越前の境、吉崎の入江を舟に 棹して、汐越の松を尋ぬ 。 終宵嵐に波をはこばせて 月をたれたる汐越の松 西行 此一首にて、数景尽たり。もし一弁を加るものは、無用の指を立るがごとし。 丸岡天竜寺の長老、古き因あれば尋ぬ。又、金沢の北枝といふもの、かりそめに見送りて此処までしたひ来る。所々の風景過さず思ひつヾけて、折節あはれなる作意など聞ゆ。今既別に望みて、 物書て扇引さく余波哉