Vapochill_Tune5 禁断のガス抜
LastModified 02/10/27
「嵐が吹かねば太陽が輝かぬとするなら、大地を走る無謀なる風になろう。
戦いの果てにしか安らぎは来ないものなら、おのれの血のたぎりに身をまかせよう。」
(高橋 良輔監督
「装甲騎兵ボトムズ」-第24話「横断」予告より)
という訳で、Vapochill TuneUp part5は、いよいよ禁断のガス抜きです。前回の[ペルチェ負荷試験]で「キャピラリは絞り弁として機能しておらず、ガスの充填量で冷媒循環量を調整している」のではないかという結論を得られました。そこで充填ガス量の調節で更なる冷却効率Upを狙えないかと考えた次第です。
尚、今回もmasamotoさんから多大なるご支援・御教授を頂きました。改めて、御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
1. 四万十川式簡易ガス抜きキット
さて、ガスを抜くにもどうやって抜くかという問題があります。それに抜き過ぎた際にどうやって補充しようかと・・・
そんな四万十川にmasamotoさんがまたも救いの手を伸ばして下さいました。エアダスターを使ってHFC-134aをガス入れする簡易ガス入れキットを頂戴してしまいました。使用方法等の詳細はこちらです。
本当にいつもありがとうございますm(__)m

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masamoto式簡易ガス入キット |

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アクセスバルブ |
フレア加工された口を合わせ |
ナットを締めて接続 |
さて、これでガスを抜き過ぎた場合の備えはできました。しかし、抜くガスの量をどの様に計量するかが問題です。全充填量が85gなのですから、最大10%抜くとしても8g程度。効果を見るには1gのオーダで管理しなければなりません。Vapochillの冷却ユニットは約7kg。これを1g単位で計測できる秤なんて・・・・・・・・・
色々探してみましたが、民生用では見つけられませんでした。あるいは業務用ではあるのかもしれませんが、どうせ手を出せるお値段ではないでしょう。そこで抜いたガスの体積から重量を測る事にしました。134a
の25℃での飽和蒸気の比容積は、
32.249 kg/m^3 → 0.031009 m^3/kg
= 31 L/kg
= 31cc/g
なので、体積で31cc抜けば1gだよなと・・・^^;
そこで、簡易ガス入れキットを使って以下の様な、四万十川式簡易ガス抜きキットを用意してみました。

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インナーチューブ |
ガス導入口(シールテープ巻) |
ガスをビーカに導入 |

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四万十川式簡易ガス抜きキット(笑) |
シールテープを巻いて気密を保った6.5mm径のビニールパイプで簡易ガス入れキットのインナーチューブを押す事でアクセスバルブを開放し、抜けたガスは水満たしてひっくり返したビーカに導きます。ビーカで31ccを測れば1gという訳です。
実際にやってみると、ほんの一瞬のシュッで30cc位は一杯になります。正確に31ccという訳にはいきませんが、ほぼ30cc程抜いていく事ができました。
コンプレッサが25℃の時でないと体積が変ってしまうので、1日一回稼動していない状態で抜いては、効果を見ていきました。
2. 検証条件
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計測条件
冷却ユニット単体駆動にて、エバポレータを断熱し無負荷の状態で、各ガス抜き後起動1時間迄の温度計測。それ以後、ペルチェにて30w負荷にて1時間後に温度計測。傾けて(ケース正面右下に雑誌をスペーサとして3mm挟む^^;)60分経過後に温度を計測。(各ガス抜きは日を改めて測定)。
計測位置
Evapo :エバポレータのCPU接触面上部(CPUの真上)
CompUp :コンプレッサ 頂上部
CompLow :コンプレッサ 戻り銅管付け根付近
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3.実験結果
各ガス抜き条件における温度計測データはこちらです。室温は約25℃の条件です。以下にエバポレータ温度を示します。
起動時間(min) |
0g |
1g抜 |
2g抜 |
3g抜 |
4g抜 |
5g抜 |
6g抜 |
0 |
24.6 |
25.0 |
25.1 |
24.9 |
23.5 |
24.5 |
25.0 |
1 |
24.4 |
24.6 |
24.4 |
24.4 |
24.7 |
22.6 |
23.5 |
2 |
0.8 |
11.1 |
9.5 |
16.7 |
13.9 |
12.7 |
22.6 |
3 |
-27.0 |
-25.0 |
-25.0 |
-19.2 |
-22.0 |
-22.0 |
-8.8 |
4 |
-29.0 |
-30.0 |
-28.0 |
-30.0 |
-30.0 |
-30.0 |
-30.0 |
5 |
-30.0 |
-29.0 |
-30.0 |
-31.0 |
-29.0 |
-32.0 |
-32.0 |
6 |
-29.0 |
-29.0 |
-30.0 |
-32.0 |
-30.0 |
-33.0 |
-33.0 |
7 |
-29.0 |
-29.0 |
-30.0 |
-32.0 |
-30.0 |
-34.0 |
-34.0 |
8 |
-29.0 |
-29.0 |
-30.0 |
-31.0 |
-30.0 |
-33.0 |
-34.0 |
9 |
-29.0 |
-29.0 |
-29.0 |
-31.0 |
-29.0 |
-33.0 |
-34.0 |
10 |
-29.0 |
-29.0 |
-29.0 |
-31.0 |
-30.0 |
-33.0 |
-33.0 |
11 |
-29.0 |
-28.0 |
-29.0 |
-31.0 |
-29.0 |
-33.0 |
-33.0 |
12 |
-29.0 |
-28.0 |
-29.0 |
-31.0 |
-28.0 |
-32.0 |
-33.0 |
13 |
-29.0 |
-28.0 |
-29.0 |
-31.0 |
-28.0 |
-32.0 |
-33.0 |
14 |
-29.0 |
-30.0 |
-29.0 |
-30.0 |
-29.0 |
-32.0 |
-32.0 |
15 |
-29.0 |
-30.0 |
-29.0 |
-30.0 |
-29.0 |
-32.0 |
-32.0 |
30 |
-29.0 |
-29.0 |
-29.0 |
-29.0 |
-28.0 |
-30.0 |
-31.0 |
60 |
-29.0 |
-29.0 |
-29.0 |
-26.0 |
-28.0 |
-30.0 |
-31.0 |
ペルチェ5V |
-25.0 |
-26.0 |
-26.0 |
-26.0 |
-26.0 |
-28.0 |
-29.0 |
ペルチェ5V傾 |
-31.0 |
-31.0 |
-31.0 |
-30.0 |
-30.0 |
-30.0 |
-31.0 |

4.考察
(1) ガス抜きによる効果
6g迄ガスを抜く事で、起動60分後のエバポレータ温度で-2℃、30W負荷時で-4℃の温度低減が図れました。-25℃以下までの到達時間は、ガス抜き前で3分程度なのに対して4分程かかる様になっていますが、まあ許容範囲内でしょう。
劇的に10℃位下がる事は期待していなかったと言えば嘘になりますが、四万十川的には満足の行く結果です。あるいは、もっとガスを抜けば効果が出るのかもしれませんが、抜き過ぎてヒートバランスを崩した場合の再充填の困難さ(充填量を計測する手段が無い)を考えるとこの辺りが無難な線かもしれません。
30W負荷時に、傾ける事で-6℃冷えていたのが、6g抜いた後では傾けても-2℃しか冷えていない事から考えても、まあ妥当な所ではないでしょうか?
(2) コンプレッサ温度
ガス抜きによるコンプレッサ下部の温度変化を以下に示します。
CompLow |
0g |
1g抜 |
2g抜 |
3g抜 |
4g抜 |
5g抜 |
6g抜 |
起動60min |
16.2 |
14.9 |
14.8 |
14.8 |
15.2 |
20.3 |
22.6 |
ペルチェ5V |
17.8 |
18.6 |
18.0 |
18.6 |
20.3 |
24.7 |
28.9 |
ペルチェ5V傾 |
39.1 |
38.2 |
38.0 |
38.5 |
40.6 |
40.3 |
38.4 |
ガスを抜く事でコンプレッサ下部の温度が上昇している事がわかると思います。これはガス量が減った事で、エバポレータからコンプレッサに戻る冷媒の乾き度が増し、コンプレッサが冷却されなくなった為と考えられます。しかし、[ノーマル状態でペルチェ5V+傾き]が39.1℃にまで達しているのに対して、[6g抜いた30W負荷]では28.9℃とまだ10℃もの開きがあります。傾けて冷える理由が以前結論とした「傾ける事で冷媒循環量が少なくなった」とすれば、まだまだガスが多いという事になるのでしょうか・・・ううむ・・・・
という訳でまだまだ謎は残りますが、とりあえず結論です。
Vapochillはガス量の最適調整により冷却性能Upを図る事が可能である。
しかし、これは元々のVapochillのガスの充填量の個体差に左右されるので,、どれでも可能だという訳ではないでしょう。最初から最適な状態であれば悪化する事も考えられます。もし、同様な事を試みる(いないと思うけど^^;)方がおられる場合には、充分初期状態の性能評価を行ってチューニングの余地があるかどうかを見極めた上で検討して下さい。
ま、リスクを犯してたかだか-4℃の改善ですからね・・・・・決してお勧めはしません(爆)
5.独り言
という訳でなんとか禁断のガス抜きも成功?した様です。-4℃の改善とリスクに見合う効果が得られたかどうかの判断は、ご覧の皆さんにお任せします(笑)
まあ、四万十川的には、「大体やれる事はやったかな」という満足感があります。
「放たれた矢は、標的を射るか、地に落ちるか。」
(高橋 良輔監督 「装甲騎兵ボトムズ」-第24話「横断」予告より)
うーん、落ちはしなかったけど、隣の的に当たったって所かな〜。しかし、気がつくと到着して2ヶ月余りが経過してますね〜、夏も終わってしまった・・・
さーて、そろそろCPUつけてみましょうかね、冬が来る前に・・・・・・
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