2003年06月23日(月) 詩的なドワーフ?


ドワーフと聞いて思い浮かぶイメージ・・・
どうしても映画のギムリだと、ちょっとがさつ(失礼!)だけど、でも一本気で誇り高い、強〜い戦士ってところかな。
ドワーフ、人間とホビットの中間の小人。よく白雪姫に出てくる小人とあるけれど、それだとかなりほのぼのモードになりそう(笑)
洞窟や地下に住み、黄金や宝石が好きで、しかも金銀でも岩でも細工するのが得意らしい。見た目より、手先はずっと器用と言うことか(^^;

追補編によると、ドワーフは女性の数が非常に少ないらしい。しかも姿も身なりも、男とそっくりとか(^^;
そう言えば、映画「ふたつの塔」の中で、ギムリがエオウィンに、ドワーフのことを面白おかしく聞かせるシーンがあった。
ドワーフの女性については、アラゴルンも「しかも髯もある」と言って、エオウィンを笑わせていたっけ。
ドワーフは、女性の数が少ない上に、一生に一人の妻、夫しか持たないのだそうだ。これは彼らが嫉妬深いから。
しかもドワーフの女性は、必ずしも結婚するとは限らない。夫を持つことを、まったく望まなかったり、自分が望んだ者を夫にすることができなかったりで、誰とも結婚しない者がいる。男にしても、結婚をしたがらない者が非常に多いとか。
子孫繁栄は大丈夫なのだろうか、と余計な心配をしてしまうけれど(笑)
でも、ドワーフもけっこう長生きみたいだから。

さて、なんとなく頑丈な岩を連想させるようなドワーフ。しゃべることに関しては、あまり得意ではないのか、と思いきや・・・
原作を読むと、ギムリの意外なほどの(これまた失礼!)豊かな感性や詩心に驚かされることがある。
第一、原作でのギムリは、どちらかと言うと礼儀正しい感じ。映画では、がらっぽく、言葉使いもちょっと乱暴な感じだけど、原作ではもっと丁寧で、あまり無理を通すタイプには思えない。まあ、しゃべり方の違いは、訳者の捉え方の違いにもよるのだろうけれど。
モリアの坑道行きも、原作ではガンダルフが提案し、それに賛成するのがギムリだった。ガンダルフやアラゴルンに対して、ギムリはいつも礼儀正しく接している。

モリアでフロドがトロルの槍に刺され、あわや死んでしまったかと、みんなが心配したシーン。実はミスリルの胴着のおかげで無傷だったとわかる。
映画でギムリもその驚きを言葉にする。字幕では「お前には驚かされるよ」と記されているけれど、この場面の英語でのフロドへの呼びかけは「Master Baggins」となっている。
英語には詳しくない私だけど(^^; Masterは年少者への敬称の意味もあるらしいから、これはたぶん「バギンズの坊ちゃん」とかそう言う意味なのではないかしら。
そこから考えてもギムリは、フロドに対しても、ちゃんと敬意も払っているのではないかと思うのだけど。

さらに驚くのは、一見無骨に見えながらも、なかなか詩的な言葉の表現を持っていること。
まずはロスロリアンでのガラドリエルに対する言葉。「ありとある宝玉も、奥方には及びませぬ」などと、なんともすごい誉め言葉(笑)
別れに当って、ガラドリエルがどんな贈り物がいいか、と訪ねると「奥方様にお目にかかるだけで」と喜ばせ、次に「奥方様のお髪を一筋いただけましたら」と・・・
こんなこと、エルフにも言えないだろう、と思うほど(笑)

ロスロリアンを後にして、ガラドリエルとの別れを嘆く言葉も、なんとも詩的でびっくりする。
「光と喜びの危険があることを知っていたら、この旅に出なかったろうに」などと嘆くのだ。それを聞いたレゴラスも、エルフらしい深淵な言葉での慰めを言うけれど。
ギムリと言う人は、いたく感動した時には、ものすごく詩的で情熱的な表現で、その気持ちを表すらしい。
そして、そのことがエルフであるレゴラスを、きっとひどく驚かせているのだろう。なにせ、無骨で無愛想なドワーフ、と言うイメージをエルフは持っているらしいので(笑)

ヘルム峡谷での戦いの時、原作ではギムリはアラゴルンたちとはぐれて、洞穴に逃げるのだけれど、その後に、その洞穴の美しかった様子を、これまたものすごく詩的かつ情熱的にレゴラスに語る。その表現は本当にすばらしく、読みながらその情景を思い描く読者にも、感動は伝わってくる。

「尽きることのない水の音楽に充たされている」
「ガラドリエル様の現身の御手のように透き通っているんだよ」
「それから、ポツン! 銀の雫が一滴落ちる」
「まるで海の岩屋の中の海草や珊瑚のように揺らぐのだ」
等々・・・(「指輪物語 二つの塔」より抜粋)

ね、詩的でしょ?(笑)
こんな調子で、延々とその洞穴のすばらしさを熱く語って聞かせるギムリ。
さすがのレゴラスも、「君はわたしの気持ちを動かすね」と、言うほど。(ここで、「まあっ、ギムリったらうらやましい!」と思ってしまう私は、かなりなおばかだけれど)

この洞穴に、実は後日レゴラスはギムリと訪れることになる。けれど、帰ってきた後、レゴラスは何もその様子を語らず、この洞窟のことを話すのにふさわしい言葉を見つけられるのはギムリだけだと言う。
さらに「言葉の技を競い合って、ドワーフがエルフに勝ったことなんか、なかったんだけど」とまで・・・
それほど、ギムリの表現力はすばらしく、豊かな感性がレゴラスの心を打ったと言うことだろう。
こんなに詩的なドワーフがいていいの?(笑)
侮れない、グローインの息子ギムリ!


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