神戸帆船模型の会 20周年記念展レポート

 日記でちょろりと報告した、「神戸帆船模型の会」の皆さんによる"悠・遊・帆船物語 PartⅢ"。木製帆船というのは全く門外漢の世界ではあるのだけれど、でも緻密に作られた模型がずらりと並んでいるのを見るのはいいものだ。木の地肌を生かした船体の質感の素晴らしさ、マストやヤードの間に縦横に張り巡らされたリギンの複雑さ、ツボを押さえた塗装のうまさなど、いろいろ勉強になりまする。

 一応会場の方に確認をとって、写真を撮らせてもらったのだけれど、ガラスケース越しの撮影でストロボも焚けないし、しばしば撮影者がガラスに映りこんじゃったり、スローシャッター故の手ぶれもあったり、あろう事か電池が残り少なかったことなんかもあって、良い写真は撮れなかったです。こういう展示会があるときは、せめて一脚は持っていった方が良いなあと思ったです。あと、予備の電池とメモ帳もね。記憶が定かでないので、船名など、間違えてるところもあるやも知れませぬ。それではつたない写真ですがどうぞ。サムネールをクリックすると大きな写真を表示します。ケツの方にごくささやかな用語解説なども付けてみました。役に立つとは思えんけどな。

ショーケース

こんな感じで陳列されているのでした。搬入は猛烈に大変だったそうです。

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川村保博氏特別展

こちらは会の長老格、川村保博氏の米寿を記念した特別展のショウケース。計31隻が展示されていたわけだが、年一隻と考えても30年以上のキャリアの集大成と言うことになる。すごいもんです。

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サンタ・マリア

コロンブスのアメリカ大陸発見で有名な船。形式上はキャラック船(*1)に分類されるそうな(キャラベル(*2)、と言う説もある)。コロンブスは"サンタ・マリア"、"ニーニャ"、"ピンタ"の三隻からなる艦隊でジパングを目指したんだが、最大のこの船でも排水量100トン以下、乗員も40名程度という小さな船であった。

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ニーニャ

んでこっちは"サンタ・マリア"とともにポルトガルを出航したキャラヴェル船、"ニーニャ"。"サンタ・マリア"が座礁して使えなくなってからは、こちらがコロンブスの旗艦になっている。ご覧の通り、"サンタ・マリア"よりさらに小さな船で、こんなもので未知の航海に出かけた昔の人たちってのは、ほんとに勇敢だったのだねえ。

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古代エジプトの旅客船

ピラミッドやスフィンクスの時代のエジプトの船。こういうのもすてき。

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H.M.S ヴィクトリー

トラファルガーの海戦でネルソン提督が乗ってた船で現在も大事に保存されている。いわゆる"戦列艦"(*3)の代表的なレイアウトが見て取れる。

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ヴィクトリーの断面モデル

メインマストのあたりを輪切りにした感じだろうか。この時代の帆走軍艦の側壁は、複数の木材で分厚く防護されてて、かなりの防御力があったそうだ。複合装甲のはしりかもしれん。フィギュアが配置され、ちょっとしたディオラマ仕立てになっている。

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ソレイユ・ロワイヤル

フランスを代表する戦列艦。こちらは"ヴィクトリー"よりも時代的には1世紀ほど前になる。"太陽王"の名が冠されるだけあって、とにかく豪華絢爛。戦うためと言うよりはブルボン王家の財力を見せつけるための船って感じ。なおこれは木製帆船ではなく、エレールの1/100プラキット。ワシらが厨房か工房の時代に、30000円以上のプライスでお店に出てたヤツだ。

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ソレイユ・ロワイヤル(2)

縦横無尽のリギング(*4)。ボケた画像ですんません。だいたい帆船模型って、リギングで挫折するんだよねえ。特にプラモデルの場合は、説明もぞんざいだし。本当はすべての索は必要があってそう張られているのだから、それがなんのためにあるのかから理解しないといけないんだろうけど。

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ラ・クローン

17世紀フランスの72門艦。すばらしくも複雑怪奇なリギングが素敵。"ボライソー"シリーズなど読んでると、しばしばボライソーたちがフランス艦の優秀さにグチを垂れてるが、16世紀から17世紀というのは、オランダ、ついでフランスが世界の造船技術のトップを行っていたのだそうな。ミラーワールドに映る怪しい影は、士郎兄さんなどではなく撮影者のわたくし(w。

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ラ・クローン(2)

こちらは川村保博氏の製作になるラ・クローン(上の物は滝本忠氏製作)。木の質感を生かした作り方、というのが川村氏のスタイルであるようだ。同じ船でも製作者によるスタイルや解釈で、全く見映えが変わってくるのが面白いところ。

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オランダの捕鯨船

17世紀オランダの捕鯨船、船尾につり下げられた大型のホエール・ボートが特徴的。捕鯨船にはこのほかにも解体した鯨から鯨油を採るための炉がついたものがあったりして、模型映えする要素がいろいろあるみたいですな。

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カタロニア船

ああ、またもミラー・ワールドからの侵略者が(^^;)。さてこのまんまるこいお船は15世紀のもの。昔イマイから出ていた"サンタ・マリア"が、このカタロニア船(*5)のスタイルで模型化されてたことを覚えてる人は私と同年配、つまりは今やオッサンと言うことになる。

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ゴールデン・ハインド

後にサーの称号を与えられる英国の海賊、フランシス・ドレイクが世界一周の略奪航海に使用したガレオン船(*6)。このときの海賊行為の上がりは60万ポンドに達し、当時英国が抱えていた莫大な借金を返してもなおおつりがあったそうな。そりゃエリザベス一世も舞い上がってナイトの称号の一つくらいくれてやろうって物である。

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おまけ・超電導推進実験船「ヤマト−1」

"レッド・オクトーバー"に搭載されてるアレで進む船。すんげー速そうでカッコいいんだけど、残念ながら計画速度は8ノットぐらいの物のようですな。日記とは別のアングルから。

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ごくおおざっぱな用語解説

(*1)キャラック船
北欧のバイキング船の流れをくむ、"コグ"と言うタイプが発展したもので、主に商船として、スペイン、ポルトガルで発達した船。
(*2)キャラベル船
ラテン・セールという大型の三角帆を持つ。14世紀頃から地中海、スペイン、ポルトガルあたりで使われ出した。後に大型化し、遠洋航海にも使用される。
(*3)戦列艦
艦隊戦の主力になる、大型の2層〜3層の砲列甲板を持つ帆船。分類上はシップ型と呼ばれ1等から6等の等級がある。実際に戦闘を行うのは1〜3等級艦で、それより下のクラスは補給などの補助的役割についた。等級で呼ぶほかにも、搭載砲の門数で呼ぶこともある。たとえば"ヴィクトリー"は104門艦。
(*4)リギング
マストの固定やヤード、帆の操作に使われるロープの張り方を総称してリギング、と呼ぶ。ごくおおざっぱですが、リギンにはスタンディングリギンとランニングリギンの2種類あり、前者がマストなどの固定(スタンディング=動かない)、後者はヤードの上下や回転、展帆、縮帆などに使われる(ランニング=動く)。
(*5)カタロニア船
バルセロナ近くの教会に奉納されていた模型の帆船。現存する最古の帆船模型なのだそうだ。
(*6)ガレオン船
キャラック船を発展させた、本格的な外洋型帆船。これが発展して、戦列艦などのシップ型を形成する。
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