王の末裔
― Aragorn ―

かの者は
野を駆けるさすらい人
中つ国の至る処に
影の如く姿を現す
マントの下に覗く
鋭きまなざし
使い込まれたる剣の
鈍色の柄(つか)
厳しくも静かなる
叡智を刻む横顔
されど
その真の素性は
深く隠されたまま
高貴なる血筋に
気づく者はいない
幾星霜もの歴史を超え
今 まさに
時は動き始める
邪悪なる闇の王は
ふたたび
その触手を伸ばし
ただひとつの
力の指輪を求めんとする
すべての種族の
命運を紡ぐように
指輪は様々な手を経て
思いもかけぬ
小さき者のもとに
いにしえの
勇敢な王なれども
最後の瞬間
指輪の誘惑に屈したと言う
心を操り
冥王のしもべとなるべく
滅びへと誘う指輪
されば
指輪の辿るべき道はひとつ
我等がなすべきこともひとつ
旅が始まる
同じ願いに結ばれた
仲間たちとの
峻厳なる旅
指輪を葬ることのみが
課せられた使命
たとえ
果て無き苦難への道であろうとも
我等は思いをひとつにして
この旅を成さんと
ドワーフは斧に
エルフは弓に
ホビットは友情に
その誓いを立てる
ならば我は
この剣に
いにしえの王の
継承者だけが持つこと適う
アンドゥリルの剣に誓おう
見よ
エルフの王の力持ちて
折れたる刃は
再び鍛え直され
アンドゥリルの剣として
生まれ変わり
この手に輝きを放つ
我は
イシルドゥアの子孫
呼び覚まされた災いを
打ち砕くため
中つ国に
平和を取り戻すため
持てる力のすべて
思いのすべてを賭けて
この剣を振るわん
必ずや
指輪を滅ぼす
火の山への道を
切り開かんことを
我が身に宿りし
エレンディルの魂よ
大いなる伝説の王よ
尊き旅の仲間たちを
智恵を授ける賢者たちを
この地に残りし者たちを
そして
我が愛する人を
護りたまえ

※ アンドゥリル・・・アラゴルンの剣。「西方の焔」の意味を持つ。
イシルドゥア、エレンディル・・・人間の王。アラゴルンの祖先。