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なぜ今 職業病医療か

渡辺 靖之
職業性疾患・疫学リサーチセンター 副理事長
芝大門クリニック 所長


ひとくちに医療といってもいろいろな分野があります。

まず医療の中核は、地域にはりめぐされなければならない国民医療・地域医療だと思います。地域で安心してかかれる病院や診療所が欲しい、というのは今でも国民の切実な願いです。

そして各行政地域で奮闘している民医連の病院・診療の役割は、たんに安心してかかれる病院・診療所のひとつ、というのにとどまらず、いろいろな問題が持ち込まれる医療の駆け込み寺の役割や、地域医療民主化のひとつの中核になることを目指すことが大事だと思います。

市民の立場から医療をみると、救急医療のさらなる充実や、安心してかかれる医療の基礎づくりの根幹をなす医学教育や医学研究の充実も基本的な大きな課題です。医療の民主化の課題には、歴史的課題として決して過去のものにはなっていない、僻地医療、医療過疎の問題、結核など感染症の医療、公害医療、被爆者医療、ハンセン氏病医療などがあります。

職業病医療の重要性と医師層の中に見られる反感

さて中でも職業病の問題の重要性はいうまでもありません。なぜかというと、職業生活は人生、生活のほとんどの部分を占めており、人間の病気は職業生活を抜きにしては考えられないからです。

にもかかわらず、職業、業務と関連して起きる職業病は、現状ではあまりにも軽視されているのではないかと思います。

「軽視」というよりはむしろはっきりと「反感」であるのだと考えたほうが、今後の医療の前進のためにもよいのかも知れない、と思えるほどです。

この反感は労働者に対する支配層の反感によって裏づけられている根深いものだと思われます。そしてこの反感は医師層だけでなく、看護師や他の医療従事者層の中にまで深くみられるのではないでしょうか。従ってもちろんわれわれ自身の中にも浸透してきているので、絶えず自戒、思想闘争が必要と思います。

休業補償問題も医療のうち

職業病医療には補償の問題が必ず伴います。業務に起因する疾病であることが明らかになれば、通常の健康保険、国民健康保険では取り扱われません。患者・被災者自身にとっても、いろいろな意味で億劫で面倒なことですし、働けないのに補償を求めることに罪悪感を感じることが多いのです。

多くの職業病被災者はこれらのマイナス面を乗り越えて、労災認定の運動をして、その結果ようやく当然の権利である業務上認定をかちとることができるのです。

これに対応する医師、医療機関の側も、一種の億劫さ、面倒くささを感じるのは仕方ないかもしれませんが、それは少し良く考えればすぐ克服できるはずです。

ほとんどの医療機関は労災保険取扱いの指定を受けていますし、当然のことながら診療には必ず支払いの問題がつながっており、これは絶対に避けて通れない問題です。

話は少し変わりますが、「全人的医療」というスローガンがあります。主に心療内科の分野でだいぶ以前から叫ばれています。この全人的というスローガンの言葉自体は結構なことですが、しかしこのスローガンで行われてきた診療の実体は患者の性格、素因、人格障害を重視するものだったのではないでしょうか。

真に「全人的に」をこころがけようとするならば、その患者さんの「仕事や生活」のことを考えなければなりません。仕事を続けていて、ほんとうに症状や病気が改善の方向に向かうのだろうか。休業休養の治療が必要だとすれば診断書も必要だし、休業補償の有無をも考えなくてはなりません。このことを考えないで何が全人的医療と言えるでしょうか。

さてごく最近のことですが、この問題をあらためて考えさせられた次のような事例がありました。

ある若い介護業務従事者の女性が、それまでは問題なく働けていたのですが、ある時、介護業務中に左肩甲骨部に痛みを覚えました。2、3日経ち痛みがますますひどくなったので近くの総合病院整形外科にかかりました。

診察を受け、頚椎X線検査、MRI検査を受けても診断がはっきりせず、同じ病院の内科で内臓疾患の有無も調べてもらいましたが異常なし。結論はとりあえず頚椎椎間板症の疑い、とのことでした。

診断がはっきりしないまま仕事に出ていっても痛みがひどくて仕事にならないため、二軒目の整形外科を受診しました。そこでは診察しただけで頚肩腕症候群と言われ、「老化、運動不足、職場のストレスが原因」、次は二週間後に来るように言われました。

これでは、仕事も出来ないままますます不安になって結局退職することにして休業していましたが、インターネットで頚肩腕症候群を検索して私どもの外来を受診しました。

痛みは上部胸椎部に認められ、胸椎捻挫(災害性)として休業治療を指示しました。

発症の契機と痛みの部位を見つければ比較的簡単に診断ができるはずが、医師が画像診断に頼ったり、介護労働即頚肩腕症候群という変な先入感から患者さんを混乱させ、不安にさせた事例ですが、これによく似たケースは後を絶ちません。

職業病から開ける病態解明

さてわれわれ人間の疾患と病気の関係は深いわけですから、職業病から見て行くことで病態解明の新しい面がきりひらける可能性も大きいと思われます。

まず粉塵と肺がん、職業癌、職業アレルギーなどの分野です。

私どもの過労性疾患の分野でも、長年数多くの頚肩腕症候群、非災害性腰痛症の患者さんを専門に見させてもらって、その臨床経験の中で慢性疲労、慢性痛一般の病態解明につながるヒントが得られたと思っています。

この号の頚肩腕症候群特集では、まだまだ発展途上ではありますが、現時点での私どもの見解を紹介させていただきました。

(社会労働衛生 Vol. 1-3,2003)



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