1996年に、メディアツアーで中国に行った時の感想です。当時の私の認識を、文章をいじらずにそのまま載せておきます。この頃の私は、中国人はみんな人民服を着ていて欲しいと思っていました。もしくは、この頃の私は「三国志」のイメージを中国に重ねていました。この頃の私は中国が嫌いではなかったです・・・。
総論
上海の町を歩いてみて感じるのは、なんともいえない「懐かしさ」であった。つまり、今から20~25年前の日本で私が見聞きし、感じていた印象と同じイメージを、町のそこここに看取る事ができるのだ。
耐久消費財の普及の度合いにしても、近所の人との距離感にしても、外国に対するあこがれの度合いにしても、当時の日本にそっくりだ。ということは、この国は私が考えていたような、個人の欲求追求を抑圧する全体主義国家ではなく、とっくの昔に共産主義の殻を脱ぎ捨てているわけだった。
状況ははるかに進んでいる。経済成長は過去4年間、年率10%を越えている。カラーテレビや冷蔵庫はすでに普及し、人々が今一番ほしがっているのはウチにもないような大型テレビだ。通りの目に付くところには、3年前まで国交もなかった韓国の財閥系家電メーカーや、フランスのコニャックの広告が氾濫している。
中国経済はすでに完全に離陸している。10億の人々は自分たちのルールで動き出した。日本が中国に抜かれる日は、そんなに遠い日のことではないと確信する。
わが国は、一刻も早く新規産業の参入や、公正な競争を制限する規制を撤廃し、企業は高付加価値追求型に戦略転換して、組織や仕事のやり方を変えていかなければなるまい。どんなに努力しても、生産コストで中国に勝ることは不可能だ。今から見据えるべきは、そうした環境下における競争の主体は、能力ある一個人か、あるいは戦略単位としての企業でしかあり得ないことだと思う。
一個人として中国人を凌ぐ能力を持つ日本人がそんなにいるとは思えない。つまり、企業の生産性向上や体質改善が、国際競争上喫緊事なのである。