Audio FAN 掲示板 再録     Audioの科学へ戻る

以下は、2002年9月19日に AudioFANというWeb サイトの掲示板に投稿した内容と応答の主な部分を再録したものです。
青文字は私の発言緑文字はそれに対する応答です。200件近くの応答の内、私が本筋に沿っていると判断した一部のレスのみを掲載しています。引用は原文のままですが省略・削除した部分はあります。またニックネームを含め固有名詞はアルファベットに直しました。ただし、明らかなミスは訂正してあります。

なお、話題となった項目に以下表題をつけリンクを張りました。

問題提起、 物理学の限界?、 心理効果、 SPケーブルは¥1000/m程度で十分、 既製品の宣伝文について、 線材の純度の影響、 電気抵抗の原因、 ノイズの影響、 電源ケーブルについて、 全体的な意見、 私の総括、 
SPケーブルでは音は変わらない?

問題提起

この掲示板は始めてです。ケーブルを変えてみるというのがオーディオファンの楽しみに一つのようですが、ケーブルといえ物理法則を免れるわけにはいきません。従って、その基礎となる物理をある程度知っていないと無駄な投資をすることになりかねません。いささか物理学を学んだオーディオファンとして、オーディオにまつわる物理を整理してみました。その結果を
http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/Audio.htm

にUpLoadしてあります。
内容の一端として、少し詳しく考察したスピーカーケーブルについて要旨を紹介します。
1. ケーブルの材料は直接的には音質と無関係である。
2. ケーブルの直流抵抗値は太さできまり、これは主にスピーカーの制動力を支配する因子として重要である。もちろん、材質は直流抵抗値に関係するが、その差はせいぜい1%程度であり、抵抗値は99%結晶の熱振動によるもので、例えば4N-OFCを6N-OFC単結晶に変えても室温を1℃下げた程度の効果しかない。
3. 音質、特に高域の特性に関係するのは周波数に依存するケーブルのインピーダンス特性でありこれは全て太さを含めたケーブルの構造により決まる。(i)表皮効果、(ii) 自己インダクタンス、(iii)静電容量、(iv)自己振動などの要因にわけ定量的に解析してみました。その結果、可聴周波数帯に影響を及ぼしそうなのは(i) (ii)のみである。これも、適切に設計されたケーブルであれば可聴周波数帯より上、超音波領域でしか影響を及ぼさない。
結論は『1m 千円前後の定評あるケーブルを使えば十分である』。という常識的なものです。
私は、金属の物理的性質についてはある程度専門的知識がありますが、電磁気学については素人、オーディオは趣味程度でそれほどいい耳を持っているとは思っていません。思い違い、見落としなどもあると思うのですが、HPも見ていただき、他の内容を含め、ご意見、コメントをお待ちしております。
ただし、『耳で聞いて確かに差がある』といった理由のみのご意見、特定の製品についてのご質問にはお答えしかねますのでご了承下さい。


アクセサリコーナーに『オーディオケーブルの物理学』を投稿したところ、多くのレスポンスがあり応接に暇がないない状態です。本日いただいたご意見にはかなり基本的な問題を含んでおりまとめて私の立場と考えを述べさせていただきます。このような話題はこの『難しネタルーム』が適当とのご意見もあり改めてこちらに投稿しました。

物理学の限界?

はじめにToさんのご意見について、

志賀@高槻さんの仰ることは全く正しいことだと思います。
しかしながら、それは現在の物理学でのことではないでしょうか。
私は物理学は全くの素人なので分かりませんが、物理学とは普遍のもので、現在考えられていることが全てで、何10年後も何百年後も変わることがないような確立された学問なのでしょうか。素人考えで申し訳ありませんが、直流抵抗や静電容量などといったこと以外に現在では考えもしない原因で音が変わるといったことは絶対に起こらないと言えるのでしょうか。かつてCDはデジタルだから絶対に音は変わらないとされていたのに今ではそんなこと誰も言わなくなりましたよね。私は物理学に限らず学問とはそんなことあり得ないと否定するのではなく、学問的に変わるはずもないのに多くの人が音が変わると言っているその原因を究明することが重要なのではないかと思います。。志賀@高槻さんには数少ない?物理学を学んだオーディオマニアとして今現在だれも科学的・論理的に証明出来ていない音が変わる原因を究明してもらいたいと考えるのは身勝手なお願いでしょうか。


私がケーブルの解析に使っている力学、電磁気学などは古典物理学といい100年以上前に確立したもので、より精緻になったもののその基本原理(基礎になる方程式)はまったく変わっていません。ただ、この枠組みは日常体験するような現象(ケーブルの物理もその一つです)を解析するには問題ないのですが、例えば、金属中の電子の振る舞いなど極微の世界の運動を理解するには具合の悪い点があることがわかり、60年くらい昔、量子力学が発展確立しました。今後さらなる新展開はないのか?もちろんないとはいえません。ただし、それは宇宙の起源だとか、素粒子の起源だとか(ここら辺は私にもよくわかりません)およそ、非日常的な世界を問題にするときにありうることと考えられます。俗世のもろもろの現象はすべて既に確立した上記理論体系の枠内で理解できるはずだと物理学者は信じているわけです。
ただし、何でもすぐ解き明かせるというわけではありません。例えば、(急に話を振りますが)ご存知のように地震予知は現在のところ不可能です。それは、地殻内の諸々の現象はあくまで物理法則に従って動いているわけですが、現象があまりに複雑で、さらにインプットする情報が少なすぎるため、現在のところ問題を解くことが不可能なわけです。これは地震学者が無能なわけではなく、一旦起こった地震の震源地や規模は瞬時に計算出来るのは問題がより単純なためです。
 私のHPに数値として示してある、表皮効果や自己インピーダンスは電気工学の教科書に書いてある式をそのままケーブルの構造にあわせて計算しただけのものです。もう少し複雑な問題として、ケーブルの自己振動の影響については、手元にあるテキストブックには記述がなく、自分で問題を単純化して解いてみると意外なほどその影響が少ないことがわかりました。本当は、ここらあたりの解析についての問題点を指摘してもらえるとありがたいのですが。


心理効果

Ma さんの意見
そうですねぇ。音波が耳に届く直前までの現象だけ追いかけるのは、片手落ちの検証になると思います。
音波や電気は自然現象として存在しますが、ボクらが“音”と称しているものは、目の前で起きた自然現象と関係なく自分の脳が作り上げたイメージですものね。
人間が耳でキャッチした刺激をどんなプロセスを通って“音”や“音の違い”として認識しているのか? そんな考察を並行して行わないとダメでしょうね。でもそれは人間という生き物自身の研究となるので、なんか難しそう。


Koさんの意見
オーディオが人間の五感のひとつ(聴覚)に基づく以上、体内でのシグナルの情報処理は人間の生理、心理に大きく影響されます。
だから、思い込み、プラシーボなどの効果はわれわれが想像する以上に大きく、そこに付け込んだオカルトとしか思えないようなグッズが多数存在するのも事実です。


この部分全くそのとおりで異存ありません。心理効果はきわめて大きいと思っています。私は心理学の知識は殆どありませんので、片手落ちを承知でアンプ出力からスピーカーへ入力までの伝送特性について物理的な解析をしたまでです。

しかし、ケーブルで驚くほど音が変わることは、あまりにも多くの人が経験していることで、上のような理屈のみでは片付けることはできず、ある程度の客観性を持った「経験的事実」の部分もあるのだと考えねばなりません。
要は、まだそのメカニズムがよくわかっていないだけ。
理論的にこうなるはずだ(すなわち非経験的推論)というのは、経験的事実に対して齟齬をきたさない説明がなされて初めて科学としての客観性の重みを持ちます。


その経験的事実なのですが、まず、そもそもケーブルを変えても音が変わらないなどとは決して言っていません。ただ、残念ながら私自身ケーブル部分を変えただけの音の差を聞き分けられる鋭敏な耳を持ち合わせていませんので自分自身では経験的事実として理解できないわけです。また、多くの人が音の差を経験しているということはよく承知していますが、具体的にどう変わるかを科学的データ(おそらく、耳は測定器より鋭敏だという意見が返って来るとは思いますが)として示してもらわないと、物理学の立場からは答えようがないわけです。
というわけで、『耳で聞いて確かに差がある』といった理由のみのご意見にはお答えしかねますといったわけです。


SPケーブルは¥1000/m 程度で十分

それが、唐突に『1m 千円前後の定評あるケーブルを使えば十分であるというきわめて現実的な結論』に跳んでしまうのは腑に落ちません。

確かに、ここには論理の飛躍があります。まずこれは、どちらかといえばHPを見てくださる初心者へのアドバイスといった気持ちで書いたことです。
ただ、最近の高価格のケーブルは6Nや8N といった製造にきわめてコストのかかる素材を使うことが原因のように思うわけで、純度を上げることが即いい音に結びつくと思うのは物理学の立場から間違っているということ言いたかったのです。
1m 千円前後という数値をあえて出したのは、素線さえ普通の無酸素銅にしておけば他の部分では十分いい物を使い構造に配慮してもこの程度の価格で出来るのではないかと思ったからです。おそらくメーカーの技術者もそのことは分かっているのではないかと想像しています。


既製品の宣伝文について

ここで、G さん提供のオーディオケーブのメーカーのURLを覗いた結果についての私のコメントを付け加えます。URL は以下のものです。(提供者のコメントは省略)

四七研究所   http://www.47labs.co.jp/4708.htm
WireWorld   
http://www.wireworldaudio.com/
CARDAS   
http://www.cardas.com/
KimberKable 
http://www.kimber.com/
PAD   
http://www.puristaudiodesign.com/main.htm
Monster Cable 
http://www.monstercable.com/
MIT   
http://www.mitcables.com/
TRANSPARENT  
http://www.transparentcable.com/
Synergistic Research  
http://www.synergisticresearch.com/dream.htm
Siltech   
http://www.siltechcables.com/
ANALYSIS PLUS 
http://www.analysis-plus.com/
Harmonix   
http://www.combak.co.jp/

紹介いただいたホームページを斜め読みした感想です。
なお、この文は他の方も覗かれることを念頭において書いていますのでご了承下さい。

全体の感想として、当然のことながら宣伝が目的なので科学的な記述も心理効果をねらったトリックが殆どすべてのHPにみられます。
とりあえず私の専門である材料に関して記します。
銅の純度を強調しているのが多いですが純度を上げると音がピュアーになるというのは言葉の遊びです。この掲示板のトップにも書いていますように純度を上げるのと室温を1度程度下げるのとは等価です。温度が1度下がって音が良くなったと感じる人はいるのでしょうか?
また、単結晶銅を使っているケーブルで1方向性を強調したものもみられます。この方向は多結晶銅を単結晶化するときの方向であってあくまで製造プロセス上の問題です。電流の方向とは一切関係ありません。(金属では順逆の電流の流れ方に違いはありません。ましてや交流では)

ここで余談ですが、最近、線材メーカーが超高純度銅の開発に凌ぎを削っている理由を紹介しますと実は工業的に大きな需要が見込まれるからです。
一つは集積回路のリード線用です。現在は金線を使っていすが、銅にすると抵抗値が少なくなりその分発熱が抑えられ、かつコストも下がるので実用化が望まれています。ただ、金に比べ硬く加工が難しいこと、腐食しやすいことなどが難点です。ところが、銅を超高純度にすると、変形しやすくなりかつ耐腐食性が向上することが知られており、大変有利になるわけです。
もう一つは、MRIなどに使われている超伝導線のシース(被覆)材です。超伝導線は稀にですが、電流を流しすぎたりすると突然超伝導性が失われことがあります。(クエンチといいます)このとき、その被覆材である銅がバイパスの役割を果たします。当然その抵抗値は低いほどいいわけです。ところで、先に、純度を上げることによる抵抗値の減少は温度変化に比べわずかだといいましたが、超伝導を実現する液体ヘリウム温度(4.2K)では事情が全く違います。この温度は絶対零度に近く、熱振動による抵抗はありません。従って、抵抗の原因は不純物や格子欠陥のみとなり、純度を上げたり、単結晶化するとそのまま抵抗値の減少につながります。(ちなみにこの温度での抵抗値は室温の300-3000分の1となり、この値(RRR)を純度の目安にします。)

ここで、講義調になって恐縮ですが、電気抵抗の原因を少し説明します。
抵抗の生じるのは結晶中を走る電子が何かに衝突し散乱されるのが原因なのですが完全に規則正しく並んでいる原子には衝突しません。(ちょっと不思議ですが量子力学によってのみ説明できることです)散乱はこの規則性(周期性)の乱れより生じます。室温ではこの乱れの最大の原因が原子の熱振動になるわけです。一方不純物による散乱は温度に依存しません。このことが、室温においては、純度を6N、8N と上げることが電気的には無意味だという理由です。

ここで、話を変えますが、別のトリックについて一言。抵抗値0.00の線材を実現したことを売りにしているケーブルがありましたが、0.000と書いていないところがみそです。抵抗値が0.004mΩ/m のケーブルは少し径を太くすればタフピッチ銅でも容易に実現できる値です。これを、抵抗値 0.00 と書いても四捨五入した数値とすれば確かに嘘ではありません。ところで、このような微小抵抗を測定するのは結構困難です。(私自身もこういう測定をやったことがあります)材料が純銅(99.9%程度で十分)だと分かっていれば線の断面積から計算して求める方がずっと正確です。

また、伝送速度が光速の九十数パーセントを実現したというのもありました。
これは、電気工学の教科書に書いてあることなのですが、フィーダー線や同軸ケーブルの高周波信号の伝送速度は絶縁体の誘電率に依存し誘電率が高いほど減速します。絶縁体の比誘電率が1(空気など)ではほとんど光速に近い温度で伝播します。

以上は比較的初歩的なトリックですが、なかなか見分けにくいトリックもあります。
紹介いただいたHPで N社 のそれはなかなか面白く高度な議論を展開しており、一見に値するサイトだと思います。特に、表皮効果以外に多芯線で現れる近接効果(bunching effect)まで取り上げている所は他に見かけません。ここの売りは、表皮効果、近接効果による電流密度の非均一を最小にするため中空の楕円(正確には隅を丸めた長方形)線を提唱しています。たしかに表皮効果には効果はあるでしょうが(これは細線でも実現できます)肝心の近接効果を最小にするために最適であるかどうか納得できません。これを証明するためにシュミレーションをやっているということですが、HP上に出ているのは高周波における電流密度分布でなく静電圧をかけたときの電界分布の図です。これはトリックのように思います。
もう一つ、ここはでは珍しく測定データを掲載しています。特に短形波の波形図は重要でかなり決定的な情報になるはずです。ところが、肝心の横軸(時間軸)の目盛りに単にオシロスコープの目盛りが書いてあるだけで、何Hz で測定したものかが分かりません。ご存知なら教えてください。
確かに、このケーブルは物理的によく考えられています。しかし、ここまでやる必要があるのかというのが率直な感想です。上の短形波の波形図の横軸がわかれば判断できることなのですが。
それと、最後に心理効果が文献を示し論じられていますが、その文献は1930年代の大昔のもので少々眉につばをつけたくなります。
以上、とりあえずの印象です。

このコメントに対するMbさんのコメント

線材の純度の影響

▼志賀さん:
志賀さんの発言を、興味深く読ませていただいております。

<全体の感想として、当然のことながら宣伝が目的なので科学的な記述も心理効果をねらったトリックが殆どすべてのHPにみられます。>
私も、その通りだと思います。メーカーの言うことは話半分でしょう。(^_^;

<とりあえず私の専門である材料に関して記します。
銅の純度を強調しているのが多いですが純度を上げると音がピュアーになるというのは言葉の遊びです。この掲示板のトップにも書いていますように純度を上げるのと室温を1度程度下げるのとは等価です。温度が1度下がって音が良くなったと感じる人はいるのでしょうか?>


この部分の志賀さんの解釈の方向が、最初からよく判りません。
純度が低いと、不純物が入っている訳ですが、この不純物が音を悪くしている。なので、不純物が減れば、音は良くなるのではないでしょうか?
...と馬鹿正直に思います。(素材の専門家ではないの、何か勘違い発言をしているかもしれません)
不純物の音に対する影響を調べる方が面白いかもしれません。


不純物の件、後段の講義調の部分で少し解っていただけたと思いますが、抵抗の原因は結晶の完全周期性の乱れより生じるもので、その原因が、不純物であろうと、熱振動であろうと電子にとっては同じことで区別出来ません。これは、銀線でも同じことです。
 純度によってもし音が変わるとしたら、金属を超高純度にすると、顕著な効果として変形しやすくなり、また耐腐食性が向上します。このような素線で多芯線(裸線の多芯線を想定しています)を作ったらどうなるか?考えられることは隣り合った線同士が互いに変形し、接触面積が増え、線間の導通が良くなるということです。一方、耐腐食性(酸化し難さ)は一般に純度が増すほど強くなるといわれており、この面でも線間の導通をよくします。従って、純度が増すほど多芯線が単芯線に近づくことを意味し、表皮効果がより顕著になることが考えられます。すなわち高域の減衰がより強くなるということが予測されます。


純度が変わると、硬度も変わるので、もしかしたら、線材の振動モードの変化が音に大きな影響を及ぼしているのかもしれません。
また、純銀線とそれ以外のケーブルを試聴して感じることは、純銀線が被膜の影響に敏感だという事です。
単に素材に流れる電気の物理学的挙動を見ただけでは、変化がないことを、志賀さんが示されました。
絹巻き銀単線の場合は、絹巻きの力加減、締め付け方でも、音が変わるようなのですが、これら被膜の構造・硬さは、素材に流れる電気信号にどのような影響を及ぼし得るのでしょうか?
もしも、コメントが出来ましたらお願い申し上げます。


振動モードの件ですが、これはよく混同されるのですが、硬さには二種類あり、変形しても又元へ戻る変形(弾性変形)とさらに強い力を加えて生ずる元へ戻らない変形(塑性変形)があります。純度をよくして柔らかくなるのは後者で、弾性変形の硬さを表す弾性率は純度によってほとんど変化しません。固有振動は前者できまり、線材自身の固有振動数が変わることはありません。しかし、ケーブルの固有振動数を決めるのは、線間を埋める絶縁体の弾性率で決まり、これには注意が必要です。HPにも詳しく書いたのですが、素線が合成樹脂などの絶縁体に埋めこまれたようなかたちで密着している場合は振動の振幅はきわめて小さく(1原子程度の大きさ)これが音質に影響を及ぼすことは考えられません。しかし、例えば絹のような柔らかい多孔質の材料で出来ている場合、線同士が密着せずフラフラする部分がある場合など、幅方向の固有振動周波数が可聴周波数のかなり低いレンジにくる可能性もあり、振幅も馬鹿に出来ないかもしれません。定量的な解析は難しいのですが、アマチュアの方がケーブルを自作する場合、この点はかなり注意しないと変な味付けをする可能性があります。

電気抵抗の原因

純度とケーブルの伝送特性について 数学者のKu 氏からのコメント。これは直接私宛の意見ではありませんが、大事なことなので収録しました。ただし、内容はかなり専門的になります。

ケ−ブルに使用する金属の特性をミクロな理論から導くのは非常に難しいです。

純度のことが話題になってますが、
02/9/28(土) 21:44 に志賀氏は、
「抵抗の原因は結晶の完全周期性の乱れより生じるもので、その原因が、不純物であろうと、熱振動であろうと電子にとっては同じことで区別出来ません。」と述べておられます。
磁性体の専門家の長年の経験として正しいのかもしれませんがこれも理論的に正しいか疑問を感じます。

不純物はランダムなポテンシャルとして表されるし熱振動は、無限に多くの振動子との相互作用として表されるわけで、ハミルトニアンを書き下すとそれぞれ似ても似つかない形です。これから量子力学的にせよ古典力学的にせよ伝導度を式を表示して定性的に不純物の量の変化の応答と温度の変化の応答を見て、等価性を導きだすなど、それほど簡単な仕事でしょうか?
熱振動と不純物が電子にとって同様の効果を与えるというのも乱暴な議論でありませんか。

おっしゃる通り、素過程としては不純物散乱とフォノン散乱は、前者が弾性散乱、後者は非弾性散乱であるという大きな差があります。しかし、伝導に関与する電子のエネルギー(7eV〜10^15Hz)やフォノンの振動数(〜10^12Hz) を考えれば、素過程の積分でありマクロ量である常温での伝導率に対して高々100kHz 辺りの周波数に対して、周波数依存性を与えるとは到底考えられないのですが。


関連したNさんの意見

私も科学者の端くれ(物理は全くの専門外)ですのでケーブルの特性・理論について科学的に分析することには大賛成ですし、銀単線をご使用の方々には失礼かと思い今まで何も投稿しませんでしたが、特にデジタル(高周波)の伝送に関して表皮効果などの点でかなり疑問を感じておりました。
ただ志賀さんのHPを拝見すると残念ながら人間の可聴域の周波数の信号に関する抵抗とかインピーダンスといった古典物理学に基づいた考察でしかないですよね。
可聴域のある周波数サイン波?を均一な金属の単線に流した場合はこれでいいのだと思いますが(これぐらいの物理なら私にもわかります)、私や他の多くの オーディオファイルが興味があって知りたいことはもう少し複雑な系についての科学的、物理学的考察だと思います。
具体的には例えば、 可聴域+αの広い周波数スペクトルをもちかつ時間的にも変化する信号をある構造のケーブルに流した場合の周波数と抵抗、自己インピーダンスや位相の遅れとの関係とか、ケーブルが外来ノイズの影響を受けたり逆にノイズ源になったりせずしかも信号の伝達に悪影響を及ぼさないシールドの構造とか、合金の導体あるいは導体に極低温処理などの物性処理をした場合の量子力学的な効果というか金属の結晶構造の中での電子の振る舞い?みたいなものが実際の信号の伝送にどういった効果を示すのかとか、デジタル信号の伝送におけるジッター(デジタル信号の位相のゆらぎ?)の影響....などといったことでしょうか。
これらの点について少なくとも私の知るあるいは使用しているカルダス、PAD、NBS、MITなどのケーブルメーカーのHPなどをみるとケーブルの構造や導体の物性について量子力学的を含めた科学的な理論・考察をもとにケーブルをデザインしているように思われます。これらのメーカーの理論が本当に科学的に物理学的に正しいのか、それともオカルトチックに問題を複雑化して高価なケーブルを販売するのに利用しているだけなのか、あるいは伝送中に信号の歪みが増えるのを承知で音造りをしているだけなのか、本当にどの理論が正しくてそれぞれのメーカーのどういった音の傾向に反映するものなのか、そういったことに私は興味があります

とりあえず、量子力学がこの問題にどのように関係するかを考えて見ます。
今まで、純度の差など材料の違いは直接的には音質(交流伝送特性)に関係ないと言ってきました。実をいうと、金属の伝導率(抵抗率の逆数)は厳密に言うと周波数に依存します。ただそれが、極端に周波数の高い(テラHz=10^12)の光の領域で起こる現象で、このあたりになると周波数があがると伝導率が下がります。また、銅や金の場合は可視光域で再び上昇するという特異な性質をもちこれが銅や、金が独特の色を示す原因なのです。この様な現象を説明するには量子力学によらねばならず、正しく説明されています。
逆に言えば、100kHz 程度の領域では量子力学が関わるような現象はまず考えられないと言っていいと思います。従って、この領域でおこる現象は電磁気学、力学などの古典力学でのみ説明する必要があります。これに関わるのは唯一ケーブルの構造の差以外には考えられないと思うわけです。

ノイズの影響

純度の問題はこれくらいにして、私があまり考えていなかったノイズの問題について、上のNさんの意見、下記のDさんよりのコメントについてを考えてみます。

当方オーディオケーブルによる音の聞こえの差について、一つの要因としてEMC(電磁的相互作用)があると想定しています。
最近の情報家電製品のケーブル類(例えばゲーム機のコントローラケーブルなどにも)にフェライトコアを根元に付けて不要輻射の対策を行っているものをみかけます、これらは本体からの電磁ノイズがそのままでは不要輻射の規制値をクリアしないからであり、ケーブルがアンテナとして作用してしまうのを対策している訳です。
ケーブルをアンテナ(加えて伝導電磁ノイズの経路)として見た場合(簡単に考えただけでも)以下の条件でその状態は変化すると考えられます。

長さ、構造、空間的配置(取り回し)、終端条件(相手機器)

これらの条件によって不要輻射の状態は明らかに変化します、輻射の被曝や伝導によるノイズの流入が測定される音の波形を乱す様子が確認できるわけではありませんが、輻射強度というかたちで測定をすれば明らかに差異が測定出来ます、実際にメーカーはそれをみて対策してゆく訳ですから..、ただここでも問題は音の「聞こえ」にどんな影響があるのかはわからないことです、電磁波環境下(ノイズの流入状態)での機器の動作に加え人間の「聞こえ」自体も変化するのかもしれません。


個人的にもデジタルケーブルを換えて音がかわるという現象をどうしても説明出来なかったのですが、ケーブルをアンテナやノイズ経路考えることで一部納得できた段階です。
また相手機器やアースの取り方でも輻射の条件はかわりますから「音が変化する」といわれてることのほとんどに「EMC条件の変化」が伴っているように思えますがいかがでしょう。

ケーブルによる音の差が論じられるようになったのがちょうどデジタル機器が家庭に入り出しEMC環境の悪化が認識されて来た時期とのリンクしているのではないでしょうか。

個人的な想像意見ですがぜひ御感想をお聞かせ下さい。


ノイズの問題はあまり触れませんでした。というのはスピーカーケーブルに限っていえば典型的な低インピーダンス回路なのであまり重要でないと思ったからです。この系で雑音の混入あるいは発生があるとすれば、アンプ、ケーブル、スピーカーが作る閉回路での中でケーブルは最も影響を受けにくい部分だと思いますが。ケーブルのアンテナ効果ということもいわれますがもう少し高周波数領域で問題になってくるように思います。

逆に、インターコネクトのような高(中?)インピーダンス回路では雑音の混入が最も注意すべき点だとおもいます。

さらに、少し前の分枝にあったAさんの投稿(レスを書きませんでした。失礼)のように放射線計測の場合は典型的なハイインピーダンス回路なのでノイズ対策が死命を制することになるんでしょうね。

たしかに、最近のデジタル機器の普及でパルス性ノイズの発生源が急激に増えているとおもいます。パルス性ノイズは広い周波数域の信号を含みますので、オーディオ機器にもいろいろ悪影響を与える可能性はあるのでしょうね。

それと、最近の進歩といえばスピーカーの性能、特に高域再生能力が随分向上しているようですが、考えてみると普通のCDに限れば20kHz 以上には意味のある情報が含まれていないはずです。だとすれば、20kHz 以上の信号は原音には含まれていない信号、広い意味でノイズを再生しているわけですね。超音波領域の波動が人間の脳にどのような影響を与えるのか(これについてはちゃんとした研究がなされているようですが)私には解りません。私の解析でもこの辺(数十kHz)の領域になるとケーブルの構造がかなり影響する可能性があると思います。今後の課題です。


電源ケーブルについて

この件についての、電源ケーブルを含めた私の問題提起

一連のやり取りと、以前Gさんに紹介しもらったメーカーのホームページを読んで感じたことですが、どうもこの問題には高域ノイズが関係しているのではないかという感がします(これは全く私の勘であり間違っているかもしれません)。実際ある外国の電源ケーブルのHPにはノイズをカットすることが主眼であるように書いてあります。特に最近になってこの問題が持ち上がってきたのだとすると原因が考えられます。一つはディジタル機器が氾濫するようになってノイズ元が急激に増加していること。もう一つはオーディオ機器の性能、特にスピーカーの物理特性が向上し超高域まで再生する能力を持つようになったことがあります。そもそも、通常のCDであれば20kHz 以上には意味のある情報を含んでいないわけでそれ以上の信号を再生するということはある意味でノイズのみを再生しているといってもいいのではないでしょうか? 20kHz 以下であっても大部分の信号が混入するノイズや回路などで発生ノイズであるということも考えられます。ところで、このような高域ノイズが人間の感覚に与える影響はどうでしょうか? 一つは、そもそも通常の成人の可聴域は13kHz程度といわれているので(実は私は年寄りなのでしょうか、サイン波では10kHz でもほとんど聞き取れません。)そんな高域ノイズは関係ないとも考えられます。一方、詳しくは知らないのですが、超音波領域にわたる振動も脳に何らかの刺激を与えるという研究もあるようです。後者の立場に立てば、ケーブルも微妙に影響する可能性はあります。

実は私のHPでの立場はかなり物理特性至上主義となっています。すなわち出来るだけ広い周波数帯でフラットで制動が聞いた音をプラスイメージとし捉えています。そういう立場でに立てばスピーカーケーブルに限れば100kHz 程度までフラットなケーブルを作るのはそんなにお金をかけなくても出来るはずです。(線材は普通の銅で十分です)

しかし、高域ノイズの問題が入り込むと話が複雑になってきます。ある人はノイズの入った音は不快に思うでしょうし、超音波域のノイズがあるほうが生き生きした音だと感じる人がいるかもしれません。(どこかでそんな話を聞いたことがあります)

となると、ケーブルは信号を忠実に伝えることことよりも適当なフィルターの役目を果たすということで考える必要が出てくるわけです。(スピーカーケーブルに限れば20kHz あたりで減衰させるにはかなり極端な構造をとる必要があると思いますが。)

一方、コネクトケーブルや電源ケーブルはより上流にあるので、フィルター作用だけでなく遮蔽も重要になってくるでしょう。 いずれにせよ、もしこの考えが正しいなら対策の立て方もそれぞれのケーブルについて物理学、電気工学で適切に対応出来るはずです。

まあ、これは素人の思いつきで(後ろの方のDさんのコメントがヒントになっているのですが)そんなことは先刻承知だといわれる方も多いかと思いますが、こう考えるとこれまでの電源ケーブルを含めた千差万別の意見のつじつまが合ってくるように思えるのですが。

私はといえば、そもそも20kHz 以上の信号を再生する必要があるのか疑問に思っています。せっかく100kHz まで再生するというスピーカーを買っても、その性能を落とすようなケーブルを良しとしているかもしれないですね。それなら、オーディオの原点に戻って最も『いい音のする』スピーカー選びに専念するのが健全だと思うのですが。

全体的な意見

議論も終わりに近づいた頃Apさんの意見.

「オーディオの物理学」のスレッドでは、如何にオーディオマニアの方々の間で見解が違っているか、スピーカーケーブル一件の話でもよくわかります。「木を見て森を見ず」という比喩が持ち出されていましたが、私見では「群盲、象を触る」という比喩が、本件には適切かと考えます。

当該スレッドは、音響装置全体の性能は評価対象にしないという前提で、スピーカーケーブルの素材、特に銅製の導電体の純度が音質にどの程度影響を与えるか、という研究の成果報告であって、それに対して浴びせられた疑問、質問、意見、誤解等々の内容は、目を覆いたくなるような有様で、志賀氏には大変お気の毒なことです。

私自身はすこしも迷惑とは思っていません。いろいろな事を知ることが出来ました。 
もっとも、現役を退いた今だから出来ることですが。


本件は、単に「ケーブル導電体の素材の純度は全体のシステムに大きな影響を及ぼすことはない」という主旨の報告と理解します。この理解が正しければ、ケーブルの構造、製法、仕上げなどの条件は除外するか、無視すべきです。これらをいっぺんに対象とすると、未知の領域や、不確定の要素を全て仮定、想像または個人の経験で判断しなければ話が進まず、結果として混乱を生じます。現に今回は、収拾がつかない様相を呈しております。結論を得られる見込みの無い議論を、延々と続けるのは、時間と資源の浪費です。浪費は犯罪です。

本スレッドの結論として「少なくとも銅で出来たケーブル導電体の素材の純度は、全体のシステムに大きな影響を及ぼすことはない」ということを明記して終結することを提案いたします。この結論を参考に、各人がケーブルを選択或いは自作されることは自由でしょう。


ほぼ的確に私の発言の意を汲んでいただいております。
特に言いたかった事は材料の純度に関する誤解を正したかったことです。
構造とインピーダンスの関係などは既に古くから知られていることを繰り返しているだけかもしれません。

ケーブルに関して極めて個人的な見解を述べさせて頂ければ、「ケーブルは変更しないこと」です。途中の中断期間を除いても、私はここ12年ケーブル類を変更しておりません。ご参考までに書き添えると、フロントエンド及びラインレベルケーブルは、二重シールドケーブルで、コアは軟鉄、一次シールドは銀メッキ銅、二次シールドは純銀であり、スピーカーケーブルは、銀メッキ銅線です。何れも今では、手に入りにくいものばかりです。

て、この論題の選択枝は、オーディオマニア的な「ケーブルを替える楽しみ」と「良い演奏を聴く楽しみ」のどちらを取るか、という事に尽きます。「メーカー」であれば間違いなく前者を宣伝するでしょう、飯の種ですから。しかしながら購入する方は、金だけでなく演奏を楽しむ時間を失うばかりか、もっと大きな災難を背負い込む惧れがあります。

全く同感です。私もどこかでそのような発言をしております。

スピーカーシステム、リスニングルームとセッティングが『森』の景観を決定的に決めていると思っています。ただこれも、なかなか収斂するものではなさそうなのでほどほどにして、本来の音楽を楽しむことを薦めている私のHPの趣旨です。

私の総括

上の発言は少し問題を単純化しすぎたようでKoさんより下記の意見をいただきました。

額面どおりすべてそう思われているるのだとすると、「ケーブルの物理学」の最初の発言での3つの要約を、全体のスレッドを経験した上での立場から、一般のオーディオファイルにも誤解を生まないような形で再掲していただければと思います。それで、おそらく収束すると思いますので。


それに対して、

それでは、ご要望に応じて総括してみます。収束するかどうかわかりませんが。
以下、アクセサリコーナーに最初に投稿した文にコメントをつける形で記述します。
<>内が原文

<ケーブルを変えてみるというのがオーディオファンの楽しみに一つのようですが、ケーブルといえ物理法則を免れるわけにはいきません。従って、その基礎となる物理をある程度知っていないと無駄な投資をすることになりかねません。いささか物理学を学んだオーディオファンとして、オーディオにまつわる物理を整理してみました。その結果を
http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/Audio.htm にUpLoadしてあります。
内容の一端として、少し詳しく考察したスピーカーケーブルについて要旨を紹介します。>
<1. ケーブルの材料は直接的には音質と無関係である。>
<2. ケーブルの直流抵抗値は太さできまり、これは主にスピーカーの制動力を支配する因子として重要である。もちろん、材質は直流抵抗値に関係するが、その差はせいぜい1%程度であり、抵抗値は99%結晶の熱振動によるもので、例えば4N-OFCを6N-OFC単結晶に変えても室温を1℃下げた程度の効果しかない。>

熱振動による抵抗と不純物による抵抗がケーブルの伝送特性を決める因子として全く等価であるという事がなかなか理解してもらえないようです。私にとっては自明のことなのですが、確かにこれは量子力学を基礎とする固体電子論になじんでいないと、すんなりと受け入れられないかもしれません。詳しい議論は、prof.kumakuma さんとの応答(長文2
10/2)に書いています。
電気工学の言葉でいえば、回路のインピーダンスを決める要素のR(抵抗)値は要するにRでありその原因が何であるかには無関係だと言っているわけです。

<3. 音質、特に高域の特性に関係するのは周波数に依存するケーブルのインピーダンス特性でありこれは全て太さを含めたケーブルの構造により決まる。(i)表皮効果、(ii) 自己インダクタンス、(iii)静電容量、(iv)自己振動などの要因にわけ定量的に解析してみました。その結果、可聴周波数帯に影響を及ぼしそうなのは(i)(ii)のみである。これも、適切に設計されたケーブルであれば可聴周波数帯より上、超音波領域でしか影響を及ぼさない。>

『音質』という言葉は確かに漠然としています。正確にはケーブルの伝送特性というべきでしょう。細かいことをいえば、伝送特性はケーブルのインピーダンスだけでなく負荷であるスピーカーのインピーダンス特性にもよります。しかし、ケーブルによる差に限ればやはり超音波領域でしか影響を及ぼさないと思います。その他、ノイズの影響を指摘されたご意見もありました。この点は、始めはあまり考えていなかった点です。スピーカーケーブルに限れば低インピーダンス回路なのでほとんど影響がないと思うからです。ただ、超音波領域のノイズについてはローパスフィルターとしての役割を果たす可能性も考えられます。詳しいkとは、上記のKu さんとの応答の下流で問題提起という表題で論じております。

<結論は『1m 千円前後の定評あるケーブルを使えば十分である』。という常識的なものです。>

この結論には異論(というより反撥?)を招いたようです。確かに、既に高価なケーブルを購入して使っておられる方には『挑発的』な表現です。これは私の解析結果をキャッチコピー的に表現したものとして受け取ってください。その理由は、100kHz 程度まで周波数特性がフラットなケーブルを作るのは、あえて高級な材料を使わなければ(1,2 を認めるならその必要はない)、1000円/mといわず、数百円/m でも実現可能ではないかと推察するからです。もちろん私には原価計算は出来ませんが。

この点に関し、かなりベテランのオーディオファイルの方でも、キャプタイヤーコードがベストである、とか、普通の赤白コードで十分である、という意見があるのは注目すべき点だと思っています。

<ただし、『耳で聞いて確かに差がある』といった理由のみのご意見、特定の製品についてのご質問にはお答えしかねますのでご了承下さい。>

私を含めた、ケーブルによる差に否定的な見解に対する反論のほとんどは個人的な体験による感覚論に基づいています。このような意見についてはやはり答えようがありません。もちろん、他人の経験を否定することは出来ませんし、私自身はそれらが全て心理効果だと主張するつもりはありません。また、物理的に見て原因がありそうなご意見にはその都度コメントしております。(例えば、純度を上げた効果として材料が変形しやすくなる結果、構造の微妙な変化が通して伝送特性に与える影響など、Mbさんへの回答 9/22 21:40)
また、物理学的な面での反論、コメントについてはその都度お答えしていますが、上記の主張を変えるには至っていません。

感覚論に対する科学的な取り組みはよく言われるように、周到に準備されたブラインドテストだと思います。この点ついてはKyさんに提供していただいたABX テストの結果
http://users.htdconnect.com/~djcarlst/abx.htm
が私の知る限り唯一の資料です。その結果を見ると、スピーカーケーブルの交換についてのみは有意差無しという結論が出ており、私の耳も平均より特に劣ったものでないことを知り安心しています。

さて、総括ですが、すこし論理が飛躍しますが、既にどこかに書いたように、

『最も合理的であると考えるケーブルを決めたらあとはよそ見しないで音楽を楽しむ』、とするか、
『収拾のつかない状況にはまり込むことをいとわずケーブル道をエンジョイする』か、
どちらを取るかということのように思います。

何が合理的であるかを決めるには物理学の知識が役立つはずです。私の解析が役立てば幸いです。
私が使用しているケーブルを紹介すると、数年前に買った日本製の4芯線ケーブルです。素線の径は不明です。同じ全断面積のケーブルであれば、自己インダクタンス、表皮効果の面で有利だと思うからです。価格はやはり¥1000/mくらいだったと記憶しています。線材はPCOCC(単結晶無酸素銅)と書いてありますが、この値段なので純度は4N位だと思います。

掲示板による討論は面白いのですが、どうしても意見の一部だけ取り上げ議論をしてしまう傾向が出てきます。そういう意味で本当の総括は、今回の議論を踏まえHPに反映するつもりです。また、時々覗いて下さい。

なお、以上取り上げたのは、ほとんど、『(ケーブルによる)差あり派』の異論なのですが、私の意見に賛同するご意見も数多くありました。(例えば下記 Ha さんの意見、さらに、より徹底して、ケーブルの影響を否定されるKa さんのような意見もありました。Ka さんはほとんど孤軍奮闘『差あり派』と激しい議論を交わしておられましたが、その一部を紹介しますと、

Ha さんの意見

>最近の高価格のケーブルは6Nや8N といった製造にきわめてコストのかかる素材を使うことが原因のように思うわけで、純度を上げることが即いい音に結びつくと思うのは物理学の立場から間違っているということ言いたかったのです。

MaさんやKoさんが書かれているように、心理的な側面を無視できないでしょう。
オーディオで好ましい「音」は、聞く人の好みが大きく影響します。オーディオの「音」はタバコやアルコールのような「嗜好品」と言えるかも知れません。しかし、1mあたり数万円もするような妄信的(?)なケーブル信仰に、痛烈な一撃を与えたこの書き込みに溜飲の下がる思いでした。


>1m 千円前後という数値をあえて出したのは、素線さえ普通の無酸素銅にしておけば他の部分では十分いい物を使い構造に配慮してもこの程度の価格で出来るのではないかと思ったからです。おそらくメーカーの技術者もそのことは分かっているのではないかと想像しています。

メーカに近いオーディオ店の店員と仲良くなると、よく聞かされる話ですね。
「オーディオ用とすると、高く売れる」というひどい話もあるようです。
知らぬは消費者だけで、まるで「裸の王様」のようです。


SPケーブルでは音は変わらない?

Ka さんの意見(Ko さんへのレス)

<Kaさんは自分自身の経験を含め、どうお考えなのでしょうか。>

私はケーブルで音の違いを確認出来た事はありません。
以前ここで、私の耳はオーディオを趣味とするには向いていないと指摘されましたがそうなのかも知れません。

お遊び程度ですが、知人が遊びにきた時、PWアンプ(2台所有)でダブルブラインドを試みた事があります。
見事に引っかかりましたね、変えていないのに変わった、変えたのに変わってないと・・・・。
この2台、私自身も区別を付けられないでいたアンプなのですが方や日本製のFET、もう一方はUSA製のバイポーラ、しかもプロユース(日本仕様)共通点といえば同時代と言う事だけ。後者は、違いを楽しもうと思い入手したので若干ショック(ガッカリ)でした(笑

昔、前書の知人が持ち込んだアンプは違いが分かったので全くの駄目耳と言う訳でもないと思うのですが・・・。

何れにしても、結果には原因があります。
論理的根拠、因果関係が明らかにされていない以上、否定派を攻撃し声高に叫ぶだけでは何の説得力も持たないと言う事だけは肝に銘じて置きたいものです。

怪しげな製品の怪しげなコマーシャルや意味不明な形容詞の乱立に振り回されない自分自身の為にも・・・。

Kuさんへのレス

「科学的論拠が明白にされていない、人間が感じる音の変化は充分に先入観を排除した試聴を得て、初めて信頼足りうるものになり充分に他の要因を排除した試験を得て、初めて変化要因を特定する事が出来る」

以上が私の見解です、今後もこの見解を変えるつもりは有りません。
そして、上記が満たされない報告はそれがどの様な形でなされたとしても私自身は無視するだけです。

私はといえば、他の人の経験まで否定するつもりは無いのですが、本音はKa さんに近いかもれません。


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