『ハリー・ポッターと秘密の部屋』より

新たなる日々



過去が必ずしも
やさしさに満ちているとは限らない


注目をあびることが
自負心をくすぐるとは限らない


自分の知らないところで
助けてくれる誰かがいても


想像もつかない
未知の力に突き動かされても


それらのすべてが
君の望みから生まれたとは限らない


計り知れない運命によって
両親の深い愛の護りによって


逃れられぬはずの
冷酷な死の手をくぐり抜けた少年


強大な闇の力を
放ったその者自身に跳ね返し
破滅に追いやり


そして


尊い犠牲とひきかえに
君の名は輝かしい光を帯びた


誰もが
驚異と称賛をない交ぜに
君をみつめ


奇跡を口にするように
君の名を呼ぶ


君の戸惑いも
寂しさも知らずに


本当に望んだはずのものを
失ってしまった
小さな君の孤独も知らずに


ずっと長いこと
ひとりぼっちだった少年


自分が何者であるかさえ
知らされずにいた少年


けれど


虚無の年月は巡り
来たるべき時が満ち


君は
本当の自分に気づく


君を心から
受け入れてくれる場所が
目の前に開ける


それは
なんと言う喜ばしい驚き


ようやく出会えた
おおらかなる理解者
かけがえのない大切な友達


たとえ
どれほど邪悪な意図が
君の足元を掬おうとしても


ただひとり
漆黒の恐怖の真っ只中へ
投げこまれたとしても


君は
君の居場所を守るために


逃げるより
前に進むことを選ぶだろう


自分の力のかよわさに
ふるえながらも


なすべきことを探して
まっすぐに瞳を凝らすだろう


胸の奥に埋められた
正しい憤りをバネに
立ち向かおうとする


その勇気こそが
君の誇り
君の可能性


君を未来へと駆けさせる
大いなる翼


どんな真実に出会っても
その過酷さに打ちのめされても


君を気遣い
支えようとしてくれる
暖かいまなざしが側にあれば


きっと君は
何度でも
笑顔を取り戻せるはずだね


もう君は
ひとりぼっちじゃない


さあ
ホグワーツ特急に乗ろう!


その先に
大切なものすべてが
君を待っているのだから


季節の変わり目の風を
軽やかに引きつれて


弾むような笑い声と
きらきらした瞳を取り戻して


君の新たなる一年が
始まる


(イラスト よもぎさん)
『EL Dorado

(BGM 『ハリー・ポッター』
サントラ盤「プロローグ」より)