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資料

 

ご挨拶
佐野家当主 佐野 武
国立がんセンター中央病院外科医長

  このたび、八坂恭介杵築市長のご理解を得まして、「佐野徳安生誕400年記念祭」を杵築市に於いて開催させていただくことになりました。この会は、ひとえに私の個人的な思い入れに始まり、私の独断で企画・準備を進めて参ったものでございます。
  私は杵築で生まれ、上町の古い屋敷と庭を飛び跳ねながら、父親の診察する姿を見て育ちました。この家を懸命に守った祖母操子は、佐野家の歴史と誇りを私たちに伝えようと必死でした。私は、そのような医家の血を受け継いだことを誇りに思うと同時に、歴史の重圧を感じていました。
  私なりのさまざまな葛藤はありましたが、ともかく私は医者になる道を選択しました。そして、東京で癌の外科を究めようと決心した矢先の30代半ばに、父雋一を亡くしました。その時点で杵築に帰って佐野医院を継ぐという選択肢は存在しましたが、私にはそれができませんでした。
  父の死後、幸い石田徳前杵築市長のご理解をいただいて、上町の屋敷は「市最古の木造建築、佐野家」として杵築市の管理下に置いていただくことができました。一昨年、主要建造物以外の老朽化の激しい部分を大幅に取り壊し、すっきりした姿になっています。
  こうして、杵築の佐野家が徐々に過去のものになろうとしている今日、始祖である徳安の生誕400年という年がやってきました。折りしも東京では、「江戸開府400年」の記念行事が開かれています。
  過去400年、家を守ろうと勉学に励んだ佐野家の男たち、杵築にとどまることができずに飛び出した佐野家の男たち、そして彼らの間で懸命に生きた女たちに思いをはせると、この400年という節目にちょうど生き合わせた自分が、何かせずにはいられないという気持ちになりました。杵築をほとんど知らない私の子供たちにも、この機会に父親の故郷と先祖をじっくり見つめてもらいたいのです。
  私の大学医局の恩師、森岡恭彦先生は、以前から医学の歴史、特に外科医学の歴史に関心をお持ちで、今回大変お忙しい中にもかかわらず、特別講演を引き受けてくださいました。佐野家の歴史に関しては、私たち一族の、特に若い者たちが一所懸命勉強して発表させていただきます。家に伝わる古い医学書や書画も、できるだけ整理してご覧にいれたいと考えています。
  この極めて個人的な思いから始まりました記念祭の趣旨をご理解の上、みなさまに佐野家というものを見ていただき、その歴史の中に何かを感じていただければ望外の幸せです。