2003年05月01日(木) アラゴルンと剣


アラゴルンの剣、アンドゥリル・・・
その昔、人間とエルフが連帯してサウロンに立ち向かった時、人間の王エレンディルは倒れたけれど、息子であるイシルドゥアは父王の折れた剣で、サウロンの指輪ごと手を切り落とした。
その時の剣は、持ち主のないまま、裂け谷のエルロンドのもとに保管されていたらしい。

そして、時は至り、指輪を葬るために旅の仲間たちが結成される。エレンディル、イシルドゥアの子孫であるアラゴルンも、その一人として共に旅立つことになる。
スペシャル版DVDの中では、エルロンドがアラゴルンにこう告げるシーンがある。
「この剣を鍛えなおすことは我々にもできる。が、この剣を持つことができるのはおまえだけだ」と。
こうして、折れたエレンディルの剣はアンドゥリル(西方の焔の意)として、アラゴルンの手に蘇る。

アラゴルンとしての演技に、剣の存在が欠かせないものと考えたヴィゴ・モーテンセン氏は、撮影以外の時にも常に剣を携えていたと言う。
時には警察に職務質問されたこともあるとか(笑)
それほど、アラゴルンと剣とは関わりが深いのだろう。

剣に関しては、戦いのシーンはもちろん、それ以外でも目に留まるシーンがある。
モリアの闇にガンダルフが消えた後、それぞれ嘆く旅の仲間たち。みんな立ちあがる気力もなくしている。
アラゴルンは一人、剣の汚れを拭う。そしてみんなを立たせようとする。
激しい戦いで、おそらく剣も痛み、汚れていたのだと思う。それを拭うと言うさりげない仕草の中に、アラゴルンのこれからの責務の厳しさに対する決意を見るような気がする。

そして、ロスロリアンの都、カラス・ガラソンに辿りつき、ひとときの休息を与えられた時にも、アラゴルンは剣の手入れをしている。
何よりも剣を大切にしているアラゴルンらしい、と思わせる。

「二つの塔」で、ガンダルフ、アラゴルン、レゴラス、ギムリの4人がローハンの王セオデンの館を訪れた時、門前で近衛隊に止められ、武器を置いて行くように言われる。
映画では、それぞれがわりとあっさりと従っていたけれど、原作ではアラゴルンはかなりごねる(笑)
他ならぬアンドゥリルを、我が身から離し、余人の手に引き渡すことなど納得いかない、と。そして、問答の末、しぶしぶそれに従うのだが、「何人たりとも手を触れてはならぬ」と強く言い放つ。その威厳に、近衛隊の者は驚く。

もっとも、この武器を置いて行くことに関しては、誰もが一言あったようだけど(笑)
レゴラスは、弓矢と短剣を渡す時、わざわざ「ロスロリアンの奥方に頂戴したものだから」と釘をさす。ローハンの者たちは、どうやらロスロリアンの森の魔力を信じているようで、レゴラスの言葉を聞きうろたえる。
ギムリは、アラゴルンが武器を置いたのを見て、アンドゥリルと一緒なら、と自分の斧を側に置く。
ガンダルフに至っては、自分は老人だから、と言い張って、ついに魔法の杖を手放すことはなかった。
映画では、ここでガンダルフはわざと老人ぽく歩き、側からレゴラスが腕を貸して支えるふりまでする。

指輪物語では、武器がそのまま持ち主を表しているようなところがあり、そこもまたそれぞれの個性となっている。
そして、武器の中でもまさしく王位にあるのがアンドゥリルなのだと思う。
アモン・ヘンでの戦いのシーンで、敵に立ち向かう直前、アラゴルンがアンドゥリルをまっすぐに顔の前に立て、まるで何かを誓うようなそぶりをしたのが、とても印象的だった。


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