ラムネ幻灯             逢坂みえこ


ヤングユーとヤングユー別冊に載った5作品が載った短編集です。

ちょっとなつかしい、昭和の匂いを感じるような心温まる作品が収められています。

どれもこれも 私の大好きな作品でひとつ選んで語るのは難しいのですが、無理矢理選ぶなら
「あいすくりん」。

今で言えば「アイスキャンデー」ですね。
作中では、自転車でおじさんが「あいすくりん〜あいすくりん〜」と言って売りに来ています。
「あもうて ひやこい あいすくりん 1本10円 1本10円」 
こどもたちが駆け寄ってわれさきに10円玉を差し出してあいすくりんを買い求めます。
・・・ああ、なんて素敵な光景でしょう。

  ( 「ラムネ幻灯」のストーリーを読む→    )


私にはそんな記憶はないのですが(いや、さすがにアイスはお店で買った世代です)かつてそうやっておじさんに10円玉を差し出したような気になってしまいます。

主人公の正種(まさね)は都会から田舎のこの町に越してきたばかりの少年です。
あいすくりん売りが気になってしょうがないのですが、和服をきちんときこなすお母さんはそれを禁じます。
「ああいうきつい色のものは毒だし、どんなバイキンがついているやら」

そしてお母さんの作るおやつは手作りで 大学いもやパンのかりんとう・・・。
それを「晩御飯の煮物と同じ色」と感じる正種は、ひそかに赤や青にきらきら光るあいすくりんにあこがれます。

こども思いのやさしいお母さんです。
この漫画に登場するのは みんな やさしい いいひとです。
そのやさしさが心地よくて 幸せな気持ちになれます。

多分、私がこのお話に惹かれた理由のひとつは、私の母がやはり子どもの頃、着色料とか添加物に厳しくて「きつい色」のおやつを食べさせてくれなかったせいだと思います。
私は正種のような よい子ではなかったので、よそのおうちでそういうものをこっそり食べさせてもらった時は母にはナイショにしてましたけど。
でも ひょっとしたら 今私が病気知らずの体力自慢なのは、そんな母の育て方のおかげかもしれません。


残念ながら 今書店では手にはいらないようです。
どこかでみかけたら ぜひ 手にとって読んでみてほしい、オススメの本です。

  ここだけの話・・・私と逢坂みえこ先生

ごめんなさい。そんな話ないです。一方的に私がファンだというだけで、お会いしたこともありません。

某雑誌を読んでいるとき、逢坂先生のおともだちの清原なつの先生が「あなたの絵は時間がかからなそうでいいなあ」というようなことを言ったら「おこってました」というインタビューを読みました。
・・・やっぱり 時間、かかってますよね。うん。



「ラムネ幻灯」     YOUNG YOU 1987 9月号  
「夢であいましょう」  別冊YOUNG YOU 1989ウィンターグッズ 
「狼がくるよ」      YOUNG YOU 1988 7月号 
「あいすくりん」     別冊YOUNG YOU 1989 AUTUMN
「おにいさまとお呼び」 YOUNG YOU 1990 12月号

掲載作品