○● 読書感想記 ●○
2004年 【11】

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20
『世界は紙でできている −パピア・ローゼ吟遊詩−』 ココロ直 著

 あ、面白い設定。
 けれども、その設定が物語に活かされてない……というか、かみ合ってない印象が。
 この巻で描かれた物語は、別段、この設定でなくても充分に語れるものだと思いますし。
 続刊、あるいはシリーズとして展開されたときに、活かされていくのでしょうか。
 でも、物語自体はここで終わっていても不思議じゃないと思うんですよね。
 むしろ謎めいた部分しか残さない設定が、収まりの悪さをカンジさせるのかも。

 ……うん。
 物語と設定、2つのアイディアを同時に表現しようとして難しくしているのかなー。
 そんなカンジがして、惜しいような惜しくないような。

19
『ハイスクール・ミッション! トキメキのチャンスは一度だけ!?』 岡村流生 著

 岡村センセらしい作品だなぁ……と。
 意図しているのかそうでないのか判断付きかねますけれども、どうもこう、キャラクターの造形が「狙いすぎ」な点が、少々鼻につくといいますか……。
 ちょっと、コテコテすぎないかなぁ……。
 いやさ、それこそが岡村センセらしいと言えば、それはそうなんですけれども。

 コンゲームを行うにしては、設定条件が都合良すぎる印象がありました。

18
『夜明けのダンス クイーンズガード』 駒崎優 著

 処理課の面々のプライベートなところは、やっぱり面白いですね。
 それぞれ生い立ちに物語があるので。
 しかも今回は課長の澄子さんだったりするから、そりゃもう(笑)。

 反面、事件のほうでは、なんだか難しくしすぎている気がします。
 正義のためではなく、ホテルという企業のために彼らは活動しているというあたりが、事件に対して難しい理由を必要としてしまっているのかもしれませんけど。
 でも、処理課の活躍ではなくて、「彼ら」の活躍が見たいのです。
 もっと1人1人のパーソナルな部分を動機としたアクションがあったらなぁ……と思ったりして。

 海、南水樹、澄子さん……と続きましたから、次は克人さんでしょうか。
 咲也くん込みで(笑)。

17
『少年名探偵 虹北恭助のハイスクール☆アドベンチャー』 はやみねかおる 著

 初め、目を通したとき、既視感が……。
 ……って、コミックス版のノベライズ化だったんですか。

 ミステリ研部長の沢田さんは、やっぱり恭助の相手には役者不足な気がするんですよねー。
 ある程度の実力がありながらも、高い能力ゆえの傲慢さからミスを犯してしまう……というような相手だったら良いかもしれないのですけれど、沢田さんには残念ながら初めから能力が備わってない、と。
 恭助のライバルを名乗るのはおこがましいなー……なんて。

 ただ、恭助と響子ちゃんの仲を引っかき回してくれたことには感謝(笑)。
 恭助の本音っぽい気持ちも聞けましたしーっ。

 にしても裏表紙はアダルトちっくだぁ……。
 というか、恭助、老け込んで見えますよ(苦笑)。

16
『女子大生会計士の事件簿 DX.1ベンチャーの王子様』 山田真哉 著

 久織ちまきサンの萌実さんも良いですけど、以前の和泉つばすサンの萌実さんも可愛いと思います。
 久織さんが描く萌実さんは、いかにも「できる!」ってカンジがしてカッコイイんですけどね〜。
 たしかにこの人ならカッキーを振り回しそうです(笑)。

 会計士の世界をミステリー仕立てで描いていく様は、新鮮で面白かったです。
 普通の人には触れることのない、経理の中のトリックが。
 数字のマジックなんですけどー。

 推理ミステリとして考えると、至極やさしい部類なのではないかと。
 もちろん会計の知識が必要なのは言うまでもないですけれど、それもあまり詳しくは求められてないように思えますし。
 文芸書……として売るには、ちょっと難しいと思いますヨ、角川書店さま(^_^;)。
 でも、肩肘張らずに気楽に読むことができて、しかもちょっとした知識まで得ることができるというのは、ステキなことだと思います。
 ジャンルのくくりは別にして、オススメです。


15
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』 桜庭一樹 著

 非常に桜庭センセらしい作品だなー……と。
 もちろん「らしい」というのは、わたしが望んでいるというだけかもしれませんが。

 女の子同士の人間関係。
 社会を斜めに、あるいはシニカルに見つめる視点。
 暴力と終末観。
 大人を意識する子供たち。

 イニシエーションの物語とははっきりとは言いにくいですけれども、子供たちが何かを失いつつも大人になっていく、あるいは大人にならざるを得ないことを自覚していく物語……のような。
 幸せな物語ではないんですけれど、受け入れることはできるなぁ……。
 むしろ哀しさがそこかしこに存在しているんです。
 でも、どこかに希望があるはずなんです。
 目には見えないかもしれないけれど。

 それは、この作品で言うならば、生きることなのかもしれません。


 むーサンの挿絵も、雰囲気に合っていて良かったです。
 初めはどうかなぁ……という印象だったのですけれど、物語が先に進むにつれて、イメージと合致していったというか。


 なんというか、白倉由美センセの作品を思い出してしまいました。
 ぼくたちはどこへいくのか。あるいはどこへも行けないのか。
 いろいろと考えさせられる作品です。


14
『桜の下の人魚姫』 沖原朋美 著

 現実から逃げずに向き合うことの清廉さ。
 それが沖原センセの作品の持ち味なのではないかと思っています。
 作中の登場人物もそうですし、もちろん沖原センセにも言えるのではないかと。
 つらくても誤魔化さずに、現実が持つ強さと厳しさを描ききるというのは、やはり同じモノを持っていないと出来ないことなのではないかと思うわけで。

 今作では2編の物語が収められているわけですが。
 表題作、『桜の下の人魚姫』は文字総数の枠のせいなのか、ちょっと心情の変化が急すぎるなー……と思うきらいがあるのですけれど。
 また心情そのものも、全員が全員、納得できるようなものではないと思うのです。
 それでも。
 それでも、その気持ちを抱くことを否定することなどできないと思います。
 優しく、細やかに描かれているせいでしょうか。

 もう1編。『月のしらべ 銀のみち』は、『桜の下〜』と世界を同じくした話。
 『桜の下〜』は読後、ボリュームに物足りなさを感じてしまったところでしたので、こうした展開は嬉しい限りでした。
 それも、プロローグでガツンと驚かされましたし。
 愛情というだけに収まらない、人間関係や志や矜持までにも関係してくる物語でしたね。
 生き方を問われているような。
 こちらの作品をわたしが好きなのは、音楽に関した物語であるというせいもあるでしょうけれど、主人公が苦悩し、答えを見つけるまでの過程が、とても素直で正直に描かれているせいなのかなぁ……と思います。
 ラストシーン、じんわりと心に染みいるのです。


 あー。沖原センセの世界は、ホンッと好きだわー。


13
『巣作りドラゴン』 甲斐正一 著

 PCゲームのノベライズなのですけれども……。
 まいりました。
 もとの作品の良い雰囲気を損なわないだけでなく、ノベライズならではの解釈を加えて新鮮味ある物語に仕上げています。
 もともと生い立ちや経歴にクセのあるヒロインたちでしたけれど、独自解釈を加えることで、綺麗にひとつにまとめあげられたなぁ……と。
 ブラッドの中でのルクルとユメの存在、立ち位置については、まさに見事かと。

 ヒロイン攻略型のゲーム作品をノベライズ化すると、印象が薄くなってしまうヒロインというものがどうしても出てきてしまいます。
 今作で言えば……フェイ、かな。
 それでも一般的なノベライズに比して、印象の確かさはあると思います。
 ヒロイン数が多くない上に、多数同時攻略も可能なゲームだったからでしょうか?

 全体としてはリュミスをメインに据えてあるのは嬉しかったですねー。
 本編にはなかった彼女のモノローグも入って、心情もうまく伝わってきましたし。

本当に、どうしたらいいのか、分からなくて、思わず……。
彼を突き飛ばして、半殺しの目にあわせちゃいました。

 ――のところなんて、もう可愛くて可愛くて!(≧▽≦)

 ノベライズ化にあたって、本当に良いお仕事をされたと思います。


12
『DADDY FACE メドゥーサV』 伊達将範 著

 オビの「クライマックス直前」というコピーに脱力。
 ま、まだクライマックスじゃないんですかい……。
 進行している事例に対して、ちょっと時間をかけすぎなような……。
 ……と思いつつも、それだけ時間のかかることなのかもと思ったりして。
 世界に「メドゥーサ」が広まっていく過程とは、瞬時に達成されるものではなくて、相応の時間をかけているものですから。
 その時間が、この作品のボリュームになっているのかな、と。
 ほんと、「メドゥーサ」罹患者の凄惨な様子には鬼気迫るものがあります。

 それに動かないようでいて、物語はしっかりと流れているわけで。
 とくにこの巻は大きく流れ出して、まさに「転」なカンジ。
 何に驚いたかって、やっぱりデーモンですよねー。
 なんですか、あの、お茶目ップリは!(笑)

 今回は父娘関係も多めに文章が割かれていたところにも、わたし的には嬉しかったですねー。
 しゅーくんが美沙を怒るところなんて、ああ立派な父親になってきてるなぁ……とか感心してしまったりして。

 父娘の関係も深まってきましたし、離ればなれになったことで美貴ちゃんとの関係にも進展が望めそうですし。
 もしかしてシリーズ最大最長の「メドゥーサ」編の終了とともに、物語も終わったりしてしまうんでしょうか。
 来訪者についても、今回、かなり近づいてきているんですよねー。
 まだまだこれからだと思うんですよー。

 とくに鷲士×美沙よりは鷲士×美貴の関係のほうにドキドキするわたしとしては、もうちょっとふたりを描くことを希望いたします(笑)。


11
『世界が終わる場所へ君をつれていく』 葛西伸哉 著

 ボーイミーツガール……なわけで、好きなジャンルだとは思うんですけどー。
 少年を走らせる焦燥感と、少女を包む悲壮感とが、なんとなく乖離しているというか繋がりが薄いというか、そんな気がしてしまうのです。
 いや、その両者の関係を「運命」という言葉で代弁しているのかもしれませんけども。

 あとがきで――
「暑い夏にひたすら自転車を漕ぐ男の子と、真っ白なセーラー服の女の子のお話」
 ――と記されているのですけれども。
 この作品は、両者の心情を語るために生み出されたのではなく、両者のスタイル・情景を描くために生まれてきた物語のような気がしました。
 語弊があるかもしれませんけれど、ヴィジュアル優先というか。
 描きたいシーンがある……という入り方は、別段、間違っているとも思いませんし、これはこれで真っ当な物語なのだと思います。

 「銀の樹」の結末も、もうちょっと、こう……。
 あそこ、クライマックスなんですし。

 でも、約束の地へ辿り着くまでの道程は、すごく雰囲気良かったなー……と。
 ボーイミーツガールで、そしてロードムービー。
 そこでの少年と少女のやりとりにこそ、この作品の妙が凝縮しているのであって、上記で私が述べているようなことは蛇足にすぎないのかもしれません。


10
『お・り。が・み 龍の火』 林トモアキ 著

 初登場の飛騨真琴ちゃんが、あまりにもヒロイン(主人公)然しているので、鈴蘭の影が薄いったら。
 アクティブなだけでなく、事象に対しての洞察力も素晴らしいですし。
 さすが、あの伊織を手玉にするだけあります(笑)。

 こういう先輩がいるなら、鈴蘭が学校へ復帰しても大丈夫なのかな……大丈夫なんだろうなぁ……とか思ってしまいました。
 親友?と呼べる存在にも出会えているようですし、鈴蘭はちゃんと倖せの道を歩んでいるんだなぁ……と。
 摩殺商会と関わりを持ってしまった不幸については別清算で(笑)。


 カラー口絵の恒例?のあおり文章ですけど、組み合わせが違うんじゃないかと……。
 龍撃手とイラストで対峙しているのは関東機関ですよねー。
 キャラ紹介ページでは真琴の名字のフリガナ、間違えてますし……。
 も、もう少し丁寧な作業をお願いしたく……(TдT)。

 とまれ、今回は真琴ちゃんの頑張りにつきるかなー。
 それとお話的ににも最初と最後で通じているところがありますし。
 こういうちょっとした仕掛けは好きー。
 というわけで、続刊を希望デス。


『新はっぴぃセブン 〜vol.8サザンクロスに願いをこめて〜』 川崎ヒロユキ 著

 バトルが少な目で、意外と日常シーンが多くて嬉しいなっと。
 お風呂とか、海水浴とか。
 たもんちゃんが元通りになるとこなんて、かーわいーっ!

 サヤンちゃんには悪いけど、菊之介の相手には相応しくない……というか、彼女の一方通行気味の恋愛感情に見えるんですけど……?
 くりやちゃんとかたもんちゃんに向けられる菊之介の感情には愛情も含まれているように見えるのですけれども、サヤンちゃんへのそれは、良くて友情止まり。
 へたすると、人類愛みたいな博愛のような……。
 気のせい?

 というわけで、次巻で菊之介の恋愛方面で話が動き出すと言われても、そこにサヤンちゃんが入り込む余地は無い!のではないかとー。
 わたしてきには――

 ◎くりや
 ○黒闇天
 ×たもん
 △お菊
 ▲サヤン

 ――かなぁ(サヤン、入ってるじゃん!)。
 でも、予想とわたしの希望は違うわけでー(笑)。
 さてさて、どうなりますやら。


 みく先輩の4コママンガ。面白かったー(^-^)。
 こういうセンス、好きだーっ!


『麝香姫の恋文』 赤城毅 著

 展開はそれほど……という気がするのですけれど、麝香姫と諷四郎のやりとりはドキドキしますねー。
 一見すると麝香姫の方が優勢に見えつつも、手綱を握っているのは諷四郎の方だというあたりなんか、もー(笑)。
 古書店での再会の時、麝香姫の拗ね方とか、おねだりの仕方とか、かっわいいですねーっ!

 推理方面から覗いてみると、ちと説明すぎるかなぁ……という気が。
 行動ではなく、語りで片づいてしまっているように思えるので。
 でも、そうした手法も、麝香姫と諷四郎の駆け引きを中心に据えて表すために選んだ……と思えなくもないデスね。

 とりあえず、諷四郎が麝香姫を追いかけていくという続編を希望ーっ!
 このまま終わらせるにはもったいないよう。


『月巫女のエンゲージナイト』 咲田哲宏 著

 全編を通して貫いている主義主張には共感できるのですけれど、惜しいかな、物語の枠で見たときには生かし切れてないような印象が……。
 決して淡々と進んでいるわけではないにもかかわらず、カタルシスにとぼしいといいますかー。
 クライマックスへの運びなんか、ちょっと策を弄しすぎているような気がします。
 理屈としては正しいガジェットなんですけど。

 あー、うー。
 いろいろともったいない!(><)

 でも、共感できる一貫性があるという点では好きな作品です。
 このままシリーズを続けていってほしいと思えるくらいに。

 次巻では澄ちゃんの活躍がありますよーにっ!
 ……どうして今回は美雨でなければいけなかったのかと(TдT)。



『天使の梯子』 村山由佳 著

 この本単体で作られる世界ではなくて、やっぱり『天使の卵』の存在があってこその作品かなぁ。
 予備知識無しでは、ちと苦しいかと。
 まぁ、そうした一連の作品として見たときには、これでようやく一区切りつけたカンジがしました。
 それは読み手だけでなく、村山センセ御自身にしても、もしかするとそうなんじゃないかなぁ……とか思ったりして。
 あの作品の重さというか呪縛めいたものが、ようやく取り払われた……とか。

 ここしばらくは村山センセの作品に触れてなかったのですけれど、変わったなぁ……という印象が。
 ずーっと追いかけられているファンのかたには、もしかしたら今作は物足りない印象が残ったりするかもという危惧があったりして。
 どちらかというと『おいしいコーヒーのいれかた』のラインだと思いますし。
 いえ、わたしはそれが好きなので、全く問題無かったのですけれど(^_^;)。

 でも、天使の梯子について語らって、花見に行く約束をするシーンは、パーソナルな部分で泣けてしまったというか。
 わたし、おばあちゃん子だったので。
 ええ、三文安いですよ(苦笑)。

 とまれ、こういうラストを描くようになった、描けるようになったのは、やはり10年という時間が経っているからなんでしょうね。
 傷を癒していくような、倖せを感じられるラストですね。
 これからも村山センセが描かれる文章を目にしていきたいです。



『復活の地 V』 小川一水 著

 この巻、1冊がまるごとクライマックスなんですよねー。
 心をつかむ名台詞がそこかしこに……。
 第二次震災ということで、1巻と似た状況が示されるわけですけれども、それに対峙する人々の姿勢の違うこと違うこと。
 ああ、人はここまで変われるものなんだなぁ……と。
 都令であるシンルージなんて、読んでいてニヤニヤしてしまうほどに変わりましたよねー。
 自分に出来ないことがあると認めるのは難しいかもしれませんけれども、そんなプライドよりも大事なことがあると人は気付くべきで。

 変わったといえば、帝都に住む人々もそうですね。
 スミルの「愛するものを全力で守りなさい」という言葉に、彼らの行動は要約されるのかと。
 震災を経て、自分たちがこの街を愛していると自覚できたんですよね。
 いつまでも平穏無事であるワケではなく、失うことを意識したから。

 もちろん変わらない人もいますね。
 ソレンス少佐とか……サイテン首相とか。
 それが良かったのか悪かったのかは、それぞれでしたけれども。


 あー、そして、スミルとセイオのふたりは……。
 もーちょっと、いちゃいちゃしても良かったんじゃぁ……(^_^;)。
 んでも、これはこれで?
 「一度だけ、他の全てを捨ててあなたのところへ来た。……それでいいか」
 ですってよ、もーっ!(≧▽≦)
 1巻で発した「皇族であっても助ける」という言葉を果たしたわけですねー。


 復興院が行ったいくつかの中で、いちばん心に残ったのは「静粛時間」でしょうか。
 現実にこういう機転を巡らせる人が、わたしたちの国にもいればいいなぁ……。


 震災だけでなく、自分になにができるのか、そういうったことを常に考えながら生きていきたいですね。そんな気持ちにさせられます。


『平井骸惚此中ニ有リ 其参』 田代裕彦 著

 推理ミステリとして、ちゃんと考えているなぁ……という印象があります。
 それも本格としての位置を狙うのではなく、物語を描く要素のギミックのひとつとしての構成が、わたしにとって心地よいのではないかと思う次第。
 苑子嬢の心理については、ちょっとどうかなぁ……と思うのですけれども(^_^;)。
 んでも、そういう「どうかなぁ……」と思う箇所があることについても、田代センセらしいなぁと思ってしまいます。
 3巻までくると、そういう「田代センセらしさ」も見えてくるし、そして受け入れることも容易いのかなー。

 それにしても今回は發子ちゃんの巻……であるはずなのに、あのクライマックスはヒドイですねー。
 そりゃ發子ちゃんだって泣きたくなりますよー(TдT)。
 なんというか、涼ちゃんは――ズルイ。
 ズルイ女の子をわたしは好きですけれども、それよりももちろん頑張っている女の子のほうが好き。
 今回の發子ちゃんは、自分の意志をハッキリと告げたりと、かなり頑張っていたと思うんですけどー。なのにー、なのにーっ!

 年齢差というのはハードルかもしれませんけれど、きちんとスタートラインに自分を立たせた發子ちゃんはエライ!
 そこまでの気持ちを持っていたことは、ちょっと意外でもありましたけれど。

 しかしいちばんの役者は、やはり澄夫人なのでした(笑)。
 すてきなお母さんですねー。


『パートナー2』 柏枝真郷 著

 オビに騙された……。
 マンハッタンでカーチェイスなんて、ほんのさわりだけだったよー。
 もっと、こう、ドロシーとセシルがドライブに関してわいわい言い合うのかと思って楽しみにしてたのにー。
 まあ、それでもほかのところで言い合っていたから良しとしますか。
 今回でこのふたり、みょうに接近しはじめてますしー。
 ……といっても、ドロシーにはオーガストがいるので、あまりそっち方面では期待してないですけども。
 表題どおりに、パートナーとして信頼が築かれていく様が興味深いというか。

 前回にも増して、NYの雰囲気をよく醸し出しているなぁ……と思います。
 NYを中心に今回は東奔西走してますし。
 そして何よりも、9.11ですか。
 あのことが、この街に生きていく人に、どれほどの影を落としているのかをカンジさせてくれます。



『先輩とぼく 3』 沖田雅 著

 1巻のときの筆致に戻ったような気がします。
 なんかもう、アホで良いですね(笑)。
 沖田センセ御自身も仰っているように、前巻を思いきり引っぱっちゃっている点がマイナスなのはいなめませんけれど。
 嵐ちゃんとの関係なんて、正直忘れてました。ゴメンナサイ。

 今回は(今回も?)、のりちゃんの影が薄くなってましたね。
 これだけキャラが多いと、割を食ってしまうキャラがいるのも仕方がないかなぁ。
 少なくとも、今回登場のさっちゃんのほうがキャラ立ってますし、これは次巻以降も……(苦笑)。

 今作ではもう「男女入れ替わり」を主とする物語ではなくなっていることが見て取れますし、この作品は不思議なノリのキャラクターたちが描くおバカな日常を楽しむものではないかと思います。
 ガジェットではなく、現在進行形の部分を楽しむことになるので、これはもう好き嫌いの判断に任せるほか無いですね。
 こういう筆致が好きなら大丈夫でしょうし、ダメなら中身の何も無さに呆れてしまうという。
 それでも「男女入れ替わり」とは違った物語が始まっているような予感(伏線)もあるので、とりあえずキャラを受け入れられる人は読み続けていってはどうでしょうか。
 さっちゃんの占いの結果とか、先輩が「恋する少女のような気分になる」とか。
 なーんか、ありそうなんですよねぇ……。

 次巻刊行も決定しているようなので、期待してます。


『GOSICK V 青い薔薇の下で』 桜庭一樹 著

 トリックは、その……。どこかで見たことあるような、カンジが。
 まぁ、古典トリックの踏襲ですね。
 基本中の基本かとー。
 でも、そのトリックの暴き方はドラマっぽく仕立て上げられていて良かったかなと。

 というか、グレヴィール。
 あなたこの作品のここまでで、いちばん重い台詞を吐きましたね!
 いや、ちょっと、あの台詞はさぁ……。
 桜庭センセらしい切れ味がありましたか、あそこには。

 離ればなれになった久城とヴィクトリカのふたりのやりとりがいじらしいったら、もー。
 こういうもどかしさは、はがゆくて、そして楽しいですね。
 このふたりには、これから幾つもの試練があるわけですし。

 戦争が起こって離ればなれになって、なにかの間違いで久城はアブリルと結婚しちゃって、でもヴィクトリカは独り身をずっと守って、そして戦後、死の際に再会を果たす……とかいう展開は哀しくなるので、どうかよろしくお願いします(TдT)。

 あー、そのアブリルとヴィクトリカは、次巻で対面するみたいですね。
 「初対面はなんと……!」とか、あとがきで書かれてますけどもー。
 なんと……男装したヴィクトリカとであった、とか?(自由に動き回るための変装)
 アブリルも良い子なんですけどねー(でも、人気なさそう)。

 それにしても武田センセのイラストがカワイイったら!(≧▽≦)
 でも、せっかくジャポニズムのイラストがあるのですから、もう少し本編のほうでもこの姿で活躍させてほしかったなぁ〜……とか思ったりして。

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