○● 読書感想記 ●○
2004年 【6】

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20
『先輩とぼく 2』 沖田雅 著

 う、うーん……。
 前作に比べて、勢いがなくなってしまった……ような?
 つばさもはじめも、現状を許してしまっているために落ち着いてしまったせいだとは思うんですけれども。
 でも、もうちょっと2人で賑やかになってほしかったなぁ……というところ。

 新キャラが登場してますけど、既存のキャラの魅力を出し切ったとは思えない段階での投入は、新展開を描く方策としては、ちょっと安易かなぁ……と。
 川村くんはまだしも、典弘くんと真太郎くんは存在すら忘れてしまいそうデス。
 それともキャラの魅力を出し切ったとは思えないと考えているのは、読み手の理想が生んだ誤解なんでしょうか?

 とまれ、新キャラが2人の仲にどれほどの波風を立てて、物語を盛り立てていったのか、その効果のほどは疑問なわけで……。
 活かされるのは、これから……という見方もできますけども。

19
『新はっぴぃセブン vol.2 雨の日でもサンシャイン』 川崎ヒロユキ 著

 新シリーズになり、「vol.〜」と入るようになって便利に思います(苦笑)。

 読んでいて相変わらずの浮世離れっぷりに思うことは、ロールプレイというか、遠い昔に遊んだオママゴト感覚でしょうか。
 夢の仕事の職業人になったつもりで、あーだこーだとそれっぽい会話を楽しむという。
 お店を開けるのは何時で、商品はこんなのを置いて……とか。
 そんな雰囲気があるんですよねー。
 ちょっとこういう雰囲気って、懐かしくってくすぐったいですねー(≧▽≦)。

 姉妹喧嘩の件も、菊之介と彼を慕う女の子たちの間に物語を絞ったからこそ活きているというカンジがします。
 シリアスな現実感を排除すると、こんなに楽しい物語ができるんですねー。

 で、ブーケは誰が取ったんですか?(笑)

 気のせいかもしれませんけど、今巻ではカラー口絵といいラストシーンの挿絵といい、まひるさんのポジションが素敵すぎるような……。
 お菊ちゃんより、まず最初に目がいく気がします(……って、贔屓目?)。


18
『新はっぴぃセブン vol.1 毎日がカーニバル!』 川崎ヒロユキ 著

 もう、なんといいますか、この浮き世ばなれっぷりには感嘆するほかないです。
 世俗とのしがらみを気持ちイイくらいに断ち切ったといいますか。

 菊之介たちがいくら依人衆とはいえ、学生であり社会人であり、衣食住のためには生活費を稼がなければならないという「くびき」が前シリーズにはありました。
 この部分の描写が少なかったため、わたしには菊之介たちの活躍が、なんとも虚構に思えてしかたないところがあったんです。
 高校生としての彼らを描かずに、物語で必要な部分のみをわたしたちに提示していて、菊之介たち1人1人が生きている証のようなものが不在ではなかったか……と。

 そーしたら、アナタ! 新装開店で始まった今シリーズでは、仕事も学業もうっちゃって、エンターテイナーに徹するんですって!
 黒闇天を封じるために彼女たちは戦い、そして自分たちが生きるために笑うんです。
 すごく強引なんですけど、これで正解のような気がします。
 彼女たちが「現実」の中に生きていることには、あまり意味はありませんでしたし、依人衆の物語としてはむしろスッキリしたと言えます。

 いやぁ、でも……。
 本当にこういう解決法を採ってしまう川崎センセと担当のチバさんはスゴイというか、豪快というか……。

 この夢の世界を楽しんでいくことにします。

17
『はっぴぃセブン 光之巻』 川崎ヒロユキ 著

 2冊に分冊するなら、光と闇でもう少しページ数を揃えたほうが美しいと思うのですけど、どうでしょうか?(苦笑)

 菊之介に対してだけでなく、他のメンバーに対しての信頼感も誇張がすごいというか。
 一緒に住むとストレスが溜まるので、悪いがすぐにこの家から出ていってくれ……なんて言われたら、普通もうちょっと尖った思いを抱くものかと……。
 そんなこと、微塵にすら思わなく、自分たちが悪かったのだと反省しきりの菊之介たちはスゴイと思います。
 ……まぁ、そこでドロドロとしたことを言わないのがこの作品の特徴なんですけど。
 しょーちゃんの家?に住むことになっても、苦に感じないのもスゴイですけど。
 だって、いくらなんでも、年頃の女の子が……(TдT)。
 くりやちゃん、庶民派とかいうレベルと越えて、サバイバーですよ……。


 いざ窮地に立たされたときに差しのばされてくる都合の良い展開も、「福」をテーマに掲げるこの作品なら許せてしまうかも……です。
 人から禍を取り除き、福を与える彼女たちは、当然、福を授かる存在であるように思えるので。
 最後もお約束的な「超変身」ですもんねー。
 いやはや、ニヤリとしてしまいました。もう、笑ってGO!ってなもんですよ。

 当たり前と言えば当たり前なんですけど、OVAで6巻くらいのシリーズに向いているような気がします。

16
『はっぴぃセブン 闇之巻』 川崎ヒロユキ 著

 くあんちゃんの正体っていうか役割?って、名前からしてバレバレしすぎやしませんか?
 たまたまなのか、○●●●○ってことに気付いちゃって、この件でのその後の展開からは驚きがなくなってしまった、わたしでございます。

 黒闇天が登場しても、どうも緊張感がないというか。
 バタバタしている感じは受けるのですけど、生き死にに直接くるものではないので騒動すら落ちついて見ていられるという。
 この安心感を物語として受け入れられるかどうかが評価の分かれ目……のような気がします。

 特撮ヒーローものっぽい造りなのかなぁ。考えてみると。
 昨今のシリアス路線よりは、少し昔の。

 わたしのこの作品の楽しみ方は、すでに依人衆としてお務めを果たすことより、菊之介を中心とした日常での関わり方が気になるので、そうした安心感もOKなのですけども。
 登場する女の子は、みんな菊之介を大切に想っちゃうという、まるで「シスタープリンセス」のような展開がスバラシイヒ!(≧▽≦)


15
『はっぴいセブン 真夏の福袋』 川崎ヒロユキ 著

 日常の延長にあるかのような、この賑やかしさは好きだなぁ……っと。
 どうして彼女たちが菊之介にそれほどまでに想いを寄せるのかは、ちょっと理解しがたいのですけれども、そこはもうシリーズですし、今更追及するのは野暮かなぁ。
 そもそも、菊之介が彼女たちから愛を受け取ることで成り立つ物語ですし。
 そしてどちらかというと菊之介が主人公なのではなく、菊之介と彼女たちを含めて全員が主人公格――敢えて言うなら、その関係自体が主人公?なんでしょう。

 そんな関係が凝縮されていたのが、夏祭りの夜ですよねー。
 祭りの夜は、嬉しさと一緒に、どこか切なさもあるわけで。
 いろいろと言い合いながらも、菊之介を想う気持ちが判るが故に、お菊の哀しみも理解しちゃうんでしょうね……。

 それにしても、いくら貧乏極まれりとはいえ、くりやちゃんのサバイバーっぷりは恋するヒロインとしては行きすぎな気がします。
 猿島での生き生きとした姿は、正直、ちょっと……と思いました(苦笑)。
 お菊ちゃんが菊之介の絶対的な相手の地位から落ちたというのに、くりやちゃんに勝機の目が出てきたとは決して言えないところがなんともはや。
 本来的に言うと、くりやちゃんが正ヒロインのハズ……ですよね?
 お菊ちゃんのせいでおかしくなっていたヒロインの座がそこにあるというのにっ、なぜこの子は……(T▽T)。

 わたし的には、まひるさんが好きですねー。

14
『はっぴいセブン 天の巻』 川崎ヒロユキ 著

 話の区切り方というか、章立てが、小説のそれというよりはアニメ的な気がします。
 もっとも、それが悪いわけではなく、小気味良いテンポを生んでいると思います。
 重くなりがちな話も、あっさりめで進んでいきますし。

 ……正直、菊之介のお母さんへの態度とか納得いかないものがあったのですけど、アニメ作品だと、そういう「回」もあるかなぁ、と。
 全てが納得いくわけではないけど、物語は進んでいくというか。

 みくさんの過去話とか、それぞれの個性が見えてきました。
 物語より、みんなの動きと関わり方が楽しみな作品です。


13
『総理大臣のえる! 神様だよ、全員集合!』 あすか正太 著

 やば……。ここにもありました。電車の中では読んではいけない本(笑)。
 幸いにも喫茶店でコーヒー飲みながらでしたので、込み上げてくる笑みを何とか堪えることができましたけれども。

 とにかく、ほのか副総理には笑わせていただきました。
 ここまで活躍したのって、もしかして初めてですか?
 まぁ……貧乏くじ引いただけというか、のえるにいいように扱われただけですけど。
 のえるから「アルバイトしてほしいのよ」と頼まれて、「うん、何をしたらいいの?」ってすぐに了承してしまう素直さが恐い……(苦笑)。


 表面上は立ち直ったかに見えるのえるですけれども、時折、あの事件がいかに彼女の心を傷つけたのか気付かされる所作がありますね。
 作品中、そして現実の世界で起こった事件を思うと、やはり哀しく思います。
 けれども、のえるがいると、哀しみを越えた世界が見えるような気がするんです。
 いつも真っ直ぐな、ウソをつかない彼女がいるなら。


 1冊の本としては構成がまとまってなかったような感じがしました。
 ちょっと章ごとのつながりが弱いような……。
 あと、決着の付け方がのえるの行動によるものではなかったことが、ちょっと不満だったかもです。
 のえるの存在が引き起こした結果であることには違いないんですけどねー。


12
アウトニア王国人類戦記録1 でたまか 黄昏落日篇』 鷹見一幸 著

 あー、やっぱり好きだわー。
 『でたまか』の世界(物語で描かれる世界)って、優しいんです。
 誰かが誰かのためを想って生きていける世界なので。
 その想いを抱き続けていれば、たとえ自分に返ってくるモノが無くても、自分は倖せだと思うことができる世界なんです。
 ――もちろん、それを都合良く描いているだけだと受け取ることも出来るかと思いますけれど、わたしはその優しさを信じたいです。

 で、本編。
 今回はマイドよりも叔父さんのトーダさんのほうが活躍してましたねー。
 もしかして、ガーナッシュ家という一族は、みんな「イイ性格」してるんでしょうか?(笑)
 そしてテクノサーバントとの付き合いかたも、マイドそっくりで微笑ましいというか。

 あと活躍していると言えば、亜人の皆様。
 彼らの言動は、かなり琴線に触れるというか、鏡のように自分の心の嫌な部分を映してくれるというか。
 微笑みを絶やさない亜人が暴徒を鎮められたのは分かります。
 あの状況になって笑える人間がどれだけいるのか。
 笑顔を前にして、私利を唱え続けられる人はいないと思います。
 そして亜人たちが流星雨にこめた願い。
 その願いを予想しつつも、申し訳なさで心がいっぱいになりました。

 彼らの願いを叶えるためにも、人は、生き残らなければならないのでしょう。


 余談ですけど、このあとの展開で、アーヤ、命を落としたりしたり……しませんかねぇ?
 コーリンが「自分で生殖細胞を作れないだけで、赤ちゃんをお腹の中で育てることはできる」というのは、つまりそういうことなのではないかと危惧。
 アーヤとワタルの子を宿して……。
 そうならないといいのですけど。
 それにしても、ワタル、いいオトコノコに育ってきたなぁ。
 マイドとケルプを足して割った感じ?

 次巻ではローデスの宙域内で、その身分と立場から捕らえられてしまうマイド……という展開でしょうか?? 早く「命令を無視するコットン」の活躍を見たいです(笑)。
 というか、チャマーが生きていることをあとがきで明かしたらイカンと思うのですけど……? ひょっとして、巧妙なひっかけ? っていうか、生きているっていう表現は、これまでにされてませんでした……よ、ね? え?

11
『はっぴぃセブン』 川崎ヒロユキ 著

 本編中でも触れられていますとおり、自分が世界でいちばん不幸だと思い悩むのは間違いなわけで。
 もっと不幸な人は必ずいるので。
 で、不幸が引き金となっている物語でそれを指摘してしまうと、えーっと、なにか色々と不都合が生じてやいませんか……?(^_^;)

 庇護を受けてばかりでいる主人公に、どうも馴染めないというか……。
 そんな行動云々は別にすれば、主人公を含めキャラの造形は好きなので、もう少し付き合ってみようかと思います。


10
『TO THE CASTLE DISCO UNDERGROUND』 桑島由一 著

 もー、前作に輪をかけてメタメタというか。
 このテンションの高さは見習いたく(笑)。
 久しぶりに「どこに笑いのネタが仕込まれているか分からず、ヤバイ文章」というものに出会いました。
 電車の中で読むの、禁止。

 わたしはマユリみたいな、欲望と生き方が一緒になっちゃってる人に弱いのかも。
 それでいて、起こした行動に後悔もしなければ、結果に言い訳もしない。
 そんな正直で潔いところが好きなのかもしれません。

 それを言うとゴルゴもセバスチャンも、真っ直ぐな生き方をしてますよねぇ。
 でもって、物語の骨子としては、敵方のゲストキャラにハンパな心情を持った存在があって、それがマユリたちの実直さに打ち負かされる話になっているわけでー。
 そりゃ、この作品を好きになるわけだわ。

 それにしても前作にくらべて、イラストのスドウヒロシさん、上手くなられたなぁ……という印象が。
 キャラが生き生きとしてます。
 でも、黒ベタが荒いのは意図的なんでしょうか? 仕様?
 そこをもう少し丁寧に描かれたらどうなのかなぁ……と思います。


 ところで、オビのコメント、何故に小倉優子ちゃんが?(苦笑)


『TO THE CASTLE』 桑島由一 著

 うはぁ……。なんと言ったらいいのか……。
 とりあえず、楽しんじゃった人勝ち? 笑った人勝ち?(^_^;)

 世界がどういう成り立ちをしているのかとか、複雑怪奇な人間関係とか、そういうのとは無縁で、ただただ登場人物の言動を楽しんじゃえ!って気が。
 それでいて最後には、心にチクリと刺さる命題を置いておく辺り、桑島センセらしいというか。

 でも、そのシリアスな命題が、そこまでのビビッドな流れと反しているようにも思えて、浮いちゃっているような気がしないでもないですけど。
 楽しい文章だけでは作品は成り立たないということなのかもしれません。
 なので、終盤にシリアスな展開を用意するのは必然であるとの立場をとって、この展開は「アリ」だと言わせていただきたく。

 物語の流れの中では違和感を覚えてしまうのかもしれませんけど、それはそこまでの流れが楽しいからこそ引き起こされる感情であるでしょうし、決して登場人物たちの言動が都合良く変化させられたわけでもないと、わたしは思います。


『こころナビ』 茉森晶 著

 ソフト発売から1年が経とうとしている今、この作品のノベライズに会えるとは思って思いませんでした。
 まったくもって、嬉しい驚きでした。

 内容のほうはルファナを中心として描かれているので、推して知るべし……といったところでしょうか。
 凛子や小春はまだマシで、アイノとかみまりさんとかはもう……(TдT)。
 複数のルートがあるゲームのノベライズでは、こうして割を食うヒロインが出てくるのも仕方がないんですけどねー。

 でも、メインに据えているルファナ、そして凛子や小春の物語の結び方は嫌いじゃないです。
 そして色々な制限がある中、丁寧に、精一杯に描いているというカンジです。
 ゲームテキストを文章化したというだけではなく、やはり原作者自らが執筆されているだけあって、その心情について新たな面を見せてくれているという。

 うん。やっぱり「こころナビ」は好きです。


 この本の発売とほぼ同じくして、Q−Xからユーザー登録者へお礼のメールが届いたりして。
 小さな会社なのに、頑張ってるなぁ……。
 こういう誠実な姿を見せられると、応援しなくちゃ!という気になります(^_^)。


『蒼穹の女神 111ヤークトシュタッフェル』 すずきあきら 著

 主人公の愚行の繰り返しで頁が消費されていくのは、読んでいてツライものを感じました。

 結果を求めて力量以上のことをするのが無茶。
 結果を考えずに行動を目的と取り違えてしまうのが無謀。
 ……という言い方をするならば、この作品で主人公は後者。

 パイロットの大多数を女性が占めるという状況設定も、売り手の思惑が見え隠れしていて馴染めませんでした。



『あそびにいくヨ!3 たのしいねこのつかいかた』 神野オキナ 著

 え? あれれ? 瑞慶覧……? 御鏡じゃなくて?
 いちか? 井草じゃなくて? えっ?
 でも、アロウと逢うことを楽しみしている旅士って、あの旅士しか……。
 護符を使ったことがあるって、あの事件のとき……??

 ……と、まあ、いらぬトコで首を捻ってしまったわたしです(笑)。

 本編のほうでは、いままでになく賑やかになってますねー。
 各キャラ、生き生きと描かれています。
 前作までで基本的に必要な情報は提示できたので、あとはその素地に乗っかってアクションを起こすだけ……という気楽さを感じます。
 キャラ物の面白さが設定に裏打ちされているだけに、更にドキワクですよ。

 物語は大きく進みませんでしたけれど、キャラの関係は前に動きましたよね。
 次の展開のための布石みたいなものがちりばめられてました。
 この関係が、これからどのように活かされていくのか楽しみです。

 それにしても、騎央を巡る戦いから真奈美は一歩後退ですか?
 まぁ、幼なじみという立場以外に寄る辺を持たなかった彼女ですしねー。
 これも、いたしかたないですか。



『吉永さん家のガーゴイル 3』 田口仙年堂 著

 くぅ……っ。この展開は、分かってるっ!
 分かっているのに……泣けてしまいました(T△T)。
 あるいは、分かっているからこそ、泣ける準備が出来てしまったのかもしれません。
 哀しく切ないお話でありながら、最後に心に残るものは温かいものであるという、田口センセらしさ全開。
 1つの経験が、心を豊かにしてくれます。

 前2作と比べると、物語が途切れない印象を受けました。
 これまでは章単位でお話が区切られていて、その幾つかの流れが最後に集約されるという印象だったのですけれども、今作では大きな流れ1つで最初と最後がつながっているカンジです。
 構成の良し悪しとは別に、こういう形のほうがわたしは好きですねー。
 こういうことが可能になったのも、シリーズも3作目となって、細々とした説明が不要になったからなんでしょうか。
 ガーくんの生い立ちとか、各キャラの立ち位置とか。

 いつ最終回が訪れても不思議ではないお話ですけれども、ずっとずっと続いていってほしい、そんな気がしてくるのです(^_^)。


『閉鎖師ユウと黄昏恋歌』 扇智文 著

 ラストが衝撃的でした。
 読み手の希望を打ち砕くかのような、とてもドラスティックな帰結。
 でも、そのことは決して独善的に描かれているようには思えなくて、むしろ哀しい優しさの上に成り立っているような気がするのです。
 なんというか、残酷な現実を見せられはしたものの、とてもとても綺麗な終わり方をしていると思います。
 こういう結び方を選べる人は、これからが楽しみかもー。

 不満があるとすれば、そうした内容の力点と、タイトルやカラー口絵の力点が合ってないような印象だったこと。
 少なくとも閉鎖師ユウの物語ではないかなぁ……と。


『スカイワード』 マサト真希 著

 最後に残る印象が薄い……ような。
 前半で提示される設定のほとんどは、その後の展開に活かされてないので。
 舞巫女姫であることや、中性体であること、擬人であること。

 普通に学園モノで、自分たちで飛行機を作って飛ばすお話……とかじゃダメだったのかなぁ。



『空ノ鐘の響く惑星で 3』 渡瀬草一郎 著

 物語が大きく動き出す瞬間を見せられているような気がします。
 静かだった流れの先に瀑布があったような。
 物語の押しと引きがバランス良く配されていて、読んでいてフラストレーションが溜まりにくいなぁ……というカンジです。

 フェリオの強さについてこれまではわだかまりがありましたけれど、今巻の展開から、そんなことはどうでもよくなりました。
 作中で「強さ」についての見解を問う場面があったこともそうですけれど、それに依存しているばかりの物語ではなかったので。
 その出自についても、謎?のようなものが浮かび上がってきましたし、彼自身がこれからキーパーソンとして機能していきそうですねー。
 ラバスダン王は本当にフレイアを好きになって第四妃として迎え入れたのか、このあたり、ちょっと疑問かもー。
 ウィスタルの献身ぶりも、表面通りに受け取るわけにはいかないカンジが。
 王から直々にフレイアの警護を任された……ってアタリが、どーも気になります。

 クラウスについては理解はしますけど、同情はしないかなー。
 ニナが大切だったのではなく、ニナを好きな自分が大切だったような印象。
 オトコがええかっこしぃになるのは当然だと思いますけど、粋すぎるとナルシーというかモノの見えない愚か者になる……ということで。
 クラウスのおかげで、ベルナルフォンの存在が大きくなること大きくなること。
 隻眼の働き盛りってなぁ、どうしてこう切れ者なのか(^_^;)。

 それにしてもヒロイン交代劇を物語の展開に巧みに取り入れているなぁ……という印象。
 2人の正ヒロインが、互いに影を落とさないようにしているというか。
 でも、わたし的にはウルクを応援したいかなぁ〜。
 今回もウルク、頑張ってたじゃないですかっ!
 ていうか、フェリオは「婚約者くらい、自分で護る」と言った!んですから、その言葉は守ってほしいものです(笑)。


『孤狼と月 フェンネル大陸 偽王伝』 高里椎奈 著

 展開が早過ぎ……といっても、悪い意味ではないです。
 それだけ真っ当な勢いがあるということで。
 主人公フェンの立場を表すかのように、有無を言わせず押し流していくというか。

 彼女を襲う失意も、そこからの復活もテンポ良い筆致で素直に読めました。
 設定や描写の詳細さでまだ不可解なところもありましたけど、そういったことはこれからなのかもしてません。
 この巻では、ともかくフェンという少女が1人で世界を見るという意志を持つことが大切に描かれているわけで。

 ……って、続刊、あります、よ……ね?(^_^;)

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