真夜中の狭苦しい見張台の上、薄い月明かりの下で、ゾロはサンジの汗に濡れて淫らな光を放っているその細い体を抱いていた。
メインマストの太い支柱にサンジの背を押し付けて、張りのある細くしなやかな両足を肩に担ぎ上げて、大きく開かせたサンジの足の間に密着させている腰をゆっくりとした動作で引けば、ぐちゅり、と濡れた音が小さく響く。
そして、目の前のうっすらと上気したサンジの顔を見てみればその顔は、切な気にいやらしく歪んで、うっすらと開いている瞼の向こう側から、愉悦の涙に濡れた青い瞳がゾロを見上げていた。
挿入までに散々愛撫して喰らい尽くしたサンジの薄い唇も、涙の浮いた目尻と同様にうっすらと赤く充血したように染まって、耳に心地よい喘ぎ声とともに小さくゾロの名を呼んでいた。
「イイのかよ、サンジ・・・。」
グッと下の方から突き上げるようにして、サンジの熱くとろけている内部を擦り上げながらゾロがそう聞けば、ゾロの太い首に絡ませるようにしている両腕にわずかに力を込めて、ギラギラと欲望に満ちた眼差しを向けてくる男に向かって、サンジは淫らに笑いかけるのだ。
「あぁ・・・。たまんねぇ・・・・。スゲェ、たまんねぇよ・・・・。」
「もっと・・・あっ・・・・。強く、しろ・・・よ・・・・。」
そう言って、自らお互いが繋がりあった部分を刺激するように、緩く腰を動かして。
ゾロにだけしか見せない、ゾロだけしかみる事の出来ない表情を、サンジは薄ぼんやりとした月明かりの下で惜しげもなく晒していた。
「サンジ・・・・。」
その表情に煽られるように、昼間は口にすることのない言葉を耳元で囁きながら、ゾロはサンジの腰を強く掴み上げて、ギュッと締め付けてくる内壁を抉るようにその中を突き上げた。
とたん、ゾロの目の前で白くてしなやかな細い首筋が、まるで『噛みつけよ』とでもいってるように仰け反って、ゾロは誘われるままにサンジの晒された白い首を下の方からずるりと舐め上げた。
尖らせた舌先が鎖骨のあたりからじりじりと喉元を這い上がる感触に、ゾロの首に回したサンジの腕が細かく振るえて、薄く開いた唇からは掠れるような喘ぎ声が零れ落ちた。
「ゾロ・・・・・。」
誰にも聞かせない濡れた声でサンジがそう言ったとき、ゾロの舌先はサンジの細く尖った顎先を捕らえて、ゾロはそのまま目の前の野獣に生贄のように差し出されている顎骨に喰らいついた。
柔らかな舌の腹で口に含んだそこを撫でるように摩ってやれば、顎先を咥えられたまま、サンジが小さく笑った。
「何、やってんだよ・・・。」
だが、ゾロはそれには答えるつもりはないのか、サンジの顎に噛み付いたまま、グイッと腰を強く押し上げた。
とたん、その刺激に耐え切れず、サンジはマストの支柱に持たせかけていた背骨を強く仰け反らせて、それとともにゾロに食いつかれていた顎先はその口から解放される。
嘗め尽くされたそこからは、ゾロの薄い唇との間に細い唾液が糸を引いて、それを細くしかめた瞳で見つめながら、ゾロはサンジを高みに追い上げるために激しく腰を動かし始めた。
「なぁ、まだ終わんねぇの・・・・・?。」
ほぅっと、今し方解放されだばかりの快楽の余韻が混じったため息を一つついて、サンジは今だ自分の体を離そうとしないゾロの顔を覗き込むようにしてそう言った。
まぁ、別にこんな事は珍しい事でもなかったし、一度でこの体力馬鹿な男が満足する事もないことはサンジも今までの経験でわかってはいたのだが、そこはそれ、場を繋ぐために言ってみただけのこと。
ところがだ、いつもなら少しあきれたような声でそういうサンジに、わざと挑みかけるような態度で返してくるゾロが、なぜだか今日に限ってやたらと大人しかった。これはいつものごとく、一度イったにもかかわらずまったく萎えることなく、サンジの体の中にあるペニスもそのままに、覗き込んだゾロの顔は何事かを考えているようで、真剣な眼差しでさっきまで噛み付いていたサンジの顎をじっと見ていた。
「なんだよ・・・?。なんか、着いてっか・・・?。」
あまりにも真剣にゾロが見ているものだから、気にならないはずもなく、サンジはゾロの背中にしがみ付いて爪を立てていた腕を解くと、訝しげに自分の顎先に指を這わせた。
「なぁ・・・。」
だが、その指先がその場所に触れる前に、ゾロの剣だこのある太い指に止められてしまい、かわりに呟くようにそう言ったゾロの長い舌がそこを、また、ゆっくりと舐め上げてきた。
「ん・・・だよ・・・。今日から、いきなり・・・、顎フェチか・・・?。」
サンジは自分の顎に舌を這わせながら、再び緩く緩慢に動き出したゾロに向かってそう言った。
「そんなんじゃねぇんだが・・・。」
「じゃあ、・・・っあ・・・。なんで・・・。」
そこばっかり気にしてんだよ?。そういおうとした言葉は最後までは続かずに、詰めた息遣いに取って変わられる。ゾロに深く穿たれた場所から、ぐちゅぐちゅといやらしい音が狭い見張台に響いて、耳の穴さえも犯されてるような気分にさせられる、サンジはそう思っていた。
熱くなった内壁をズルズルと擦り上げられて、自分自身ではまったくコントロールする事も出来ない、ただ与えられるだけの強い快楽に、再びサンジが意識を飛ばそうとしたときだった。
ゾロがボソリと言った言葉に、思いっきりサンジの意識は現実に引き戻されてしまった。
「ヒゲ、何で伸ばしてんだ?。」
「はぁ?。」
思い切り素面の口調でそういうゾロに対して、甘い喘ぎ声でもない、なんだか間の抜けた声がサンジの半開きのままの唇から放たれた。
さっきから散々何を気にしているのかと思えばだ。サンジからしてみれば「何を今更言い出すんだ、このクソ剣士。」といったところなのだろう。しかも、抱き合っている真っ最中に。
(デリカシーっうもんがないのかね、この鈍感まりも野郎にゃ・・・。)
思わず口をついてでてしまいそうになったため息をすんでのところで飲み込んで、サンジは無駄な努力のような気がしないでもない気持ちをグッとこらえて、なるべく今のムードを壊さない程度に押さえた声でゾロの愚問に答えてやった。
「どうでも、いいだろ・・・。そんなこと・・・。別に意味なんかねぇよ・・・。」
本当に、ヒゲを伸ばしている事にはたいした意味はなかった。ゲンを担いでいるとか、願掛けしているわけでもない。伸ばしている理由、「ただ何となく。」というのが一番近いだろう。
一度伸ばしたままにしてしまって、それから何となく剃らなくなっただけ。特別な理由もなかったが、剃るつもりもなくなった。ただそれだけだった。
大体ゾロと出合ったときには今のスタイルだったし、それから結構な時間を共にしてきて、こういう関係になってからもそこそこの時間が過ぎている。
(気にするんだったら、もっと早くに気にしろよ。)
サンジ的にはそんな気分だった。
ゾロに語って聞かせてやるような理由もなかったし、だから正直に答えてやった。
「意味なんかねぇって。」
そう言って、サンジは意識してゾロを咥えこんだ部分を軽く締めてやって、さっさと続きを始めようぜ、と暗に誘ったつもりだったのだが、突然の疑問から止まったままだったゾロの動きが再開される気配はなく、いっそう真面目な顔つきでゾロはサンジの顎ヒゲを凝視して固まっていた。
(ったく、どうすんだよ・・・。)
中途半端に熱が篭ったままなのはお互いさまなのだが、意味不明なゾロの行動で、どうにも体に反してすっかり気がそがれてしまったサンジが、
(これだったら自分でマス掻いて方がよっぽどいいぜ・・・。)
呆れ半分にそう思ったそのときだった。
しばらくの間固まったままだったゾロがようやくわずかばかり体を動かしてとった行動に、サンジは思い切り目を見開いた。コイツはどっかおかしくなったに違いないとまで思った。
月明かりの下、冷たい光を反射させた細い刃がサンジの白い喉元に突きつけられていて。
「お・・・い・・・。何の、冗談だ・・・・・?。」
コクリ、と小さく息を飲み込んで、至極真面目な顔つきのまま自分に『和道一文字』を向けているゾロにそう聞いた。
ケンカになるような雰囲気でもなかった。それに、大体いつものケンカでは必ず峰を返した状態で、こうやって真っ直ぐに刀の刃を向けられたことなんて一度だってなかった。いったい何があって、こんなことになってしまっているのか、サンジには皆目検討もつかなかった。
蹴り上げて抵抗しようにも押さえつけられるようにしてゾロのペニスを突き入れられたままの今の体勢では、圧倒的に自分が不利なのは火を見るよりも明らかだ。
(どうするよ。結構ピンチなんじゃねぇの、俺。)
なんて思いながらも、このままわけも分からないまま大人しく切られてやるのも癪に触る。というか、サンジ的には「何で俺が切られなきゃならねんだ、何か気にいらねぇことがあるんだったら、はっきり言いやがれ。」という心境だった。そう思えばだんだん腹が立ってきた。むかついてきた。
ゾロに勝てる腕力ではないとはわかっていたが、それでもちょっと隙ができれば何とか足も使えるだろうと、サンジはとりあえずは今のところ自由が利く両腕で抵抗してみる事にした。
(一発、顔面でも殴ってやれば、いくらこいつでもちょっとくらいは怯むだろ。)
そう考えて、無言のまま刀を向けているゾロを睨みつけるようにして、
「この気×いヤロウ。」
とか言いながら、サンジはゾロの真っ直ぐに通った鼻っ柱めがけて拳を振り上げた。
のだが、その拳はゾロが又も唐突に発した一言に、目標物に到達する前に止まってしまった。
「それ、剃っちまってもいいか?。」
「はぁ?。」
再びサンジの口から間の抜けた声が放たれる。
そして、ゾロが言う「それ」が、自分の「顎ヒゲ」だということにサンジが気付く前に、綺麗に研がれているだろう刃の腹がピタリとそこにあてがわれて、返事を返す前に「ジョリ」、なんていう音が聞こえてきた。
「テメッ、何してくれてやがんだ!!。」
特別な意味はないにしろ、それでもずっと伸ばし続けているものを勝手に他人に弄くられたりするのは許せない。カッとなって思わず叫びそうになったところを、
「動けばすっぱり切れちまうぞ。」
そう言ったゾロの言葉でサンジは口を閉じざるをえなくなった。
何しろゾロの刀の切れ味は、同類の刃物を扱うサンジの目からしてみても、その曇り一つなく研がれた刃先を見るだけで想像がつく。動けば、「ちょっと切れた」程度ではすまないだろう。となれば、サンジはイライラを抱えたまま、黙ってじっとしている以外になかった。
「ヒゲ」を伸ばしているといっても、せいぜい顎の先にちょろちょろと生えている程度だ。ものの数秒であてがわれていた刀の刃はどけられて、眉間に縦皺を思いっきり寄せて、「なんつー理不尽極まりない事をしやがるんだ。」という表情のサンジに反して、ゾロは至極満足といった顔つきで「ヒゲ」のなくなったサンジを見下ろしてきた。
「テメェ、どういうつもりだよ・・・・・。」
下半身は惰性でいろいろ感じてはいたが、気分は最悪もいいところだ。
単に唾液で濡れただけのところをいきなり剃り上げられて、多少ヒリヒリする痛みにますます不機嫌な声で「返答次第ではすぐにでも蹴り倒してくれる。」とでも言いたげにそう言ったサンジに対して、ゾロはしれっとした態度で手にしていた刀を脇に置くと、
「いや、何となくヒゲねぇ面が見たくってよ。」
なんて呑気な声で答えを返してきた。
サンジはその想像をはるかに越えたあまりに意味のない、下らない答えに、しかも「何となく。」とかいうたったそれだけの理由で、勝手に人の顔を弄くりまわせてしまうゾロの無神経さとずうずうしさに怒りを通り越して呆れ果ててしまった。
そして、今度こそ思い切り、遠慮なく、深々とため息をつくと、
「それで、ご感想は?。」
さっきゾロを殴ろうとして止まったまま、中途半端に手持ち無沙汰だった腕をもう一度ゾロの首に絡めて聞いてやった。
(下手なこと言いやがったら、今度こそぶっ飛ばしてやる。)
そんなことを思っていたのだが、ゾロはしばらくじっとサンジの顔を見て、
「ん・・・・・。やっぱ、ヒゲ、あったがいいな。」
と、一人納得したように答えた。
「なんだそりゃ・・・・・。」
自分で勝手に剃っといて、今度は「やっぱりあった方がいいな。」だと。
身勝手にも程ってもんがあるだろうよ。と、思ったりもしたのだが、その後続いたゾロの言葉はクイッと、サンジの心の奥深いところを差し込んでいった。
「その方がテメェらしい。」
そう言って、ゾロはニヤッと笑うと、呆けたような顔のサンジをグイッと抱き寄せて、ゆっくりと繋がりあったままだった腰を擦り付けた。
それはつまり、何かの代わりに求められているだとか、自分の好みに合わせて欲しいだとか、そういうことではなくて、何も飾ったり、偽ったりする事ない自然体のままが良いんだと言ってくれているようなもので。
サンジは思いがけなかったその言葉に、たぶん少し赤く染まっているだろう熱くなった頬を隠すように、ゾロの首に回した腕に力を込めて、
「バッカじゃねーの・・・・・。」
呟くように言うと、柔らかな月明かりの下で自分の体を抱きしめて笑っているゾロの唇にそっと口付けた。
END
サンジのヒゲって、何か理由がありましたっけ?。なかったと記憶してはいるのですが・・・・・。
ただ「剃らせない」ということだけは尾田先生はおっしゃっていたはず。
間違ってたらゴメンなさい。
「ヒゲ」ネタは一度書いてみたかったんです。何しろサンジには不可欠なので。
ゾロは女の子の代用としてサンジを求めているわけではないし、男でもある「サンジ」そのものをちゃんと愛してるんだというところを書きたくて・・・・。ちゃんと伝わりましたかね〜(ちょっと心配)。
表仕様なのでエロは微弱ですが、その分裏仕様でリベンジです。裏は只今執筆中ですので、今しばらくお待ちくださいませ。
で、この小説は「5000打感謝企画その1」ということで、一万打までダウンロードフリーです。
思い切り18禁ですが、お持ち帰りする勇気のある方はどうぞ。
掲示板なりでお知らせしていただけるとありがたいです。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
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