タイトル
Japan Salsa Congress 2000
International Press 2000.11.25
Albert Torres Interview

Albert
日本は2年後に独自のサルサスタイルを持つことになるだろう




プエルトリコ人プロデューサー兼ダンサーのアルベルト・トーレス氏は確信している。

 待ちに待った文化とダンスの大会、第一回サルサ・コングレス・ジャパンは11月
11日〜12日に東京の恵比寿で開催された。
 2日間の大会で1200名以上を集結させた主催者はサルサ・ホットライン・ジャパン
と、舞台監督兼ダンサー兼プロデューサーで、現在LAに居住しているプエルトリコ人の
アルベルト・トーレス氏である。
 トーレス氏はサルサ界でそのリズムに定評があり、ダンスの種類・社会文化的表現・ラ
テンの特徴を備えているだけではなく、忘れられつつあったダンススタイルを再評価する
能力を備えたダンサーである。私たちはそれを「サルサ・ディベルティーダ(楽しいサル
サ)」と定義することができる。というのも、それはアクロバットやショーからかけ離れ
ているからだ。要するに、一流のものにするために面白さを取り入れているのだ。
 プロデューサー兼ダンサーとして、トーレス氏はジャパン・サルサ・コングレスの印象
を語ってくれた。

●インターナショナル・プレス(新聞)
 コングレスはいかがでしたか?
 あなたが期待していたものだったでしょうか?

●トーレス
 私は1年半前にも日本に来ました。今までに4回来日しています。皆さんの信じられな
いほどの上達には正直いって驚いています。参加したグループだけでなく、アシストして
くれた人々もです。

●IP
 今回参加したグループのすべてが来年の5月にLAで開催される国際大会で通用するレ
ベルにあるとお考えですか?

●トーレス
 すべてのグループではありませんが、いくつかのグループはどの国際大会でも通用する
レベルにあると思います。
気が付いたことは、一部のグループはサルサを踊ることは単にサルサの曲にあわせて踊
ることだと考え、間違ったダンスの動きをしていることです。それではだめです。だから
私はLAのコングレスに行くことをアドバイスしました。ダンサーとして参加するのでは
なく、勉強をするためにです。そのイベントで我々はあらゆるレベルのあらゆるスタイル
に対応した30以上ものダンス・スタジオを提供しているからです。
 音楽に対して同じような情熱を傾けている世界中の人々と交流ができるだけでなく、多
くの事を教えることができるからです。参加した人々が日本に帰国した後で、練習をする
と同時に向こうで体験したことを教えることができるのです。

●IP
 この大会ではLAでの大会に向けて、日本のグループを5段階に評価しようとしていま
した。すぐに決まった2グループの内の1つはアルベルト・ロマイのサルサ・タップでし
た。このグループに関するコメントはどうですか?

●トーレス
 そのショーを見たときに席から立ち上がってみたい気持ちになった人もいます。私もア
ルベルトのサルサ・タップを見ていて同じように感じました。とても良かったです。
 しかし、たとえ彼が自分で発明したスタイルだといっても、それは私がLAで数年前に
見た、老人が踊っていたサルサ・タップにそっくりでした。しかし明らかなことは、アル
ベルトは彼自身のスタイルを持っているということです。もちろん彼のショーは見るため
のもので、踊るためのものではありません。まあ、サルサそのものに存在する概念を広げ
たという点では良いことでしょう。
日本でサルサを代表する1人がキューバ人であることはあまり知られていない事実です
。日本ではキューバサルサの影響が強く、日本で彼らのスタイルをおこなっていることは
明らかなのです。日本人が彼らのスタイルで踊るために、協力して教えているのです。

●IP
 あなたは、次回にLAやその他の場所で主催する大会でのバカルディー社の協賛を断り
ましたね。いったい何があったのですか?

●トーレス
 私はバカルディー社を尊敬しています。わたしが始めた頃に協賛していただいたことに
対してとても感謝しています。でも今は自分自身だけで続けていきたいのです。それは政
治的な問題なのです。彼らはキューバ人ダンサーが大会に参加することを望んでいません
。私自身はその考えは良くないと思います。音楽は政治の枠外にあるものなのです。音楽
は音楽、表現、アイデンティティーそして、文化であり、喜びなのです。ですから、「こ
の人たちは楽しむことができるけど、あの人たちはだめです。」などと言えないのです
。アルベルト・ロマイ氏の踊りが大会の枠外におかれてしまうなんてことを想像できるで
しょうか?
 次回LAでの大会は来年5月25日〜27日にかけて開催されますが、これは、アメリ
カ合衆国に居住していないキューバ人が参加する初めての大会となります。

●IP
 日本大会を良くするためには、何が一番欠けていると考えていますか?

●トーレス
 大会はとても良かったと思います。楽しんでやっていこうとしている人々の大会だった
と思います。しかし、次の大会では参加するグループに対して規定を設ける必要があるで
しょう。例えば、ペアーの場合には3分以内、グループの場合には6分以内に時間を設定
するなど。それは、規定時間を越えたり、30秒ごとに信じられないほどのアクロバット
を行ったりしていたら、観衆はもうすでに全部見てしまったと感じて退屈してしまうから
です。大会はそのほとんどがショーですから、退屈させてはいけないのです。その一方で
、日本のダンサーは観衆に期待を残させる(もう少し見せて欲しいという気持ちを起こさ
せる?)ということを勉強し、時間配分を考えることが必要です。何か良いものから始め
、途中、ステップで驚かして、そして最後においても全部は見せないということです。
 また、あるペアーでは女性の靴が脱げてしまったのですが、そのまま踊り続けているの
を見ました。それはとてもいいことです。プロフェッショナルだと思います。それを見て
私は、ニューヨークにいる友人が語った言葉を思い出しました。「ダンサーは転んでも跳
ね返るのです」と彼は言いました。観衆は、次にどんなステップやターンが行われるのか
など知るわけがないからです。大事なことはエレガントにそれをやることです。“転げ方
を知ってエレガントに立ち上がる”、これがメッセージなのです。
 また、技術を最優先させていて、ハートを込めて踊っていないペアーやグループがある
のに気が付きました。ですから私は、サルサは脚から入り、最初に心で感じ、そして頭で
考えることだと言っているのです。しかし、これらの人々は最初にステップを考えるあま
り、それを心配して、踊りを楽しむことを忘れてしまっているのです。私は、歌にあわせ
て練習を行う前に、歌を聴いて感じるままにそれを楽しみ、学び、その後で踊りなさいと
いうことをアドバイスしたいと思います。

●IP
 LAやニューヨーク、プエルトリコでは独自のスタイルが確立されていますが、日本で
独自のスタイルが確立されるのはあと何年かかるとお考えですか?

●トーレス
 ここ1年半の進歩が継続するならば、2年後にはスタイルが確立され始めることになる
でしょう。ここにはとても良い技術がありますから。しかしハートが入っていませんね
。それから、多様性があるといったことも幸いしています。日本ではキューバ音楽、ニュ
ーヨークやプエルトリコのサルサ音楽が聴かれているため、多様性のあるスタイルが形成
されるでしょう。

●IP
 今までにいくつの都市でサルサ大会を開催されたのですか?

●トーレス
 大会という大会、つまりショーやアトリエ、オーケストラがあるもので、単なる舞台で
プロのダンサーが踊ったりするようなものではない大会というのは、10〜12都市で開
催しました。今は香港やグアダルーペ島で開催するように依頼があります。3月にはマイ
アミの第8通りフェスティバルに行き、6月にはオランダのアムステルダム、8月にはニ
ューヨークで大会を開催し、9月にはニューメキシコで、そして12月には、私の夢の一
つ、キューバでの最初のサルサ大会の開催を実現させてみたいと思います。その件に関し
てはもう既に準備が整っており、ハバナでの映画祭と同時期に開催する予定です。


 私たちは初めて彼にインタビューを試みた。アルベルト氏は、サルサによって麻薬やア
ルコールの世界から、そして自殺からも救われたことを我々に堂々とそして謙虚に語って
くれた。音楽によってそんなに多くのことが可能なのだろうか? あなたがサルサを踊っ
てみない限りはそれを理解することはないであろう。


※記事以外のコメント
 プエルトリコのプロデューサーによると、日本人は技術は良いが、ハートを込めて踊る
ことが欠けている。

翻訳:中島氏(広島在住)