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2002. 2/3(日)
ずっと気になって仕方がない。倉木麻衣の新曲はどう聞いてもクリスマスソングなのに、なぜにこの季節に発売されるのか。さては、しくじったのかも、などと余計な詮索をしてしまう。でも、曲は悪くない。斬新さがある訳ではないが、耳に残るメロディー。こういうのは意外に作るのは難しい。
Jポップというのをそれほど意識して聴くことはないのだが、最近ちょっと気になる曲が多くて、珍しくYahooミュージックなどをアクセスしてみた。 デイリーランキング1位は、「Life goes on」。基本的にラップは全然好きじゃない。適当に言葉並べてちょっとだけ韻を踏んで、ありふれたリズムに合わせてシャウトするだけ。どの曲を聴いても誰が歌っていても、同じにしか聞こえない。というより、歌なのかあれは、という感じ。しかし、DragonAshだけは別。聴いていて心地良いばかりか、ちゃんと意識してメロディーを歌っている。
2位は、ミニモニ。ため息。つんくはいい曲作れるのに、どうしてこうなるんだか。もう一曲ぐらい歌わせて使い捨てるのが目に見えるよう。でも矢口は生き残るだろうね。タレント性はモーニング娘でもピカイチだから。 その他、ウィークリーランキング4位の「SAMURAIDRIVE」。僕にはhitomiや浜崎あゆみは、歌手とは思えない。カラオケボックスじゃないんだから。 実家に帰った時、両親が見る演歌の番組を一緒に見ていたが、歌の善し悪しはともかく、歌はやっぱり上手いなあと思った。だいたい、トレーニングの仕方が違うのだろう。芸を磨かず世に出てくる人間が、何の分野においても多いのだと思う。それを正しく評価できないのも、おかしい。小柳ゆき程度の歌手について歌唱力がすごいだのソウルフルだのと持ち上げる方がどうかしている。
そんな中で、「〜Midnight Dejavu〜色彩のブルース」。これ、最高!そうそう、こういう歌がどんどん出てきて売れてくれればいいのに。それから、トミー・フェブラリーの「Bloomin’!」も、いい曲。海外ポップスの素敵なエッセンスがいっぱい詰まっている。久しくCDレンタルなどしていなかったが、ちょっと行ってみようかなという気になってくる。
2002. 2/5(火)
ダウンタウンが好きなので、「HEY!HEY!HEY!」はよく見る。最近やけに気になって書きたくてしょうがないので、おとついに引き続いて、Jポップの話。
昨日の出演者は、まず、僕の大好きなミスチル。「君が好き」をテレビで聴くのは既に2回目だ。最近のミスチルの曲は、一回目に聴いた時には大していいと思わないのが聴くたび良くなる、というパターンが多いが、これもそんな感じ。サビの後の「自販機で二つ缶コーヒーを買って」の所は、前回はファルセットだったのが今回は1オクターブ落として表声で歌っていた。こっちのほうがいい。 出しゃばりすぎない、ほどほどのトークも、好感。それに比べ、最近の河村隆一は、なんなのだ。
「THE ★SCANTY」という女の子バンドのことは初めて知った。ボーカルの声は、レベッカ〜ジュディ&マリー〜ヒステリック・ブルーとつながる路線。ただ、そんなに巧くはないけど。
それから、FLAME。テクニカルだなあと思う。そのもの単体のすごさとか芸術性というよりも、プロデュース総体として良く考えられているなあと感じる時、最近この「テクニカル」という言葉が頭に浮かぶ。 彼らの歌う「BYE MY LOVE」という曲は、サビの「BYEBYE MY LOVE BYE MY LOVE」のところを早口で歌う、というアイデアが核だ。あとは適当にかっこいい少年たち数人が適当に振り付けられたダンスをし、CMでそのサビのところを何度も流す。これでそこそこのヒットは確実になる。あまり感心はしないが、テクニカルではある。
最後に、松浦亜弥。こちらもなかなかに、テクニカルだ。今回の新曲が流れるCMを初めて見た時、一瞬、藤原紀香かと思った。あれは絶対に狙ってるはず。以前にあんな感じのCMを確か、藤原紀香がやっていた。新曲「桃色片想い」ができあがって、歌詞通りのピンクの衣装着せたら、あら藤原紀香みたいじゃないの、ということで企画が進んでいったに違いない。 曲もなかなか印象的で、ヒット性大。ただ、サビ以外の部分も丁寧に作って欲しかったな、とは思うが。 化粧もわざと藤原紀香風にしてあるのか、前に見た時には全然いいと思わなかったのに、昨日見たら結構可愛いかも、などと思ってしまう。それにしても、15歳とは……。
2002. 2/6(水)
風邪のひき始めというのはわかるものだ。鼻の中に特有の匂いが漂ってくる。実家に帰っている間に完治したものと思っていたのに、名古屋に戻り、アパート近くにある公園の前を通った時、この風邪の匂いを強烈に感じた。近所の河原へ散歩に行く途中のことだ。帰ってから急いで薬を飲み、ひどくならないよう気を付けた。 しかし、違っていたらしい。どうやらこれは、花粉のようだ。例年なら3月くらいから症状が出るのに、今年は早くもやってきてしまった。憂鬱。
今日は「速報!歌の大辞テン」を観る。懲りずに三日連続Jポップの話。 まずは、「二人のアカボシ」。そう、来い来い。こういうの、もっと出てこい。キンモクセイのメンバーは、歌謡曲が大好き、とインタビューで話していた。僕も含め、ちょうど子供の頃に歌謡曲に親しんで育った世代が、社会で力を発揮できる立場になってきている。だから、こういう曲がもっと出てきていいはず。 ゲストに来ていた島谷ひとみの「シャンティ」もなかなか。「パピオン」とか「市場へ行こう」などで割と独自路線を歩んできたが、今回の曲もその延長線上にある。なんか、庄野真代っぽい。 いきなりランクインしてきたMISIAは、あーまたそんな感じか、っていう曲。決して悪くはないんだけど、全然心に響かない。「Everything」もそうだった。それに、騒がれるほどには歌がうまいとも思えない。小柳ゆきよりはうまいけど。 それから、ピクミン。ゲームをやりたくてしょうがないのだが、ピクミンだけのためにゲームキューブを買うのはちょっと、と二の足を踏んでいる。僕は、テレビのCMではなく、ゲーム店などで流れている2分ほどのCMの方を先に見た。あの歌と、確か森本レオの声で、「僕達は決して忘れない、君たちのことを」云々と流れるナレーションにやられてしまい、店頭でちょっと泣きそうになった。映像と一緒に聴くと、更にいい曲に思えてしまう。これもまた、テクニカル。
2002. 2/7(木)
久しぶりに、本当に久しぶりにプールに行った。馴染みのレインボープールまで、自転車を飛ばす。数え切れないほどここには来たが、考えてみたら、こんな真冬に泳ぎに来たことはなかった。800メートルほど泳いで上がると、胸や腕の筋肉が張っているのを感じた。コンスタントに体を動かすことは続けていきたい。
それにしても、いまだに「プロジェクトX」は、ハズさない。前回の沖縄首里城も、最初はイマイチかなと思っていたが、とても良くできたドラマに仕上がっていて、やっぱり泣いてしまった。テーマを見てちょっと地味かなあと思うような時でも、見終わるとやっぱり納得の出来だ。遂に視聴率も20%を達成したらしい。毎週、この番組を見て2000万人の人が泣いている。
今日のJポップは、「うたばん」。たまたまテレビをつけたら、「二人のアカボシ」が流れている最中だった。そのまま見ていると、またまた松浦亜弥が出ていた。ついつい見入ってしまう。テレパルで見てみると、何と明日の「ミュージックステーション」にまで名前が載っていた。固め打ち。今回の曲は相当自信があるのだろう。売り出し方がすごい。
2002. 2/10(日)
長野オリンピックの金メダルは、正直、ホームディシジョンだと思った。モーグルという競技を見たのはそれが初めてだったが、素人目にも、他の選手に比べて勝っているという気はしなかった。 インタビューでのぶすっとした表情やもそもそとしゃべる姿にもイライラしたし、オリンピック後の大会の不振を見ても、ああやっぱりなと感じた。それで就職がフジテレビ?ふざけるな、っていう気がして、どうも好感は持てなかった。 でも、今日の姿を見て、180度評価は変わった。 里谷多英、銅メダル。もう金メダルがフロックだったとか言いません、ごめんなさい。 ものすごく立派だと思う。エースの座を上村選手に奪われても、オリンピックに向けて調子を合わせ、本番で見事に力を出し切った。登り調子で、しかも対称的に社交的で人気者の上村選手と比較されることは多々あったろうに、つらいことはきっとたくさんたくさんあったろうに、と考えると、「プロジェクトX」並に泣けてしまった。 心なしか、インタビューでも表情が豊かになったように思う。「日本人だから、気持ちをストレートに表現できないんです」と答えながら、母親には「私ってすごくない?」と聞くあたりも、いじらしい。 すっかりファンになってしまった。あの子は、偉大だ。
実況の解説をしていた方の話も、良かった。日本人選手だけを闇雲に応援するだけでなく、モーグル競技を愛している様子がよく伝わってきた。ああいうのを聞いていると、スポーツはやっぱりいいなと思う。冬のオリンピックはあまり見なかったのだが、前回大会からもう、どっぷりとはまっている。今日の夜には、楽しみにしているジャンプノーマルヒルの決勝が待っている。
2002. 2/13(水)
男子モーグルは、有力な日本人選手がいないせいかあんまりクローズアップされないけど、見てみたら、これちょっと凄いね。先日の女子の演技見た時は、ああ、女子でもヘリコプターやるようになったんだあと思ったが、男子はもうそれどころじゃない。クォッドは当たり前、更には横回転だけでなく縦回転まで繰り出す選手が出てきた。スピードも女子とは段違いに速くて迫力があるから、見ていて引き込まれる。
カーリングも始まった。いややっぱり、面白い。でも、NHK−BSをビデオ録画して見たのだが、途中がカットされていて残念。ま、確かに1ラウンド8投ずつ投げて10ラウンドというのは、長すぎるかも。競技としてはそれで成り立つのかもしれないが、少なくともテレビ向きではない。 それにしてもアメリカ戦。同点で迎えた第9ラウンド、1点を加えない方が有利ということがあるのかと、改めてその奥深さを知る。日本女子は早くも2敗。上位進出は厳しいか。
夜は、先週に引き続き「速報!歌の大辞テン」を見る。どうも毎週見ることになりそうだ。松浦亜弥が予想通り順調に売れていて、ふんふん、嬉しいことよ。 バービーボーイズのKONTAとブルーハーツの甲本ヒロトは、本当に歌がうまかった。このノドは、ちょっと今の歌手には見当たらない。バービーの「目を閉じておいでよ」なんて、他の歌手が歌ったらそれほどいいとは思わないかも。
2002. 2/14(木)
ま〜た負けちゃったよー、カーリング。オリンピック以外での試合を見たことはないけれど、正直、レベル的には他の国より一段低いのかな、と思ってしまう。何となく、競技中に繰り出される言葉のやりとりを聞いていても稚拙に感じるし。やっぱり、初戦でアメリカに5−1でリードしながら負けたのが大きかった。 それにしても、競技そのものは滅法おもしろい。作戦がびっくりするほど多様なのだ。
ところでNHK−BSを見ていると、競技の合間に見所のVTRが紹介される。この出来が良くて、今まで見たことがない競技にも興味を抱かせてくれる。やたらスター選手ばかりを取り上げ、「美の競演」だの「日の丸なんとか隊」などともてはやす民放は、とても見る気になれない。 今日目覚めたのは、フィギュアスケート。日本では割と人気があるが、僕はほとんど見ることはなかった。それが、ふむふむ、このヤグディンって奴が前は強くて、そこにプルシェンコっていう若い奴が出てきてチャンピオンになって、それがこの前の大会でまた地位が逆転して……。なるほど、そんな状態で本田選手のショートプログラム2位ってのは凄いことなんだな、と納得。明日のフリーが楽しみになった。
それから、ショートトラックについても誤解をしていた。見た感じ、本当に失礼だけれど、ちまちましたせせこましいスケート、みたいなイメージを持っていた。オリンピック以外で話題になることがほとんどないので馴染みが薄いせいもあるかもしれない。 あんなコーナリングができたら気持ちいいだろうなと思ってしまうスピード感、そしてあの抜きつ抜かれつの駆け引きの妙。リレーで前走者が次走者をぽーんと押すのも面白い。何故かアジアの選手が強いらしく、他の競技ではあまり目立つことのない韓国人選手たちがとてつもなく強く見える。
期待していたジャンプは残念な結果に終わった。でもあれを見ると、世界との差は段々開いて来てるなあと感じざるを得ない。ノーマルヒルに続いて優勝したアマンはまだ二十歳。独特の、ふわあんと浮かぶようなジャンプは、落ちないかと思うぐらい滞空時間が長い。昔の船木選手もあんな感じだったのに。
2002. 2/15(金)
男子フィギュアの表彰式、国旗掲揚で流れてきた曲に、はっと思い出した。旧ソ連の国歌がロシア国歌として蘇ったという話は知っていた。前にこの欄でもそのことを書いたが、実際に聞く機会はないままだった。
にわかづくりのファンながら、今日行われたフリー演技の映像を、一日中何度も繰り返し見ていた。わざわざ自分でVTRを見直さなくとも、いつでもテレビをつければ流れているような状態だった。もちろん本田選手を応援してはいたけれど、ロシアの二人の対決の図式はわかりやすく、フィギュア観戦初心者の僕にも充分楽しめる内容だった。
「ロシアの二人の天才」というコピーは、単純だけれど怖いぐらいぴったりとはまっている。銅メダルを取ったアメリカのゲーブル選手はまだ手を延ばせば届きそうだが、あの二人には、おそれおおくて近くに寄れそうもない。確かに全身から放たれている、常人とは違うエネルギーを感じるからだ。 それでも、今回のオリンピックでは、ショートで勝負がついてしまった感じだ。4位スタートとなったプルシェンコ選手は、どれだけ頑張っても地力では優勝できなくなっていた。一か八かの大技も失敗し、フリーの演技を終えた。それを見終わったヤグディンは大きな冒険をせず、無難にまとめあげ、金メダルを手にした。演技が終わった後、喜びを全身で表現し、点数を待ちながら泣き崩れる姿は、天才のオーラを存分に放ち続けた後だけに、見る人の胸を打ったことだろう。
久しぶりに聞く旧ソ連国歌の哀愁溢れるメロディーは、終わったばかりの闘いの余韻を彩るように会場に響いていた。 フィギュアには、少しもの哀しいくらいのメロディーがよく似合う。本田選手の「アランフェス協奏曲」もばっちりだし、「仮面の男」や「ゴッドファーザー」などのサントラもよく雰囲気を伝えていた。
話かわって、毎日応援しているのに、いつも負けてしまうカーリング。他の人気競技に押されて放送時間がころころと転がされてしまうのを追っかけているのに、どうにも調子が上がらない。今日のスイス戦でも、おっこれでイケるか、という場面もあるのに、そのあとミスっちゃいけない所で失敗してしまう。それでも明日も早起きして見る。
最後にひとつ。ヤグディン選手は誰かに似ていると思っていたが、あれだ。「ふぞろいの林檎たち」に出てくる、佐竹。
2002. 2/17(日)
コントか。今日のショートトラックは。 男子も女子も、ハプニングの連続。女子500m準々決勝、田中選手が一着となり喜んでいるところへ、非情なる失格のアナウンス。その後行われた男子1000m準決勝では、寺尾選手が他の選手の転倒を抜け、一位でゴール。しかしこれも失格で決勝に進むことはできなかった。 確かに田中選手の進路妨害はテレビ画面にはっきりと写っていた。しかし寺尾選手については、VTRを見ても、それらしき動作は見当たらない。日本選手団は提訴するそうだが、気持ちはよくわかる。
そして、ドタバタ劇の締めくくりは、男子1000m決勝。強豪ひしめく中、ゴール直前で上位4人が次々と転倒し、最後尾を走っていたオーストラリア人選手が、その間隙を縫ってゴールイン。苦笑の金メダルだった。ショートトラックは、こういったトラブルも含めて成り立つ競技なのか。スピードスケートがアスリート的な競技なのに対し、ショートトラックはゲーム的な要素が強い。
NHKでも、今日はショートトラックの映像がヘビーローテーションで流れていた。日本人選手が次々と失格で敗れていく様は映像ソースとして魅力的だったのだろう。逆に、6連敗で準決勝進出がなくなった日本女子カーリングについては、当初予定されていた放送さえカットされてしまう有様。それ以降の戦いの結果は、Webで知った。結局、ノルウェーにも敗れ、7連敗。 うーん、なんとか一回ぐらい勝ってほしいけど、気持ちがもうついていかないんだろうな。
2002. 2/18(月)
ようやっと、一勝!カーリング日本女子ばんざい!! 予選敗退決定と同時にNHKに見放され、試合が放送されなくなっていた。結果は今日もWebで知る。テレビで少しでも映像が流れないかと見張っていたが、結果を知らせるテロップが出るばかり。何とかBSでちょこっとだけ流れたが、フィニッシュの瞬間と、そのあと4人が抱き合うシーンですぐに途切れた。よっぽど嬉しかったろう。一勝もできずに帰るのとは気持ちが違うだろう。試合後の表情とかインタビューとか聞きたかったな。
今日のニュースでは、フィギュアスケート・ペアでカナダとロシアの両組に金メダルが授与された件と、ショートトラックの判定について日本選手団が国際スケート連盟に抗議文を提出した件が、どこのチャンネルでも放送されていた。 サッカーのレフェリングでも思うが、なぜビデオを導入しないのか、不思議でしかたない。ビデオという技術がない時代なら、反則を犯したように見えた見えないで揉めた時にレフェリーの主張を通すのは、納得できる。いったん主張を覆すようなことをしてしまったら、以後同じように審判に噛み付く選手が続出し、試合が混乱することが予想されるからだ。とりあえず抗議だけしとこう、という具合に。 しかし、今はビデオがある、のだ。より適正な判断を行うために最善の方法を取るのが審判の義務だろうに。 あのスロー映像を見たなら、100人が100人とも、日本選手団側が正しいと言うだろう。そこから目を背け、審判の威厳を守るために今のようなやり方を貫くのは前時代的だ。
2002. 2/19(火)
試合後の船木選手と原田選手のコメントは、対称的で面白かった。みんな頑張ったし良かったんじゃないですか、と笑顔で話す原田選手のことを、船木選手はきっと快く思っていなかったに違いない。負けたのにヘラヘラしてんじゃねえよと、思っていたに違いない。 4人のうち最後にマイクを向けられた彼は、「ダメでしたね」と投げ捨てるように言い放った。必死で笑顔を作りながらも滲み出てしまう涙には、長野以降、思うように飛べなくなった自分に対するたまらないほどの悔しさが隠れていたように思う。 インタビューを受ける時、どこか相手を小馬鹿にしたような態度で答える船木選手は、マスコミ関係者には、ウケが悪いかもしれない。でも僕は嫌いではない。もちろん原田選手は大好きで尊敬しているが、あのいつまでたってもとんがっている船木選手のことも好きだ。 「いい経験になりましたよ。 悔しいですけどね。」 単純な言葉だけど、ぐっと胸にきた。
原田選手は、まだまだ現役を続けていくらしい。山田選手など若い人材が育って来ているなか、そろそろ若返りをと考えるコーチ陣からは、煙たがれるかもしれない。それでも飛び続ける原田選手の胸には、奥さんの暖かい言葉がある。彼がかつて競技をやめようかと思っていた時、自分が思うままやればいいじゃないの、私はあなたがジャンプをしている姿しか知らないのよ、と声をかけたという。
ストイックに真っ直ぐに自分を追い込んでいく船木選手に対し、周りへの気配りを怠らない原田選手。たぶん、競技を離れて二人が付き合いをしていることはないと思う。もちろん、どちらが優れているということはない。やり方は人それぞれだ。 ・・・
さて、いつものカーリング日本女子。もう全く放送を見ることはできず、アメリカNBCの公式サイト上でリアルタイムに配信されるスコアを、逐次見ながら応援した。 今日は最終戦、デンマークとの試合。第1エンドから2点を奪うというこれまでにない良いスタート。さらに第4エンドでも2点を獲得し、その時点で4−2とリード。しかし、徐々に点差を詰められ、第7エンドで遂に5−5と追いつかれる。 それでもその後は、第8・第9エンドとドローに持ち込み、第10エンドで決勝点となる1点を加え、6−5での勝利!見事に最終戦を飾った。 詳しい試合内容はわからないが、第8、第9エンドは恐らく、意図的にドローに持ち込んだに違いない。そして、最終エンド、同点で後攻めという必勝パターンに持ち込んだ。これで日本は、予選出場の全10チーム中8位。最後に連勝できたのは嬉しかっただろう。喜ぶ姿がどうしても見たくて、今日も地上波・BS・ハイビジョンを探しまくったが、遂に映像は流れなかった。
2002. 2/20(水)
フィギュアでのカナダ・ロシア同時金メダルの問題が報じられる時、いつも「人間が採点をする競技の難しさ・問題点が浮き彫りにされました」などといって締めくくられる。マスコミが調子に乗って煽り立てるせいだろうが、いつのまにか論点がずれている。今回判定が変更になったのは、明確なる不正が理由だ。一審判員が密約によって不正な点数を付けたのが原因であって、いったん付けた点数を後になって思い直した、などという訳ではないのだ。フィギュアの採点がより客観評価となるよう変更になるのは良い方向だとは思うが、今回の事件が契機なのだとしたら、首を傾げてしまう。 いっぽう、ショートトラックの寺尾選手の件は、結局却下されて終わってしまった模様だ。こちらの方がよっぽど変革を要するはずなのに。誰もが納得すると思われるビデオ判定を早期に導入してほしい。それでも、まだ競技の残っている寺尾選手自身のことを考え、それ以上の追求を断念した選手団の判断は正解だと思う。
ふるふるふるふる立ったー、のエアリアルを横目に、今日のメインはフィギュア女子。村主選手は微妙な位置でショートプログラムを終えた。男性の側としては、女子の演技というのはやっぱり魅力的だ。個人的には、衣装点というのがあるならロシアのブッテルスカヤ選手に満点をあげたい。ミッシェル・クワンが”谷間”勝負なら、アタシは”透け”よ、といわんばかりの。
2002. 2/22(金)
演技を終え曲が鳴りやんだ瞬間、ミシェル・クワンは、振り上げかけた両手を力なく下ろした。 大きなミスだった。プログラムの終盤、最後にトライした三回転ジャンプは、飛び上がった瞬間から軸がぶれていた。クワンの真紅のコスチュームが崩れ落ち、銀盤に突き立ったエッジから、氷のかけらが白く舞い散った。 彼女の胸の裡には、何がよぎったろう。長野で逃した金メダルが、また手のひらをすり抜けていく。世界一美しいと言われるスパイラルを滑る時、本当は安堵の気持ちでこの瞬間を迎えたかったとは思わなかったろうか。 実力はありながら、どうしてもオリンピックでは勝てない。そんな状況は、僕の好きだった陸上選手のマリーン・オッティ選手を思い起こさせ、フィギュア観戦は素人ながら、やはりクワン選手を応援していた。彼女の転倒で大きく漏れた観客のため息に、世界中のファンの落胆も重なったことだろう。
今日のフリープログラム、最終組の演技では、ミスが続出した。最も落ち着いて見えたサーシャ・コーエンでさえ、ジャンプをまとめきれずに転倒した。そんな緊張感の中、ノーミスで素晴らしい演技を行ったサラ・ヒューズは、確かにチャンピオンにふさわしい出来だったと思う。今回は疑惑の判定が続出したが、あの演技でクワンが優勝していたら、また揉めることになったかもしれない。それぐらいヒューズの演技は圧倒的だった。
どちらにしても、胸を打たれる試合内容だった。サーシャ・コーエンは転んでしまったが、演技の全体的な質は最も高かったと思う。そして、日本の村主選手の5位も、あのメンバーの中では凄い結果だ。ハイビジョン・BS・地上波と、今日は何度この試合を見たかわからない。
さて、放送のある時にはずっと見続けたカーリング、女子はイギリスが優勝した。 最後の一戦は、正に決勝にふさわしい名勝負となった。ミスがほとんどなく、非常に締まったレベルの高い試合。スーパーショットが連続し、同点のまま迎えた最終エンド、勝負の行方はイギリス側の最終デリバリーにまでもつれ込んだ。静まり返るスタジアム。イギリスのスキップの投げたストーンはこれまたスーパーショットとなり、金メダルを呼び寄せた。 それにしてもまた、いろんな戦術を見させてもらった。しかし、一試合2時間半は長い。やっぱりメジャーにはなれず、オリンピックでしか見られない競技になるのかな。
2002. 2/23(土)
稀にみる大逆転劇となった女子シングルから一夜が明け、各種目の上位選手たちが再びリンクに集まった。夏のオリンピックで体操競技のエキシビションというのは見たことはあったが、フィギュアスケートで見るのは初めてだった。 今オリンピックで唯一、勝負のかかっていない種目。それなのにどうしてだろう、見ているうちに涙があふれてきて、胸が一杯になってしまった。
”闘い終わって”という、正にそんな言葉がぴったりだった。どの選手たちの顔にも笑顔が浮かび、会場も実況も解説も、彼らを見守る温かさに包まれていた。 特別に難しい技を見せる選手はいない。それでも、一つのジャンプが決まるたび沸き起こる拍手と歓声。軽快なリズムのダンスには大きな手拍子が響く。会場のリンクは、フィギュアスケートを愛する人々の思いで満たされていて、画面を見ていると、とても優しい気持ちになった。
テレビで見た数年前の姿はまだ幼い少年だった、本田選手。大舞台に弱いと言われるなかで見事4位という成績を残し、堂々と滑るその姿を、両親や関係者の方々はどのように見つめていただろう。かたや、滑り終えたあと、「どう、あたし?決まったでしょ?」と言わんばかりに悪戯っぽく腰を動かして見せた村主選手。インタビューを受ける姿などは特に美人だとは思えないのに、リンクの上で見せる”訴え顔”を見ると、惚れ惚れとしてしまう。きっと、天性のフィギュア選手なのだろう。 ロシアの二人の天才も、この日ばかりは穏やかだった。肉体美を存分に見せつけ、華麗なステップを踏むヤグディン。アンコールでわざと転び、「失敗しちゃった、どうしよう」というおどけた顔をした後に見事なジャンプを決め、どうだという表情のプルシェンコ。大会前の一ヶ月ほどで取り組んだという「カルメン」が真に完成された時、チャンピオンの座を巡る熾烈な争いが再び繰り広げられることだろう。
二強争いが明確だった男子に対し、女子は大変な混戦だった。何しろ、ショートプログラム4位だったサラ・ヒューズ選手が勝ってしまうぐらいだから、フリーの演技如何ではメダルを逃したサーシャ・コーエン選手あたりまで、金メダルの可能性はあった。 なかでも、前回長野に続き、同国の年下選手に足元をすくわれたミシェル・クワンは、どれだけ無念だったことか。アメリカ国民ならずとも応援したくなるそのキャラクターと悲劇性。今日は、彼女が出てきた瞬間から、全観客からのスタンディング・オベーションが沸き起こった。まだまだ気持ちの整理はついていないのだろう。競技を終えた安堵と金メダルを逃した悔しさがない交ぜになった複雑な表情で、クワン選手は大観衆の声援にこたえていた。
エキシビションでは、シングル種目だけでなく、ペアとアイスダンスの上位選手も演技を行う。今回、フィギュア観戦初心者ゆえ、競技を見るのはシングル種目のみに絞っていた。しかし、今はそれを後悔している。シングルとは違った魅力が、今日の演技の中に濃厚に含まれていた。エキシビションだから、お遊びの要素が強かったのだろうとは思う。実際、アイスダンスで金メダルを獲ったフランス人ペアの演技は爆笑ものだったが、競技の場であの演技はできないだろう。それでも、二人だからこそ可能となる高度な技の数々を目の当たりにして、また一つフィギュアの魅力を知ってしまった。
全てのメダリストが滑り終え、最後に登場したのが、サラ・ヒューズ選手。花束を抱え、ニューヨーク市民の一人として、昨年の同時多発テロに関するメッセージを送った。
『私はアメリカ国民であること、そして、ニューヨーク市民であることを誇りに思います。私は16歳。この国は、全ての人を受け入れると、まだ信じています。 私の名前は、サラ・ヒューズ。9月11日に犠牲になったたくさんの人々のために、今日私はここにいます。 私たちは、一人じゃない。』
そして流れる曲のタイトルは、「You"ll neverwalk alone」。アメリカらしいセレモニーだと思った。しかし、いつもの僕なら一笑に付すような陳腐な演出でも、この素晴らしい会場での素晴らしい演技を堪能した後では、素直に受け入れることができた。
ところで、僕に感動を呼び起こしてくれたのは、そればかりではない。 NHKでは、ハイビジョンとBSの番組それぞれを、独立したカメラワークと実況で放送している。僕は大抵、映像と音声の質が高いハイビジョンの方を見ている。ただ、今日のエキシビションについては、BS側の佐藤由香さんの解説が聞きたくて、ハイビジョン・BS両方で見た。 しかし、なぜか今日、佐藤由香さんはあまり喋ってくれなかった。反対に、ハイビジョン側では視聴者の少なさからラフに番組作りができるのか、実況の刈屋富士雄アナウンサーと解説の樋口豊さんが、さながら談笑するように中継を行っていた。その雰囲気が本当に愉快で温かくて、エキシビションの楽しい雰囲気を盛り上げるに充分だった。 ユーモラスな演技には、臆面もなく笑い転げる声が届く。「かわいいですねー」「おもしろかったですねー」と、素直に楽しさを表現する言葉の数々。ああ、この二人、本当にフィギュアスケートが好きなんだろうなと、見ている側もニヤリとしてしまう。それでいて、堅苦しく体裁ばかりのBS側アナウンサーに比べ、伝えるべきフィギュアの魅力や選手の細かなしぐさなども漏らさず伝えてくれる。ミシェル・クワン選手が失敗で演技を終えた際の複雑な表情を、「『出来たかしら、出来たよね、でもダメかしら』、そんな表情です」とコメントした時、なんと的確な表現だろうと感心した。 ちゃんと勉強してなきゃ、あんな風にはできない。迷わず、永久保存版としてビデオに収めた。
……ということで、これから追いかけていくスポーツの一つとして、僕の心の中にどっしりと腰を下ろしたフィギュアスケート。今後気になる選手はと言うと、まずはスルツカヤ選手を挙げたい。演技前後の姿がどこか神経質に見え、シングル競技を観戦している時はそれほど好きな選手ではなかった。金メダルを逃したあとも、採点に不満を漏らし、取り乱していたという。しかし今日のエキシビションではいつもの高潔な雰囲気をがらりと変え、真っ赤な衣装でリンクを跳ね回っていた。ああこの人こんなに可愛いかったんだと、正直びっくりした。あのカウボーイ姿に、イチコロ。 ただ、女子の実力者として今後のフィギュアで台頭するのは、サーシャ・コーエンではないかという気がする。エキシビションの演技もそうだったが、地に足のついた、実にどっしりとした演技を見せる。さらに音感も抜群で、あれほどぴたりと音楽に合わせられる選手はいない。くわえて、高難度のジャンプを軽々とこなす技術。今オリンピックではやらなかったが、4回転ジャンプも身につけているという。顔がタイプでないのだけが、残念。 それからもちろん、村主選手と本田選手にも、応援を送りたい。男子ではロシアの二強の壁を崩すのは容易ではないが、あのヤグディンだって、長野大会は5位だったのだ。頑張ってほしい。
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