ピアニストのスゴさ
(数年前に別の場所で書いたものを移植しました)
偉大な作家、井上靖 は、歴史だけでなく美術にも造形が深く、美術品に対する愛情の深さは「 石涛」「漆胡樽」といった作品からも伺われます。
しかし、あらゆる芸術の内、音楽に関してだけはさっぱりだったそうです。
著名なピアニストに向かって「ピアノなんて猫が弾いても同じ音がする」と言ってのけて相手を本気で怒らせた事があるとか。
ピアノで一つだけ音を鳴らした時、構造から考えると確かに「猫でも同じ音が出せる」と思えます。
そんな事から、鍵盤楽器はギターやバイオリン程の表現力が無い、と考えてしまっては大きな間違いでしょう。
優れた演奏家によるピアノ演奏は何が違うのかを「音色」に於いてのみ考えると、タッチの強弱、打鍵のタイミング、音価、この3つのパラメータだけのように思えます。
例えば和音を鳴らした時、それぞれの音の発音されたタイミング(完全な同時はありえない)と強さ、そして鍵盤を離す(音を止める)タイミング、は倍音構成に直接影響を与えますし、ペダルを開いていたならば他の弦の共鳴の仕方にも影響します。
MIDI Message で例えて言うなら、Note On のタイミング、Velocity、Gate Time、・・・これだけ。
音色の個性を表現するパラメータとして与えられているのは、この3つだけなのですから、そう考えるとピアニストというのは凄いです。