベ指数 13/54)
6
 
ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスと運命の輪』 青木祐子 著

 アイリスの事件からこちら、距離を置いてきたクリスとシャーロック。
 その時間がお互いの気持ちを再確認させたっちうか、冷えて固まって強くなったっちうか。
 ふたりとも相思相愛だ──って、わかったはずなんですけれどねぇ。
 なんですか、このもどかしさは。
 相手が自分のことを好いていてくれるとわかれば、もっとこう、盛り上がるものではないのですか?
 これが身分社会の恋ってことですか?
 んきーっ!(><)

 クリスほうは大きく成長しているんですよねぇ。
 シャーロックが貴族であっても、それとは別に「好き」であることを止めようとはしないと覚悟決めたのですから。
 その恋が報われようが報われまいが、そんなことには関係なく。
 ただ「好き」でいようと。
 なのにシャーロックは全っ然覚悟決めないんだもんなー。
 クリスと離れて身分社会に生きていく自分を未来予想して自己嫌悪するだけですかっ。
 だからといって未来を変えようと動くわけではないんですよねぇ……。
 はたから見ているとシャーロックにはそれをできる力があるように思えるのですけれど。
 自分の考えを周囲に認めさせる力が。
 社会の常識から向こうを張るのですから、それは一朝一夕で叶うことではないのかもしれませんけれど、容易くないことだからと諦めるのは悲しすぎる次第。

 んー、まぁ、そういう恋はこの時代少なくなかったのだとわかりますし、クリスとシャーロックは「物語」だから部外者はどうこう言えるのでしょうねぇ(^_^:)。
 そうして葛藤してくれないと物語ではないワケで。
 読者はいつだって気楽です(笑)。


 なーんて盛り上がっていたら、ラスト、さらに衝撃の展開がががっ!
 青木センセはクリスとシャーロック、ふたりにどこまで試練を与えれば気が済むのデスカッ!(><)
 ふたりの恋の行方、見逃せなくなってまいりましたーっ!


 ……ふたりの影にありますけれど、パメラのお相手が誰になるのかも気になりますけれどー。
 イアン先生、一歩リード?(^_^)
 

(ラノベ指数 14/54)
5
『海をみあげて』 日比生典成 著

 ラノベ指数を計って気付いた!
 本編にイラストが無い!!
 でも、だからといって映像的なイメージを受けないっていうワケではなかったんですよね。
 むしろ場面場面での情景を思い浮かべられるっちうか。
 けっして写実的な描写であるとか、そういうワケでは無いのに、これは如何に?

 うーん……。
 シンプルであるから……なのかなぁ?
 奇をてらうことなく、少年少女の微妙な心情をありのままに描いているから、とか。
 まぁ、それは逆を言えばどこかで見た物語になってしまうのかもですけれどー。

 この作品のウリであるところの「空飛ぶ鯨」が、もっと物語にからんでくると良かったかナーと思ったり。
 章が進む毎にその存在がぼやけてしまうっちうか。
 このままでも「ちょっと良いお話」としては十分でも、さらに上のエンターテイメントとして昇華させてほしいなっと。

 次作で雰囲気が変わっても筆致が変わらないようであれば、好きな作家さんになれそうです。
 同じ雰囲気だとすると、ちょっと退屈かも……ってことで(^_^;)。
 


(ラノベ指数 16/54)
4
『食卓にビールを 6』 小林めぐみ 著

 ゆるゆる〜っと続いていたこのシリーズも最終巻とな。
 掲載していたファンタジアバトルロイヤルが休刊してしまうそうですし、その影響なんでしょうか、ねぇ?

 んがしかし、だからといってなにか大仕掛けを用意するわけでもないところが、いかにもこのシリーズらしいってカンジ。
 むしろ短編連作の一本一本が普段よりも短く感じられたり。
 わたしにはこれくらいの文章量が好きかなー。
 SF考察含めての科学的考証はネタっていうかエッセンス程度に留めておく程度が。


 今回はちとLOVE分が多目だったような。
 「自分の体臭は気づかないし、旦那の体臭は気にならないものでーす」
 とか
 「夫婦のコミュニケーションは足りてる?」
 とかですね!

 あーもーっ。
 いつまでもそうしているがいいわ!(><)
 奥さんが自身で「新婚家庭」って評していたのですけれどー。
 いや、作中がサザエさんワールドでない限りそれはまったくそうなのですけれどー。
 6巻も続いたシリーズなだけに、新婚夫婦とは思えなかったりして(笑)。


 最後の最後に旦那さんの名前が判明するって演出?も粋ですね。
 これで伝え残したことは無い!ってカンジがして。
 ……最後だから奥さん、表紙でパンチラしてみせてるんでしょうか。
 むぅ……。
 肩肘張らずに読むことが出来た希有なSFシリーズ?でした。
 次作を楽しみにしています。
 

(ラノベ指数 17/53)
3
『恋語り ─緋風の蝶─』 青目京子 著

 恋するふたりの物語──とするならば、ふたりが結ばれたという事実さえ提示できれば、それで目的達成、主題完了……ってことでOKなのかなぁ?
 うん、まぁ、それはごもっともなお話なのだとは思うのですけれどー。
 障害を乗り越えて恋心を貫いた──って。

 でもー。
 障害をいかにして排除したのか、乗り越えた先にある幸せはどうなのかとか、その辺りを明示することで得られるカタルシスってあるようにも思うのですがー。
 なんだか、こう、後味サッパリしすぎじゃない?ってことで。
 恋心の成就としても、現状では「想いを伝えた。受け入れられた」ってだけの状態のような気がしますし。
 いや、さ、その後のことも数行の地の文で触れられてはいたりしますけれどもー。
 んが、しかし、そこをっ!
 そこをもっと掘り下げてほしいって気がするのですよ、わたしは!

 恋愛物語だとして「付き合ってください」「はい」って終わってしまっては物足りなくなーい?ってことで。

 その前提となる障害がドラマティックであれば、そこでENDマークを付けるのも悪くはないのかもですけれど、そこまで印象的な何かが起こっていたのかといえば首を傾げてしまうっちうか。
 時代に染まらない、自立したオンナノコの気概……みたいな軽妙さがもっと活きていればなぁ……と思ったり。
 


(ラノベ指数 24/53)
2
『悪魔のミカタ666A スコルピオン・テイル』 うえお久光 著

 結局、あれこれ考えたり自分の枠を決めちゃったりする相手ならば、コウの勝ちは揺らがないんじゃないかって気が。
 恕宇はコウを評して、自分より強い相手との戦いしか知らないようなことを言ってましたけれど、それってなにか違うんじゃないかなー、と。
 結果そうなっているだけで戦うことへの姿勢は変わらないし、得手不得手というより単に居心地の悪さってだけで。
 勝つこと、負けないことへの執着こそ、コウが誰よりも秀でている部分なのではないかとー。

 だから「取引はしない」なんて枠を決めている洋平相手にどうにかなるような不安はよぎってこないっちう。
 やぱしコウと同タイプである菜々那の存在のほうが恐いっちうかー。
 でも、同タイプってだけの恐さなので、勝てない相手ではないかと。
 むしろ、あのコウが二度も敗北を喫するような失態を演じるとは思えないので、それだけで彼女に対しては負ける気がしない……ような?
 物語的に……ではなくて、コウという人間を考えたら、です。


 そんなふうに感じながら読み進めていったので、終盤の展開も得心できたっちうか。
 洋平でも菜々那でも、もちろん他の悪魔のミカタであろうと誰もコウの敵となり得ないのであれば、コウの前に立ちはだかることができるのは──あの人しか居ないってワケで。

 今回、恕宇をはじめとして綾先輩にイハナと、コウに次々とアプローチを仕掛けていくワケですけれども、もともと彼女たちは絶対的な存在に立ち向かう負け戦覚悟の戦士たちである次第。
 そんな悲壮感が漂うからこそ、わたしは彼女たちが好きなんですけれど、ねー。
 でもやぱし、厳しいですわね(^_^;)。
 しかしだからこそ応援する気持ちも上がるってなもんですよ!
 がんばれイハナちゃん!(><)


 いろいろ想いが交錯している展開ですけれど、ハッキリと覚悟を決めた者同士の戦いでしかないなぁ……という感想に。
 そうしたキャラのふるい落としがとてもシビアで、文章量だけでない物語の奥深さを醸し出している……ような気が。

 想いだけでどうにかなるものでもなくて、勝敗を決する部分をその想いの根底にある覚悟というものに預けているあたりを、わたしは好感するのです。
 覚悟っていうのは優先順位を付けること……って、わたしの信条に合っているので。


 次は世界の命運をかけての体育祭ですかー。
 タイムカウントされては、いやがおうにも盛り上がってしまうワケで!
 『グレイテストオリオン』で拳闘シーンをあれだけ面白く描いてくれたうえおセンセのコトですから、各種の競技の描写を期待してしまいます。
 写実的にってわけではなくて、もっと心理的なトコロで。
 でもって、コウ(の下半身)がいつ爆発するのかも楽しみ〜(笑)。
 

(ラノベ指数 10/53)

『PARTER 8』 柏枝真郷 著

 うわぉ。
 いつになくミステリ風味が強かった印象が。
 ドロシーの恋が先行き不透明で、そちらのウェイトが減ったせいかも(^_^;)。

 ……ちうかですね、「半分だけYES」の答えでムクれるなんて、なら初めから待つようなことをしなければ良いのにと思ったさ、オーガストには!
 むー……。
 たしかに結婚って互いの生活を合わせることですからオーガストの感情もわからないでもないのですけれどー。
 でもそれ以上に「ひとりで生きるための儀式」を大切にしたいっていうドロシーの気持ちのほうに共感できたりして。
 結婚って、べつに同化することじゃないという考えなのでー。

 で、そんなふうに悩むドロシーの姿に、セシルはメチャメチャ意識してしまっているワケですが!
 多情仏心。
 今回のテーマですわね(笑)。


 んー。
 意識する異性がひとりではないことが生む悲喜劇なんですかねー?
 ドラマ、ドラマ(^-^)。
 ロイドも参戦するっぽいですし、これからが楽しみー!
 

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