○● 読書感想記 ●○
2006年 【9】
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『恋する放課後♪』 川上史津子 著 加筆したとはいえ、もとが携帯サイト向けだったコンテンツだけあって、思いっきりショートな作品集。 どれくらいショートかって、230ページで19本の作品が収められているってあたりでわかるかと。 1本、10ページちょっとですしー。 それも改行多用な形式で。 でも中身が無いのかといえば、そうとも言えないカンジ。 読みかたに「ラノベ」とは異なる慣れが必要かもしれませんけれど、1冊を総じて眺めるときは形として完成されているいるなぁと思うのデスヨ。 ある小編に登場した人物が次の小編に登場していき、次々と小編間をリレーをして登場していき、最後の小編では冒頭の小編に登場した人物が現れることで鉛管構造を完成させる“輪舞”形式。 この形式はラノベの短編モノでも見られたりしますけれど、やはり19本もの作品がリレーされていく様とは重みが違ってくるわけで。 ひとつひとつの小編を作品としてみるのではなく、ひとつの舞台の中での1シーンとして捉えた方が近いのかもです。 舞台に現れる役者が次々に入れ替わっていくカンジ? ああ、文芸っていうより脚本テイストなのか、これ。 軽めなシチュエーションを楽しむものとして、こういった作品もアリだと思う次第。 |
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『伯爵と溶性 女神に捧ぐ鎮魂歌』 谷瑞恵 著 なんだか勢いで……ってカンジもしないでもないですけれど、リディアが自分の気持ちと向き合って、かつその気持ちをエドガーに伝えるようになりましたかっ。 良き哉、良き哉(^_^)。 エドガーのことを信じられないというのではなくて、アーミンに対する気後れと、問題点が整理されたから、でしょうか。 うむむ……。 これまでリディアが示してきた不可解な行為も、これで一気に氷解させられたというかー。 理不尽な怒りではないどころか、リディアの人の善さに転化させられたカンジ。 ただこれまでは、その気持ちの有り様をうまく表現できていなかっただけで。 この流れには、ちょっとヤラレたなぁ……。 ここまでアーミンがキーパーソンになっているとは思わなかったワケで。 今後もリディアとエドガーの仲の進展だけでなく、物語自体にも大きく影響してきそう。 なにがしかの力が彼女自身に備わって物語が動くというのではなく、彼女の存在自体が各キャラのトリガーとして働くという意味で。 あー、でもですねー。 ケルピー×アーミンというカップリングには目からウロコといいますかー。 いや、もう、全然アリなんじゃね?というカンジ(笑)。 アーミンはですね、もっと甘えられる人と一緒になったほうがいいと思うのですよ。 エドガー相手では、互いに本音を言い合えないようなカンジがして。 その点ケルピーとは遠慮無しにぶつかっていけますしー(笑)。 なんだか万事丸く収まる着地点が見えてきたーっ!(≧▽≦) あとがきによれば「物語は山場にさしかかりつつ転換期を迎えている」そうなのですけれども、このシリーズってリディアとエドガーが結婚したあとでも続けていけそうな気がするのですが、どうでしょう? 『コラリー&フェリックス』みたいに。 見たい〜、見たい〜(笑)。 ふたりの間に娘が一人生まれて、フェアリードクターに忙しいリディアに代わってニコが世話役しててー。 エドガーはリディアLOVE!だから娘にも「世界で二番目に愛してる」とか言っちゃってー。 でも娘は娘でレイヴンを大好きなんですよ!(どこの『カレカノ』ですか) ……ヤバイ。 妄想がふくらみまくりだわ(笑)。 あらためてこのシリーズのすごいところに気付いたのですけれど。 「特撮モノなみに、クライマックスでの場面転換が容易なところ」 ──でしょうか。 リディアがさらわれた! いまは遠く離れた場所にいるらしい! ……ってなっても、さらわれたことに気付きさえすれば、妖精の道を辿ることで一気に場所を移動できるんですもの。 移動手段がどうのとかいって、クライマックスへの盛り上がりに水を差すことはありませんし、移動の制限が無ければ英国全土を舞台にできてしまうわけで。 ご近所的なネタに囚われることなく、よりダイナミックに物語を展開できるのだなぁ……と思った次第。 もちろん妖精の道を通っていくことが「どこでもドア」的に便利であってはさすがに興醒めなのですけれど、そこは『伯爵と妖精』シリーズです。 妖精が関わってくる取引が容易なものではないことは、これまで散々描いてきているわけでー。 けっして気楽に行える選択ではないと示しているところがうまいなぁと。 自らの足で走って駆けつけることも大切ですけれど、つまりは労力を目的のためには惜しまないということが重要なのではないかと。 「妖精と取引をする」という危険を冒してでも、達したい目的があると示されるのですね。 いやはや、見事な物語構造ですわー(^_^;)。 |
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『煌夜祭』 多崎礼 著 トーテンコフとナイティンゲイルの二人の語り部がいますけれど、どちらかといえば「魔物の存在理由を探し求める少女の話」でしょうか。 互いに語り部となってからの年期の違いから、物語の軸におけるウェイトがそうなっているのかなーと。 年期が浅い語り部は事件の表層しか知らずにいて、年期のいった語り部が更に深いところを明らかにしていくという構造。 それが最終的に存在理由へとつながっていくのですが、そこまでの話の運び方が秀逸だなぁ……と。 語り部が交互に話を披露していくのですけれど、直前の相手が語った小話との関連性というか引き継ぎかたが絶妙でー。 少しずつ全体像が明らかにされていく様には引き込まれます。 相互間でどう結びついているのか書き出してみたくらいデスヨ! 書き出してみてあらためて感じたのは、1つ1つの事柄・人物で関係を抽出してみるとシンプルに表すことができるのに、そこに時間軸を合わせると歴史的意味が付加されていくという。 複雑というより緻密。 物語が進むこの場所はどこなのか、語り部である二人は何者なのか。 それを探るミステリとしても秀逸かとー。 ちうか、ジャンルはミステリなのですか、もしかしてっ!? 例えば簡単なところで、リィナの養父が何故ヤジー島の観測士になったのか、付記されている地図を見てニヤリですよー。 しかし最大の仕掛けは 語り部の性別 だったかなぁ……。 単純だとはいえ作品全体を通して徹底していたので、終盤まで確信が持てませんでした。 うぬぅ、負けた(笑)。 デビュー作がこれだけのモノになってしまうと大変かとは思いますけれど、次回作でも緻密な相関関係が物語に組み込まれていくことを期待してしまいます。 がんばってー!(^-^) |
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『学校の階段3』 櫂末高彰 著 ちょっと悪ノリが過ぎてきてるかなぁ……というカンジが。 周囲の人間の煽動されっぷりに眉をひそめてしまうというか……。 これまでのお話では「スジの通ったルール逸脱」を感じていたのですけれど、今巻の流れは「享楽的なルール逸脱」とでも申しましょうか。 描かれた内容について不快感があるのではなく、それを描こうとした櫂末センセのスタンス……に、かなぁ。 今回は天ヶ崎先輩メインのお話。 キャラの一人を中心に据えて描いていく手法には別段良いも悪いもないですけれど、過去の未練を断ち切る場面において、現在の仲間が力になったようにはあまり思えなかったかなーと。 天ヶ崎先輩が成長したという事実は良きものだとしても、もちっと仲間の存在を絡ませても良かったのではないかなーと思うのです。 信頼っちうか、絆っちうか。 せっかくの群像劇なんですしー。 レースシーンは今回も盛り上がっていて好きー。 でも、そろそろ正規のレースを催して欲しいような(^_^;)。 前巻といい今巻といい、変則マッチすぎるっちうか。 今回の引きから考えると、次巻のメインは三枝先輩でしょうか。 お披露目した新ワザの特性を考えると、ショットで刈谷先輩と対決……? あと、今巻では天栗浜高校の校舎配置図が添付されるようになりましたけれど、正直これって意味無いと思うのです。 鳥瞰図や立体図、校舎断面図ならまだしも、ただ見下ろした配置図は、こと『階段部』のお話では役に立っていないというか。 見下ろした配置図というのは、ただ推理ミステリの手法を踏襲しただけなのではないかとー。 もちろんまったく役に立っていないとは言いませんけど。 でもそれって例えば「外回り」と「内回り」を説明するときくらいで、これまで3巻続いたシリーズの中、どのクライマックスのレースシーンでも活かされるものでは無いなぁ……と思うのデスヨ。 階段部のルール、ショット・スタンダード・ラリー、どれもが3Dで行われる競技なのに、平面図を用意してもイメージ喚起にどれほど役に立つのか……と。 今巻においても、天ヶ崎先輩が上り階段と下り階段の数を気にかけていたり、無謀な立地が生み出した怪現象「立地七不思議」もやはり高低差から生まれたものですし……。 この配置図は作品をより楽しんでもらおうとの配慮や、読者からの添付の要望も少なくなかったのかもしれませんけれど、サービスの方向を間違えてしまったのではないかなーと思ってしまうのデス。 この配置図に引っ張られて、ところどころ説明過多になっているような気がしたのも、ちと不安。 正確を期すのも良いですけれど、もっと勢いで描いてしまって、残りは読み手の想像力に預けてしまってもいいのになぁ……。 そうしたアバウトさも『階段部』の良さだと思うので(^_^)。 |
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『野分け草子』 片山奈保子 著 新シリーズということを考えても、この1冊での完成度は残念なものが。 まるまる1冊を導入部として扱うような鷹揚とした手法、時流にそぐわないように思うのですよー。 今後が約束されているものだとしても、1冊の物語として起伏を与えておくべきではないかなー……と。 雨月と里稔の悲恋とか東の都の総大将とか、一見すると重きを置かれているような部分の扱いに対して無駄遣いが多すぎー。 この両エピソード、今作の中だけでも浮いているカンジがするのですけれども。 そのイベントが存在したからといって、大勢にはなんの影響も及ぼしていないという。 ……ことに雨月の態度は理解できませんでしたよ。 とてもあっさり過去のこととして流してしまっているように見えるんですもん。 母子相姦とかタブーに触れる部分は物語を動かすに足る部分ではあるとカンジるのですけれども、今作でそこは物語の軸にならずにただ基本設定に留まってしまったような……。 総じて見て、今作で描かれた流れは物語のプロローグに置かれる設定文章に収まってしまうカンジ。 まぁ、つまり、物語は次巻以降にようやく始まる……ってことがわかっただけでも幸いだったのかと。 でも、だったら──だからこそ、今作の最終章に「エピローグ」と振られていたことに違和感をおぼえてしまったのかもです。 それは今作においても終章などではなかったからです。 |
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『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー カントリー・ハウスは恋のドレスで』 青木祐子 著 ああああああ、あ──っっっっ! もうっ!!! シャーロックとクリスの、臆病×臆病の恋がっ、恋がっ イライラするわっ!(><) なんなの、この二人の「自信無いこと」に自信ある様は! ふたりとも、後ろ向き過ぎるっ! まぁ、そこがこのシリーズの個性になってるとは思うのですけれどー。 お互いに恋愛に引き気味なのって珍しいかなって思いますし。 でも「個性」かもしれないけれど、「魅力」かと言えばそうでもないような。 ストレス溜まるんですよっ、ふたりを見てると!(`Д´) クリスはいいですよ、それでも。 女の子ですもん。 でもさぁ、シャーロックの態度は無いっしょー。 今回の態度保留に対する弁明台詞とかさー、思い切り減点対象ですわー。 真剣に考えている……ってスタンスにも成り代わるカードではありますけれど、もちっと考えなさいよー、もー。 普段、もっと「できる」人柄なだけに、ことクリスに関してだけ思考力が鈍るのがねぇ……。 そんな情けない従兄を尻目に、フリル大活躍(笑)。 おしゃま……という言葉ではもう追いきれないくらいに大人なカンジ〜。 このままいくと、パメラ以上のレディになりそうで将来有望株じゃありませんこと? アップルも頭が良いというか、物事の真実への考察が深いというか。 メイン二人がグダグダだったせいもあって、周囲のおこちゃまたちが立派に見えてしまったかもですよー(苦笑)。 シャーリーとクリスは、自分たちの悲恋に酔っているような気がするー。 次こそはなにかアクションを起こして欲しい〜。 |
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『鋼鉄の白兎騎士団U』 舞阪洸 著 テンポいい〜。 良くできた1クールアニメ作品みたいに物語が進むー。 しかもメリハリついた展開なので、最後まで惹き付けられるという。 遊び心まで計算して1冊の中に収めているので、無駄な部分を感じられないんですよね〜。 うむむ……。 スゴイわー(^-^)。 現在を舞台としているお話のほうではガブリエラ18歳の頃を描いているので、遅くとも過去編のほうでは1年しか流れないんですよね。 団員の数を減らしてしまった「あの事件」というのは、やぱし今巻ラストで示唆されたことなのかなぁ。 たしかに団を二分してしまうほどの衝撃があることは想像に難くないですけど。 で、そうなると、WHY?の部分なのですけれど、それは今巻のプロローグ前に記された「誰か」の想いにあるのかなー、やぱし。 現在編のほうで「雛小隊」の面々の姿を見ることができるのは嬉しいですけれど、早く全員の安否を知りたいなぁ……。 1巻読み返したら── この御恩に報いるためにも、わたしは全力でガブリエラ様をお護りしよう。そう、わたしの命に代えてでも。 ──ってレオチェルリが吐露しているものだから心配で心配で(TДT)。 |
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『ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる』 加納新太 著 二度目のノベライズ化。 MF文庫版とは異なって、原作で描かれたシーンを、ほぼ忠実につないでいく形。 とは言っても、前半の「あいのことば」がミカコの視点パートで、後半の「ほしをこえる」がノボル視点で描かれているわけで。 んー……これがなぁ……。 視点を完全分離したことで、原作でザッピングしていた各シーンもそれぞれに振り分けられる形で再構成されているために、お話の風通しは良くなっていると思うのですよ。 んでも反対に、ノボルとミカコが、たとえ遠く離れていても心を通い合わせることができたようなシンクロニティは、とりあえず筆致上では感じられなくなったわけで。 今作ではノボルのほうに、原作で描かれなかった高校〜大学・就職期の暮らしぶりが付加されていて、そこで彼が女の子と付き合ったことなどが描かれているのですよね。 そしてミカコのほうにも、何故宇宙へ上がったのか理由が詳しく記されたりして。 そういう新しく浮かび上がった部分は、総じて二人の精神的つながりが穢れ無き純粋性であったわけではないことを示唆してしまっているような気がするのです。 その辺りが二人の共感性を減じた部分なのかなぁ……と思ったりして。 しかし純粋性は薄れたかも知れませんけれど、想いの強さは間違いなくそこにあったと感じられたわけでー。 原作では「一人で大人になることを決めた」と言葉で示されていた部分が、はっきりと明示されたカンジ。 青春小説として腰が座ったかなーと。 まぁでもやっぱり、原作のほうが雑味はあったかもしれないけれど濃縮なカンジがして、ノベライズ版はすっきりしたかもしれないけれど希釈されたカンジは否めないかなー。 受け入れやすくなったということが是であるのは間違いないのだけれど。 で、ちょっと分かったような分からなかったような部分。 タルシアンが宇宙のどこかで常にミカコ(ほか地球人)を見ていて、「さみしい」という感情のもとに呼び寄せているとしたら、タルシアンとの交戦ってどんな意味があるんでしょう? ミカコの戦いぶりの中では、手を伸ばして抱き込もうとするタルシアンの姿があったりして、そこは「さみしい」という気持ちを感じないワケではないのですけれども、こと艦隊戦のような戦いになると全く分からなくなってしまったりして。 襲われた(襲われる)から戦う……って、両者共に愚かしい存在だなぁ……と。 もしタルシアンに地球人に通じるような感情と知性があるのだとして、ミカコへ託したメッセージが本心なのだとしたら、あのような大規模な戦いに発展するのはおかしいように思うのですけれど……。 もっと穏健なアプローチの仕方を探らないの?みたいな。 ミカコとノボルの心情だけで充分なのに、タルシアンの考察まで組み入れてしまうと物語の枠に比して情報量がオーバーしちゃうってことかなー(苦笑)。 |
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『鋼鉄の白兎騎士団T』 舞阪洸 著 知恵を巡らせて窮地を脱する様は、やはり胸躍るもので。 文法的な技術論への賞賛ではなく、斬新なモノの見方に対する敬意をカンジる次第。 あるいはキャラクターが持つ「能力」という設定に頼ることなくドラマが描かれることで、キャラを一個の人間として身近に感じられるのかも。 読み手である自分と同じ存在なんだ……って。 遠い存在ではなく、手を伸ばせば届きそうなトコロにいてくれるような。 そんな目線で紡がれるお話が心地よいのも当然ですね(^-^)。 憧れの組織に加入した女の子が、現実の厳しさに負けそうになりながらも大きく成長していく物語。 自分一人で先へ進んでいくのではなくて、競い合う仲間とともにというあたりが好感なのです。 物語とは有能な一人の存在で成り立つものではなく、多様な個性を抱く複数のキャラクターたちによって構成されていくものだなぁ……と。 個性というのをただの書面上での設定に留めず、表現で成していると感じられるのも嬉しい限り。 ことにヒロイン・ガブリエラの洞察力の引き出しかたは秀逸かと。 ほんの1度くらいめざといところを見せて「優れている」なんて設定に留めることなく、要所要所でその力を輝かせているのですよね〜。 その能力のみで大きく事態が好転することはなくても、硬直していた事態が動き出すきっかけにはなっているわけで。 そうした仕組みが、嫌味にならない物語の進め方につながっているのかな〜と思うのデスヨ。 ああ、嫌味を感じないというのであれば、ライバルのドゥイエンヌの性格付けですか。 不遜で傲慢なお嬢様ですけれど、馬鹿ではないという。 目的を遂行するために、何が必要なことかを見極められる人でありますし、自らを堕することを良しとしない高潔さを持っているワケで。 どこか憎めない印象を残す人です(^_^;)。 まー、今回はエウレリアとの対比が強烈だったということもあるでしょうけれどー。 んでも、そうして対比構図を用意したところも適切だったと思うわけでー。 ほかの仲間たちもそれぞれに個性的。 今巻は導入部ということもあって活躍の度合いは抑えめでしたけれど、これからが楽しみです。 『鋼鉄の白兎騎士団』と書いて「はがねのしろうさぎ」って読ませるセンスも好きー。 でも、ちょっと気になったことも。 異世界ファンタジーとして、度量衡や時間に関する単位も独自のルールを表しているのですけれどー。 そのなかに「ヤルド」という長さを示す単位があって、1ヤルドが約2.7メートルなんだそうで。 なーんか奇妙なカンジを受けるんですよー。 2.7メートルって、普通に生活しているとなかなか基準にならなさそうな長さじゃないですか? この世界の一般的な体躯がどれほどなのか明示されていませんけれど、成人男性より1メートルもオーバーしている長さって、そうそう基本としないというか。 視覚的に把握するにも、ちょっと離れて見る必要があるような。 何故、1ヤルドという単位を規定されたのか、その策定の由来が気になりました。 例えば神殿にある女神アルアラネの像の高さが2.7メートルで、それを1ヤルドとした……といった由来があるとすれば、それは生活に神殿の影響力が大きいこととか、民衆の信仰心の高さを表すことになるでしょうしー。 生活の中から生み出された単位ではないような雰囲気を受けているのです。 次巻以降でなにか明らかにされていくかなー。 長さだけでなく、ほかの単位も興味あるー。 |
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『ヤクザガール・ミサイルハート』 元長征木 著 少年の行動によって、少女の意識改革が図られる……という構図は悪くないと思うんですけどー。 ことに少女が担う部分。 展開が進むにつれて、世界に対する彼女の認識が広がっていく様は、開放感にあふれてて好感なのです。 問題は少年のほうかな……。 行動を促す条件付けが、あまりに自分勝手に見えるんですもの。 トリガーとしての役割は果たせていても、共感はできなかったー。 物事に対して優先順位をつける覚悟はわたしの考えに合致しているので良いのですけれど、覚悟を口にするだけでなく切り捨てた下位の存在への責任の取り方が示されていないトコロが気持ち悪いんです。 優先順位をつけるって、ただ盲目的に邁進することじゃないと思う……。 “素因数分解”って単語に、少年の展開が合わせられた感が。 設定に引きずられているというか。 今作のタイトルは元長センセがお好きな4つの単語を組み合わせているそうなのですけれど、そこに「少年」の存在はどの程度のウェイトで組み込まれているのかなー。 本編のウェイトからすると50:50で少年と少女に割かれているか、あるいはやや少年よりな気も。 少女より、もしくは少女視点で描いても良かったのではないかと思う次第。 このあとに続くオチになってましたけれど、そこはもう少年中心に動きそうな展開を示唆しているので、わたしとしてはちょっと心配……。 今作は導入であって、これから少年の立場が改善されていくのかもしれませんけれど。 嫌いじゃないんですけれど、いろいろとモヤッと感が残りました。 |
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『PARTNER 6』 柏枝真郷 著 ドロシーが射撃で的に当てられるようになるなんてーっ!(オイ) 刑事として成長していきたい彼女の向上心もわからないではないですけれど、やっぱりセシルとの関係が気になるのかなー。 対等のモノを見ていきたい、持ちたいっていうか。 オーガストみたいに生きるステージが異なればそうでもないのだろうけれど、職業上のパートナーともなれば引け目を感じてしまう……のかも。 対等でないと、セシルの気持ちにも答えを出す必要に迫られることがあるかもしれないから……とか。 まぁ、割り切った付き合いとはいえ、セシルにはフェイがいますし、コトはそう簡単にはいかないと思いますけれど。 ちうか、フェイ、本当に良い子! 倖せにならなきゃウソだと思うー。 なーんかさー、セシルって彼女の優しさに甘えているような気がしてなりませんよヨ。 フェイが許しているから……ってのは言い訳だよーっ!(><) 本編ではNYの地理や習慣・風俗などを今回もまた丁寧に描かれていて。 世界がそこにあるって、臨場感っていうのかなー、感じますですよ。 空気が伝わってくるというか。 最後に畳み掛けるような事件の解決パターンにも、なんだか慣れてきたカンジ。 今回の収束のさせかたが性にはまったってだけかもしれませんけれど。 先述のNYらしさと、事件解決のためのピースが、うまい具合に絡まっているなぁ……と、ようやくわたしにも感じられてきたのかなー。 次回、そろそろオーガストが爆発しそうな雰囲気を感じたのはわたしだけ? なんだか行動に移しそうな気配をカンジるのですがー(^_^;)。 展開的にも、そろそろ波乱が欲しい頃かもですしー(いやな読み方)。 |
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『オオカミさんと七人の仲間たち』 沖田雅 著 展開にひねたとこが無くて、その素直さがすごく好感。 もちろん「第一次スーパー童話大戦」「古今東西の童話や昔話からキャラを現代に連れてくる」って着想が目を引く大切なトコロなんでしょうけれど、基本ラインは高尚な主義主張をかざすことなくいたってシンプル。 「色々抱えた女の子をやるときはやる男の子が助ける話」 ああ、こういうまとめかたが出来る作品は素晴らしい……(´Д`)。 基本ラインがしっかりしているから、話のメリハリ、物語の肉付けもシンプルに済むわけでー。 その結果、沖田センセらしい筆致が表現できていると思うのデスヨ。 どこかで見たような量産型の文章などではなく。 ……基本的には神視点の人なのかな? そしてエロい人だと思うヨ(苦笑)。 発想に奇抜さがあるのは、もはやラノベにおいては標準装備で。 ただそれはラノベの外殻を成すために必要なだけで、物語の本質とは異なる思うのデスヨ。 「設定がどう消化されていくのか」ではなく「人物が何をするのか」で作品は表現されるべきだと思うー。 ネタバレになってしまうので挙げられませんけれど、亮士くんの「騎士にはなれないけれど──」って台詞、やってくれるぅっ! 素性についてはほぼ明らかになっているなかでのこの台詞、まさに期待に応えてくれたってカンジ。 王道やね(^_^)。 大神さんは「抱えているもの」が実は深いものなんじゃないかなーって。 この1冊では収まりきらないほどに。 亮士くんと一緒に、ココロの暗部から抜け出せるといいのに……。 この辺りは次巻への期待でしょーかっ。 シンプル・イズ・ベスト。 この言葉をあらためて考えさせられる良作でしたわ〜。 次巻も楽しみさっ。 |
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『トキオカシ』 萩原麻里 著 主人公が振り回されるという状況は、ある程度までなら許容できると思うんです。 読み手の共感対象でありますし、止む得ぬ状況に押し流されていくことで感情移入度が高まっていくというか。 がしかし、それも度が過ぎると感情移入の余地もなくなって、主人公という設定だけの狂言回しに落ちてしまうわけで。 遅くとも、物語のターニングポイントまでに、流されていく状況の中で主人公には自らの視点を確かにしてほしいトコロ。 そういう考えで眺めていると、今作の主人公・誠一くんは「一回信じるって決めたら疑わない」ってスタンスを表明すると、その考えのもとで自らが為すべき行動を選んでいっているあたりが、まっことスバラシヒ! 精緻な考察や合理性に欠けている部分はあるので、完璧なヒーローとはさすがにいえなくても、窮地において行動を共にするヒロイン・眞名ちゃんにはヒーローに映っただろうなーって。 そんな二人の関係が微笑ましいのさー(≧▽≦)。 背景に複雑なものを持っている眞名ちゃんのほうが感情にブレがあって、それを抑える役目なのが誠一くんって立ち位置関係も、昨今、珍しいかなって。 ……ああ、でも、萩原センセの作品では、わりとフツー? 主人公とか作品外からの見方を考慮しなければ、オトコノコのほうが冷静な役を振られていることが多いような(^_^;)。 まぁ、しかし。 そんな複雑な生い立ちのせいか感情表現がうまくいかない眞名ちゃんですけれど、時折見せる素直な表情がカワイーですね。 嬉しさひとつでも、どう伝えたらよいのか戸惑ってしまう仕草など。 「愛」という概念は明治期以降に日本に持ち込まれたものだそうで、それ以前の男女の仲は「情」であったとのこと。 誠一くんと眞名ちゃんの仲は、「愛」ではなく、この「情」に近いようなカンジ。 ふたりが離れられない運命だというならば、べつに「愛」へ転化することもなく「情」のままに手をつないでいっても良いのではないかなー……と思ったりするのです。 にしても、ホワイトハートで書かれた頃と筆致は変わっていないようにカンジるのに、こうまで富士ミスにしっくりはまっているとは……。 レーベルの相性ってあるのかなぁ、やぱし(苦笑)。 あ、筆致が変わって無くても、構成は今作のほうがスッキリしていて好み〜。 『ましろき花の散る朝に』からすると、言い回しや叙述などの点で技術を感じたりして。 今作、シリーズ化確定っぽいですし、これから楽しみ♪ |
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『温室デイズ』 瀬尾まいこ 著 文芸作品っていうのは、問題提起するだけで答えは貴方の胸の中で……っていう形式のことを指すのでしょうか。 生活の一部を切り取って題材にするのは良いのですが、切り取ってまた生活の中へ回帰させるという手法って、結局のトコロなにも生んでないのではないかなーと思う次第。 社会風刺、そのモノの見方、着眼点こそが至高なのであって。 もしかしたらこれは「毒」みたいなものなのかも。 それを読んだ人の思考を侵していくような。 「治療薬」=「答え」の無い「毒」だから、いつまでも思考を侵し続けるわけで。 仮に読み手が「答え」だと思うモノを見つけられても、それは完全な「治療薬」ではないので一時しのぎでしかなく。 これがエンターテインメント性の強い作品であれば、「毒」とともに「治療薬」もセットで用意されているはずなのです。 だからこそ安心を得ることもできるでしょうし、また「答え」の是非を論じることもできるわけで。 もっとも1冊という本の中に収まってしまう「治療薬」だから、影響力も世間への浸透力も小さくなってしまうのかもしれませんけれど(例外的に大きな影響力・浸透力を持つ作品があるといったカンジ)。 そんな文芸論に思いを馳せてしまうほどに、作品単体への理解は進まなかったわけで。 学級崩壊に巻き込まれた二人の少女の物語。 互いの立場は違えど、対比させるほどに立ち位置が異なるとは思えなかったのです。 ただ学級崩壊の現場を書きたかっただけのような気がして。 優子やみちるの行動は、提示した問題に対してはあまり実際的な答えとは言えないと思うのですよ。 その場やある短期間のフラストレーションを解消するものだとしても。 結局、困難に愚直に立ち向かうことは美徳である……ってことなんでしょうか。 「止まない雨はない」ではなくて「嵐はいつか過ぎ去る」理論。 厳しい現実と向き合うよう仕向ける作品こそが、センセーショナルってことなのかな……。 |
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『NO CALL NO LIFE』 壁井ユカコ 著 ……そこは白倉由美センセが二十年前にすでに通ったところで、さらには十年前に再検証もしたところなんだよなぁ。 なんて思ったりすると、これがジェネレーションギャップなのかと(苦笑)。 まぁ、むしろ、グルッと一周しちゃって、いまはこのセンスが新しいと(そして過去は無かったものと)受け取られるのかなー、なんちて。 「オトナになれない子どもが、ここではないどこかへ旅立つ物語」……って、べつに白倉センセに限らず普遍的なものかもしれませんけれどー。 視点として特殊であるとすれば、「オトナになりたくない」ではなく「オトナになれない」ってトコロかなー。 成長する存在としてありながら未来を拒絶することは、もう終わっているという。 閉じているっていうか。 閉鎖された世界のなかで、物語に閉塞感を持たせないギミックとしては、携帯電話の存在が意味を持ってくるのですけれども。 でも結局は、その「携帯電話」というギミックひとつが時代性を表しているだけで、ほかに目を引く要素はわたしには無かったかなー。 有海や春川の生き方や選択は、とくに時代性とは(先述の白倉センセの例と併せても)無縁のものですし。 ……こうした好意的ではない感想を抱いてしまうのはもう、本編で壁井センセが記されているような「子どもの頃にあったことを忘れてしまったオトナ」になってしまっているということなんだと思う次第。 嗚呼……。 壁井センセの作品、ひさぶりに読んだんですけれど、やぱし筆致が合わないかも……。 もう、冒頭、一行目から「?」でしたもの。 わたしとしては冒頭の「住んでいた頃」は「老人が現れた」へつなぐものかと。 サンタの噂は老人がサンタと錯誤する状況を経たあとで説明するものじゃ……。 うーん……。 これが今風な文体でオシャレなのかなぁ……。 |
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『SHI-NO -シノ- 天使と悪魔』 上月雨音 著 わたしがこの作品を好きな理由って、主人公の気概や周囲に対するアンテナ感度が悪くないってことなのかなーって思います。 ミステリにおいて彼の役どころ──「名探偵の助手」みたいなポジションって、狂言まわしであったり、とかく振り回されがちな印象があります。 でも彼は、自らの意志で動くことを信条としている部分を見せてくれるところが、とても好感なのかなーと。 情けなくても、無力であっても。 加えて言うなら、それを自覚しているあたりが良いなぁ、と。
僕は正義の味方なんかじゃないけれど。 それさえ分かっていれば、もう十分なんじゃないかなーって思うー。 |
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『ラキアU』 周防ツカサ 著 よっし。 前作をちゃんと活かしてきましたし、この世界の有り様も大枠では明らかになってきたかな? 今作を含めてシリーズ物としての体裁を整えてきたのなら、前作の意味もわかろうもの。 ただ、まぁ、それでも前作の短編連作っぽい形式の意味は不明なままですが。 今作みたいに焦点絞って見せたほうが良かったんじゃないかなー、と。 シリーズ物って、1冊1冊がつながる短編連作みたいなもんですし。 ……電撃hpでの連載とかあったのかな? 近頃はやりのタイムループ。 や、厳密に言えば違うんですけど、その定義について作中で論じてくれているところが心憎し。 意識遡行の類なんですが、そこをハッキリさせるかしないかで、近似のガジェットを扱っている作品群の中でも存在の大きさが違うと思うー。 まぁ、量子力学云々のご高説は、ちと鼻につくというか表面的なところも無きにしもですけれど、そのぶん、物語を成立させようとする意気込みみたいなものが感じられて良し! ただ理屈を持ってきただけってカンジじゃなくてー。 物語のテンポも悪くないカンジ。 意識遡行による弊害が見え始めてからの緊迫感は盛り上がるわ〜。 それまでなにも急ぐことは無いと思わせられていただけに、急激にシリアス度を増すワケで。 その落差がたまらないです。 その落とし方も、切ないったらないし(T▽T)。 走り出すには十分な理由付けですよ〜。 シリーズ物としての側面が大きくなって、1冊の構成としては変な作品になっているかもしれませんけれど、その仕掛けを取り払えば、青春小説として良作じゃないかなーと思います。 もちろん、シリーズとしての楽しみは楽しみで、これからに期待ってことで! このシリーズ、主人公は恭二ってことなの? もしかして? |
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『ジャストボイルド・オ’クロック』 うえお久光 著 正直言って、書いてあることがわからない!(><) 難解とかいうのではなくて、文系作家が必死になってSFを模索してみましたーってカンジなので、根底に据えられるはずの理屈がイメージ先行になっているから!……だと思うんですよねぇ。 わたしがバカでなければ。 だから、SF作品として一級品とは、私は言えなかったり。 いや……。 今時分、ナノマシンとか珪素とかの素材ってどうなのよと思わざるを得ないっちうか……。 だ・け・ど! 素材はありきたりでも、調理の仕方でいろいろと見せ方はあるのだなぁ……と。 このあたりはうえおセンセの地力を見せられたってカンジ。 地の文のテンポとか、軽妙洒脱な会話とか。 カッコつけつつもどこか外している、二流なヒーロー像ってのも「探偵物語」としてイイさじ加減ですよね! ハードボイルドに届かない、『ジャストボイルド・オ’クロック』で。
「いつもてきとー・無理はやらない」 タイトルの付け方、そしてそれを物語に組み込む展開力と計画性。 |
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『アスラクライン5 洛高アンダーワールド』 三雲岳斗 著 あとがきでも告白されてますけれど三雲センセ、アンダーウォーター、好きですよねぇ。 存在としての地下世界より、足下で流れている流体のほうを気にしているんじゃないかって思ったりして。 目に見えるものが全てではなく、日の当たる世界をあざけながら独自のルールを築いているそれを好ましく捉えているんじゃないかなーって。 で、最後に残された主要キャラ登場の巻というワケで。 第二生徒会の倉澤六夏会長、途中までは好きだったんですけどー。 智春を評価しているっぽく見えたとことか(「やはりキミはいい」とかの台詞、好き)、甘党としての行動とかー。 でも「第二生徒会」としての主義主張が前面に表れてくると、なんだか途端に矮小化してしまったカンジー。 お金を基準にするのはべつに構わないのですけれども、ただケチってだけじゃあなぁ……。 使い方についても一念あってほしいと思うのに。 この辺りは、今後の展開次第なのかなー。 血を吐く思いで大盤振る舞い……とか(^_^;)。 ひかり先輩は、もうただの当て馬なので、どうにもならないポジションだなぁ、と。 普通の恋愛を意識させるための要員かと思いきや、やぱし裏があってー。 奏ちゃんの下位互換キャラじゃん、これじゃ!(><) 智春のそばに立つには理由が必要って、物語としてそれはわかるんですけれど、キャラかぶるのは惜しいというかなんというか。 ああ、しかし。 なにも接点が無いと、今回の杏ちゃんみたいになってしまうワケですか。 戦うチャンスすら与えられずに退場……。 敗北という結果すら与えられないってのは、涙を誘います(T▽T)。 彼女に比べれば、現状でいちばん戦闘態勢に入っているひかり先輩のほうが倖せなのかも……。 それにしても真日和秀くんの使い魔カマイタチは可愛いですねぇ。 カルアミルク飲まれて怒るなんて、愛らしいったら。 ちーかま好きでお酒好き。 イイネイイネ!(≧▽≦) 急げばガンガン真相に向かって行けそうですけど、わたしは2巻くらいマッタリしても良いんじゃないかなーって。 キャラもそろったところで、それぞれの距離を図るエピソードみたいなものを希望! |
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『終わる世界、終わらない夏休み
〜芹沢和弥の終末〜』 あきさかあさひ 著 |