○● 読書感想記 ●○
2005年 【11】
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『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー
恋のドレスとつぼみの淑女』 青木祐子 著 舞台をヴィクトリア朝のころとしたのは良かったかも。 青木センセって舞台設定のなかでも、風俗・生活などの面に関する描写が少ないと感じるのですよ。 だもので、キャラクターたちから「その世界で生きている」というカンジを受けにくかったというかー。 伝承か何か、まさに「お話の中に住む」といった、距離をカンジていたわけで。 現実世界に立脚した物語ですと、本編で描写されなくても、読み手の側で知識をもって補完できるのですよね。 あー、あの時代に生きてるのねー、みたいな。 本編については、オチに意表をつかれました。 二転三転として、ぐるっと一回りして元の位置に戻った──ってカンジ。 元に戻ったことに驚いたのであって、元いた場所に驚いたわけではないんです。 えー、あれだけ大騒ぎして、それで良いん?ってカンジで、不満もちょっと。 それでも当人たちが良いならそれで倖せなんだろうなーってことはわかるんですけれど……。 ぬーん……。 クリスの浮世離れっぷりが、なんとも。 ちょっと怖いくらい(^_^;)。 相棒のパメラが賢女なので、ちょうど良いのかな。 うん、パメラ、カワイイよねっ! あきセンセのイラストも好み〜。 細やかに書き込むタッチが好きなのさっ。 シャーロックとの関係もこれからどうなるのか気になりますし、楽しみなシリーズ開幕です。 |
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『空よりも青く染まれ』 片山奈保子 著 あー。片山センセの短編は雰囲気良いわ〜。 ドラマティックでは決してないんですけれど、むしろそのゆったりとした流れが心地よいといいますかー。 変に個性的な性格なキャラもいないですし、安心感が。 どこにでもいそうなキャラクターたちが、これまた誰にでも起こりそうな事象に巡り会うんですけれど──ちょっとだけ「普通」じゃないんですよね。 わたしたちが暮らす日常とは違う、その小さな変化が、夢のような雰囲気を作り出してくるワケで。 三篇収録されているなかで、二本目の「花降る野原に君がいた」が好きー。 26歳のバツイチ男と、20歳のオンナノコのお話。 設定年齢がコバルト文庫にしては珍しいというか、雰囲気も「YOU」とかその辺りのコミック誌に掲載されそうなカンジ。
そのとき、初めて、自分が泣いていたということに気がついた。
三篇通してどの話でも主人公のオンナノコが、人の気持ちを察せられる優しさを持っているという点が心地よいのです。 |
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『マリア様がみてる 未来の白地図』 今野緒雪 著 乃梨子ちゃんが祐巳の頼みを袖にした理由がわからない……。 瞳子ちゃんがスールになるかもしれない、そのお膳立てをするのが嫌だ……ってことなの? 紅薔薇の姉妹に関しての乃梨子ちゃんの見解って、これまでになにか指針が出されてましたっけ……? 「チェリーブロッサム」での彼女と、それ以外の作品での彼女の印象が、わたしの中では同一できないんです……。 ときおり別人かと思うことがあります(^_^;)。 ああ、ブゥトンのときの祥子様と、ロサ・キネンシスになられた祥子様も、別人に見えたりして……。 そして可南子ちゃんはいいように扱われているなぁ。 物語の進行のための便利屋さんというか。 いっときでも祐巳のスールに!と思っていた身からすると、現状での扱われ方は悲しいものがあります(T△T)。 可南子ちゃんの家庭の確執が、現状でどのような意味を生んでいるのかなー。 その件も含めて、なんだか遠回りをしすぎてやしまいか、と。 でもでも、今回の、えーっと……ダーク瞳子? 彼女がああまで醜い表情を浮かべたことにはホレた! むき出しの感情をぶつけてくるって、マリみてキャラでは珍しいような。 由乃さんのアレは、物事の展開を握るために表面上見せているだけで、内面は非常に冷静なトコロにあるように見受けられるのですよ。 良いですよ、良いですよ! 苦手なキャラでしたけれど、ちょっとポジションアップ(笑)。 それにしても、みんな……『TH2』のタカ坊みたいに、誰かにハッキリ背中を押してもらわないと動けないのかな〜ってところに、ちとイラチ。 もうちょっとスッキリハッキリ動いてほしいッス(><)。 ……それが『マリみて』らしさだと言われれば、それまでですが。 |
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『女魔術師ポルガラ
純白の梟』 デイヴィッド&リー・エディングス 著 結婚を決定的なモノにしたとき以来に、「してやったり」とニンマリとして笑っているだろうリセルの顔が目に浮かぶー(笑)。 お気に入りの物語が終幕を迎えるときって、どんなに美しく幕が下ろされようと、作品とのつながりを突然断たれたようなショックがわたしには生まれます。 んで、そのショックを少しでも和らげるために、また初めから読み直したり……。 もし可能であるなら、ゆっくりとゆっくりと、その時が近づいていることを意識させつつ受け容れることが出来るように──感慨が思索の中で血肉となって自分のものになるまでの時間が与えられたらなぁ……と思うのです。 今作を読み終えたとき、その時間が与えられたということに感謝の気持ちが。 すでにこれ以上は先へと進むことのない物語ですけれど、この幕引きは数十年前から(17年ですよ!)定められていたことであり、その幕引きを受け容れる準備がわたしの中でできていたんですね。 ようやく……? 『ベルガリアード』『マロリオン』『ベルガラス』そして『ポルガラ』という流れを追いかけてきたわたしには、緞帳が下ろされたような断絶感はこの終わり方には無くて、ゆっくりと光が遠ざかっていくようなフェードアウトに似た感覚を受けます。 寂しさが無いわけではもちろんありませんけれど、それでもこのシリーズは自分の中にしっかりと根差しているということに気付かされました。 だから、寂しくはありますけれど、悲しくはないんですね。 この物語とは、ずっと、これからも一緒なんですから。 |
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『紅』 片山憲太郎 著 『電波的な彼女』と世界を同じくして、時間が少しだけ昔のお話……? カラー口絵に紅香お母さんを見つけたときには感動が! わわわっ!(≧▽≦) あちらの作品ももちろん好きなわたしですけれど、『幸福ゲーム』で、規模が大きくなりすぎたかな〜という思いもあるので、ここらで舞台をいじるのは良いのかも。 ガジェットの規模と、作品の規模をそろえる意味でも。 この手の作品リンクは好きー。 あとは設定だけで終わらずに、物語の中で、人間関係を初めとして様々な事象のレベルでつながりを持っていってくれたらなぁ……と思います。 ……送り手の中だけで留まらずに(^_^;)。 ジュウは「臆病で弱い狼(絶対的に『弱い』のではなく、彼が身を置く位置においては相対的に『弱い』ってだけなんですけど)」ってカンジでしたけれど、今作の主人公の真九郎は「羊であると勘違いした狼」かしらん。 強さを持っているクセに、それを厭うあたり。 んで、自分の強さも知っているわけで。 ……強さ、ていうのとは違うのかも。 自分が、自分だけが、ふるうことのできる「力」を持っていることを知っている、デスカ。 その「力」をふるうことを悩むということが、物語として機能しているのですよね。 だからこそクライマックスで発揮されようとも、イヤーボーンではないわけでー。 そもそも事件の解決が、人智を越えた能力による決着ではなく、理によるものであることがスバラシヒ! 九鳳院の当主との言い合いは震えたね! ああっ! まぁ根底には「暴力に勝つのは暴力」って概念があるので、綺麗な──綺麗事のお話では無いのですよね。 でも、そんな世界に築かれたヒトの想いは、それは美しく綺麗なモノに映るのですよ。 薄汚れた醜い世界でも、守りたい綺麗なモノはあるのだと。
「九鳳院家の女が奥ノ院で生きるのは、宿命。そのシステムは不変である」 本当に守るべきモノは何であるのか。 |
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『ROOM NO.1301 #7
シーナはサーカスティック?』 新井輝 著 付き合おうとする上で、シーナの性別に気付かないということはあるのでしょうか? いくら男性のように振る舞ってはいるとしても。 んー……。 そこで引っかかってしまうので、シーナの恋を現実のものとしてはとらえられないでいます。 そんでもって、やぱし冴子ちゃんは良い子じゃよ〜。 こういう良い子が倖せにならないとウソだよ〜(T△T)。 頭が良い分、苦労しているってカンジですけれど。 その冴子ちゃんの台詞。 「いなくてもいいのに、大海さんはあんなに絹川君を求めてくれているのよ。それって特別なことだとは思わない?」 慧眼。 |
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『食卓にビールを5』 小林めぐみ 著 クリスマスにはビールだよね!……って、表紙イラストを見て思いました(^-^)。 ていうか、パンツ……!(≧△≦) 今回はあまり物理法則に深く突っ込んだカンジはしなかったかな〜。 このぐらいがわたしにはほどよいカンジです。 ゆるゆるっとね。 「ワケ分かんないけど、つまり食べ物屋がなくなって悲しいということを訴えたいわけだ。よかったね、ダイエットできて」 旦那サマの、こんな返しかたが好きー。 |
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『私だけが、ここにいる。』 倉本由布 著 けれんみ少ない、真っ当なラブ・ストーリー。 こういう作品が刊行されるあたりがコバルト文庫らしいなぁ……と思ったり。 それでも「自分探し」みたいなモチーフが含まれているあたりは、いまという時代に沿っているな〜と。 「孤独」といった言葉が一人歩きしているのとは違って、個人がおかれた状況を簡潔ながらにわかりやすく示されているところが好感。 複雑な設定を披露する必要がないおかげで、感情の揺らぎなどの機微に集中できているわけで。 結びも静かですけれど、しっかりと倖せをつかんでますしー。 夢物語まで遠い話ではなくて、きちんと現実の上に立脚している感が良いですねっ。 「莉子のことが、大事。だから、いつもあなたを心配しながら見てる」 お母さんの愛のカタチですけれど、こーゆー関係、良いですね。 |
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『さよならトロイメライ5 ノエル・アンサンブル』 壱乗寺かるた
著 世間では失笑をかっているんじゃないかって気が気でないコメディ・センス。 んでも、そこが好きDA!(≧▽≦) 「サジマジバーツ」とかって、もぉ……笑ったさ! そんなコメディ部分とシリアス部分の配分が、シリーズ中、イチバンだったような。 裏と表、静と動なカンジで、コントラストがうまく働いていたように思います。 ヘタレヘタレと言われつつも、トーマスはきちんと役割を果たしてますし〜。 やるときはやれる子ですよ、トーマスは!(笑) しかーし。 そんなトーマスを含めた第十三期の<トップ3>の面々より、最近では第十二期の面々の存在感が際だっていますよね〜。 ことに亮平さん! 暗躍っぷりもさることながら、みどりさんとの関係にはもぉ、ウキャー!!てなもんです。 このカップル見てると、自然と顔がにやけてしまふ……。 クリスマスだっつーことで、最後の最後はきちんとシメるし〜。 まったく、亮平さんの男っぷりったらないね! 春太の男っぷりも良いんですけれど、まだ亮平さんには及ばないかな〜。 信じているから動かない……って判断もなかなかのものでしたけれど。 ちうか、浮気・発覚!でしょうっ(笑)。 矢原黄桜、おそるべし! ここにきて新たな陣容が加わったりして、一見さんお断りな姿勢がますます強くなってきましたけれど、読み続けてきたわたしにとっては問題なし! 物語が深まってきたぞ〜……と、ワクワクしております。 あとがき。 せめて署名をして結んでくれませんと、かなり不安になってしまうのですけれど……。 簡単ではないとは思いますけれど、がんばってほしいです。 |
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『青葉くんとウチュウ・ジン』 松野秋鳴 著 キャラの名前や事象について凝った書き方をしてないのが、もぉ、ひっじょーに好感。 画数多い漢字を用いたり、当て字をしたり、そーゆーところで遊ぶ感覚にわたしはついていけないので。 あと「文字」を意味ではなく記号として扱っているような書き方とかも無いトコロなど。 昨今、その手の書き方が「COOL」と認められている向きはありますけれど、わたしはなにか違うと思う……(^_^;)。 そういった文字の使い方に始まって、文章のリズムなどの筆致についての素直さが気に入ってます。 読みやすかった〜。 はたして漫才では宇宙を救えませんでしたけれど、オトコノコの行動規範が真っ当なのも良かったー。 章立てした中で一区切りしながら進めていく流れも、全体として小気味良かったかも。 大きなモノではなくても伏線としての存在感があったとか、いわゆる争点が散漫にならずに分かりやすかったとか。 今作のように難しいことをせずに、ちょいマッタリなカンジで描いていってくれると、今後が楽しみになってくるかもー。 超肉センセのイラストとの相性も良かったカンジ〜。 |
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『イリスの虹』 七月隆文 著 ことさらに「オリジナリティ」というモノにこだわる嗜好はないのですけれど、これはちょっとなぁ……というカンジが。 あとがきでは「孤独についてのお話」って仰っていますけれど、孤独に立たされた側のウェイトが低いように思います。 「情報を奪われる」という事象についても、対人だけでなくもっと様々なパターンがあってもよかったように思います。 対人だけが強調されてくるとなんだか、その……『シャナ』みたいだなぁと。 んで、対人でない部分で効果を発揮してオオッ!?と思ったのが「空間の情報を喰った」という箇所なんですけれど、そういう概念の域は奈須きのこセンセという先達もおられるわけでー。 そんな次第でガジェット周りには新鮮味を感じられなかったかなー。 すっきり淡泊な文章は七月センセらしいなーとカンジはしたのですけれど。 「イリス」で「虹」って、かぶってませんか? 個人名で用いるにはもちろん意図があってとわかるのですけれど、それをタイトルにまでしてしまうのは、ちと安くないかなぁ……と思ったり。 |
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『灼眼のシャナXI』 高橋弥七郎 著 “一風変わった学園祭”──って、食傷気味な感があります。 ことに規模の大きさを謳うには、なんというか、もう使い古されたカンジ。 さらには主人公まわりだけを追って描いていくと、何が、どの辺りが“一風変わった“のか読んでいて伝わってこないという。 ──わたしたちが体験する(した)学園祭と、あまり変わってないような。 学園モノの物語に「学園祭・文化祭」「体育祭」などのお祭りは当然のように取り上げられるイベントですけれど、平素、学園生活のなんたるかも示してこずに、そこだけ切り取って学園という舞台をアピールするのは都合良すぎでないかと。 「学園」という舞台は、そんな祭に頼らなければならないほどに日常の中にイベントが皆無というわけではないと思うー。 「祭」というハレの日を意味あるものにするためには、やはり平素の日常が大切なのではないかと感じた次第。 街を練り歩くパレードと、パレードでの見栄えを競うミスコンだけでは、学園祭である意味を感じられなかったりして。 そのふたつだけなら、別段、学園祭でなくても可能なイベントだなーと。 いやさ、それでも面白かったんですけど! シャナと一美ちゃんの対決構図だけでなく、真竹ちゃんがね(笑)。 んでも、こーゆーのこそ、外伝扱いでみっちり描くべきなのでは〜? 学校に泊まり込みイベントとか、衣装合わせとか、なんかこう、いろいろあるっしょ!と思う〜。 他クラスとの交流も、学園全体で動いている祭ならではのエピソードだったと思うしー。 なにをサラッと流してるのかと、もうね、もうね!(T△T) あー、えーっと、あれですか。 池くん、好感度アップ? いまさら……ってカンジもするのですけれど(^_^;)。 |
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『侯爵様の愛の園』 野梨原花南 著 冒頭のヘレン・ブランチア嬢の挿話、野梨原センセのセンスの良さを感じたりして。 「あのね、私、もう身体がよくなったから、どこにだって行けるのよ」 このあたりで瞬間的にぶわわっと。 |
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『風の王国 河辺情話』 毛利志生子 著 番外編でしたかー。 表紙で気付くトコロなんでしょうけれど、タイトルしか見てませんでした(笑)。 んで、尉遅慧のサマルカンドまでの珍道中なわけです。 この人は、まったく……。 無自覚に女性の注目を集めてますよね!(笑) さらには「好き」という感情を礎とした恋愛について無知なものだからー。 恋愛について臆病……というのとは、ちと違いますよね。 本気で知らないってカンジ。 そんな慧に似合うのは、いちから愛情を教えてくれる人か、同じように愛情を理解できていない人か、そのどちらかなのでは? ウィシスは良い子だったのになー。 性格ってのもあるでしょうけれど、職業倫理からツンデレになってしまうってパターンが面白かったー(笑)。 ウィシスは自らを律して努力できるオンナノコという点では翠蘭と近しいので、たぶん彼女ではダメだったのかなーと。 あえていうなら翠蘭とは全く異なる性格のオンナノコでないとー。 全体の展開としては── 「無力だと覚悟しつつも行動を起こすオンナノコを、深く関わり合いになることを避けながらも助けずにはいられないオトコノコ」 ──だったのが良き哉。 んでも、やっぱり翠蘭とリジムのイチャイチャカップルが見たいのだー(^-^)。 |
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『Holy☆Hearts!
夜明けをつげる、ほほえみです。』 神代明 著 途中、行く先が定まらずに迷走した感を受けていただけに、最終巻を上梓できたことには素直に賞賛です。 シリーズ作に、ひと区切り付けることができたことは、いろいろなことを考えてもスゴイことなのではないかと。 ……でも、迷走ぶりは最終巻でも感じてしまったかなぁ。 キュノの物語だったならば、「銀の弾」の作用について詳細を明らかにすることは避けてはいけなかったと思うー。 エクスの因縁を解決して物語の幕──って、この作品は誰のお話だったのかと。 状況的に区切りがよいから幕引きにしたという感が……。 あとがきや御自身のサイトなどで、神代センセもイラストの緋賀センセも続編の可能性を匂わせていますし、今回で幕引きするからといって全てを明らかにするワケにはいかなかった……というトコロ? それでもやっぱり、「はじまり」と「おわり」が流れとしてつながってないという思いは強く……。 「キュノがスペランツァになったこと」や「エクスが復讐を果たすこと」などは、物語の発端には無いものだと思うのです。 ……しいていうなら「キュノがシスターになる」であれば、違和感は感じなかったかも。 それももっと突き詰めれば、「なぜキュノはシスターを夢見たのか」が解決されなければ意味無いとは思いますけれど。 それにしても──。 走行中の列車から渓谷に落ちて、恐らくは死亡したと思われる──って、再登場フラグとしか思えないんですけど!(^_^;) |
→bk1(書影無し) 5 |
『銀盤カレイドスコープ ダブルプログラム:A long
wrong time ago』 海原零 著 キャラ掘り下げの巻。 メインを張るのがドミニクと至藤響子のふたりってのは意表を突かれましたけれど、ことタズサとの関わり(因縁?)を考慮するならベターな人選かなっと。 シリーズクライマックス前に主人公を外した視点から描くって良いな〜と思うのです。 緊張が良い意味で緩やかになりますし、クライマックスへ向けて人間関係に厚みが出るかと。 でも、響子はまだしもドーラは脱落……かなぁ。 五輪で陰湿な手に出ないといいですけれど。 ケリガン事件よろしく。 スケーティングのシーンも、かなり濃密でした。 1・2巻のころに匹敵するかも。 んでも響子とドーラのふたりの視点から競技を見てるので、試合全体の統一感は薄れちゃったかなー。 ザッピングする部分は、ちと読みにくかったデス。 ふたりの視点をもって描くなら、もちっと互いのシーンでクロスオーバーさせる部分が多くても良かったんじゃないかな〜って思います。 あるいは時間軸をズラして、短編×2本にしてしまうとか。 今回の手法では、ただ交互に視点が入れ替わっているだけのような……。 ……タズサに向き合う姿勢が分岐したという意味があったのかな? 乗り越えた立場と、堕ちた立場──みたいな。 とまれ、次回はいよいよバンクーバー五輪ですか! 楽しみ! 1冊で終わらせないでも良いかな〜なんて思っております(^_^;)。 あ、イタリア少女との再会とかないのかなー。 |
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『最後の夏に見上げた空は3』 住本優 著 ライトノベルならでは!っていう作品があると思います。 ジャンルに寛容であったり、旧来の価値観にとらわれなかったり、意図して特定の読者層へ向けてのネタであったり……。 ライトノベルという存在がどういったものであるのか、それはヒトそれぞれ多々あると思いますけれども、なんというか、ここでは懐の深さに支えられて(依存して)上梓されるような作品群とでも言いましょうか。 んでもね、この作品のこの巻だけはそういった枠組みには当てはまらないような気がします。 むしろライトノベルであることを求められ、必要のないハズの無理をして、すごくすごく遠回りをしてしまったのではないかと思うのです。 伝えたいことは普遍的なことで、なにもそれはライトノベルの懐の深さに頼る必要なんてなかったのに。 それを必要としていたのは、作品とは無関係な部分であったような気がしてなりません。 もし「住本優」という人がこのまま埋もれてしまうようなことがあれば、ライトノベルという枠を、少しだけ嫌いになるかも……。 この巻だけで十分な気がするんです。 名門や小谷ちゃんの気持ちを思うと。 1年という期限に作品の中ではさして意味があったようには思えません。 1ヶ月や1週間、1日ということでも構わなかったような気がするのです。 限られた時間に切なくなるのではなく、大切な人を残していくことが哀しくなるのだと思うから。 で、も。 残された人がいつまでも相手のことを覚えていると誓うのは……どうなのかなー。 永劫に気持ちを縛り付けることは、なんか、こう、すっきりしないのです。 「おぼえていてください」よりは、「忘れてください」のほうが、ほら……ね?(^_^;) 倖せのカタチは千差万別でしょうけれど、気持ちを縛り付けていては倖せになることはできないんじゃないかなぁ……と。 人が死ぬことを自然の理だというならば、哀しみが洗い流されるのも、気持ちが移ろっていくのも自然だと思うー。 すごく透明度の高い樹脂でかためられた箱の中の世界を覗いているかのような感覚。 現実感には乏しいんですけれど、そこで育まれた気持ちはホンモノだったと思うのです。 とても綺麗な物語でした。 |
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『最後の夏に見上げた空は2』 住本優 著 んー……。 なんか、こう、ひと味足りないカンジ。 発端が外的要因にあるなら、外を映さずに内的世界だけで終始してしまうのはいかがなものかと。 外の世界が関係ないなら、発端も内的要因だけに留めておけばスッキリしたのかなぁ……なんて思ったりして。 心情変化がなりゆきで──ってカンジてしまうのです。 もっと狂おしく切なくなるような、きっかけはなかったのかと。 そういう静かな流れが作品のウリであるのはわかるのですがー。 |
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『最後の夏に見上げた空は』 住本優 著 誰か他人に寿命を告知されなければ「死」を意識できないのなら、ずいぶんと幸せな人生をおくっているのではないかな〜って。 生きている限り、常に「死」はすぐそばに寄り添っているのに。 もしこの作品が「遺伝子強化兵」となった少年少女たちの、残り1年と定められた人生への哀惜を惹起させようという意図で作られているなら……ちと陳腐。 「遺伝子強化兵」への哀惜は、余命で表すものではなくて戦時という時代背景に由来するもので表すべきではないかと思うから。 余命云々で別離に切なさを謳うなら、それは病院で告知を受けるのと同じ。 病院で「癌」と告知されるのではなく、「遺伝子強化兵」って告げられるあたりが、ライトノベルがライトノベルであるところなのだと思ったりして。 んで実際に「遺伝子強化兵」としての哀惜や別離への郷愁が作品の中で重要なタームになっているのかというと違うわけで。 むしろ、そうしたトコロは表面的なもので、本質は別にあるんじゃないかなぁ……って感じたりして。 本当に伝えたいことを、なにかけれん味ある要素で包まない限り表に出すことはかなわない……ってあたりも、ライトノベルだなぁって思うのです。 けれん味がただの客寄せに終わるのかそうでないのか。 ちょっと楽しみです。 |
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『女魔術師ポルガラ2
貴婦人の薔薇』 デイヴィッド&リー・エディングス 著 きたきた、エラト公国物語! これでこそ「ポルガラ」のお話ってカンジです。 1巻はベルガラスのお話をなぞっていただけのようなカンジだったので新鮮味が薄かったのですけれども、今作はもう新しい事柄ばかりでー。 んー。 むしろ「魔術師ベルガラス」が「ベルガリアード」の補講であって、「女魔術師ポルガラ」が外伝の趣を呈してきたというか。 国の成り立ちから歴史の中に埋もれるまでの興亡記?は、簡略ながらも力強く骨太な物語だった〜。 センダリアという土地に、こうまで重要な意味があったなんてー。 アレンディアの歴史を鑑みるに、トルネドラ人ってマーゴ人に次いでタチが悪い民族なんじゃないかって気が。 西方諸国のトラブルの3割くらいはトルネドラ人が原因作ってませんか? 残りはアンガラク人5割、ニーサ人1割くらい(苦笑)。 んでもって、物語は新たな千年期へ突入。 リヴァの一族とともに歩む、第四の時代が始まったわけで。 残り一冊となったところでこの展開は……ちと流れ早い? このあとは旅から旅への連続でしょうし、今作の終盤に描かれたような出来事が繰り返されるだけ……ではないんでしょうね。 そうした旅の中でも様々なことがあったということなのかなー。 最終巻が楽しみです。 でも今回、文章にちょーっと違和感をおぼえたんですけれど。 ポルおばさんが話す口調ではないというカンジを、ところどころに。 キャラクター性を考慮して語尾などに変化を与えるべきところを、直訳気味に書かれてしまっているような……。 気のせいかなー。 |