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『戦う司書と恋する爆弾』 山形石雄 著
「過去にこんなことがあった。だから現在、こうなっている」
──っていうのは、物語じゃなくて事件簿。あるいは歴史書なんじゃないかなぁ。
人物をとりまく世界状況よりも、その状況におかれた人物の感情のほうが、物語を読むときわたしには大切なのです。
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『滅びのマヤウェル
その仮面をはずして』 岡崎裕信 著
『「小説家になるための職業訓練」をしていた』と仰るだけはあるなぁ……とカンジたりして。
なんというか、無茶な論理展開が少ないように思えました。
物事の因果が整理されているというか。
筆致もわたしのセンスからは大きく外れてなかったですし。うん。
ただ、スッキリされすぎているせいか、こう、訴えかけてくるモノには乏しい……かなと。
わたしはこの作品、「僕」という一人称で語る「倉持有樹」が主人公だと思って読み進めていました。
んで、ヒロインはもちろん「神野真綾」。
でも読み終えたいま、そうだとすると、おかしいような気がしてきて……。
有樹が持つ「男装」という最大の設定を活かす場合、それをカミングアウトするか否かにあると思います。
「男装」という個人の都合を秘密にしたまま世界の危機を見逃すのか、それとも自己を犠牲にして世界を救うのか──あたりのトレードオフ。
しかしながら有樹は、この個人の秘密をさして重要なモノに感じていないんですよねー。
こうなると、天秤のもう一方に乗せられている「世界の危機」の重みも減じられてしまう気が……。
そして実際には、有樹の性別と世界の危機を救うことの間には、きちんとしたトレードオフの関係が成立していないので、有樹自身にクライマックスでの葛藤が起こってないんですよね……。
んで、ここで目を向けるのがヒロインと思っていた「神野真綾」。
彼女の場合、秘密にしていた部分……能力者という人間を喰い殺したいという欲望……が、友人を失いたくないという願いとで天秤にかけられています。
欲望に従えば未来を失い、未来を守ろうとすれば己を殺す。
真綾はクライマックスできちんと葛藤が起こっているんですよー。
葛藤するキャラクターとそうでないキャラクター。
どちらに読み手として心を揺さぶられるのか問われれば、それはもう前者です。
──もしかして、この作品の主人公は、真綾なのかな?と。
そうして当初の考えをあらためて立場を逆転して考えると、悩み抜いた主人公を最後の希望となって救うヒロインという構図がクライマックスに成り立つと思うのですが、如何に?
先述の訴えてくるモノの少なさって、こうしたトコロの錯誤が関係しているのかな……とか思ったりして。
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『白い花の舞い散る時間』 友桐夏 著
推理ミステリの部分は楽しめましたー。
各人の発言の中から要素を取りだして、それをパズルのように組み合わせていってひとつの事実に辿り着くような作業の部分が。
少々、複雑に関係をいじりすぎなきらいもあるかもですけれど、その複雑さも含めて「推理ミステリ!」ってカンジもします。
んでも、推理部分の整合性に比べると、キャラクターの心情とか言動に関する描写が薄いかなぁ……って。
取り立てて目立つ個性が見当たらず、個々の魅力に乏しいような。
おもだった言動も、すべて推理を進めるためのモノのように感じてしまいましたし……。
ストーリーラインにしても、推理をして、解決して、さぁどうだ!……っていうような、「推理の結果に得たモノ」へのカタルシスが欠いているように思うんです。
解き明かした意外な?事実が、どのように光明となっているのか……。
うーん……。
やはりというか、なんというか、推理披露の場面になって滔々と語ってしまったり、推理の答えへの導き方を強引だったと、わたしが感じてしまっているせいでしょうか。
なんか、こう、答えが分かっても、そこで揺さぶられる感情は……とくに無かったかなぁ。
あとは、ミズキ視点の独白一人称なのか、第三者視点の三人称なのか、ときおり分からなくなったのは……わたしの読解力不足?
とくに後半は、ちと混乱気味デシタ。
ぜんぜん気がつかなかった。それは文句なしにこの五日間でいちばんの驚きだわ。
……って言ってるんですけれどもー。
用意されたモノに作為があるなら、それを表舞台へ引き出した人が最重要容疑者である──なんて考えてしまったのは、ちょーっと斜めに読みすぎデスカ?(苦笑)
なんていうか、それはもう基本でしょう!みたいなカンジで初めから構えてしまっていましたことよ。
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『疾走! 千マイル急行 下』 小川一水 著
ど、どーしてテオとローラインの関係を、もっと……!!!
ああ、小川センセらしいなって思いましたヨ(T▽T)。
そんな次第で恋愛色薄めではありますが、職業意識が高くて、自己を求める哲学というか、オリジナリティとはなんぞや?といった追求が描かれているあたりは、まさに小川一水節とでもいうような作品でした。
自分らしさ──アイデンティティを探る旅でもあったのではないかと。
全てを失って初めて見つけることができたというのは皮肉ですけれど、それは、いかに虚飾に包まれているかの反証でもありますし。
なにかを身につけて、それを「自分らしさ」と称するのは、すごく浅ましいことで。
本当の「自分らしさ」は、身ひとつになったときに現れ出る、言葉だったり、行動だったりするのですよね。
誰がスパイなのか──というミステリ部分も、古典的な仕掛けながら面白かったかなー。
この手の仕掛けがあると、最後まで緊張感が保たれるような気がします。
「エイヴァリーがなくなったのにエイヴァリーの通貨をいただいても、仕様がございません」
エドワードはそう言って冗談にしたが、テオは笑わずにポケットから銀貨をいくつか出し、彼の手を引き寄せた。
「また、使えるようになるから」
今度はエドワードが呆然とする番だった。手のひらの重いコインをちょっと見つめ、何か言いかけてから、今度は深々と感情のこもった礼をした。
「では、頂戴いたします。これを使える日を楽しみにいたします」
テオの成長ぶりが窺えるといいますかー。
諦めてないとか、希望をもっているとか、そういう不確定な次元の話ではないような気がするのです。
自分が動くから、みんなが一緒だから、その未来へと通じていることは揺らぐことがない真実であるとの意識。
自信を持っているなどというほど仰々しいものではなく、当たり前のことだと受け止めているというか。
ま、本音を言いますと、この巻でのテオの成長が著し過ぎるように思うので、もう少し緩急付けて描いていただけたらなぁ……と思うのですヨ。
もちろん、ローライン絡みで!(≧▽≦)
でも、あの二人の今後なんて目をつぶればすぐに思い浮かべることができるといいますかー(笑)。
だってねぇ。
政財界TOPのレディ&ジェントルマンですよ?
……ねぇ?(^_^)
アルバートとフローリーの関係もよ良いですし、なんといってもキッツが持ち込んできたあの話!
再びTMEが大陸を駆けめぐる物語が読みたいなーっと。
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『パートナー4』 柏枝真郷 著
互いに意識し始めちゃって、もー!(≧▽≦)
「オトナ」であろうとしているから無茶できないことが、ストレスになってるのかなー。
ま、そんな秘めた想いを持ち続けるって姿勢も好きですけど。
「オトナ」として対処しようとするから、変な自暴自棄も見せないトコロも好感。
セシルのほうが意識している度は高いみたいですけれど、なんというか彼、恋愛オンチだったんですねぇ……。
しかし、「好きだ」と告げた女性は何人もいるが、「愛してる」という言葉を口にした相手は、実はこれまでひとりもいなかった。
なんでしょうか。この深層心理に深く根ざしているようなカンジ。
うーむ。
ソフィアとかロイドとか、周囲にいる人が彼に優しく接しているように思えるのにも、なにか関係あるのかなー。
んで、そーゆーセシルの心情を、言葉ではなく雰囲気で察しながらも、恋人のフリをしてくれるフェイが……。
すごくイイ女っぷりじゃない?
全般に甘やかしてくれる存在ってわけでもなく、理解をして、ひとときの安らぎを与えているってカンジ。
アメリカという国の風俗についても精細な描写をするのが柏枝センセの魅力なわけで。
それは今作でも見事に発揮されてますねー。
NYとその近郊の土地柄が、すごくわかるー。
物語としても、NYの大停電を今作は描いているわけですがー。
うん。クライシスものは仕掛けが大がかりなせいか、盛り上がりますねー。
もっとも、実際に起こった事件を題材にしているので、意図して仕掛けたというのとはちと違うのですけれども。
ミステリとしても勢いで押したカンジはありましたけれど、説明は足りて……たかな?
勢いで押すのは、このシリーズの特徴でもありますし(笑)。
ひと仕事を終えた二人が、コーヒーとベーグルで休んでいるシーンは良かった〜。
まさに戦士の休息ってカンジがして。
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『少女には向かない職業』 桜庭一樹 著
物理トリックであろうと心理トリックであろうと、推理ミステリから考えると桜庭センセのトリックの使い方は危なっかしいように思います。
そうした細々とした論理の構築を要する箇所より、桜庭センセの魅力というのは、揺れ動く感情の提示にあると思うのです。
そう考えると、ミステリとしてのガワを「交換殺人」を仕掛けるという時点、あくまで事件の前哨で留めているのは好判断かな〜と思います。
交換殺人って犯人格の人が主人公を含めて複数人用意されるじゃないですか。
んで、その犯人格の人同士の感情のぶつかり合いから、物語が動いていくわけですしー。
そうなったら、もう、桜庭センセの得意分野っていうか。
<ミステリ・フロンティア>というレーベルで、いかに御自身の魅力を描くかについて、とてもよく練り込まれた作品なのではないかと。
ただ、結末については、反対に<ミステリ・フロンティア>というレーベルの縛りが出てきてしまったのかなぁ……とも思ってしまうのです。
ちょっと、落としすぎ、ではないかと。
突き放している……って評しても良いかも。
他のレーベルで描かれているときの桜庭センセは、結末へ至るまでの一連の流れの中から主人公が見つけ出した新たな感情をもって物語を結んでいたように思うのです。
そうした流れを感じ取れない今作は、主人公の前向きな感情で結ぶことは青臭すぎると判断されたのかなぁ……と。
<ミステリ・フロンティア>というレーベルで描くには……です。
そうすることで一般文芸への足がかりをつかんだとも言えますけれど、わたしは……んー、ちょっと不満。
青臭くて教訓めいていても、やっぱり結びでは、主人公の「声」を聞きたいなっと。
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『銀盤カレイドスコープvol.5
ルーキー・プログラム:Candy candy all my rules』 海原零 著
海原センセの筆致を好きだなぁ……って思うところは、文字で書かれたことからビジュアルイメージを惹起させられるところです。
イメージを惹起させるというのは、文字を重ね並べて厚く説明することでも、平易な言い回しに努めて考える手間を省くことでもないのだと思わされます。
さらに今作で示すならば、シリーズも5作まできており、タズサ以下のキャラクターたちの言動が読み手であるわたしにも理解されているという点。
「私が自分の正義と価値観に基づいて生きている限り、この世界では悪者にされちゃうみたいなの。だったら……」
彼女の笑みから、冗談の要素だけがスッと抜けて──
「仕方ない……じゃない?」
タズサの哲学を身に染みてわかっているから、どんな言葉を口にしようが、そのときのポーズを思い浮かべることができるというか……。
ヨーコちゃんを含め、タズサのことを「丸くなった」って評していましたけれど、それって風格が漂い始めた……ってことなんじゃないかなぁ。
もちろんBIG4相手にはそんな余裕もないでしょうけれど。
んでも、ひな鳥がキャンキャン啼いていることなど、一介の些事として取り扱わない態度に、そんなカンジを受けるのです。
アレッサとかオルガとかと話しているシーンとかも、ずっごく余裕が見えましたし。
追い抜く対象であった相手と、すでに肩を並べているとの自覚が見えるというか。
うーん。オトナになったなぁ……(笑)。
あのシーン、すっごく面白かった!(≧▽≦)
まぁ、キャンディには悪いですけれど、いまのタズサの相手ではなかったですね。
実力もそうですけれど、気概、が。
……ワタシには理解できない発送だった。スポーツにしろ芸能活動にしろ同じ。頑張ってチャンピオンになったとして、それを他人に認められて初めて報われるのだ。
人気者になれないのなら、スケートなんてやってなんの意味があるの? そうでしょ?
タズサやリア、あるいはドミニクやガブリーと決定的な違いが見えたのはここかな。
何故スケートをやるのか。
その問いにリアは「至高の存在になるため」と答えてますし、その気持ちは他の3人も同じなのではないかと。
そこにある関心事は他人と比べて位置を探るのではなく、どれだけ自らを高められるか。
報われるなどはもちろん考えておらず、ましてチャンピオンなどという地位は、そこへ至る過程で得られる副産物ぐらいにしか考えてないってこと。
タズサとドミニクの対立や、リアへ向けられる感情など、他の存在を無視しているわけではないでしょうけれど、あくまでそれは個人を意識してのモノ。
「他人」なんて顔も名前もしらない存在がどう思おうがどう考えようが、それへ意識を払うことを彼女たちは無意味だと知っているわけで。
次巻は世界選手権でしょうか。
いよいよリアとの再戦……?
たーのしみ〜♪
ヨーコやキャンディ視点の物語もタズサの魅力を新しく見つけ出していってくれましたけれど、どちらも「本気の桜野タズサ」は描かれていないんですよねー。
ペアのときもしかり。
フィギュアスケーター・桜野タズサの本気の滑走、期待してます!
あー……。それとですね……思わず目を疑ったトコロ。
怪我で滑れないタズサは、子供たちに指導を請われて丁寧に教えていた。
お……オトナになったなぁ、タズサ(笑)。
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『黒魔女さんが通る!!』 石崎洋司 著
藤田香センセのイラスト目当てで購入(^_^;)。
キャラクターを用意しておきながら、キャラを動かさない・いじらないお話ってあたりが、嗚呼ライトノベルじゃないんだなぁ……ってカンジます。
しかもカバー折り返しのとこ、ウソかい!!
メグ、ヒロインじゃないよ!
がっかりだ!(><)
まー、ローティーンあたりの子どもたち向けに教訓めいたことを織り込んだ、道徳っぽいお話……ってカンジ?
なので内容についてあまりどうこういうのは、ちとはばかれるかなぁ……。
プロローグにあたる『おもしろい話が読みたい!(青龍編)』は読んでおいたほうがいいかなーと。
ギュービッドとの馴れ初めっていうか、チョコが黒魔女を目指す意気込みみたいなものが分かる……と思う。
今作だけでは、ちょっと導入部がいきなりすぎかなーって気もするので。
青龍編で「まずは服からだな」ってギュービッドが言ってる藤田さんの挿絵があったんですけれど、今作の第2話の伏線だったりする??
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『灼眼のシャナ X』 高橋弥七郎 著
ヴィルヘルミナも先代の"炎髪灼眼の討ち手"マティルダも、キャラクターのタイプとしては好きなんですよね。
んでも、いま、本編の流れを折ってまで彼女たちの話を知りたいのか……って尋ねられたら、ちょっと困ります。
彼女たちの話より、シャナたちの話を求める気持ちが強いかな……。
本編を進めるために、あるいはクライマックスへの布石として、マティルダたちの活躍が重要な意味を担ってくるというのでしたら、ここまでの流れの中でもっともっと彼女たちの存在をはしばしに臭わせておくべきではなかったのかと。
今回のお話で紅世の王とフレイムヘイズの戦いに壮大な歴史と意義があったと示されたと思うのですが、それなら、シャナたち現代に生きる者にそのことをもっと意識させておけば……。
どうにもここでの話の広げ方が、突然なカンジを受けてしまうのです。
さらにいうと壮大なスケールを示すことを1巻でまとめることに挑戦した結果、著名人の使い捨てに陥って、本来持つべきはずの役割に疑いを残すことになっているような……。
傑物なら傑物らしく、それらしい活躍の場があるべき……だと思うんですけどー。
キャラの使い捨てもそうですが、重要な事件などの事態進行の説明が、ほとんど地の文で行われてしまうところもわたしにはネガティブな点でした。
そーゆーイベントこそ、キャラクターの行動をともなって示すべきなのではないかと。
身体を張ったアクションという意味での行動だけでなく、事件を体験したキャラの心情を交えた独白とか。
マティルダの言動は、なかなかにすがすがしいモノで良かったです。
あーゆーキャラは好きですねー。
むしろヴィルヘルミナの強い感情が見て取れて、そこはこの巻で有意義だったトコロかなー、と。
無表情系キャラの心情が表れるというのは、萌えポイントなり〜(笑)。
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『バード・ハート・ビート 舞姫天翔!』 伊東京一 著
既存のレース物をアレンジした作品って好きー。
競馬とかF1とか。
この作品ではバイクレースがモチーフになってるそうですけど、空気の流れを感じるって点では雰囲気近しいかな。
翼を広げて制動かけるとこなんて、上体起こしてエアブレーキ使っているトコに似てますし。
ま、レース物ではなくて少年のビルドゥング・ストーリーでボーイミーツガールが根幹なんですけどねー。
ん、面白かった!
少年と少女のコミュニケーションが少しずつ成り立っていく様が良いのですよねー。
んでもって、突然現れた少女がきっかけになって、それまでの安定した交友関係に変化が訪れるあたりも甘酸っぱいデス。
みんな、バレバレな気持ちが一方通行なんだよー。
知らぬは本人ばかりなり……ばかりか!(笑)
鈍感! バカ! でも好き!
嗚呼……。
それでもララは鳶に油揚げをさらわれ状態か……。
先にアクション起こしたほうが強いんですよねー。
とくに鈍感な相手だと……。
ライバルに対して意地悪を仕掛けるあたり、その心意気や良し!
がんばれ!
物語としても、一度敗北を喫した相手・事態に対して、臆せずにリトライしていく熱血さがステキ。
失敗することは恐い。
その恐さを知っていることから、彼らは無知ではありません。
恐さを知った上で、なお乗り越えようとする。
それを勇気と言うのです。
わたしはその姿に感動します。
必殺技はねっ、失敗を繰り返してこそ会得するものなのさ!
どれだけ失敗してもいいんです。
ここぞ!というトコロで決められれば!!
そして彼らは、負けることよりも恐ろしいことを知っています。
それは心が折れてしまうこと。
届くかもしれないことを諦めてしまうこと。
友人との絆や、誇りをかけた約束。
かけがえのない大切なモノを失うことを、なにより彼らは恐れるのです。
そのためなら──!って、もう、ちょー熱いッス!(≧▽≦)
そこかしこで涙腺ゆるみまくり。
なかでもイチバン「うわ〜ん(T▽T)」ってキタのが、ミルヴィル(←鳥)の独白!
どれだけ遠くに離れていようと、
この視力が届く限り、その姿を見誤ることなど絶対にない。
今行くぞ。
待っていろ。
もう二度と離しはしない。
鳥だよ、鳥!?
なのになによ、このカッコよさわ!(≧▽≦)
諦めることに慣れてしまった敵方のカッコ悪さが余計に引き立つというか。
「運命」なんて言っているようじゃ、ダメですよねー。
んでも、そういうキャラ対比も、うまいなぁ……と思うのです。
諦めてしまった者と、諦めない者。
うん♪
仲間の騎鳥士たちが集って主人公テオを助けるシーンがあるのですけれど──。
物語として惜しいなとわたしが感じたのは、その集う理由。
義を重んじて集うのであれば良かったのですけれど、個々の利がもとになって集うんですよねー。
そこが残念。
立ち塞がる障害を排し、主人公を前に進めるための役割は果たしているのですけれど、んー……。
仲間を想う志のもとに集った方がかっこよかったと思うー。
今作での着地点は少年少女の恋愛モノとしてはハッキリしない微妙なカンジがしましたけれど、こういうのも……アリかなぁ。
身分の違いがあるからこそ、プラトニックな恋は綺麗なままであるわけですし。
まー、でも、あの王様にリーンはもったいないというか、そもそも王様も便宜上そうしているだけってカンジもしますし、テオが手柄を立てれば婚約解消に至りそう。
ちうか、王様にはカルロッタがいるでしょ!(笑)
この人たちもバレバレだー!
泣いて笑って熱くなって。
激しく続刊希望です!(≧▽≦)
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『サウス・ギャング・コネクション BAD×BUDDY2』 吉田茄矢
著
主要キャラクターの性格付けをされたのは、吉田センセ御本人なのかしらん。
そうだとするとセンセはかなりの恐妻家のような。
我の強いキャラばかりで気が休まらないと申しましょうか……。
んでも昨今のムーブメント──ツンデレ隆盛の動きを思うに、編集サイドから申し入れがあった可能性もあるのかなぁ……とか考えてしまうのですよ。
キャラの方向性に大きな偏りがあると思うので。
愚直で不器用な主人公像は好きなんですよね。
でも今回は行動するにあたっての動機が、わたしにはうまく伝わってこず……。
ヴィスコに取引材料にされた写真。
あれってそこまで重要なモノ……なのかな??
わたし的にはバディ物としてウォルターが役者不足に思えるので、いっそのことシルビアとの恋愛モノに変化しちゃってほしいなぁ……とか思ったり。
深山和香センセのイラストは良いですね。
口絵カラーの4枚目には笑っちゃいました。
もう、この場面まで早く読み進めようって気概に!(笑)
1枚目も、えーと、ドキドキドキ……。
ヒルゼの存在があまりにも謎のままなので、続刊希望デス。
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『ガールズ・ブルー』 あさのあつこ 著
現在を生きることへの閉塞感を描くのは、まだまだ文芸畑の作家さんに一日の長以上のモノがあるのかな……。
「現在」という素材でこれだけスッキリと勝負されると、一般に言われているところの(そしてわたしもよくよく目を通している)ライトノベルという分野の作品は、少し手の込んだ料理に思えてしまいます。
時代性に左右されない分野である……って言い切っちゃうことができれば救われるかもしれませんけれど、ね。
でも時代を映さない芸術って、軽薄と紙一重な気がするんですよね……。
反面、時代を映しているからといって良い面ばかりでもなく──。
むしろ「現在」にこだわってしまうと、未来へ続く指標も示せなかったりするわけで。
生きること、あるいは生きているという証しを立てることを優先してしまって、答えを先送りにしてしまうといいますか……。
そういう執筆面での方向性の違いから、文芸畑の作品にはライトノベルに見られるような「答え」や明瞭な「結末」は見出しにくい……のかな、なんて。
そんな次第で、物足りないモノを感じたラストについては「作風の違い」ってことで納得したうえで──うん。この作品、好きかもデス。
先のことは見えなくても、いまを生きる自分たちの存在を確かなモノだと噛みしめている登場人物たちに、わたしは好感を持てました。
他人に対し、かわいそうと泣くことに、人はもう少し慎重でなければならないのだろう。助力できるなら、救えるのなら、最後まで支えつづける覚悟があるのなら、泣けばいい。勝手に泣いて、かわいそうがって、自分の気持ちだけ浄化して、微笑んでサヨナラなんて、無責任だ。無責任な覚悟のない優しさは、ただの憐れみにすぎない。
彼女たちが叫ぶ言葉の全てを全て、正しいとか、素晴らしいとか、大切だとかは思いません。
間違っていることもあるかもしれないし、醜いこともあるかもしれません。
んでも、本気なんですよね。
その想いの強さは伝わってきます。
本気の想いを持てる存在へ、わたしは敬意を表します。
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『魔術師ベルガラス3
王座の血脈』 デイヴィッド&リー・エディングス 著
現在する魔術師勢揃い……と思ったら、ダーニクがいないですね。
彼はベルガリアードで初めてその役割がスタートするので、過去を振り返ってみてきている今シリーズではちょっと外野って意味なのかしらん。
で、双子、初イラスト化。
背景は……ボー・ミンブルの黄金に輝く城塞都市、でしょうね。
ベルガリアード物語にも大いに関係してくるボー・ミンブルの戦い。
いよいよクライマックスなわけですけれども、それに相応しい迫力ある展開でした〜。
互いの軍勢がいかにして相手を出し抜くか。
あのベルガラスやベルディンをもってしても、出し抜かれることってあるんだなぁ……と。
この戦いの結末は知っているワケですけれども、それでも緊迫感は損なわれていなかったかな。
「戦いが四日めにはいったら、トラクが勝つということなんだね」 ベルキラが言った。
「<出来事>が三日めに起きたら、ぼくたちが勝つということだ」 ベルティラがつけくわえて、眉をひそめた。
ほんの数日の間に起こったことなのに、全て深い意味をもっているような気がしました。
<ボー・ミンブルの戦い>のあとも激動の展開が。
もう、時代が一点に向かって加速度を増していくカンジ!
いよいよ宿命を負ったキャラクターが登場して、ひとつの転機──この物語の終わりであり、新しい物語の幕開け──を迎えるワケです。
そんな長い長い叙事詩を要約すると──

さすがです、セ・ネドラ(笑)。
『女魔術師ポルガラ』楽しみ〜♪
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7
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『食卓にビールを4』 小林めぐみ 著
人妻編が多くてウレシーッ!(≧▽≦)
ふたりの、つかずはなれずの距離感が良いなぁ。
わたしはSF、ないしは理系な話に詳しくないので、今作中に組み込まれているネタのほとんどは、きちんと理解しているとは言い難いのですけれどー。
ああ、なんとなくわかる〜……って程度の知識でも、十分に読み進められるのがステキですね。
理系な話に詳しくなくても、理系な話を嫌いなワケじゃないので(笑)。
そういう意味からみたとき、今作はネタと物語本文の混ざり具合というかバランスが絶妙な気がします。
ふたりの仲睦まじい様子もあって、ニヤニヤしながら読み進めてしまいました。
あとがき。
「食べ物について」のコメントで笑っちゃいました。
短いながらも、思い切り本音だ〜(笑)。
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6
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『小説 中学生日記』 ノベライズ 橋本美香+双生健太
あはは。
なんですか、この微妙な雰囲気。
でも、このモワッと感って、TV版にも通じているような。
……無理して盛り上げようとしていないってカンジ?
年頃の少年少女の普通っぽさとでも言いましょうか。
物語チックな仕掛けがなくても、彼らの心情描写だけでも十分に関心をもつことのできる読み物になるのかなー。
基本は異性へ向けられている心情なんですけど!
そこがまた良いっていうか!
初々しくって!(笑)
そしてそこへ絡んでくる同性への想い!
このあたりが、現代チックですなぁ……。
カズミの淡い想いが、あーゆー結末を迎えるなんて、彼女、これがトラウマになるんじゃないでしょうか。
男嫌いに発展しそう……(^_^;)。
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5
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『隣人 SAKURA
in Pale Rose Bump W』 在原竹広
著
エロエロな表紙ですねぇ(^_^;)。
本編を読んだ後のいまなら、なんとなーく方向性はわからないでもないですけれど。
……本編のほうは、エロというより、フェチではないかと思いますがっ。
んー、で、その本編。
……前作から時間の空いてしまったシリーズ物というのは厳しいなぁ、と思ったり。
例えば──今作のガジェット。
日常のすぐそばに潜むミステリー・ホラーってアプローチなら、別にBumpのシリーズでなくても成立すると思うんです。
だけれどもシリーズ物であるが故に、キャラは既存のもの。それもシリーズ物であるために設定の詳細部分が省かれてしまうわけですけれど、前作から時間が空いてしまっていると、そうした諸々の設定の記憶が薄まっていて……。
読み進めていくウチに、それとなく思い出していって、桜子と悟郎が接近しているシーンなんてニヤけてもしまうのですけれど……。
序盤、全ての状況を受け身で見続けていくことを強いられるのもマイナス……。
淡々と進むという雰囲気はこのシリーズの個性でもあると思います。
んでも、それって説明不足……というか、物語を盛り上げようと(序盤ですから引き込ませようと、ですね)する仕掛けの無さってことにはならないと思うんです。
桜子と悟郎がフランクな関係になっていく様は、このシリーズを読んできた身としては存分に楽しめるトコロなんですけれど……。
そんなカンジで不安と心配がないまぜになってしまったシリーズ最新刊でしたけれど、嬉しかったのは「無力な存在が最後まで諦めずに窮地を脱することを模索する」ってあたりが今作でも継承されていたことでしょうか。
うんうん。
なんでもかんでもスーパーパワーで解決したら興醒めですよね。
知恵を巡らす姿勢にこそ、感銘を受けるのですから。
桜子の家庭環境?について悟郎が意見したとき、彼女、いたく機嫌を損ねましたけれど──。
彼女の出自を近々明らかにして、それでシリーズ閉幕って流れなんでしょうか?
……この先の展開を考えたりしているあたり、やぱしこの作品、好きなんですね(笑)。
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4
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『九月は謎×謎修学旅行で暗号解読』 霧舎巧 著
あーっ、そうだった、そうだった!
このシリーズは見た目を素直に受け止めちゃいけないんデシタッ!
「七月」の短冊でわかっていたハズなのに〜。
やーらーれーたー(笑)。
読み終えたあとで振り返ったときの「やられたっ」感。
きーっ、くやしーっ!!!!(><)
読者をトリックの舞台へと引き上げる臨場感は素晴らしいものがあると思います。
このシリーズ企画を通している講談社は太っ腹ですね〜。
もち ろんサイコーなのは、トリックの発案者であり、そして執筆をされる霧舎センセなんですけどもっ。
そんな次第でトリック──というか、それを見破る過程については、とても好感をおぼえるのですけれども、物語としては……。
んー……。
ちょっと慌ただしすぎる印象が。
二方面でのお話を同時進行で描いていくことが、わたしにはプラス材料には働きませんでした。
チャカチャカしすぎ。
しかも、わたしは保ちゃんセンパイのこと、好きじゃないですしー。
くわえて棚彦と琴葉が別行動ってのも、マイナス……。
ラブコメミステリじゃないよーん……(TДT)。
ビジュアル方面でははっちゃけてましたね。
とくに倫子ママ。
メイドって……えー!?(笑)
棚彦も執事のカッコして髪も上げてみるって、なにしてんのー?(^-^)
修学旅行の回っていうより、コスプレの回って印象が強いかも。
一年十ヶ月ぶりのシリーズ新刊。
「七月」「八月」限定版の売れ行き不振で打ち切られちゃったのかなぁ……と心配していたのですけれど、良かった良かった。
あとがきでは「十月」「十一月」のほうも進んでいるみたいですし、楽しみです。
今度は体育祭と文化祭ですもんねー。
次こそ「ラブコメミステリ」の本領発揮をお願いします!
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3
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『星宿姫伝
しろがねの継承』 菅沼理恵 著
菅沼センセにイベントで運良くお会いしてお話させてもらったとき、この作品は戦隊モノをイメージして作り始めた……と仰っていたのですが。
あー、今回を読むとそんな雰囲気、分かるかも〜。
なんというか、組織と組織のぶつかり合いになってきていますし、そしてその組織も内部に火種を抱えているトコロとか。
んで、今回はクールな役どころのブルーこと(笑)青磁の回ってカンジ?
前回もラストでイイトコドリしていたような気もしますけれど(笑)。
彼、いろいろ背負うモノが見えてきて、人間的には深みが増しました。
それでいて白雪への面倒見が良いものですから、きわめて好印象なんですよねー。
……殺さずに済めばそのほうがいい。
だが、どうしても誰かの命を絶たなければならなくなったら……その命を我が身に背負って、生きるしかないと俺は思う。
身を危険にさらしても、白雪の願いを叶えるんですもんね〜。
でもって、いざとなれば、その願いを裏切る覚悟も持っている……と。
彼女の願いを叶えるコト以上に大切なことがあると自覚しているわけで。
なんなのさ、この硬派ップリは!(≧▽≦)
青磁とは反対に、蘇芳は……。
精神的なつながりが描かれていましたけれど、それって物語の側面からの要請ッポイですしねぇ(苦笑)
まぁ、おまけまんがの例えではないですけれども、琥珀と黒曜のアピールがいまのところは足りていないから暫定1位ってカンジ。
琥珀はまだしも(失礼な!)、黒曜は一発逆転があるキャラっぽいですしー。
楽しみ楽しみ。
……っても、白雪って14歳なので、そっち方面の話ってあまり進まないのかも。
今回の青磁とのやりとりとか見るとねぇ?(^_^;)
とまれ、中華風ファンタジーで楽しみな作品になりました。
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2
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『黄金を奏でる朝に
〜セレナーデ〜』 沖原朋美
著
カストラートが相手では、この恋、安くないだろうなぁ……と。
辿り着くところ、倖せなものではないでしょうし。
悲劇だけで終わるのか、それとも別のなにかを見せてくれるのか。
今回のラストは、恋に向き合う覚悟を見せてくれましたけれど、これで終わり……じゃないですよね? それとも終わりなのかな?
これで一区切りでは、んー……消化不良かなぁ。
でも先述の通り、この恋の結末は幸せなモノではないと思うので、あえてここまでで終わってくれたほうが、わたしにとっては良いのかも。
……哀しいところを見なくてすみます。
SF設定のお話だと、両性具有者や人造人間などとの恋であろうとも、なにか特殊な仕掛けを用意して倖せへのベクトルを生み出すことはできましょうけれど、この作品は現実社会がベースですしねぇ……。
恋の展開に甘い期待ができない……ワケで。
波瀾万丈な恋であっても、最後には倖せが待っていると思いたいんですよー。
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1 |
『伯爵と妖精 呪いのダイヤに愛をこめて』 谷瑞恵
著
リディアはさー、もう伯爵のことを認めちゃったほうが楽になれると思うー(笑)。
もっとも、楽な方へ生きるということを許さない矜恃の持ち主だから、物語は簡単には進まないんですけれどねー。
……損な性格ですね、リディア(^_^;)。
一方の伯爵は、もっと感情豊かに生きるっていうか、自分と向き合わないと。
レイブンを叱咤している暇は無いぞよ(笑)。
……ウソつき少年は、どうやって本気を知ってもらうか苦労するお話ですよね(^_^;)。
ケルピーがかなり丸くなったのには驚きました。
まさか、結婚のことを破棄してもいいから、田舎暮らしにリディアを戻らせて、彼女を休ませたいと考えるなんて……。
うむぅ……。
妖精は取引をする存在なのですから、自らが価値あると認めたモノに対しては譲歩も厭わないってことですか。
その潔さ、良し!(笑)
アーミンに活躍の場があって良かった……。
でも、そこまで伯爵のことを想っているんだなって思うと……(TДT)。
彼女にとっては伯爵と結ばれるという世俗間でのつながりが大切だったわけでも無いと思うので、現在の関係は、これはこれで願いがかなったとも言えますけれど……。
んでも、さ……。
ついに、というカンジでエドガーの出自について焦点が絞られてきましたねー。
紛いものだった青騎士伯爵の身分が紛いものではなく本物であると明らかにされるのも、そう遠くないお話なのかも。
そのとき、紛いものの愛情だと拒んでいたリディアも、本物の愛情が捧げられていたのだと気付くのでしょうか。
楽しみ、楽しみ。
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