初見で演奏する事
もう25年以上昔になりますが、私は、京都南座の隣にあった割と大きなキャバレー「シスターハウス」の専属バンドで、ギタリストとして働いていた事があります。バンマス始めメンバーの皆さんは経験豊富なベテランばかりで、未経験者だった私を親切に指導して下さり、今もとてもとても感謝しています。
そのバンドは、シスターハウスの前には、有名な伝説のキャバレー「ベラミ」の専属バンドだった事もありました。ベラミが閉店する間際の一時期、私が音響スタッフの見習いとしてアルバイトをしていたのでバンマスと面識があり、ギタリストである事も話してあったので、バンドに欠員が生じた際に連絡を下さったのです。
しかし、その時の私が一番心配だったのが、譜面を初見で演奏する事です。
今の「スクール・オブ・ミュージックプラン」(当時は「AN SCHOOL OF CONTEMPORARY MUSIC」)のギター科を卒業していましたが、在籍中も初見は苦手でした。初見の練習って、まあはっきり言って楽しくありませんし、ハードロック系のギタースタイルに向っていた私は、読譜が早くなったりトランスポーズ(譜面とは異なる調で演奏する事。Key=F で書かれた譜面を5度上(Key=C)で演奏する 等々)ができるようになりたいなんて、全然思いませんでしたから。
しかし、キャバレー専属バンドのメンバーとして仕事をする以上、そうはいきません。バンドマンやスタジオミュージシャンという職業は、初見で演奏できなければどうしようもない仕事なのです。ですから最初はお断りしたのですが、バンマスは「君は真面目に努力する人だから、そんな事は短期間で克服するだろう。君の目標がバンドマンでない事は解っているが、音楽で生きる事を志しているのだから、音楽と関係のない仕事(その時はビニール工場のバイト)で生活の糧を得る状況から抜け出す良い機会と捉えて、まずこの仕事をやってみなさい」と強く勧めて下さったので、私も感謝しつつ覚悟を決めてお受けする事にしました。
最初はもちろん大変でしたが、しかしまあ現場での実践はどんな練習より有効なようで、一ヶ月後にはナマオケ(カラオケの生バンド版)のガイドメロを、初見で演奏できるようになっていました。ナマオケでは、歌う人の性別や年齢を基に、譜面よりどれだけ上げ下げするかをバンマスが瞬時に決定します。当然、初見だけでなくトランスポーズできなければどうしようもありません。これも、難なく出来るようになってしまいました。自分でも驚きでした。『うっそ・・・! オレ、譜面よんでる・・読めて弾けてるじゃん・・!』て感じでした(笑)
しかし、せっかく譜面に対して抵抗が無くなっていたのに、その後、本来の目標であった音楽制作の仕事が軌道に乗って演奏の仕事から離れると、また自然に読譜力は落ちてしまいました。まあ全然とは言いませんが、今や初見はすっかりだめになっていて、特にフラット系以外のキー(つまりJazzであまり使われないキー)だとお手上げです。
何故こんな事を書いたかと言うと・・・。時々見る不安な夢の一つが「初見」がらみの夢で、今朝もそれで不快な目覚めだったからです(笑)
私は録音スタジオのコントロールルームでエンジニアとして仕事をしていたのに、急遽、ギタリストの代役を要請されました。いきなり初見は不安なので譜面をコピーしてもらって、15分程練習させてもらうのを条件に引き受け、外へ出ましたが、なぜか譜面を紛失してしまいます。どんなに探しても見つからない・・・。あと2~3分で、スタジオに戻って、初見で演奏しなければいけない・・・。どうしよう!
・・・という、怖い怖い夢でした。
目覚めたのが夜中でしたが、また眠ったら続きを見ました。譜面はやはり見つからず、絶望的な気分でスタジオに入りました。
この夢、時々出てくるんですが、もう勘弁してほしいです(笑)