サルサダンスフリークが自らホームページを開設し、サルサイベントを開催するSalsaweb Convention

 

 インターネットを通じて、世界中のサルサを紹介してくホームページ「サルサウエッブ」。アメリカ各都市の編集者が主に記事を作成、世界各地のホームページともリンクし、音楽、サルサクラブ、インストラクター、イベントなどサルサを取り巻くすべての情報をホームページで詳しく解説している。このサイトを運営し、自らもダンサーであるワシントンのリカルド&エルバ、ロサンゼルスのエディらを中心に、4月29日から5月2日までの4日間第1回「サルサウエッブ・コンベンション」がワシントンDCのオムニ・ショラハムホテルで開催された。同様のイベントとしては、プエルトリコの「ワールド・サルサ・コングレス」がすでに2回行われているが、それより若干規模は小さいものの素晴らしいパフォーマンスの連続とライブ、ダンサー同士のさまざまな交流が見られた。

 インターネット時代にふさわしく、イベントの内容はホームページで詳しく紹介され、申し込みもインターネット。イベント会場にはパソコンにつながれたカメラが設置されてリアルタイムで映像と音声を世界中に発信していた。

 

■ニューヨーク・エディー・トレス・カンパニーの圧巻のパフォーマンス

 イベントの楽しさはなんといってもダンスパフォーマンス。20ほどのダンスグループが出演した。会場がワシントンDCということもあってか、ニューヨークやニュージャージからの参加が最も多く、そのほかは、ワシントンDC、ロスアンゼレス、マイマミ。スタイルの違いもあるが、基本ステップは、ニューヨークやニュージャージーが123のオンツー、そのほかはオンワン。日本でオンツーというと234の場合が多いが、今回のNYサルサのパフォーマンスにはいなかった。なお、出演者はアメリカ国内ばかりであるが、プエルトリコも含めたアメリカ圏がサルサ音楽の重要な発信地となっていることを考えると、ダンスについてもアメリカの状況は目が離せない。

 目玉は、ワールド・サルサ・コングレスには出演しなかった大物、ニューヨークのエディ・トレス・カンパニー。4つのステージを展開した。1ペアのみでかなりラフでトリッキーな動きを交えたショー、4つのペアダンスと躍動的なリフトを混ぜたショー、ラテンパーカッションのビートの利いたリズムに正確に合わせた女性と男性のシャインのみのショー、サルサダンサーだけでなくヒップ・ホップやブレイクダンサーなども加わり総勢35名が出演したフィナーレ。これまで見たパフォーマンスの概念を打ち破る新しい時代を予感させるものであった。これについて、エディー・トレスに聞くと、「若いダンサーからもいろいろ刺激を受けた。ヒップ・ホップやハッスル、バレエ、ダンゴ、フラメンコなどさまざまなダンスのエンターテーメントの要素を取り入れて、考え方をオープンにしている。スタイルの異なるダンサーが協力して、サルサ・マンボの音楽の素晴らしさとダンスを融合させて、ショーを作り出していきたい。ブロードウェーのミュージカルショーのように」とのこと。

 そのほかの主なパフォーマンスを紹介すると。巨体の女性3人のマンボダンサーズで、NHKBSのNYリポートで紹介されたほどのThe Mambo Mamas!(NY)、ダイナミックなダンスで会場を魅了するSalsa Brava(LA) (1998年に来日)、スピーディでストリートなLos Rumberos(LA)、マンボダンサーのFreddie Rios(NY)、NY在住の日本人ダンサー今井紀子さんもメンバーの一人で女性を中心としたダンスを披露したMambo Jazz Dancers(NY)、ネルソン・フローレス率いるDescarga Latina(NY)、ルイス・セガラ率いるFuerza Latina(NY)、個性的なCaribbean Soul Dancers(NJ)、Cultural Explosion(NJ)、ルエダを中心としたSalsa Lovers Dance Studio(Miami)、今回の主催者のリカルド率いるDC Salseros(DC)など、どれも見ごたえのある、しかもスピーディな動きの連続であった。

 

■ライフタイム・アチーチブメント賞

 正装参加のディナー時に受賞式があった。記念すべき第1回のライフタイム・アチーブメント賞にはセリア・クルースとエディー・トレスが選ばれた。セリア・クルースは欠席したものの、エディー・トレスには、多くのプロダンサーからその功績を称えるメッセージが寄せられ、彼自身もジョークを交えスピーチを行った。「70年代80年代、マンボが全くはやらなかった時期がある。生徒が3人ぐらいだったときもある。そういったつらい時期を乗り越え、今革命的なことが起きようとしている。まさに今自分のやってきたことが認められたことに喜びを感じている」。母親や妻のマリア、娘を前に、涙ぐみながら語るエディーに多くの拍手が寄せられた。ニューヨークのダンスシーンを創造し、多くの後継者を輩出したエディー・トレス。ティト・プエンテとともに歩みつづけたその成果は誰しもが認めるところである。これからサルサをはじめようとする人には、絶対に覚えてほしい人である。彼は、サルサを踊ることは人々にとって「心の癒し」になるとも語った。

 

■ワークショップ、サルサ・ライブ、コンペティション、ファッションショー

 ワークショップは12。NY、LA、マイアミ、ドイツ、イギリス、フランス、オランダのインストラクターが登場。さまざまなスタイルを学べるのでとっても興味深い。女性のスタイリング、インストラクターのための講座などもあった。

 サルサライブはとっても見ごたえ・聞きごたえ・踊り甲斐のあるものであった。エルマノス・モレノ、コンフート・クラシコ、ドミンゴ・キニョネス・ホセ・アルベルト・エル・カナリオ。彼らの生演奏をバックにサルサを踊れるなんてとっても贅沢。

 イベントの最終日、コンペティションが、アマチュア、セミ・プロ、プロフェショナルの3部門で行われた。出場者ペアはそんなに多くなかったものの(プロ部門は2ペアのみ)、仲間の声援などでフロアー中がとっても盛り上がった。司会は、LAのダンサー・ルイス・バスケス、彼のジョークを交えた進行がコンペティションの緊張しがちな雰囲気を和らげ、逆に楽しいものとした。審査員はジミー・アントン、ジョビー・バスケスら。

 女性には見逃せない、サルサのパーティやショー用の衣装やドレス、ハイ・ヒールのファッションショーもあり、とっても華やかであった。

 入場料は4日間通しで240ドル(2週間前の前売りで200ドル)。すべてのワークショップやパフォーマンス、ライブ、ディナー込みである。とても安いと思う。

 

■サルサは世界をひとつにする

 フリータイムのフロアーでは一般の参加者に混ざってステージのダンサーもリラックスして自由に踊っている。しかし、ダンサー同士の踊りは見ていて圧巻。超スピーティで複雑な技術の連続。女性1人に男性2人が瞬時に交代して踊ったり、男性同士でペアダンスを踊っている。女性役がとても素晴らしいのに驚かされる。更に、スタイルの違いを越え誘い合って踊っている。さすがこのレベルになるとどのスタイルでも踊れるものである。LAのダンサーも123のオン・ワンで踊っている。そういったシーンを捉えようとビデオを抱え撮影に余念のない参加者も多い。今回のイベントは、「インターネットのウェブとリンクしたイベントで、それは瞬時に世界中に紹介されていく素晴らしいイベントである。プロフェショナルな人も社会的に認められるようになった。日本からもたくさん熱心なダンサーがNYに学びに来ている。今とってもわくわくしている。今サルサ・マンボが再び蘇り、未来に向けてスタートを切ったのだ」(エディー・トレス)。次回は来年、ニューヨークで開催される。さらなる発展が大いに期待できるイベントである。

 

SalsaWEBhttp://www.salsaweb.com