予 兆
― Anakin ―
いつからだろう
僕が
その力に気づいたのは
不思議な感覚
神経がピンと研ぎ澄まされ
高感度のアンテナのように
何かをキャッチして行く
それは
誰かの声であり
脳裏に浮かぶ映像であり
危険を知らせる信号であり
咄嗟に起動するスイッチでもある
これは何だろう?
人間の限界を
遥かに押し上げようとする力
周りの誰も気づかなかった
そう たぶん母以外は
砂嵐が通りぬける家並み
幼い頃過ごしたタトゥーンの街
僕はずっと待っていた
どこまでも続く砂漠から
まだ見ぬ場所へ旅立つ日を
この力の謎を教えてくれる
誰かが現れるのを
自分の運命を自分の手で
変えられるチャンスを
そうだ
あの日
僕は出会った
子供心にも
天使のように思えた
美しくやさしい君と
そして
僕の力を必要としてくれた人
僕の力を信じてくれた人
遠い夢として憧れていた
ジェダイの騎士に
僕を繋ぎ止めていた
楔(くさび)は解かれ
その人は僕を共に
連れて行くと言った
信じられるかい?
僕はジェダイになるんだ!
心の中で何度も叫んだ
運命が廻り始めた瞬間
輝かしい期待と
つらい別れが交差した旅立ち
あれから
めまぐるしく月日は過ぎ
ようやく
待ち焦がれていた時が来た
君に会える時が
あの日から
一日たりと忘れることのなかった君と
夢にまで見た再会
けれどそれは
新たな危機の始まりでもあった
君を守るために
僕たちジェダイは遣わされたのだから
君の側にいることの
思いもよらない苦しさ
ジェダイの掟も
君の立場も
この宇宙にしのびよる暗雲も
僕の想いを祝福してはくれない
否応なく巻きこまれる危険は
僕の力をますます鍛え上げ
胸をしめつける悲しみは
平常心を崩そうとする
何かのバランスが
狂い始める
僕はただ願った
誰よりも強い力が
最強のジェダイとなる力がほしいと
二度と
大切なものを失わないために
君との想いを貫くために
ジェダイは
感情に流されてはならない
そんなことわかっている
けれど
この胸にたぎる想いは
消すことができない
苦しみも悲しみも
そして愛しさも
すべてが僕を駆りたてる
きっと強くなる
宇宙の誰よりも強く
この力を
誰にも負けないくらい
鍛えてみせる
なのに
そんな決意の底に
じわじわと滲んでくる
この不安は何だろう
見据えた空の果てに
光よりも闇を感じるのは
なぜだろう
運命は
再び廻り始める
壮大な戦いが
始まろうとしている
迷うな!
立ち向かうしかない
打ち勝つしかない
自分の力だけを信じて
(BGM 『スターウォーズ エピソード2』より)