Report from Mr. Ito Yoshiaki in Puerto Rico

プエルトリコ在住の伊藤 嘉章 氏からのレポート(パート2)です。

第15回サルサ国民の日/ESTUDIO JUAN RAMON LUBRIEL, BAYAMON PR

はじめに 
■今年で15回を迎える恒例のDIA NACIONAL DE LA SALSAは昨年末急死したファニア・レコードの大立者「ジェリー・マスッチに捧げる」コンサートとなり、ファニア・オールスターズ面々に加え、プエルトリコからはソノーラ・ポンセーニャ、ヒルベルト・サンタロサ、ドミンゴ・キニョーネスの出演と豪華。会場のバヤモン・フアン・ラモンルブリエル球場は満員のファンで埋め尽くされた。
■昼の11:00過ぎに行ったのですが、毎度の事ながら、駐車場でコンガ、キント、ボンゴと並べてひたすらデスカルガの人たちもおり、私もついクラベなんぞに入れて貰えるというリラックスしたムード。キンテーロのおっさんの見事な「惑わしフレーズ」に聴き惚れて、何度もはずす私ですが、皆で「ズン!」と最後のフレーズを決めて、後は(^_^)(^_^)。
■さて会場の方は30代以上の観客が多いが、プエルトリコ国旗をバンダナ代わりに巻き、ピアスとナイキとタトウーでかためた今風のにいちゃん達もかなりいるし、ほとんど水着な多分高校生くらいのお嬢さん達のグループもここそこにいて、大変素晴らしい。い、いや、お嬢さんだけの事を言っているのではなく、若い世代も大勢楽しみに来ているのが嬉しいと言うことです。

ドミンゴ・キニョネス
一番手のドミンゴ・キニョネスはヒット曲を甘さを押さえて歌い回し硬派のサルサ・ファンも引きつける。次いで伝統のプレーナ・フィーリングの曲で観客を完全に自分のものにすると、すかさず先日急逝したサンティートス・コロンのメドレー"TUS OJOS-MIRAMEMAS-AYCARINO"で泣かせるというツボを心得たステージ。そして最後の曲のモントゥーノではラップのアクセントで若いファンの大喝采を受けると同時に見事な即興で年輩のファンもうならせる。
いやー、ドミンゴ・キニョネスは乗ってます。伝統と今の両方の語法を無理なく使えるし、説得力があります。又別に書き込もうかと思うのですが、アンドリュー・ロイド・ウエーバーのロック・ミュージカルの名作「ジーザス・クライスト・スーパースター」が最近当地で上演され、ソールド・アウトの人気でしたが、彼も出演。これまた良かった!そして来月は当地一番の会場BELLAS ARTESでの公演ともう大忙し。
ロベルト・ロエナとアポロサウンド
2番手ロベルト・ロエナとアポロサウンドのフロントはハビエル・マレーロ、ルイシート・カリオン、テンポ・アロマールのまたまた今乗りに乗った組み合わせ。ヒット曲の後、突然イスマエル・リベラ・JRが登場。ティテ・クレ・アロンソの名曲"LAS CARAS LINDAS DE MI GENTENEGRA"を父親譲りのフィーリングたっぷり歌う。なにせ、顔もそっくりですから、自分が一瞬何処にいるのか、と思ってしまう。
客は大喜び。そしてそこへアンディー・モンタニェス JR、ペジン・ロドリゲスJRも加わりロエナと共にイスマエルのナンバーやグラン・コンボの名曲"EL CABALLO PELOTERO"!ロエナ好みの'お楽しみ企画'なのではあります。しかしジュニア・トリオ(といっても皆おっさんですが)を頭の中で親父達の若かった姿に置き換えて見ると、親父達の音が、今もってこの島の空気に漂っていることがよく分かります。気持ち良い。
ヒルベルト・サンタ・ロサ
3番手のヒルベルト・サンタ・ロサは最近のヒット"QUE SE LO LLEVE EL RIO"でリラックスしてスタート。"PERIGLO"、"NO QUIERO NA'REGALAO"と続くが、音作りと編曲の構成が明らかにハードに仕立てられている。今日の客層--腰の 座ったサルサを見抜くファンを明らかに意識している。2人のキーボードの内、ホセ・ルーゴは電子音を強調した音色で過激なフレーズをちりばめる。しかし全体が安っぽくならないのはサンタ・ロサの個性だろう。お得意のモントゥーノはファニアのスターへの賛歌がちりばめられた。
ソノーラ・ポンセーニャ
4番目はソノーラ・ポンセーニャ。キケ・ルッカは最近右手を骨折したようで、ステージでのアクションは限られていたのが残念だが、パポ・ルッカや他のメンバーを大いにあおり喝采を受ける。選曲はやはり"SALSA GORDA"-骨太のサルサとでも言うんでしょうか、力強く、即興とぶつかり合いから次々にイメージを繰り出すタイプ。ディスコで踊り手の為に演奏する時の彼らの音と明らかに異なる。「ルンバ!」と叫んぶと同時にコンガ、ボンゴ、ティンバレスがリズムを繰り出し、ソネーロとトランペットが、掛け合う一瞬は圧巻だ。この手の演奏の良し悪しにはっきり意志を示す地元の観客は非常に正直で、反応も早い。パポの強烈なフレーズにコンガが見事な応酬を続けたときは割れるような拍手が巻き起こる。これこれ、これが応えられないのですよ。次にベネズエラ公演を終えて駆け付けたアンディー・モンタニェスが、ファニアの"BRAVO"より"AQUI EL QUE BAILA GANA"で会場を沸かせ、同じく骨太な歌を聴かせる。そして、いよいよファニアの登場。
ファニア・オールスターズ
MCは4年前の公演と同様、アニバル・バスケス。一人一人、紹介を受けステージに出て来る。おなじみのメンバーですから、書くこともないけど一応。コロはウイッチー・カマチョ、ジェリー・メディナ、ピート・ロドリゲスJR、イト・トレス、ファンシート・トレス、エクトール・ボンベリート・サルス エラのトランペット、ファンシートに「トニー・ベガ!」と声がかかり会場がどっとわく。なるほどちょっと似てますね。トニート・バスケス、ジミー・ボッシュがトロンボーン、ティンバレスのニッキー・マレロはラメいりの派手なブルゾンで登場、大きな拍手。この人はほんと素晴らしい変人。ボンゴとカンパーナのロベルト・ロエナ、クアトロはヨーモ・トーロ、コンガのレイ・バレート、ピア ノはパポ・ルカとラリー・ハーロウ、ベースはボビー・バレンティン、フロントはアダルベルト・サンティアゴ、イスマエル・キンターナ、イスマエル・ミランダ、ピート・エル・コンデ・ロドリゲス、チェオ・フェリシアーノ、そして元締めはジョニー・パチェーコ。
ファニア・オールスターズ
1曲目"DESCARGAFANIA"でスタート。フロント・ステージはサンティートス・コロンが欠けてしまったが、久しぶりの勢ぞろいで会場から御ひいきのソネーロに声がかかる。リズムと音はあくまでも重厚でドライブする。
"QUITATE LA MASCARA"(ADALBERTO SANTIAGO)
"PUERTORICO/ADORACION" (ISMAEL QUINTANA)
"BORINQUEN TIENE MONTUNO"(ISMAEL MIRANDA)
"ASI SE COMPONE UN SON"(PETE "EL CONDE" RODRIGUEZ)
"ELRATON/ANACAONA"(CHEOFELICIANO)
と曲が続き各人の個性をたっぷり堪能する。随所にちりばめられるソリストの熱いプレイも観客を熱狂させてゆく。夜10時をとうに越えた満員の会場は、最近聴けない"SALSA GORDA"をしっかり受け止める。今風の兄ちゃん達もコンガ・ソロに吸い込まれている。決してナツメロで聴いているのでははないと思う。"REDGARTER"や"CHEETAH"でのライブとは当然の事ながら明らかに音が違う。「今の音」の一つとして、このサルサはここに生きているのだと思う。曲は"QUITATE TU"へと雪崩込みステージと会場が一体化する。そして最後は"MI GENTE"だ。スタジアム全体から沸き起こる歌声に包まれ "MI GENTE"の中にいる幸運をしみじみ感じた夜であります。

copywright Mr.Ito Yoshiaki 1998.5.14