下らない物ですが……

午后の会話

 

 

 

「突然ですが【フロント・ホック・ブラ】を簡潔に説明して下さい」
3時のお茶にありつこうとした彼に、いの一番にかけられた言葉がコレだった。

▲▽▲▽▲

説明せねばなるまい。
とある何の変哲も無い午后の事であった。とある一室に、何時ものように入り浸っているメンバー達は、珍しく、退屈していた。
それで、あれこれと退屈を吹き飛ばすべくお遊びを考えていたのだが、今一つ、乗り切れていなかった。
其所へ定例通りに現れたのは、少々影が薄いが雑用のアルバイト要員、高橋優子こと通称タカと、スランプのスプーン曲げ少女で、此処へは開発トレーニングに通っている笠井千秋(麻衣は千秋センパイと呼んでいる)の二人だった。
此処へ来る道すがら、何やら笑えるネタを仕込んで来たからと、早速、そのお遊びが始ったのだ。
ちなみに、其れに対するお答えは以下のような物があった。
「まぁ、恥ずかしい。そうですわね、ここの(と言って、胸の谷間を指しながら)所で止めるタイプの物ですわ」
「はぁ、胸部の所で金具が外せるようになっている様になっている物の総称でしたよね」
「そうそう、前ントコで外せるやつ」
「前側に止め具の付いたもの。昔はちょっと押しただけで外れて大変だったんだけど、最近のははめる時にひねりが入っているのよ」
「ええ〜とっ、胸ンとこに、金具の付いてるタイプ」
上から順に、真砂子、安原、滝川、綾子、麻衣、である。
これを聞いたタカと千秋は笑い転げていた訳だが、ここで好奇心が沸いたらしい。
是非、同じ質問を此処の所長、ナルにしてみたいと言い出したのだ。
当然ナルの事だ。ただ聞いただけでは答えるどころか逃げられてしまうだろう。そこで一計を案じた。
そこで、最初のシーンに戻るのである。
「突然ですが【フロント・ホック・ブラ】を簡潔に説明して下さい」
胸に刺していたシャープペンシルをマイクに見立てて、ついとナルの前に突き出したのはタカだ。その隣に千秋がごく、真面目な顔をしてメモを構えている。ナルは怪訝そうに眉を潜めて溜息を付いた。
「一体なんですか」
確かに、何の前置きも無くこんな風に質問されたら誰だって聞き返したくもなろう。
何故、こんな質問を?と。
タカと千秋は苦笑いを浮かべて説明を始めた。
「学校の授業で、言葉を完結明瞭に説明出来るかって、テストのようなものがあったんですよ。皆さんにはその練習に付き合ってもらってたんです」
「そうですね、例えば『ぺーじ』なんて、渋谷さんならどう説明します?」
千秋のこの質問に、ナルは一拍、呼吸をおいて答えた。
「本を構成する紙などの一面」
ほ〜っと、タカや千秋だけに留まらず、後ろの面々からも声が漏れる。
「さすが、渋谷さん。良〜い、模範的解答ってのはこうゆう風に答えるのよ、麻衣」
千秋が後ろのソファに撃沈している麻衣ににっこり笑いかけた。
「で、大変申し訳ないのですが、ブラジャーに付いては散々言い合いましたので【フロント・ホック・ブラ】に付いて模範的解答をお願いしたいのですけど?」
タカが本当に申し訳無さそうに上目遣いでナルを見た。
暫く黙ったままだったナルだが、全員の注目を浴びてようやく、諦めたように口にした。
「前面、もしくは胸部にて金具の外せるもの……と、言う事で良いですか?」
其れを聞いて、タカと千秋が目を煌めかせて最敬礼をした。
「御協力、有難うございました〜〜〜〜!!!!!」
ソファでは、全員が決して広く無いテーブルに突っ伏していた。
何か不穏な物を感じたナルは、麻衣にお茶を持って来るように指示して引き返した。ナルの姿が完全に消えるのを待って皆から笑い声がもれ聞こえて来たが、爆笑すればナルに不審がられるので、全員、笑いを必死で殺していた。
「出ましたねぇ〜」
「出ましたよ〜」
タカと千秋は人の悪い笑いをその可愛らしい顔に浮かべていた。そして、こう締めくくった。
「メモメモ。渋谷さんにとってブラジャーとは、『外す』物であると!」

 

 

終劇 2001.05.15.

 

突発ネタ。 意味も他意もありません。
これと同じ質問を会社の子にされました。NEKOはこの時、

「前ンとこで外せるやつ」と答えて爆笑されました。
普通、女性は「止める」と答え、男性は「外す」と返すそうです。
前々から思ってはいましたが、NEKO、どうも発想が親爺くさいらしいです。
それだけ……(脱兎)探さないで下さい。