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健康を守る指標

 ― 健康感、絶ゆまぬ科学性 ―

渡辺 譲二  芝大門クリニック医師 医学博士

段、級

小学校低学年、習字教室に通わされましたが、長続きせず、下手なまま終わりました。課題習字を、その会派の雑誌に送ると、まずは7級に、次は自分でも何の進歩もないとわかってるのに6級になりました。先生は、出し続ければ誰でも1、2級まではあがるものだと教えてくれました。当時、子供の習い事では他にそろばんの何級というのもありました。一級のさらに上に段があり、そのあまりにも迂遠な「高み」に畏怖を覚えたものです。

後に柔道学校で講師をしたら、そこの校長は柔道8段、顧問医師は県会議員、剣道組織名誉会長で、剣道7段でした。どちらの種目も、全日本クラスは5段くらいなので、その上の段は地位や名誉で貰うものだと、教わりました。

剣道の位階(免許、皆伝)は、江戸時代からですが、段位制は明治中頃です。柔道は歴史が浅く、さらに遅れます。囲碁は江戸初期に段位制度が確立しており、他の分野はそれにならったもののようです。さらに習い事一般に広まったそうです。段位制は、流派や家元制度の経済的基盤という意味合いも大きいのですが、習う側には明確な「数値目標」だし、自慢できるし、励みにもなります。外来ものでも、ゴルフのハンディは、同じような効果があり、多くのひとをトリコにしてます。テレビには、金銭価値を当てる(お宝発見とか)など、多数の「評価、採点」番組が溢れており、日本人はどうもその手が大好きなようです。学力評価、偏差値、なども努力のための評価基準ということになってますが、どうも意欲を削ぐ効果も強そうです。すべての評価基準が向上、上達のために有効ということではなさそうです。

リハビリ

右マヒ患者が、左で字を書く練習をするには、筆圧訓練のための「塗りつぶし」から、数段階を経て字を書く練習に進める。いきなり字を書くことから始めるとうまく書けず、意欲が削がれので、上達をはっきりと感じ取れるステップをうまく工夫するそうです。つまり、ものごとの上達とか機能回復のためには、日々の努力の反映がきめ細かく、できればリアルタイムに見えることが大切だということです。努力が報われ励みになり、方法の修正、工夫ができることも大きいようです。

「段や級」も、目標としては意義があるものの、前進や楽しさを感じ取ること、できれば明示的な基準・評価にそれが支えられればより望ましいということです。

健康増進法と医療の「自己責任」化

「健康増進法」が、15年5月施行(16年2月末改正、施行)されてます。国民の責務として「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。」と定められてる。憲法は、戦争や飢餓の時代に作られたこともあり、「(25条)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とされている。それからすると、進んだ積極的内容にも思えるが、実は怪しい。最近、医療費や健保をめぐって、小泉首相や政府は「自己責任」という言葉を多用してる。「増進法」では、国、自治体、健保組合などが啓蒙活動をして健康知識を与えてくれることを強調してる。つまり、政府の示す道筋に従え、あとは自己責任で、健康も自分の金で買え、というような方向性が含まれている。医療、介護の負担増、金のかかるスポーツ(施設)や、薬・健康食品、各種グッズなどが体にいいという幻想を持たせる方向性です。

そもそも、日本人は、劣悪な職場、労働環境、過労、環境汚染などのせいで健康をむしばまれてきたのではないでしょうか。また、アメリカ型の食生活に否応なく変えられ、過度の酒、たばこなど健康に悪いものを売りつけられてきたのに、生活習慣病が増えたのをあたかも国民の自覚や努力の不足、知識の低さのせいであるかのように言う政府には腹立たしさを感じます。自己責任だから、医療費も自分で払え、さらに、医療や健康産業は金になるから、もっと金を使わせよう、という企みはくいとどめなきゃなりません。

自分の健康をまもる

自分や家族、仲間の健康やそのトラブルは、自らが一番感じるし、自分たちで守らなきゃならないのは言われるまでもないことです。

ではわれわれは、何を目安に日々の自分たちの健康を守って行けばいいのでしょう。諸検査値は、ここでは詳しく述べませんが、それぞれに重みがかなり異なります。また困ったことに、医学・健康知識は、日進月歩だし、諸説が入り乱れ混沌としてるものが少なくありません。いくら勉強しても、ますますわからなくなりそうなところもあります。個人はほとんど検証する手段を持たないとなると、結局は誰を信ずるかということにもなります。国、大学、大新聞、テレビなどの「権威」に頼りがちですが、裏切られることが多すぎました。その組織やそこに属する個人の立場、目的がどこにあるかが、カギです。目の前の患者や、現実に対して誠実・真摯であること、勉強を怠たらないこと、歴史的評価に耐えるものを目標としてるか、嘘をつかないかなどが、より大切な信用の基準です。

そして健康を守るためには、検査・評価される前に、自分の「健康」の「感覚」が重要です。健康感を失って、健診や、テレビ・雑誌の健康チェックなどに頼ってしまうのは危険です。

病原体、ガンなど、健康に有害な要因の多くは直接感じることはできません。しかし人間の抵抗力、免疫力、生命力はかなり強いので、環境、条件に充分配慮すること、疲労、苦痛や体調不良を放置しないこと、充分な睡眠、休養、ゆとり、暖かさ、栄養、衛生状態があれば、病気、障害の大半は跳ね返すこともできます。それに、異常や変調を感じ取るには、健康で「人間的」な生活の感覚を充分に身につけておくこと、それを崩さないことも、大切だと思われます。

(社会労働衛生 vol.1-4)



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