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千華さんへ感謝をこめて!


我が勇者
― Sam ―


この心に深い闇が満ち
黒き翼の幽鬼たちのもとへ
引き寄せられそうになった時


決してあきらめずに
繋ぎ止めてくれたのは
玻璃瓶の光ではなく


おまえの
力強い声だったのだよ


この身体が恐怖に震え
死の如き悪夢の底に
横たわっていた時


何度でも繰り返し
包みこんでくれたのは
エルフのマントではなく


おまえの
暖かい腕だったのだよ


知っているかい?


わたしがどれほど
おまえに支えられているか


おまえはいつだって
とても普通で
とてもまっすぐで


わたしに大切なことを
思い出させてくれる


大地にしっかりと
足を踏みしめること


食べられる時には
食べて元気をつけること


遠くある友とは信じ合い
近くある友とは助け合うこと


とにかく前へ
前へ進むこと


たとえこの先に
今まで味わってきた以上の
苦しみが待っているとしても


もはや立ち止まることも
引き返すこともできはしない


わたしたちの運命は
この世界のすべてを巻き込んで
ひたすら回り続ける


行くしかないんだ
あの呪われた山へ
地獄のような火口へと


そう わかっている
わかってはいるけれど


目の前は暗く
足は鉛のように重い


わたしに残されたものは
何だろう


ひとすじの希望も
なつかしいシャイアの夢も
離れ離れになってしまった友たちも


今はすべて
遠すぎる


心はもろく
どこか麻痺してしまったようで


考えることも
笑い方も
涙のひとしずくさえも
失ってしまったのかもしれない


わたしは
ぼろきれのように
擦り減ったまま


呆然と
絶望に沈みそうになる


けれど


そう
おまえがいる


おまえだけは
いつも
わたしの側にいてくれる


何をすべきか
教えてくれる



おまえは
わたしの
たったひとつの確かな現実


わたしが
わたしでいられるための
最後の標(しるべ)なのだ


思えば
わたしは何と言う過酷な旅へと
おまえを巻きこんでしまったのだろう


なのに
わたしを恨むこともせず
ただ黙々と尽くしてくれる


そんなおまえに
ずっと甘えてきたわたしを


いつも心配そうに見守っている
自分の身を呈してもかばってくれる


すまない


そして
ありがとう 心から


もしも
長い道のりの末に
務めを果たすことができたなら


それはきっと
おまえのおかげだろう


わたしひとりでは
今にもこの場で
倒れこんでしまうから


もしも
本当に奇跡が起こったなら


そんな時を迎えられたなら


わたしは
おまえの勇気を
おまえの誠意を
おまえの愛情を


わたしの存在すべてで
誉め讃えよう


心に残る物語があるとしたら
真っ先にそこに綴られるのは
おまえの名前だよ


いや
誰よりもわたし自身が
わたしの記憶の中に綴ろう


言葉にできぬほどの
愛と感謝を込めて


勇者サム、と